溢れる愛は、どうやって?

甘栗

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陸 それぞれの甘苦い夜

生きるとは一体、何なのだろうか

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♢(世羅視点)
 あの出来事のあと、精神的に危うい雰囲気をしていた愛音とまだ大丈夫だった俺はとりあえず旅館に、笠井と方見は病院に行った。
 旅館の部屋では、愛音を俺の膝で膝枕させていたが、愛音は焦点のあっていない目をしており、そうかと思ったら急に泣き出したりして、まるで壊れた機械のようだった。
  一体俺は愛音に、どう接してあげればいいのだろうか。そもそも、愛音が背徳感というか罪悪感を持ってしまったのは、俺があのタンクトップのジジィを撃たれてでも殴り、気絶させなかったからではないか。そんなことを考えると、俺も愛音のようにおかしくなりそうだった。
……でも、笠井はまだ生きているけど、多分、生きるってそういうことだと思う。
 日本人という生物は、昔と違い、病気で死んだとしても、普通に生きていて、トラに食われて死ぬような事は、こんな安全な日本のなかでは、 ほとんどない。なので日本人は、安全に慣れてしまっている。"人が死ぬ"ということに対して、耐性が皆無と言っても過言じゃないほどない。

"生きること"と"生き残ること"は、違うのだ。

 本来人間は、後者をするべきなのだ。しかし、確かな安全を持ってしまうと、人は前者を選んでしまう。
……ただ、人とは愚者なのだ。愚かな生物なのだ。
かの"文学少女"もそう言っていた。
 過去を嘆いたとして、それは希望に繋がるのか。
 未来を嘆いたとして、それは希望に繋がるのか。
 人は何かしらの不具合を持って生まれてくる。
 だからこそ、自らの愚かな行為に対して罪悪感を持ったとしても、その愚かな行為は仕方ないことなのだ。
 むしろ、その愚かな行為が、世界を七色どころかこの宇宙にあるだけの星の数だけの色で、彩っているのだ。芸術などがいい例だ。
……ただ、そんなことを今の愛音に言っても無駄だと俺は思う。言ってしまうとむしろ、逆効果になると思う。
……分かった。俺に出来ることは、何も言わずに愛音を膝枕して、頭を優しく撫で、ゆっくりと愛音を睡眠に導いてあげることだけだ。
 一眠りしたら、多分、少しだけ落ち着くだろう。
その時に、この話をしてあげよう。
 柔らかい声で。優しい声で。甘い声で。耳に気持ちいい声で。頭を優しく撫でながら。
 俺はゆっくりと、ゆっくりと、愛音が俺の膝の上で眠るまで、頭を撫で続けた。
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