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本編
45.ゆあと一、初戦闘をする
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視点:ゆあ
買ったばかりのダガーを握りしめる。実はこの世界に来てから、やけに体が軽く感じていた。元々運動神経も悪くなかったけど、今なら50メートル走も6秒ぐらいで走れそう。
「ユアさん、あなたは先手必勝です!ゴブリンは知能が低いので、ユアさんのスピードにはついてこれないはずです!」
後ろから、イトの声。そう言われたら動くしかない。地を蹴って、勢いよく前方に飛び出す。ゴブリンはまだ、イトに飛ばされたショックから立ち直ったばかり。
そしてその隙を利用しつつ、イトの言うスピードを生かせる戦い方は?……背後から喉を掻き切ればいいかな。でも横から回るのは面倒。
……さて。
「(うん、よし。いける)」
ここは異世界。体だって軽い。普通はちょっと無理のある動きでも、出来ると思う。ゴブリンの身長は120センチと低い上に、ひどい猫背。跳び箱と、一緒でしょ?
「よっ、と!」
「ギ?」
ゴブリンの手前で、跳ぶ。ちょうどいい位置にゴブリンの頭があるから、そこを支えにして開脚跳び。スタッと危なげなくゴブリンの背後に着地。
頭に手を置いた時、伝わってきた何かが砕ける感触。それから、ゴキリという鈍い音。着地した後、華麗に喉を切るつもりだったけど……。どうやらその必要はなさそう。
「ユアさん、お見事です!」
「ありがとう、イト!」
「おーいゆあ、こっち終わったぞ!大丈夫かー?」
「うん、大丈夫ー」
「……って首の骨折れてるし。何した?」
「んー……これと言って何もしてないかな?」
小首を傾げてそう答えたら、深いため息が返ってきた。でも今回ばかりは呆れられる理由ないと思うんだよね!だって丸君もゴブリンを真っ二つに両断してるし。
「丸君こそ、何したの」
「俺?俺はな……」
視点:一
イトの魔法で飛ばされたゴブリンがべチャリと地に落ち、フラフラ立ち上がるのを油断なく観察する。一応役割はタンクだが、今あるのは腕につけるタイプの盾と振れるか怪しいサイズの大剣。
「ハジメさん、まずは向かってくる敵の恐怖に耐えて下さい。目いっぱい引き付けて、そこを一撃で仕留めるのです」
「了解っ」
しっかりと立って、荒削りの棍棒を握りしめたゴブリン。そのまま、それを大きく振りかぶって一直線に突っ込んできた。
見ていたら怖くなるので棍棒から目を離すと、一瞬だがどんよりとした目を覗き込んでしまった。その目にある純粋な怒りと殺意が、俺を硬直させる。
……ただ、怖いと思った。人であろうと動物であろうと、殺意などとはかけ離れた平和な日本にいたおかげで、初めて向けられるその視線に恐怖した。だが、それでもみすみす殴られてやるつもりもない。
「……。……っ、らぁ!」
棍棒が俺の頭に直撃する前に、剣を力任せに振る。結構な勢いと、力が加わった剣の腹が、ゴブリンの腹に当たり。手に伝わった肉を引き裂くその感覚は決して気持ちのいいものではない。
ただその手応えは一瞬で、ふと見れば上半身と下半身に分かれて地面に転がるゴブリンの死体があった。初戦を苦もなく終えれた、というのは嬉しいが……。
「この返り血だけはいただけないな」
帰ったら洗濯か。服についた返り血を見て俺は思わずげんなりしてしまう。そしてゆあの方も無事に終わったのを見て、話をする。
ただ、呑気にしていられたのはそこまでだった。
「っ、ユアさん、ハジメさん!」
イトの慌てた声に、反応するより早く。ガツンと後頭部に衝撃が来た。目の前に星が散って、でも耐えた。しかしすぐに二撃目。
意識がブツりと途切れる直前、倒れるゆあとイトキトの姿を見たような気がした。
買ったばかりのダガーを握りしめる。実はこの世界に来てから、やけに体が軽く感じていた。元々運動神経も悪くなかったけど、今なら50メートル走も6秒ぐらいで走れそう。
「ユアさん、あなたは先手必勝です!ゴブリンは知能が低いので、ユアさんのスピードにはついてこれないはずです!」
後ろから、イトの声。そう言われたら動くしかない。地を蹴って、勢いよく前方に飛び出す。ゴブリンはまだ、イトに飛ばされたショックから立ち直ったばかり。
そしてその隙を利用しつつ、イトの言うスピードを生かせる戦い方は?……背後から喉を掻き切ればいいかな。でも横から回るのは面倒。
……さて。
「(うん、よし。いける)」
ここは異世界。体だって軽い。普通はちょっと無理のある動きでも、出来ると思う。ゴブリンの身長は120センチと低い上に、ひどい猫背。跳び箱と、一緒でしょ?
