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シーズン3 ツンドラ帝国遠征編
第3−8話 スタシア王国に栄光あれ
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開戦は近い。このツンドラ帝国対秦国による戦争は、誰もがそう思うほど緊迫している。
この戦争の指揮を執っている虎白は、誰もが予想もしていなかった攻撃方法で開戦させるのだった。
「ということだからアルデン。 腕利きを五十人ほど集めてくれ」
「たったの五十人でツンドラを滅亡させるのですか......」
現在ノバ皇帝のツンドラは、妹であるメルキータ皇女を追放したことにより、帝位継承者がいなくなっている。
つまり、ノバ皇帝が倒れると必然的にツンドラは滅亡することになる。他の一族は誰もいないのだ。
虎白は最初からノバ皇帝のみを狙っていた。
「莉久、竹子、笹子、夜叉子そしてメルキータを連れて行く」
「わかりました......私は王立近衛兵から腕利きを選びます」
スタシアのアルデン王を守ることが任務とされている王立近衛兵おうりつこのえへい。
剣術を極めた剣聖けんせいと呼ばれる剣の達人から、さらに選びぬかれた者だけが入隊を許可されるスタシアで一番の精鋭部隊だ。そこからさらに五十名にまで厳選される最強部隊が、今回のノバグラード襲撃に加わるというわけだ。
「選んだら行くぞ」
「さすがに血が騒ぐというものです。 虎白殿、あなたの語る世界が訪れるといいですね」
「必ず来るさ。 そのためには、民を苦しめる国があってはならない」
白髪を風になびかせ、赤髪をなびかせ、男達は決戦の地へ向かった。
メルキータ皇女が前もって演説をした効果もあり、虎白ら一向が到着すると民は出迎え、ツンドラ軍は速やかに武装解除した。
さらに十の都市を通過すると、ツンドラ帝国の本丸であるノバグラードへ到達する。現在、九箇所目の都市を通過したところだ。
「あと一つ越えれば、ノバグラードだな」
「ええ、今のところはメルキータ殿のおかげで順調ですね」
「おいアルデン見ろ。 ツンドラ兵が待っているぞ」
九箇所目にして、様子がおかしい。今までは、民が歓喜して出迎え、兵士は直ぐに武器を置いた。
しかしここでは、民は姿すら見せず、兵士は武装したままだ。一同の警戒心が高まる中、双方は接近した。息が詰まるほどの沈黙が流れ、睨み合っている。
やがてツンドラ軍の将校が、強張った表情のまま近づいてきた。
「こ、皇女様......」
「どうしたんだ? 武器を捨てて、私と来い」
「お、お許しください......こうでもしないと......我々の家族が......」
「何があったんだ!?」
「軍部の家族は、捕らえられて人質にされているんですよお......」
涙ながらに語る将校は、人質にされている家族の話しを始めた。ノバグラードに近い都市には、既にノバから送られた近衛兵が配備されていたのだ。
将校は、メルキータに味方したい本心とは異なり、やむなく家族のために戦うことを決めたのだ。
青ざめた表情をするメルキータの肩に手を置いて、前へ出たのは虎白だ。
「おい将校。 ノバの近衛兵はどれだ?」
「首元に赤いスカーフを巻いている兵士が、陛下の近衛兵です......」
「あいつらか。 凄え剣幕だな」
「虎白殿、どうしますか?」
「無駄に殺したくねえなあ......近衛兵だけを狙うぞ。 おい将校、お前の部隊は戦うふりだけして時間を稼げ。 その間に俺達で近衛兵だけを倒すぞ」
それは非常に難易度の高い話しだ。大勢が一斉にぶつかり合う乱戦の中で、首元の赤いスカーフだけを見て殺す。
しかしここにいるのは、スタシア王国から選びぬかれた精鋭だ。決して不可能なことではない。
刀を鞘から抜いた虎白は、アルデンの顔を見てうなずいた。王立近衛兵に作戦を伝えたアルデンは、勇ましい表情で合図を送った。
「よし行け!」
一瞬にして激しい乱戦となった。だがここで、予想外の事態が起きたのだ。
