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弐 突然の失踪
死にたがりの少年と泣き上戸の彼
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黒い薔薇の花言葉
「決して滅びることのない愛、永遠の愛」
♣︎(笠井視点)
僕は佐竹のお墓がある"毛糸崖"に来て、そのお墓の前に座り込んでいた。
……墓石の前には、黒い薔薇の花束が置かれている。これはきっと、佐竹の両親が置いていったものだろう。……僕は、黒い薔薇の花言葉を思い出し、なんだか切なく感じた。
……あの事件から三年。
僕と佐竹を誘拐して、佐竹を殺したと言っても過言ではない誘拐犯は、未だに捕まっていない。
そして僕はあの日からというもの、毎日眠ろうとする度に佐竹への罪悪感と自分に対しての嫌悪感に苛まれて、眠れなかった。
「もう、君無しで生きるのは嫌だよ……どうすればいいの?……ねぇ、佐竹……?」
……僕は虚ろな目をしながらそう呟き、彼の墓石の後ろにある毛糸崖の先っぽまで動き、崖下を覗いて見た。
「ヒュゥー……ヒュゥー……」
強い風が、音を立てて吹いている。
崖下には、木が生い茂った樹海が見えた。
(……あの日のここからの景色も、こんな景色だったな……)
……僕は、改めて決心した。
「佐竹……今、君の下に逝くからね……」
僕は立ち上がり、身体の体重を前にかける。
(さよなら……世羅、愛音……)
身体が、樹海へと落ちていく。
(佐竹……ごめんね……君が折角助けてくれた命なのに……でもこれが、僕の出した答えなんだ……)
ただ、ただ、身体が樹海へと落ちていく。
……その時だった。
「ダダダダ……ダッ!」
突然の足音と共に、誰かが僕の手を掴んだ。
「なんで……死のうとするんだよ!」
息を間断なくしながら、僕の手を掴んできたのは……なんと、あの高校生活最大の敵こと"方見"だった。
「どうして君がここを知っているの?……って、世羅達が教えたんだね……はぁ……とにかく、手を離して。君まで落ちてしまったら元も子もないだろ?
………………
って、なんで手を離さないの?君が僕を助けても、なにも得を得られないよ?……だからさ、早く離して」
そう僕が淡々と話すと、なんと方見は、涙を流し始め、熱が籠った声で怒ってきた。
「バカァ……バカァ!どうして自分の命を軽く見るの?そんな正論に見える言葉達で、自分が死んでいい理由を捏造しないで!苦しいなら、苦しいって、言ってよ!助けて欲しいなら、助けてって、言ってよ!確かに言いづらいかもしれないけどさ、結局、言わないと気持ちって、誰にも伝わらないんだよ!
察することなんて、よほど露骨じゃないと出来ないんだよ!」
「もし眠れないなら、俺が君の横で一緒に起きていてあげる。泣きたいけど泣けないような悲しみが君を襲うなら、その間、ずっと君を抱きしめてあげる。だから……さ……死なないでくれ……頼むよ……」
「……」
……僕の目から涙が、ポロポロと流れてきた。
あの日から流していなかったはずの涙が、目から溢れてきて、頬を流れていく。
彼の……方見の言葉を聞いた時、今一番欲しかった言葉をもらえたような気がしたからだろうか。
鉛のように重かった心が、水素のように軽くなった。
……僕は涙を流している方見に、一言だけ返事をした。
「ありがとう……」
ふんわりとしたその声は、静かな森の中に響いた。
そして僕は、その言葉の続きを言おうとしたが、意識が朦朧としてきたため、言うことが出来なかった。
(あ、ダメだ……もう……意識が……)
「ちょっ……重い!俺まで落ちるっ!」
「笠井!」
「笠井くん!」
方見の焦る声に混じって、愛音と世羅の声が、遠くから聞こえた。
僕の視界は、真っ黒になった。
「決して滅びることのない愛、永遠の愛」
♣︎(笠井視点)
僕は佐竹のお墓がある"毛糸崖"に来て、そのお墓の前に座り込んでいた。
……墓石の前には、黒い薔薇の花束が置かれている。これはきっと、佐竹の両親が置いていったものだろう。……僕は、黒い薔薇の花言葉を思い出し、なんだか切なく感じた。
……あの事件から三年。
僕と佐竹を誘拐して、佐竹を殺したと言っても過言ではない誘拐犯は、未だに捕まっていない。
そして僕はあの日からというもの、毎日眠ろうとする度に佐竹への罪悪感と自分に対しての嫌悪感に苛まれて、眠れなかった。
「もう、君無しで生きるのは嫌だよ……どうすればいいの?……ねぇ、佐竹……?」
……僕は虚ろな目をしながらそう呟き、彼の墓石の後ろにある毛糸崖の先っぽまで動き、崖下を覗いて見た。
「ヒュゥー……ヒュゥー……」
強い風が、音を立てて吹いている。
崖下には、木が生い茂った樹海が見えた。
(……あの日のここからの景色も、こんな景色だったな……)
……僕は、改めて決心した。
「佐竹……今、君の下に逝くからね……」
僕は立ち上がり、身体の体重を前にかける。
(さよなら……世羅、愛音……)
身体が、樹海へと落ちていく。
(佐竹……ごめんね……君が折角助けてくれた命なのに……でもこれが、僕の出した答えなんだ……)
ただ、ただ、身体が樹海へと落ちていく。
……その時だった。
「ダダダダ……ダッ!」
突然の足音と共に、誰かが僕の手を掴んだ。
「なんで……死のうとするんだよ!」
息を間断なくしながら、僕の手を掴んできたのは……なんと、あの高校生活最大の敵こと"方見"だった。
「どうして君がここを知っているの?……って、世羅達が教えたんだね……はぁ……とにかく、手を離して。君まで落ちてしまったら元も子もないだろ?
………………
って、なんで手を離さないの?君が僕を助けても、なにも得を得られないよ?……だからさ、早く離して」
そう僕が淡々と話すと、なんと方見は、涙を流し始め、熱が籠った声で怒ってきた。
「バカァ……バカァ!どうして自分の命を軽く見るの?そんな正論に見える言葉達で、自分が死んでいい理由を捏造しないで!苦しいなら、苦しいって、言ってよ!助けて欲しいなら、助けてって、言ってよ!確かに言いづらいかもしれないけどさ、結局、言わないと気持ちって、誰にも伝わらないんだよ!
察することなんて、よほど露骨じゃないと出来ないんだよ!」
「もし眠れないなら、俺が君の横で一緒に起きていてあげる。泣きたいけど泣けないような悲しみが君を襲うなら、その間、ずっと君を抱きしめてあげる。だから……さ……死なないでくれ……頼むよ……」
「……」
……僕の目から涙が、ポロポロと流れてきた。
あの日から流していなかったはずの涙が、目から溢れてきて、頬を流れていく。
彼の……方見の言葉を聞いた時、今一番欲しかった言葉をもらえたような気がしたからだろうか。
鉛のように重かった心が、水素のように軽くなった。
……僕は涙を流している方見に、一言だけ返事をした。
「ありがとう……」
ふんわりとしたその声は、静かな森の中に響いた。
そして僕は、その言葉の続きを言おうとしたが、意識が朦朧としてきたため、言うことが出来なかった。
(あ、ダメだ……もう……意識が……)
「ちょっ……重い!俺まで落ちるっ!」
「笠井!」
「笠井くん!」
方見の焦る声に混じって、愛音と世羅の声が、遠くから聞こえた。
僕の視界は、真っ黒になった。
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