「よっ、と!」
「ギ?」
ゴブリンの手前で、跳ぶ。ちょうどいい位置にゴブリンの頭があるから、そこを支えにして開脚跳び。スタッと危なげなくゴブリンの背後に着地。
頭に手を置いた時、伝わってきた何かが砕ける感触。それから、ゴキリという鈍い音。着地した後、華麗に喉を切るつもりだったけど……。どうやらその必要はなさそう。
「ユアさん、お見事です!」
「ありがとう、イト!」
「おーいゆあ、こっち終わったぞ!大丈夫かー?」
「うん、大丈夫ー」
「……って首の骨折れてるし。何した?」
「んー……これと言って何もしてないかな?」
小首を傾げてそう答えたら、深いため息が返ってきた。でも今回ばかりは呆れられる理由ないと思うんだよね!だって丸君もゴブリンを真っ二つに両断してるし。
「丸君こそ、何したの」
「俺?俺はな……」
視点:一
イトの魔法で飛ばされたゴブリンがべチャリと地に落ち、フラフラ立ち上がるのを油断なく観察する。一応役割はタンクだが、今あるのは腕につけるタイプの盾と振れるか怪しいサイズの大剣。
「ハジメさん、まずは向かってくる敵の恐怖に耐えて下さい。目いっぱい引き付けて、そこを一撃で仕留めるのです」
「了解っ」
しっかりと立って、荒削りの棍棒を握りしめたゴブリン。そのまま、それを大きく振りかぶって一直線に突っ込んできた。
見ていたら怖くなるので棍棒から目を離すと、一瞬だがどんよりとした目を覗き込んでしまった。その目にある純粋な怒りと殺意が、俺を硬直させる。
……ただ、怖いと思った。人であろうと動物であろうと、殺意などとはかけ離れた平和な日本にいたおかげで、初めて向けられるその視線に恐怖した。だが、それでもみすみす殴られてやるつもりもない。
「……。……っ、らぁ!」
棍棒が俺の頭に直撃する前に、剣を力任せに振る。結構な勢いと、力が加わった剣の腹が、ゴブリンの腹に当たり。手に伝わった肉を引き裂くその感覚は決して気持ちのいいものではない。
ただその手応えは一瞬で、ふと見れば上半身と下半身に分かれて地面に転がるゴブリンの死体があった。初戦を苦もなく終えれた、というのは嬉しいが……。
「この返り血だけはいただけないな」
帰ったら洗濯か。服についた返り血を見て俺は思わずげんなりしてしまう。そしてゆあの方も無事に終わったのを見て、話をする。
ただ、呑気にしていられたのはそこまでだった。
「っ、ユアさん、ハジメさん!」
イトの慌てた声に、反応するより早く。ガツンと後頭部に衝撃が来た。目の前に星が散って、でも耐えた。しかしすぐに二撃目。
意識がブツりと途切れる直前、倒れるゆあとイトキトの姿を見たような気がした。
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