わんこな先輩とツンデレな僕の禁断の恋

甘栗

文字の大きさ
3 / 16
先輩の秘めた思い!(新バージョン)

先輩の悩み

しおりを挟む
もう季節は春を過ぎ、仲夏になっていた。
五月雨がザァザァと降り、雨粒がコンクリートにスッーと染みていた。

相変わらず栗色の椅子は軋み、時折、ギィ ギィ ギィと音を鳴らしていた。

「"蜘蛛の糸"っていいですよね……児童向け小説とは言え、何か感じさせるものがありますよね……人間の醜態的一面が垣間見えます……」
僕は、繊細な青年になったような気持ちで
、自分に酔いながら言った。

「"蜘蛛の糸"ねぇ……銀色のか細い蜘蛛の糸に一体、どうやったら人が登れるんだろうねぇ……」
先輩は、考える人のポーズをしながら、呆れたような顔で言った。

「メタイ所突いちゃダメですよ、先輩。
そこはご都合主義なんですから。神様が垂らした糸なんですから、そう簡単には切れない設定なんですよ」
僕は先輩に、ご都合主義について語った。
すると先輩は、「まぁ、そうなるか……」
とすぐに納得した。




「ねえ、先輩?」
「んー?何?」
「先輩にお願いがあるんですよ」
「お願い?できる範囲なら、先輩なんでもするよ?」
先輩は、目を大きくしながら言った。

「えっとですね……こので"恋愛小説大賞"に何か文芸部から出しませんか?
この大賞を企画した出版社はあの、×川文庫ですよ!?」
僕は内ポケットから出した、クシャクシャのポスターを先輩に見せ、先輩の顔を伺ってみた。

「えー……どうせ受賞しないし、諦めた方がイイヨ、ウン、ウン!あの天下の×川文庫でしょ?無理無理、どうせ受からないって!」
先輩は、明らかに動揺していた。

「先輩……何か隠してません?」
僕はちょっとだけ高圧的に、先輩に訊いてみた。

「カクシテナイヨ、ナニモカクシテナイヨ!……むぎゅう!」
僕は先輩のおでこに、パチンとデコピンをした。

「先輩!先輩が嘘をついているのは火を見るより明らかですよ!さっさと白状してください!先輩は定期的に我慢していることをぶちまけないと、学校に来なくなるでしょ?五月に一度だけ先輩が何か重要なことを隠して、学校に来なくなったの忘れてませんからね!
全く……あの時は、僕が放課後に先輩の家に一週間通って、やっとの思いで先輩を家から引きずり出したんですから……
とにかく、さっさと白状してください!先輩!」

……先輩は軽く溜息をつき、話し始めた。
「えっと……先輩は一度、"神様の火花"って本を書いたんだけど、その本が確か……一週間で百万部?売れたんだ。
でもそのせいで先輩は、ある事件で両親を無くしてね……だからもう……執筆したくないんだ……」
先輩は、"ある事件"について思い出したのか、今にも泣きだしそうな顔をした。

「あの……あの……先輩、なんだかすいません……思い出したくないようなこと、思い出させちゃって……」
僕は、しどろもどろしつつも、ぺこりと頭を下げて、謝った。

「だ、大丈夫だよ!こっちこそ、なんだか暗い雰囲気にしちゃってごめん!」
先輩は謝られる側なのに、なぜか、ぺこりと謝ってくれた。

その後、僕が謝り、先輩が謝り、僕が謝り、先輩が謝り……という行為を、日が暮れるまでやっていた。




帰る直前、校門の前で先輩に、こう頼んだ。
「先輩……あの……烏滸がましい(おこがましい)ことだと思うんですが……お願いします!僕に、小説の書き方を教えてください!お願いします!」

……先輩は少し困ったような顔をしたが、「うん、いいよ」と二つ返事で了承してくれた。

僕は先輩に、「ありがとうございます!ありがとうございます!」と、何度もお礼を言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...