溢れる愛は、どうやって?

甘栗

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プロローグ 旅行に行く!

ある高校生達の波瀾万丈な旅行のはじまり

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♣︎(笠井視点)
「ガタンゴトン……ガタンゴトン……」
電車の車輪が、レールの継ぎ目を通過する音が聞こえてくる。
電車に乗ると、必ずと言っていいほど聞く音。
突然だが、僕はこの音が好きだ。
なぜなら、この音を聞くと"自分は電車に乗っているんだな"と実感が出来るからだ。
そんな車輪の音に耳を澄ましていると、その音に混ざり、対面座席に座っている世羅と愛音の楽しそうな話し声が聞こえてきた。
因みに"世羅"と"愛音"とは、僕の小学校来の友達のことである。

「それでね!中也君がね!」"胸が高鳴って仕方ない"と伝わってくるような声のトーンで、愛音が世羅に話かけていた。

「ふーん……そうなのか……」
だが世羅は、そんな愛音に対して、心ここに在らず、という感じで適当に返事をした。
世羅はきっと、窓側の席なので、車窓から見える景色を眺めているのだろう。

「ちょっと!世羅っち!塩対応しないでよ!もぉー!」
そんな世羅に、愛音はプンスカ怒った。

(今日も平和だな……明日もこんな風に平和だと良いな……)

僕はそう思いつつ、世羅と同じように車窓から見える景色を眺めた。
同じ青でも空全体では微妙に濃淡が異なる青空、ふわんふわんと浮いているわたあめみたいな雲。
それらが仲春の、まだ微かに寒さが残っているが暖かい、ほんわかした雰囲気を醸し出していた。

(美しい景色だな……いや、美しい景色というか、"詩美"が似合う景色と言うべきかな……)

"詩美"が似合う風景に心を奪われていると、どこからか親子連れの賑やかな声が、耳に入ってきた。
声の感じからして、父親とその子供だろうか。

「わーい!」
子供がダッダッダッダッと足音を立てながら、電車の中を駆ける。

「こら!待ちなさい!電車の中で走るのは、端たないから止めなさい!」
走っている子供を注意している父親も走っているのだが、それはどうなのだろうか。
僕は、彼等の声を聞いていると、心中に微かに残っている子供時代の懐かしい思い出が蘇ってきた。
小学校の頃、世羅や愛音と走り回って遊んだりした記憶やゲームをして遊んだ記憶。
中学の時、今は亡き彼と親友になった記憶。
高校生の時……といっても、つい二週間ぐらい前までは高校生だったのだが、その時にとにかく金魚のフンのようにいつも付いてきて、ストーカー紛いのことをしてきた方見という男についての記憶。
まぁ、まだ僕は成人していないので、今も一応子供時代と言えば子供時代だというツッコミは、別に要らないだろう。
そんなことを考えているうちに、親子連れの彼等の声は、聞こえなくなっていた。
きっと、父親が息子を無理矢理捕まえて、自分達の席に戻っていったのだろう。
全く、この世は無情である。

「はぁ……」

ため息をついた僕は、無情関連で昨日の夜の出来事を思い出した。



*   *   *
「卒業……記念旅行?」

「あぁ、そうなんだ」

高校生活も終わりを告げ、大学生活が始まるまでの時間を持て余していた僕は、昨日の夜、突然LINEで来た卒業記念旅行の誘いを断るか否か迷っていた。
それは何故かというと、あの"高校生活最大の敵"こと方見が、その旅行に参加しているらしいからだ。
そんな感じで僕が迷っていると、世羅から通知が来た。

「どうする?笠井?別に強制はしないんだが……でも、お前が来てくれた方が、俺は嬉しいな……愛音と方見と俺だと、ツッコミ要因が足りないからさ……」

方見は、僕が一番断りづらいと思っている言い方で、答えを急かしてきた。

(まぁ、方見と関わらなければいい話か……)

浅はかな考えの昨日の僕は、

「うん、行くよ。」

と、二つ返事で応えた。
まさか次の日、電車で方見の隣の席に座ることになり、しつこく話しかけられ、挙句には僕の肩に頭を置いて寝られるとは思わずに。




♠︎(方見視点)
肩を枕にさせてもらっている男、彼の名は笠井という。
中性的な顔立ちで、いつも口数が少ない、無愛想な男である。
そして、そんな彼のことが影ながら好きなのが、私こと方見である。
今回の旅行に参加した理由が、「笠井が来るかもよ?」と世羅に言われたからだなんて、彼には口が裂けても言えない。
もし彼にそのことがバレたなら、世羅と一緒に解体されて肉屋に並ぶこと間違いないだろう。

まぁ、とにかくまとめると、私は笠井のことが好きなのだ、大好きなのだ。

因みに私は、何度も何度も笠井にアプローチをしようと試みたことがある。
だが私は、根本的に神出鬼没な彼に高校生活の中で全くと言っていいほど出会うことが出来なかった。
いや、むしろ彼が私を避けてたので、会えなかっただけと考えたことがあるが、それはきっと気のせいだろう。……気のせい……のはず。
ともかく、私は彼と、話せたことがほとんどと言っていいほど無い。とにかく無い。

そんな私だが、いつも彼を観察していて、おかしいなと思うことが多々ある。
例えば、彼はいつも、春夏秋冬問わず厚着を着ていることだ。
体育の時は流石に脱いでいたが、それ以外の時は、私服登校が売りの私達の高校の校風をこれでもかというほど享受して、いつも長袖長ズボンだった。
もちろん彼は、沖縄出身ではない。
正真正銘の京都生まれ京都育ちである。

因みに私は一度だけ、彼に年がら年中厚着をしている理由について尋ねてみたことがある。
その時の会話がこんな感じである。

「なぁ、笠井?なんでそんなに着込んでいるんだ?」

「……別に。着込みたいと思ったから、着込んでいるだけ」

「そっか……ありがとな」 

とまぁ、なんとも言えない無愛想な返事が返ってきただけで、結局、真相は闇の中へ消えていった。
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