【完結】家を追放され、森に放置された私が出会ったのは精霊でした。

凛 伊緒

文字の大きさ
6 / 10

6.

しおりを挟む
ある日--
私はゼティスーアと共に魔法を練習していた。
練習と言うよりは、魔法で遊んでいるだけなのだが。


「ゼティスーア様っ!」

「何だ、騒々しい。」

「申し訳ありません…。しかし、緊急事態です!」

「緊急事態だと?」

「はい。大量の魔物が、こちらへ向かってきていますっ!」

「何?しかし、この結界は奴らさえ反対側へ送るものだ。そう慌てなくても良いだろう。」

「それが……最近現れていた、結界を通り抜けてくる魔物のようなのです。」

「……。」


かなり厳しい状況なのだと、報告に来た精霊フィズとゼティスーアの様子で分かった。
私はゼティスーアに向かって頷く。
意図を読み取ってくれたのか、少し笑ってからフィズの方へと向き直った。


「フィズ、私が直接出る。ユイレも連れて行くぞ。」

「承知致しました。しかしユイレも連れて行くのですか…。」

「不満か?既にお前達よりも強くなっているぞ。」

「なっ!?」

「さっさと行くぞ。」

「はっ…。」


そうして、私達は魔物が大量発生しているという場所へと向かった。

その場所には、確かに魔物がいた。
数はおよそ5000体ほどだろうか。
森の一角を埋めつくしている。


「報告します!反対側より、人族が向かってきております!」

「人族だと?」

「はっ。この里は結界により見えぬようになっている為、おそらく魔物を領地に入る前に倒しておきたい、という思惑で来たのかと…。」

「だろうな。数はどの程度だ?」

「はっ、およそ300名です。」

「仕方ない。精霊族は神出鬼没という人族の知識を利用し、少数で行こう。私とユイレは共に行く。その他数名を、不可視化の魔法を発動した状態でこちらに向かわせろ。私とユイレ以外は、人族に悟らせぬようにしろ。」

「かしこまりました。」

「ユイレ、行くぞ。」

「ええ。」


魔物のいる地点まで向かうと、その数の多さと大きさに少し萎縮してしまう。
ゼティスーアと共に、実践訓練という名目で魔物と戦ったことは何度もあるが、単体ではない魔物を前にするのは、無意識に身体が怖がっているようだった。


「さて、やりましょうか。」

「ああ。くれぐれも、無茶はしないようにな。」

「分かっているわ。」


魔物 対 ゼティスーア&私の戦闘が始まった。
私とゼティスーアは次々と広範囲魔法を放ち、魔物の数を一気に減らしていく。
後に合流した他の精霊達も攻撃している。
と言っても、その姿を見ることが出来るのは私とゼティスーアくらいだろうが。


「かなり減ったわね。」

「だが残り半分もいる。」

「そうね…。あら?」

「どうした。ん?」


後ろを見ると、人族がこちらに向かってきている。
報告にあった者達だろう。
とはいえ、先行としての10人程度だった。


「そこにいるのは…精霊族か!?それともう一人……魔族?!」

「何故魔族が魔物と戦っている…?」


来るなり口々と私を見ては仲間と話している。
魔法でも撃ってやろうかと思うほどに、少し苛ついていた。


「無礼な奴らだな。」

「ええ、本当にね。でもあの武具にある模様は……。」

「貴様らは人族だな。」

「そうです、精霊殿。魔物が大量発生しているという報告を受け、被害が出る前に討伐に来ました。加勢させていただきましょう。」

「それは助かる。」

「しかし何故魔族といるのです?」

「今は話している場合ではない。」

「そうですね。後ほどお聞きするとしましょう。我々は先行してきた者ですので、本隊がもうすぐ合流します。」

「承知した。」



その頃、後方・魔物討伐隊本隊では--


「侯爵様、先行していた者からの報告です。魔物達と交戦する、精霊族一人と魔族らしき者が一人いるようです。加勢する形で戦闘を開始したとのこと。」

「魔族だと?それに精霊とは、珍しいな。」


魔物討伐には、侯爵自らが指揮を執っていた。
その事に、反対する者はいない。
何故なら侯爵がその領地で最も強いからだった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました

鍛高譚
恋愛
婚約破棄の濡れ衣を着せられ、すべてを失った侯爵令嬢フェリシア。 絶望の果てに辿りついた隣国で、彼女の人生は思わぬ方向へ動き始める。 「君はもう一人じゃない。私の護る場所へおいで」 手を差し伸べたのは、冷徹と噂される隣国公爵――だがその本性は、驚くほど甘くて優しかった。 新天地での穏やかな日々、仲間との出会い、胸を焦がす恋。 そして、フェリシアを失った母国は、次第に自らの愚かさに気づいていく……。 過去に傷ついた令嬢が、 隣国で“執着系の溺愛”を浴びながら、本当の幸せと居場所を見つけていく物語。 ――「婚約破棄」は終わりではなく、始まりだった。

離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる! 前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。 「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。 一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……? これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!

完璧すぎると言われ婚約破棄された令嬢、冷徹公爵と白い結婚したら選ばれ続けました

鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎて、可愛げがない」  その理不尽な理由で、王都の名門令嬢エリーカは婚約を破棄された。  努力も実績も、すべてを否定された――はずだった。  だが彼女は、嘆かなかった。  なぜなら婚約破棄は、自由の始まりだったから。  行き場を失ったエリーカを迎え入れたのは、  “冷徹”と噂される隣国の公爵アンクレイブ。  条件はただ一つ――白い結婚。  感情を交えない、合理的な契約。  それが最善のはずだった。  しかし、エリーカの有能さは次第に国を変え、  彼女自身もまた「役割」ではなく「選択」で生きるようになる。  気づけば、冷徹だった公爵は彼女を誰よりも尊重し、  誰よりも守り、誰よりも――選び続けていた。  一方、彼女を捨てた元婚約者と王都は、  エリーカを失ったことで、静かに崩れていく。  婚約破棄ざまぁ×白い結婚×溺愛。  完璧すぎる令嬢が、“選ばれる側”から“選ぶ側”へ。  これは、復讐ではなく、  選ばれ続ける未来を手に入れた物語。 ---

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さくら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

形式だけの妻でしたが、公爵様に溺愛されながら領地再建しますわ

鍛高譚
恋愛
追放された令嬢クラリティは、冷徹公爵ガルフストリームと形式だけの結婚を結ぶ。 荒れた公爵領の再興に奔走するうち、二人は互いに欠かせない存在へと変わっていく。 陰謀と試練を乗り越え、契約夫婦は“真実の夫婦”へ――。

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。 完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、 家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。 そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。 「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」 契約だけの夫婦のはずだった。 お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。 静かで優しさを隠した公爵。 無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。 二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。 しかしその噂は王国へ戻り、 「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。 「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」 契約結婚は終わりを告げ、 守りたい想いはやがて恋に変わる──。 追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。 そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、 “追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。 ---

処理中です...