先生

香久山

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吐露

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「俺らあと2ヶ月で卒業やんな…」

何しに来たかを聞いて見当違いな答えが返ってきた。
しかし、せっかく話し始めたものを止めるのはやめておこう。

「せやなぁ…」

今は高校3年の1月。
3月の頭にある卒業式まで、きっとあり得ない速さで日常が過ぎ去るのだ。

「なんや、寂しいん?」

「そりゃ寂しいわぁ…家族より長くおんねんで…」

「寂しいから僕と話したくなったん?」

冗談まじりに問うと

「ちゃうんよ…聞いて欲しいことがあるんよ…」

眉をハの字に下げながら僕を見つめて言う。
やっと本題か…そう思いながら続きを話すよう促した。

「俺な、好きな人がおるんよ」

「ほぉ…」

「驚かんの?」

「むしろいた方が健全やと思うよ?」

「相手が男でも?」

そうきたか……返す言葉を選んでいると彼は泣きそうになる。

「やっぱ俺おかしいんやろか…こんなん普通じゃないよな…分かってんねん……」

不思議とおかしいなんて思わなかった。
何故かすんなりと受け入れられた。

「いやぁ…?えぇんちゃう?」

「はぁ?なんでお前はそんな普通なん⁇俺のこと……気持ち悪くないん…?」

「誰かが君のこと気持ち悪いって言うたん?」

「アホかぁ…こんなん他の誰かに言えるかぁ…」

あぁ…泣き出してしまった。
僕は鼻炎を気遣った高級ティッシュを差出した。

「なんで泣くんよ…気持ち悪いなんてあらへんがなぁ…えぇやん君が好きなら…」

「そんなすんなり受け入れんなよぉ…散々悩んだ俺がアホみたいやんかぁ……」

「別に悩むんもアホなことあるか……君にとっては大事なことなんやろ?」

同性だろうが異性だろうが誰かを真剣に好きになっているかれを羨ましく思った。



それがとても尊い感情だと思ったから…。

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