溢れる愛は、どうやって?

甘栗

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壱 着いた旅館

古めかしい旅館とすれ違う二人

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♢(世羅視点)
電車を降りた俺達は、古びた駅の前で待っていた送迎バスに乗り、由緒がありそうな旅館に着いた。

「うわぁ!おっきい!旅行雑誌に載ってる旅館みたい!」

愛音が目をキラキラ輝かせながら呟いた。
俺はそんな愛音の呟きに「そうだなー」と粗雑に返し、方見達の方を見てみた。

方見達は、旅館の前にある庭の池の辺りで、何やら話していた。
俺は、少し二人の会話内容が気になったので、愛音が俺に、塩対応したことについてプンスカ怒っているのを無視して、二人の声に耳を澄ましてみた。

「なぁー無視は止めてくれよー」
これは……方見の声だろうか。安心と信頼の笠井の無視に対して、不満を言っている途中だろうか?

それに対して笠井は、敵対心剥き出しの声で、
「今、池の中を自由自在に動いている錦鯉を見ているから、静かにしてくれない?」
と、あからさまな作り笑顔で言った。

「えぇ……」
方見は、十二分と言っていいほどの感嘆の声を漏らした。
……心の中で俺は、「頑張れ!方見!」と応援した。
因みに愛音と俺は、方見は笠井のことが好きなのを
知っている。
但し、方見は俺達がその事を知っている事実を知らない。
全く、方見は笠井に一途なんだなと、俺はよく感心している。

その後、暫く旅館を見ていると、旅館の中から薄い紫色を基調とした着物を着た女性が、俺の方へやってきた。
見た目から考えて、若女将だろうか。
彼女は、俺の前に着くと足を止め、申しわけなさそうに何かを話し始めた。

「申し訳ありません!方見様!私共の手違いにより、方見様方のご予約が無かったことになっておりました。
そこでご提案させて頂くのですが、ここから少しご足労頂いた所にVIP専用の別館がございます。
私共からの謝罪の意味も込めて、そちらに無料で宿泊することが可能でございます。……方見様、どうなされますか?」

俺は若女将?からそう聞いて、どう応えようか迷ったが、とりあえず、他の三人に聞いてみようと思い、「はい、とりあえず他の3人に聞いてみます」と返事をした。

まず愛音は、まぁ予想的中だったのだが、「世羅っちに任せるです!」と答えた。
そして方見と笠井は、こちらも予想的中だったのだが、二人共「世羅に任せる」「世羅、頑張れ!」
と答えた。
つまり、満場一致で"世羅に任せた"という結果になった。

(こいつら……揃いも揃って……全く……)

俺は、自分の半ギレの心を自分で宥め、若女将に、 「別館でお願いします」と、話した。

すると若女将は、
「はい、分かりました。では、さっそく御案内致しますので、どうぞ、ご一緒にお越しください」
と、朗らかに言った。

それに対して愛音は、まるで幼稚園児が遠足に行く時に、保育士へ返事をする時のように、「はーい!」と、元気良く返事をした。

そして俺達は、山登りを始めた。



*   *   *
「重い……」
急にふらっと倒れた愛音を負んぶしているのだが、
一応"同級生"なので、中々体重が重い。
まぁ、持てるレベルではあるのだが。

「うーん……?」
愛音が、俺の背中で起きた。

「大丈夫か?」
自分で言うのもなんだが、優しい声のトーンで愛音に声をかけた。

「お客様、大丈夫でしょうか?」
若女将も同様に、優しい声のトーンで愛音に声をかけた。

する愛音は、
「うん、大丈夫なのです!心配してくれてありがとうなのです!」
と、元気そうに言い、俺をギュッと抱きしめてきた。

(っ!たあぁぁぁぁ!可愛すぎる!あざとすぎる!
愛音可愛いあざとい!)

……俺は心の中で半狂乱になりながらも、別館まで愛音を負んぶした。
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