青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第136話 月日は流れて・・・

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孤独に玲を育てる日々の中、既に1年が経過しようとしていた。


祐輝はキックボクシングも辞めて仕事をしては玲を世話するだけの日々を送っていた。


笑顔を見せる事はほとんどなくなり、口を開けばリカと激しく口論をしていた。


仕事で外出すると幸せそうに遊んでいる家族を見ると羨ましくてたまらなかった。


だがここで祐輝にさらなる災難が降り注いだ。




「引っ越す?」
「京都行こ。」




リカは突如京都へ行くと言い始めたのだ。


困惑する祐輝を気にもせず、引っ越しの準備を始めたリカはどこか楽しそうだった。


携帯を見ては笑みを浮かべるリカを不審に思いながらも引っ越しには賛成していた。


祐一からの嫌がらせは止まる事はなかった。


僅か一ヶ月足らずで準備を整えた祐輝は仕事も退職して京都へ向かう日がきた。


見送りには真美がいた。


悲しそうに目に涙を浮かべたまま、黙って立っていた。




「本当に行くのね・・・」
「うん・・・」
「お母さん・・・」




リカは真美に抱きつく勢いで泣いていた。


祐輝はその光景を見てゾッとしていた。


本当に寂しそうに泣いているリカは何を考えているのか。


どうして京都を選んだのか。


悲しそうにする真美を見ていると「行きたくない」という気持ちにかられた。


しかしこの家に残っても祐一からの嫌がらせは終わる事はない。


行くしかなかった。




「じゃあ行くわ・・・」
「祐輝・・・リカも元気でね・・・」
「はいお母さん・・・」




そして祐輝とリカは遠く離れた京都へ向かった。


これが全ての悲劇の始まりで壮大な物語の幕開けになるとは思ってもいなかった。


長い道のりを終始無言のまま、移動した祐輝とリカは京都の地を踏んだ。


3階建ての一戸建てを借りた祐輝とリカは新生活が始まった。


急いで就職先を見つけた祐輝は家電配送の仕事を始めた。


そこで出会った上司は後に祐輝の支えとなるがまだこの時は知る由もない。


京都に着いて2日後には初出勤を迎えた。




「よろしくお願いします。」




職場に入ると聞き慣れない西の方言の環境に緊張していた。


素早く動く職員と飛び交う完成弁に硬直していると中年男性が声をかけてきた。


「緊張する事なんてないで」と肩をポンポンと叩いてきた男は「豊田」と名乗った。


豊田は祐輝を直ぐに気に入った。


年齢層の高い職場で22歳の若者が現れる事は新鮮だった。




「なんでも聞いたらええよ。」
「頑張りますから!!」
「ええな!! 頑張れや!!」




家に帰ると孤独な祐輝は現代人には珍しい仕事をしている時間が一番幸福だった。


どんな仕事も率先して行っていた。


だがその時間、家には悪魔と玲だけが残っている。


仕事を終えて家い帰るとたった3日でゴミ屋敷と化した部屋に入っていく。


弁当の食べかすやダンボールを押しのけて部屋に入ると泣きわめく玲を抱きかかえて2階の部屋に入った。


リカは3階の部屋から基本的に出てくる事はなかった。


部屋の中でタバコが充満していた。




「玲頑張ろうな・・・お前が成人したら離婚するからな・・・」
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