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1,5話 ルピナ視点

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1,5話


私はルピナ。
このパーティーでテイマーをしている。
私達のパーティーはこの町でひっそりとそれなりの活躍をしている、つもり。
だからこの依頼を受けられた事はまた一つ認められたみたいで嬉しかった。

田舎から幼馴染同士3人で逃げるようにこの町にきたのは本当に正解だと思っている。
私達の村では勝手に結婚相手を決めたり、
盛った近所のオジサンに無理矢理強姦されそうになったり、勝手に婚約者にされた20歳も歳が離れたオジサンに婚前交渉されそうになったり・・・。
日常的な度を超えたセクハラ・・・。
でも誰も助けてくれなかった。
両親でさえ助けてくれなかった。

だから、もう、限界だった。

追い詰められていた私達は夜逃げ同然でこの町にきて冒険者をしている。
幸い私達には若干の才能があるみたいでなんとか自分達の身体を売らずに過ごせている。

漠然とした不安はあるけれど、今は皆と居ると生きている実感がする。
毎日が貞操の危機と隣り合わせの絶望しか待っていない未来よりよっぽどマシだ。

ただ、最近私がパーティーのお荷物になってる様な気がする。

アニスちゃんは剣士の才能があるし、クリスちゃんはヒーラーとしての才能があるし・・・。
私はテイマーを自称しているけれど、今までは自分より弱いモンスターしか仲間に出来ない様な気がする。
そもそもそんなに強いモンスターなんかに遭遇したら私達が皆殺しにされるか、苗床として利用されちゃうんだろうなぁ・・・。
女子の冒険者なら苗床になりそうなら自害せよ、と推奨されている。
討伐する手間が増えるだけだしね・・・。
そんなニンゲンの敵に回ったモノが救出される訳が無い。
救出されたなんて話、一度も聞いた事ない。
だから、たぶん・・・。

あーもう!
こんな暗い事考えてる場合じゃない!
今回依頼された調査依頼の為のアイテムを揃えなきゃいけないんだった。

戦闘であんまり役に立てない分こういう所で頑張ろう!

ーーーーーーーーーー

依頼内容は町の近くにある森の調査。
森の主が変わった可能性があるらしいので、
その実態調査・・・。
調査がメインなので戦闘はしなくてもいい。
どうやら中堅パーティーの人達が軒並み問題の森で負傷してしまったので私達のパーティーに依頼が回ってきたらしい。
・・・受けてからそんな事言われても、もう遅いよね。

無口なアニスちゃんが珍しく受付の人に強い口調で失敗した時のペナルティー条件についてやり取りしてくれた。

条件はだいぶ緩和してもらう事が出来たので、
私達は何かあったら全力で逃走することを確認しあった。
成功したら破格の報酬が手に入るけれど、
正直ちょっと期待していない。
お金も大切だけど、私達は自分の命の方が大切だと思っているから。
だからこそ今まで生き残る事が出来たと思ってるし。

ーーーーーーーーーー

肝心の森に付くとアニスちゃんが今までに無く緊張した面持ちで作戦について説明してくれた。

「ヤバかったら逃げて。皆が逃げる位の時間は稼ぐからさ♪
だから何かいつもと違う事・・・どんなに小さくても教えて?
失敗したら溝浚いと教会の手伝いと迷子の猫をたくさん探せば大丈夫だから、気にせずに行こう!」

私とクリスちゃんは力強くうなずいた。

いざ調査してみると、森はいつもと比べ物にならないくらい静まり返っていた。
小さな虫すらも鳴いていないし、木々も動きを止めているかのような静寂。
暫くいると耳がおかしくなりそうな静寂が事態の異常さを教えてくれた。

・・・森全体が何かに怯えている?
まるで何かに畏怖して存在を悟られ無いように息を殺しているみたい。
ここまでだと、もしかして自然界にいる精霊すらも畏怖させているってこと?

森に入った時から何かに捕らわれている様な覗き見られているような錯覚を覚えているのは気の所為・・・かな?
勿論アニスちゃんには全部伝えておいたけど。

事前に指示されていた場所に向かう途中、
暑くもないのにアニスちゃんは見たことも無いくらい汗をかいていた。
きっと後衛の私より感覚的に危機を捉えているのかもしれない。
こんな強大な何かに遭遇したとして、絶対に逃げ切れっこないし、英雄クラスの冒険者が必要なんじゃないかなとぼんやり考えていた。

森の中での主な音は私達の足音位しかしなかったせいか後衛の私は無駄に思考をしてしまう。

そして嫌な事に気がついた。
あ、そうか。
私達はそういう人達を呼ぶ為の生贄にされちゃたのかな。
2人もなんとなく理解したのかな・・・。
どうせ死ぬなら綺麗に楽に死にたいな・・・。
多分無理かもだけど・・・。

指定の場所に着いて辺りを調査したけれど、何もなかった。

日もくれてきたので私達は野営の準備を無言で始めた。
無駄だと思いながらモンスター避けの聖水を撒いたりしてみた。
似たよな境遇の私達はやはり今回の依頼の事情に気づいていた。

結局絶望の未来を捨てたと思っていたけど、辿り着いた未来も絶望だっただけ。

最後の晩餐中にアニスちゃんが何かを感じとった。

「・・・皆警戒!!!」

アニスちゃんの言葉で素早く動き陣形を組む。

「だれ!?あなたは何者なの!!」

何者かは茂みから姿を現すと何か喋りかけてきた。
何者かはニンゲンっぽいけれど、所々漆黒の鱗で覆われていた。

「□□□□□□□□□□□」
何かをいっていたけど敵意はないみたい・・・?。

「敵意□ナイ□□□□スル」
ゆっくりと同じ事をいってくれたみたい。
上級モンスターが使っている古代言語に似ているみたい。
昔少し勉強しておいて良かった~・・・。


警戒しながらアニスちゃんに敵意が無い事と、テイムしてみる事を伝えた。

「本当!?・・・テイムしてみるの?」

「うん・・・やってみるね」

恐怖に耐えながら何者かに近づいた。

「仲間になってくれますか?」

本当に言葉が通じているのかふあんだったけれど、
同意してくれているみたいなので、テイムしてみることにした。
私が展開した魔法陣はレジストされること無く受け入れられ、何者かの手の甲に文様が浮かび上がった。

「・・・!?本当にテイム出来たの!?」
「・・・うん。そうみたい・・・?」
「・・・!」

何者かはいきなり言葉が理解出来る様になったいたいで驚いているようだ。

「・・・あの?あなたのお名前は?」

「特に無い、みたいだ」

「そうですか・・・それじゃあドラゴニュート族みたいなので、ニュート・・・さんでどうでしょうか?」

「分かった」

「すご!!本当にテイム出来てるじゃん!」
「・・・良かった」

こうして私は神話の中でしか語られることのない伝説のドラゴニュート族?と契約してしまったみたい。

・・・全然実感がわかないけど。
でも、パスが繋がった影響の為か、自分の全身を巡る尋常じゃ無い魔力の奔流が感じられる事実が現実に引き戻してくれていた。
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