アルデン王のスタシア王立近衛兵は、剣聖と呼ばれる精鋭中の精鋭だ。彼らの剣技は、比類なきものである。並の兵士なら僅か一太刀で斬り捨てられてしまうだろう。
だが、ノバ皇帝の近衛兵である通称「ノバガード」は、なんとスタシア王立近衛兵の攻撃を受け止めて、反撃してきたのだ。
そして半獣族特有の強靭な腕力と脚力を武器に、凄まじいまでの一撃を繰り出し、スタシア王立近衛兵に衝撃を与えた。
「わ、私の近衛兵が!?」
「これは予想外だ......ノバの部隊は意外なほど強いな......」
「で、ですが、数はそれほど多くありません虎白殿!」
五十名あまりの虎白一向に、対するのは戦っているふりをしているツンドラ一般兵部隊と二十程度のノバガードだけだ。
数こそ多く見えるが、実際には五十対二十の戦いというわけだ。アルデン王は、名誉と誇りにかけて、このような状況で負けるわけにいかなかった。
「わざわざ南から来ていただいて......私達ではどうすることもできなかったツンドラをここまで追い込まれた......それなのに今になって我らスタシアが足を引っ張り、作戦を中断するわけにいかない......」
アルデン王は思った。この激しい乱戦の中、ツンドラ一般兵は一度武器を交えると、体勢を崩したように見せかけて避けていく。そして背後に立つ、ノバガードが襲いかかってくるのだ。
方や我が王立近衛兵は、私を守りながら戦っている。守りながら戦うか、誰が倒れても気にせず戦うか。
この僅かな意識の差が、ノバガードを有利にしているのだ。
「我が精鋭よ! 私はいい! 前へ出てノバガードを倒すんだ! 私は剣聖の王国の王なるぞ! 諸君らは敵を倒すことに集中しろ! スタシアに栄光あれ!」
そして次の瞬間、スタシア王立近衛兵はノバガードを蹴散らし始めたのだ。同時に、アルデン王の周囲は手薄になりノバガードも殺到した。
しかし剣聖の国の王は、名ばかりではなかった。アルデン王は、迫るノバガードが攻撃をする暇すらなく、僅か一刀で斬り捨てていった。
常軌を逸した剣技で斬り進む赤き王は、ノバガードが地面に倒れるよりも早く、次の敵を倒していった。
スタシアの栄光のために。
この戦争の指揮を執っている虎白は、誰もが予想もしていなかった攻撃方法で開戦させるのだった。
「ということだからアルデン。 腕利きを五十人ほど集めてくれ」
「たったの五十人でツンドラを滅亡させるのですか......」
現在ノバ皇帝のツンドラは、妹であるメルキータ皇女を追放したことにより、帝位継承者がいなくなっている。
つまり、ノバ皇帝が倒れると必然的にツンドラは滅亡することになる。他の一族は誰もいないのだ。
虎白は最初からノバ皇帝のみを狙っていた。
「莉久、竹子、笹子、夜叉子そしてメルキータを連れて行く」
「わかりました......私は王立近衛兵から腕利きを選びます」
スタシアのアルデン王を守ることが任務とされている王立近衛兵おうりつこのえへい。
剣術を極めた剣聖けんせいと呼ばれる剣の達人から、さらに選びぬかれた者だけが入隊を許可されるスタシアで一番の精鋭部隊だ。そこからさらに五十名にまで厳選される最強部隊が、今回のノバグラード襲撃に加わるというわけだ。
「選んだら行くぞ」
「さすがに血が騒ぐというものです。 虎白殿、あなたの語る世界が訪れるといいですね」
「必ず来るさ。 そのためには、民を苦しめる国があってはならない」
白髪を風になびかせ、赤髪をなびかせ、男達は決戦の地へ向かった。
メルキータ皇女が前もって演説をした効果もあり、虎白ら一向が到着すると民は出迎え、ツンドラ軍は速やかに武装解除した。
さらに十の都市を通過すると、ツンドラ帝国の本丸であるノバグラードへ到達する。現在、九箇所目の都市を通過したところだ。
「あと一つ越えれば、ノバグラードだな」
「ええ、今のところはメルキータ殿のおかげで順調ですね」
「おいアルデン見ろ。 ツンドラ兵が待っているぞ」
九箇所目にして、様子がおかしい。今までは、民が歓喜して出迎え、兵士は直ぐに武器を置いた。
