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13話 王女殿下
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「知っているとは思うが、妾の名はゼーファ・アンドレイズじゃ。」
「Sランク冒険者、リエラと申します。本日はご招待いただき、ありがとうございます。」
ゼーファ殿下は比較的穏やかな方だ。しかし曲がったことが嫌いで、芯はしっかりしている。話し方もあってか、舐められるようなこともない。王女でありながら、あそこまではっきりとものが言えるのは珍しいと、貴族達はよく言っていた。
確かに、記録に残っている過去の王女殿下達は、国王陛下に従っている場合が多い。権力は勿論、発言力や城下に赴けるほどの自由も無かったからだ。王女としての地位はあれど、様々なことを決める権力自体はそれほど持たないのである。
しかし今世の王女であられるゼーファ殿下は、どちらかと言えば自由奔放な方だ。城下や栄えている場所などによく赴き、先日まで隣国に留学していたほど。それらを許可された国王陛下も、相変わらず素晴らしい見識をお持ちだ。
そして殿下は知識にも貪欲で、自分が興味を持ったことには、納得するまで調べ上げる。故に、正体を隠している今の私にとっては、危険視すべき相手でもあった。調べられたら厄介だからだ。
「今の妾には、時間が無いからの…。」
殿下はポツリと呟き、暗い表情をされている。
その様子に、私は思わず問いかけた。
「時間……ですか…?」
「うむ…。妾は地位こそあれと、権力を持たぬ。魔法や剣技の腕は、凡人に毛が生えた程度じゃろう。故に何かを成せるほどの力は無い。」
「……。」
「時にリエラよ、妾がこのような態度を取るようになった理由を、知っておるか?」
「い、いえ…。」
「簡単に言えば、貴族達に舐められないようにするためじゃ。そして歴代の王女のように、王の言いなりになるになるつもりはないと、妾は妾であると知らしめるためじゃ。こうまでしなければ、妾はただの政治道具に過ぎなかった。」
そう言われ、私は初めて今までのゼーファ殿下の行動に納得がいった。
城下などに住まう平民の暮らしを自らの目で見て学び、見聞を広めるために留学までした。さらには興味のあることは全て知識として吸収し、魔法や剣技の技術も磨いている。
これらが示すのはただ一つ……
「聡いお主なら、妾の考えが分かったであろう?」
「……国の王…、つまりは女王を目指すおつもりなのですね。」
「その通りじゃ。」
これほど女性が格好よく見えたのは初めてだ。迷いのない瞳と態度。それらからは強い意志を感じられる。
…私の求めている人は、ゼーファ殿下なのではと思えてきた。
「しかし冒険者である私に、そのような重大な話をしてもよろしかったのですか?」
「構わぬ。妾とて半端な覚悟で王を目指している訳ではない。それに、お主に何故このような話をしたのかは、お主自身が一番分かっておるであろう。」
「…圧倒的な武力…ですね。」
現在、ゼーファ殿下は自身を守る『強力な盾』が居ない状況だ。騎士団や兵を動かす権利があるのは国王陛下のみだが、王太子直属の近衛騎士団であれば、ジルファーも動かすことができる。
しかしゼーファ殿下には、直属の近衛騎士団が存在しない。ご自分で集められた従者、或いは陛下が付けている護衛数人しか、身を守ってくれる存在がいない。暗殺者への対策はできているとはいえ、ジルファーが本気を出せばゼーファ殿下は簡単に消されてしまうだろう。
殿下が王位継承争いを仕掛けていない理由は、そこにあったのだ。
「…やはりお主は必要な人材じゃ。」
「やはり…?」
「もう芝居はよそう。お主も演技をやめて良いぞ?この場には、妾と最も信頼の厚き側近であるリリアナしか居らぬ。」
「……演技とは、一体何の話でしょう?」
「隠さずとも分かっておるのじゃ、冒険者リエラ殿。」
威厳溢れる態度でありながら、その口調は優しげだ。
この時点で、私は既に正体がバレているのだと察した。……いや、初めから分かっていたことだ。この方に隠し事は通用しない…。
「……。」
「そう警戒するでない。妾はお主と敵対するほど、愚かではない。」
遠回しにジルファーを『愚か者』だと言っている気がするが…。そこは気にしないでおこう。
それよりも、今重要なのは正体を明かすべきかどうかだ。
ゼーファ殿下は確信を得られなければ、このようなことはしない。賭けに出ることはあれど、それは負けてもそれほど影響のない賭けだ。
私は意を決し、仮面を取った。同時に髪色や声音も戻す。
