永久の独奏曲

不知火黒刃

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僕は高校生になった。
地域の人達から逃げるようになるべく遠い学校を選び入学を機に一人暮らしを決心した。
それでも不安と恐怖は拭えず、人と関わる事に疲れていた僕は高校生活の中でも極力人を避けていた。
時々、自分が殺した男の顔が夢に出てくる。その夢はいつもの事で、僕がスコップで殴りかかった後の母親の顔が歪み、僕の首を思い切り締めてくる。それは現実とは違うと思うがとてつもない恐怖に襲われる。
それと共にこみ上げる痛みはまるで自分の罪を体現したかのように苦しく、僕の心に突き刺さってくる。


その人の名前は姫神 逢。
の起こるずっと前。
いつも無邪気に庭を駆け回っていたあの頃…僕とずっと一緒にいてくれた女の子。とても優しくて、泣き虫で…そんな彼女が僕は放って置けなかった。
よく泥んこになるまで遊んだものだ。そんな日々がいつまでも続くと信じていた。
だがそんな日はすぐに過ぎ去った。
彼女の家が引っ越す事になったのだ。
彼女は泣きながら僕にそう言った。
僕は声が出なかった。泣きそうになるのを堪え、僕は荷物を積んだトラックと彼女の家の車の座席から泣きながら手を振る彼女を僕は静かに見送った。

そんな幼馴染とまさか高校で再会する事になるとは思いもせず、彼女から声を掛けられるまで気づきもしなかった。
同じクラスだった事にも意外だったが、まさか自分がそこまでクラスの人達に興味を持たなかったという事に驚いた。
それに姫神が声をかけてきたのは入学してから3週間が経った頃で、姫神の方も少し不安だったのだろう。こんな変わり果てた僕の姿を昔の僕と照らし合わせても、接点なんてほぼ無いのだろうから。そう、僕はもう別人なのだ。昔のように強く生きる事は出来ない弱者。
だが、そんな僕を見ても姫神は声をかけてくれた。そして僕だとわかった途端、再会できた喜びか彼女は泣いていた。

やめてくれ…その涙を見せないでくれ…僕は泣いて貰える程の人間じゃないんだ…そんな価値のある人間じゃない。あの時の僕はもういないんだ。
声にならない思いを僕はそう叫んだ。
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