しかしここでは、民は姿すら見せず、兵士は武装したままだ。一同の警戒心が高まる中、双方は接近した。息が詰まるほどの沈黙が流れ、睨み合っている。
やがてツンドラ軍の将校が、強張った表情のまま近づいてきた。
「こ、皇女様......」
「どうしたんだ? 武器を捨てて、私と来い」
「お、お許しください......こうでもしないと......我々の家族が......」
「何があったんだ!?」
「軍部の家族は、捕らえられて人質にされているんですよお......」
涙ながらに語る将校は、人質にされている家族の話しを始めた。ノバグラードに近い都市には、既にノバから送られた近衛兵が配備されていたのだ。
将校は、メルキータに味方したい本心とは異なり、やむなく家族のために戦うことを決めたのだ。
青ざめた表情をするメルキータの肩に手を置いて、前へ出たのは虎白だ。
「おい将校。 ノバの近衛兵はどれだ?」
「首元に赤いスカーフを巻いている兵士が、陛下の近衛兵です......」
「あいつらか。 凄え剣幕だな」
「虎白殿、どうしますか?」
「無駄に殺したくねえなあ......近衛兵だけを狙うぞ。 おい将校、お前の部隊は戦うふりだけして時間を稼げ。 その間に俺達で近衛兵だけを倒すぞ」
それは非常に難易度の高い話しだ。大勢が一斉にぶつかり合う乱戦の中で、首元の赤いスカーフだけを見て殺す。
しかしここにいるのは、スタシア王国から選びぬかれた精鋭だ。決して不可能なことではない。
刀を鞘から抜いた虎白は、アルデンの顔を見てうなずいた。王立近衛兵に作戦を伝えたアルデンは、勇ましい表情で合図を送った。
「よし行け!」
一瞬にして激しい乱戦となった。だがここで、予想外の事態が起きたのだ。
アルデン王のスタシア王立近衛兵は、剣聖と呼ばれる精鋭中の精鋭だ。彼らの剣技は、比類なきものである。並の兵士なら僅か一太刀で斬り捨てられてしまうだろう。
だが、ノバ皇帝の近衛兵である通称「ノバガード」は、なんとスタシア王立近衛兵の攻撃を受け止めて、反撃してきたのだ。
そして半獣族特有の強靭な腕力と脚力を武器に、凄まじいまでの一撃を繰り出し、スタシア王立近衛兵に衝撃を与えた。
「わ、私の近衛兵が!?」
「これは予想外だ......ノバの部隊は意外なほど強いな......」
「で、ですが、数はそれほど多くありません虎白殿!」
五十名あまりの虎白一向に、対するのは戦っているふりをしているツンドラ一般兵部隊と二十程度のノバガードだけだ。
数こそ多く見えるが、実際には五十対二十の戦いというわけだ。アルデン王は、名誉と誇りにかけて、このような状況で負けるわけにいかなかった。
「わざわざ南から来ていただいて......私達ではどうすることもできなかったツンドラをここまで追い込まれた......それなのに今になって我らスタシアが足を引っ張り、作戦を中断するわけにいかない......」
アルデン王は思った。この激しい乱戦の中、ツンドラ一般兵は一度武器を交えると、体勢を崩したように見せかけて避けていく。そして背後に立つ、ノバガードが襲いかかってくるのだ。
方や我が王立近衛兵は、私を守りながら戦っている。守りながら戦うか、誰が倒れても気にせず戦うか。
この僅かな意識の差が、ノバガードを有利にしているのだ。
「我が精鋭よ! 私はいい! 前へ出てノバガードを倒すんだ! 私は剣聖の王国の王なるぞ! 諸君らは敵を倒すことに集中しろ! スタシアに栄光あれ!」
そして次の瞬間、スタシア王立近衛兵はノバガードを蹴散らし始めたのだ。同時に、アルデン王の周囲は手薄になりノバガードも殺到した。
しかし剣聖の国の王は、名ばかりではなかった。アルデン王は、迫るノバガードが攻撃をする暇すらなく、僅か一刀で斬り捨てていった。
常軌を逸した剣技で斬り進む赤き王は、ノバガードが地面に倒れるよりも早く、次の敵を倒していった。
スタシアの栄光のために。
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