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シーズン1序章 消えた神族と悲劇の少年
第12話 本音と武士道
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友奈は悩んでいた。眼前に広がる、怨霊の群れの対処に。友奈は今日という日まで、怨霊とは上手くやってきた。
どういうわけか、友奈は怨霊と意思疎通ができることから、心の根本まで病んでいる彼らの励みにすらなっていたのだ。
「何者か存ぜぬが、一大事でござる。 怨霊共をかき分けて、助太刀致そうぞ」
正義感の強い土屋は、赤鞘から刀を抜き出すと、今にも飛び込みそうだ。それを静かに見ている友奈は、果たしてその行動が正しいことなのかと悩んでいる。
人助けなんて、所詮は一方的なエゴなのではないか。知りもしない他人が困っているから助けるのは、他人のためになるのか。蓋を開けてみれば、実は困っているのは怨霊の方だったりしないだろうか。
日頃から、怨霊の深い憎悪を目の当たりにしている友奈は、一概に怨霊だから「悪」とは決められなかった。
「みーんな色んな思いをしているんだよねえ......怨霊達が、あんなに集まっているなら、それなりの理由があるんじゃない?」
「助太刀致さぬのか!? 既に拙者せっしゃの配下の者は集めておりますぞ!」
どすの利いた声を響かせる土屋がそう言った。友奈がふと、周りを見渡すと、土屋と厳三郎と同じような、赤い甲冑に身を包む侍達が集まってきている。
これは土屋と厳三郎が、第一の人生の時に従えていた者達だ。何か一大事となれば、直ぐに駆けつける手筈になっていた。
「またこんな集めて。 いいよ土屋放っておこうよ」
「殿はなんと致すか!?」
「そうじゃなあ......」
土屋の勇ましさばかり先行しているが、彼ら赤い甲冑の武士団を束ねているのは、厳三郎だ。老兵は白い髭を触りながら、考えている。
友奈の言う通り、他人を救うために長年苦楽を共にしてきた戦友達を危険にさらすべきではない気がする。だが、困っている者を見捨てるということが、武士として胸を張れる行為なのか。白髭を触り続け、目を瞑っていた老兵は突如、目を開くと手を叩いた。
「ええい仕方ないのお。 ほれ土屋、馬を連れて参れ。 さっさと他人を救い出して、逃げるぞい」
「さすがは殿。 ご立派な決断でござるな」
明らかに不満げな友奈を横目に、霊馬れいばにまたがった赤い武士達は、怨霊目掛けて進み始めた。
その時だ。
「邪魔だてめえら!」
「な、なにやつ!?」
「おい竹子、笹子無事か!? このまま、走り続けろ!」
疾風の如き、荒々しさと速さで駆け抜けていった存在は、援護なんて最初から必要もなかったようだった。
足早に去っていった一団に目を疑った土屋達だが、何よりも驚いたのは、先頭を走っていた二刀流の男だ。
「い、今のは皇国武士ではないのか!?」
「そうじゃったなあ。 なんじゃ助太刀なんぞ必要なかったではないか」
「まさか皇国武士がおられたとは......危うく出過ぎた真似をするところでござった......」
百戦錬磨の土屋達ですら、皇国武士という神の軍隊を見れば遠慮する始末だ。それほどまでに精強で、兵力も充実していた皇国軍も今では、眼の前を通過した男のみとなっている。
嵐のように去っていった一団の背中を、唖然としながら見ている一同は、鞘に刀を収めると警戒を解いた。
「で、では帰りますかな......」
「それにしてもたまげたわい。 そうじゃ! 連中が消えた理由を怨霊共に尋ねてはどうじゃ友奈よ?」
「別にどうでもいいよ。 だって私達には関係ないじゃん」
何か怨霊の逆鱗に触れることでもしたのだろう。友奈はそう考えると、怨霊達の行動を詮索する気が起きなかった。
「世の中、悪そうに見えるってだけで悪者にされちゃう。 何が悪くて、これからどうすれば仲良くなれるのかなんて誰も気にしない。 見た目が怖いからとか、どうせ話しても無駄とかね......狐の侍さんもきっとそれで怨霊を怒らせたんだよ」
腕を組んで聞いている土屋は、静かに口を開いた。
「矛盾してますぞ」
友奈の理論が正しいと言うなら、突如消えたと思われていた皇国武士が二十四年ぶりに姿を見せたと思えば、怨霊に追われている。理由を探ろうにも、友奈は勝手に怨霊を怒らせたと決めつけたのだ。
土屋からの指摘に表情を歪める友奈は、大きなため息をついた。
「はあ......じゃあ聞くだけ聞くけど。 私の言った通りなら、助太刀だなんて危ないこと止めてよね」
本音を言えば、友奈は今までと変わらず土屋と厳三郎と共に暮らしていたいのだ。わざわざ危険なことに首を突っ込む理由が友奈にはなかった。
