竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

12.山奥の神社

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次の日。午前10時頃、とある山の麓のコンビニに、1台の車が止まった。

「結局起きなかったね、リュカ」

「うん……」

「とりあえずここで弁当買ってから例の神社、探すか」 

「あ、じゃあゆあ達は先にのぼってるから丸君よろしく」

諦めモードではいはい、と返事をした一。ゆあと咲夜は後部座席から降りるなり山へとむかう。人気のない、寂れた山に女2人がトートバッグ1つを手にして何をするのだろうと、通りすがりのひとが不思議そうに見ていた。

「大丈夫だよ、咲夜。本人がそこへ行けばなんとかなるって言ってたんでしょ?」

「……そうだね」

たった2ヶ月、されど2ヶ月。咲夜がフィルと過ごした時間、ほぼ常にそばに居て元気に話しかけてきた存在がずっと眠っているのはすでに耐え難い事となっていた。

毛布をつめたトートバッグの中で眠るフィル。その姿を再度確認した咲夜はバッグをしっかりと抱え直し、キッと前を向いて山を登り始めた。


***   ***


「……ふぅ、ここかな」

1時間後、最後の石段をのぼった咲夜は人気の無い神社を前に小さく息を吐いた。それから少し遅れて、ゆあが息を切らして咲夜に追いつく。

「っはぁ、はぁ……つかれたぁっ!」

「そう?」

「そう!」

体力が無いことに自信があるのに、体力自慢のゆあの方が疲れていることに疑問を覚える咲夜。その後10分程して追いついた一もまた息を切らしていて、さらに首を捻る。

「早くしよう。女の人を探すんだよね」

「うん。最悪、お社の中も覗けって」

「そ、そうなのか……」

そんな罰当たりな真似はしたくない、と3人手分けして神社の敷地内をくまなく探す。しかし女の人どころか生き物の気配さえ無く、いっそ不気味。そんなこんなで、あとはお社を残すのみとなってしまった。

「本当に、開けていいんだね?」

「うん、フィルはそう言ってたよ」

「……はぁ、日本人として勝手に開けるべきじゃないのは分かっているが」

ため息をつきながら一が横目でみた咲夜は、落ち着かずソワソワと焦っていた。ゆあもそんな咲夜を気にかけ、いつもより熱心に声をかけている。

「……よし、開けるか」

「だね」

「うん」

覚悟を決めた一がお社の扉に手をかけて開いた、その瞬間。耳が痛いほどの静寂が途切れ、虫や風の音、動物の確かな息遣いが3人をつつんだ。

「へっ!?」

「なに、これ」

「わぁ……」

「「ようこそいらっしゃいました!!」」

異様な静けさが消え、寂れた苔だらけの神社が隅々まで手入れされて美しくなり。小さなお社が巨大な屋敷サイズに変化し、その入口で2人の子供が咲夜達を快く招き入れる。

あまりに急で、大きすぎる変化に流石に頭がついて行かない3人。そんな3人を心配して、出迎えてくれている少年2人がそれぞれ一つと、三つの目で持って顔を見つめる。

「ま、待て待て、意味わかんないっつぅの!!」

氷のように固まって動かない咲夜とゆあを気に止めず、叫んだ一の声。しかしその声はすっかり賑やかになった森の中へと虚しく消えていった。
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