「……息災そうで何よりじゃ、ラリエット。」
「Sランク冒険者、リエラと申します。本日はご招待いただき、ありがとうございます。」
ゼーファ殿下は比較的穏やかな方だ。しかし曲がったことが嫌いで、芯はしっかりしている。話し方もあってか、舐められるようなこともない。王女でありながら、あそこまではっきりとものが言えるのは珍しいと、貴族達はよく言っていた。
確かに、記録に残っている過去の王女殿下達は、国王陛下に従っている場合が多い。権力は勿論、発言力や城下に赴けるほどの自由も無かったからだ。王女としての地位はあれど、様々なことを決める権力自体はそれほど持たないのである。
しかし今世の王女であられるゼーファ殿下は、どちらかと言えば自由奔放な方だ。城下や栄えている場所などによく赴き、先日まで隣国に留学していたほど。それらを許可された国王陛下も、相変わらず素晴らしい見識をお持ちだ。
そして殿下は知識にも貪欲で、自分が興味を持ったことには、納得するまで調べ上げる。故に、正体を隠している今の私にとっては、危険視すべき相手でもあった。調べられたら厄介だからだ。
「今の妾には、時間が無いからの…。」
殿下はポツリと呟き、暗い表情をされている。
その様子に、私は思わず問いかけた。
「時間……ですか…?」
「うむ…。妾は地位こそあれと、権力を持たぬ。魔法や剣技の腕は、凡人に毛が生えた程度じゃろう。故に何かを成せるほどの力は無い。」
「……。」
「時にリエラよ、妾がこのような態度を取るようになった理由を、知っておるか?」
「い、いえ…。」
「簡単に言えば、貴族達に舐められないようにするためじゃ。そして歴代の王女のように、王の言いなりになるになるつもりはないと、妾は妾であると知らしめるためじゃ。こうまでしなければ、妾はただの政治道具に過ぎなかった。」
そう言われ、私は初めて今までのゼーファ殿下の行動に納得がいった。
城下などに住まう平民の暮らしを自らの目で見て学び、見聞を広めるために留学までした。さらには興味のあることは全て知識として吸収し、魔法や剣技の技術も磨いている。
これらが示すのはただ一つ……
「聡いお主なら、妾の考えが分かったであろう?」
「……国の王…、つまりは女王を目指すおつもりなのですね。」
「その通りじゃ。」
これほど女性が格好よく見えたのは初めてだ。迷いのない瞳と態度。それらからは強い意志を感じられる。
…私の求めている人は、ゼーファ殿下なのではと思えてきた。
「しかし冒険者である私に、そのような重大な話をしてもよろしかったのですか?」
「構わぬ。妾とて半端な覚悟で王を目指している訳ではない。それに、お主に何故このような話をしたのかは、お主自身が一番分かっておるであろう。」
「…圧倒的な武力…ですね。」
現在、ゼーファ殿下は自身を守る『強力な盾』が居ない状況だ。騎士団や兵を動かす権利があるのは国王陛下のみだが、王太子直属の近衛騎士団であれば、ジルファーも動かすことができる。
しかしゼーファ殿下には、直属の近衛騎士団が存在しない。ご自分で集められた従者、或いは陛下が付けている護衛数人しか、身を守ってくれる存在がいない。暗殺者への対策はできているとはいえ、ジルファーが本気を出せばゼーファ殿下は簡単に消されてしまうだろう。
殿下が王位継承争いを仕掛けていない理由は、そこにあったのだ。
「…やはりお主は必要な人材じゃ。」
「やはり…?」
「もう芝居はよそう。お主も演技をやめて良いぞ?この場には、妾と最も信頼の厚き側近であるリリアナしか居らぬ。」
「……演技とは、一体何の話でしょう?」
「隠さずとも分かっておるのじゃ、冒険者リエラ殿。」
威厳溢れる態度でありながら、その口調は優しげだ。
この時点で、私は既に正体がバレているのだと察した。……いや、初めから分かっていたことだ。この方に隠し事は通用しない…。
「……。」
「そう警戒するでない。妾はお主と敵対するほど、愚かではない。」
遠回しにジルファーを『愚か者』だと言っている気がするが…。そこは気にしないでおこう。
それよりも、今重要なのは正体を明かすべきかどうかだ。
ゼーファ殿下は確信を得られなければ、このようなことはしない。賭けに出ることはあれど、それは負けてもそれほど影響のない賭けだ。
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「……息災そうで何よりじゃ、ラリエット。」
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