しかし消えた皇国軍と、何故か一柱だけ存在していた皇国武士が狙われている謎を解明するには、もはや友奈しかいなかったのだ。
どういうわけか、友奈は怨霊と意思疎通ができることから、心の根本まで病んでいる彼らの励みにすらなっていたのだ。
「何者か存ぜぬが、一大事でござる。 怨霊共をかき分けて、助太刀致そうぞ」
正義感の強い土屋は、赤鞘から刀を抜き出すと、今にも飛び込みそうだ。それを静かに見ている友奈は、果たしてその行動が正しいことなのかと悩んでいる。
人助けなんて、所詮は一方的なエゴなのではないか。知りもしない他人が困っているから助けるのは、他人のためになるのか。蓋を開けてみれば、実は困っているのは怨霊の方だったりしないだろうか。
日頃から、怨霊の深い憎悪を目の当たりにしている友奈は、一概に怨霊だから「悪」とは決められなかった。
「みーんな色んな思いをしているんだよねえ......怨霊達が、あんなに集まっているなら、それなりの理由があるんじゃない?」
「助太刀致さぬのか!? 既に拙者せっしゃの配下の者は集めておりますぞ!」
どすの利いた声を響かせる土屋がそう言った。友奈がふと、周りを見渡すと、土屋と厳三郎と同じような、赤い甲冑に身を包む侍達が集まってきている。
これは土屋と厳三郎が、第一の人生の時に従えていた者達だ。何か一大事となれば、直ぐに駆けつける手筈になっていた。
「またこんな集めて。 いいよ土屋放っておこうよ」
「殿はなんと致すか!?」
「そうじゃなあ......」
土屋の勇ましさばかり先行しているが、彼ら赤い甲冑の武士団を束ねているのは、厳三郎だ。老兵は白い髭を触りながら、考えている。
友奈の言う通り、他人を救うために長年苦楽を共にしてきた戦友達を危険にさらすべきではない気がする。だが、困っている者を見捨てるということが、武士として胸を張れる行為なのか。白髭を触り続け、目を瞑っていた老兵は突如、目を開くと手を叩いた。
「ええい仕方ないのお。 ほれ土屋、馬を連れて参れ。 さっさと他人を救い出して、逃げるぞい」
「さすがは殿。 ご立派な決断でござるな」
明らかに不満げな友奈を横目に、霊馬れいばにまたがった赤い武士達は、怨霊目掛けて進み始めた。
その時だ。
「邪魔だてめえら!」
「な、なにやつ!?」
「おい竹子、笹子無事か!? このまま、走り続けろ!」
疾風の如き、荒々しさと速さで駆け抜けていった存在は、援護なんて最初から必要もなかったようだった。
足早に去っていった一団に目を疑った土屋達だが、何よりも驚いたのは、先頭を走っていた二刀流の男だ。
「い、今のは皇国武士ではないのか!?」
「そうじゃったなあ。 なんじゃ助太刀なんぞ必要なかったではないか」
「まさか皇国武士がおられたとは......危うく出過ぎた真似をするところでござった......」
百戦錬磨の土屋達ですら、皇国武士という神の軍隊を見れば遠慮する始末だ。それほどまでに精強で、兵力も充実していた皇国軍も今では、眼の前を通過した男のみとなっている。
嵐のように去っていった一団の背中を、唖然としながら見ている一同は、鞘に刀を収めると警戒を解いた。
「で、では帰りますかな......」
「それにしてもたまげたわい。 そうじゃ! 連中が消えた理由を怨霊共に尋ねてはどうじゃ友奈よ?」
「別にどうでもいいよ。 だって私達には関係ないじゃん」
何か怨霊の逆鱗に触れることでもしたのだろう。友奈はそう考えると、怨霊達の行動を詮索する気が起きなかった。
「世の中、悪そうに見えるってだけで悪者にされちゃう。 何が悪くて、これからどうすれば仲良くなれるのかなんて誰も気にしない。 見た目が怖いからとか、どうせ話しても無駄とかね......狐の侍さんもきっとそれで怨霊を怒らせたんだよ」
腕を組んで聞いている土屋は、静かに口を開いた。
「矛盾してますぞ」
友奈の理論が正しいと言うなら、突如消えたと思われていた皇国武士が二十四年ぶりに姿を見せたと思えば、怨霊に追われている。理由を探ろうにも、友奈は勝手に怨霊を怒らせたと決めつけたのだ。
土屋からの指摘に表情を歪める友奈は、大きなため息をついた。
「はあ......じゃあ聞くだけ聞くけど。 私の言った通りなら、助太刀だなんて危ないこと止めてよね」
本音を言えば、友奈は今までと変わらず土屋と厳三郎と共に暮らしていたいのだ。わざわざ危険なことに首を突っ込む理由が友奈にはなかった。
しかし消えた皇国軍と、何故か一柱だけ存在していた皇国武士が狙われている謎を解明するには、もはや友奈しかいなかったのだ。
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