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本編
65.「ならば、これに耐えて見せよ」
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「っ、ずいぶんなお出迎えだな!」
「一生の最後に我を見たこと、誇りに思うがいい」
会話が噛み合っていない、というよりお互いの言い分を無視している状態である。それでもフィルの大声は、咲夜達を我に返らせることが出来た。
炎を司る、黄金と紅の美しく気高い不死鳥。その誇り高い性格ゆえ人の前には滅多に姿を現さない、幻の存在。
その名の通り不死であり、何度でも復活する。そして人語を解し高い知能を持つため、∞ランク(討伐不可能)に相応しい。
「不死鳥から目を離すなよ!」
「うん!」
「俺が受ける攻撃は?」
「直接攻撃が来た時だな。朔!」
「あいきたっ!」
天井までは10メートル程。その8メートル辺りでホバリングしつつ、炎を小鳥に変えて攻撃してくる不死鳥。対して、その小鳥を避けて捌く4人。その中でゆあが身軽さを生かして不死鳥に近づく。
「小娘が。そう易々と我に近づけると思うな」
「もう近づいちゃったよ?」
そういいつつ下からナイフを投げるゆあ。不死鳥は完全に油断しており、その無防備な腹にナイフが刺さる……直前。不死鳥の体が一瞬にして炎に包まれ、消えた。
不死鳥が消えたせいでゆあのナイフは空を切るのみと思えたが、そのには先程までいなかった小鳥が居り。ナイフは小鳥を容赦なく貫き、炎の小鳥は四散すると共に大量の火の粉を撒き散らす。
「朔、下がれ!」
「「ゆあっ!?」」
火の粉によってゆあの姿が一瞬隠れた。その身を案じる咲夜達が叫ぶが、当の本人はすぐに火の粉の滝から抜ける。
「っ、あつぅ!……居場所交換とか聞いてないってぇ!」
そう毒づきつつも、軽い火傷を数箇所負ったのみで咲夜の近くまで下がるゆあ。その手にあるのは少し大きめのサイズのハンカチ。
ただのハンカチだが、顔を火の粉から守るには十分使えたらしい。ちりちりと所々焼け穴が見え、もう使えないだろうがゆあが気にしている様子は特にない。
そしてこの咄嗟の判断をし、実行してのける人物はそうそう居ないだろう。普通の人ならば何も分からず火の粉に皮膚を焼かれてしまうか、避けようと動き出そうとして火の粉を浴びるかだ。
「お主ら少しはやるのだな。我の眷属を差し向けて死ななかったのはお主らが初めてだ」
「それじゃさっさと外に出してくれ」
「ならば、これに耐えて見せよ」
討伐不可能と言うだけあって実力は咲夜達でも足元にも及ばない。だがその攻撃を躱す咲夜達は常軌を逸しているだろう。しかし、それでも限度はある。
例えばそう、不死鳥が姿を崩して炎になり魔力を総動員して視界を埋め尽くす炎の海が作り出された時とか。その波がじわりじわりと迫ってきている時とか。
「っ、【】」
咄嗟に魔法語を言うフィルだが、作り出された水は炎の熱であっという間に蒸発して消える。元々彼が得意なのは火属性であり、水属性ではないのだ。
「無理だ、転移石を使え!」
「あぁ!……使用!」
フィルの指示に従って一が石を握ってそう叫んだ。その手中で石がパキン、と割れて若干のタイムラグがあった後にその姿が掻き消える。
「「使用!」」
「しよ……あっ!」
「っ、ゆあ!」
カラン、と。暑さの中で汗ばんだゆあの手のひらから石が滑り落ちる。そのままコロコロと転がって炎に呑まれ、一瞬で炭化してしまう。しかしその直後、呆然とするゆあの手に、割れて転移する直前の石が押し付けられる。
「咲夜!?なん……!」
「ゆあ、頑張って」
にこりと笑んだ咲夜を一瞬見たゆあの姿が、消える。現状を打破する方法は、思いつかない。だから咲夜は迫り来る炎の壁をじっと無言で見つめた。
「ったく、サクヤは馬鹿だな」
「……フィル!」
その横にそっと寄り添うように立ち、呆れたように笑うのはフィル。咲夜がゆあに渡すのを見て、躊躇い無く自分の分を投げ捨てたのだ。本当は咲夜を帰したかったが、時間なかった。
二人はあまりに突然見えた死という存在を、ほとんど恐れずただ静かに感じる。そして炎が自分たちを呑み込むこの瞬間を、じっと待っていた。
「一生の最後に我を見たこと、誇りに思うがいい」
会話が噛み合っていない、というよりお互いの言い分を無視している状態である。それでもフィルの大声は、咲夜達を我に返らせることが出来た。
炎を司る、黄金と紅の美しく気高い不死鳥。その誇り高い性格ゆえ人の前には滅多に姿を現さない、幻の存在。
その名の通り不死であり、何度でも復活する。そして人語を解し高い知能を持つため、∞ランク(討伐不可能)に相応しい。
「不死鳥から目を離すなよ!」
「うん!」
「俺が受ける攻撃は?」
「直接攻撃が来た時だな。朔!」
「あいきたっ!」
天井までは10メートル程。その8メートル辺りでホバリングしつつ、炎を小鳥に変えて攻撃してくる不死鳥。対して、その小鳥を避けて捌く4人。その中でゆあが身軽さを生かして不死鳥に近づく。
「小娘が。そう易々と我に近づけると思うな」
「もう近づいちゃったよ?」
そういいつつ下からナイフを投げるゆあ。不死鳥は完全に油断しており、その無防備な腹にナイフが刺さる……直前。不死鳥の体が一瞬にして炎に包まれ、消えた。
不死鳥が消えたせいでゆあのナイフは空を切るのみと思えたが、そのには先程までいなかった小鳥が居り。ナイフは小鳥を容赦なく貫き、炎の小鳥は四散すると共に大量の火の粉を撒き散らす。
「朔、下がれ!」
「「ゆあっ!?」」
火の粉によってゆあの姿が一瞬隠れた。その身を案じる咲夜達が叫ぶが、当の本人はすぐに火の粉の滝から抜ける。
「っ、あつぅ!……居場所交換とか聞いてないってぇ!」
そう毒づきつつも、軽い火傷を数箇所負ったのみで咲夜の近くまで下がるゆあ。その手にあるのは少し大きめのサイズのハンカチ。
ただのハンカチだが、顔を火の粉から守るには十分使えたらしい。ちりちりと所々焼け穴が見え、もう使えないだろうがゆあが気にしている様子は特にない。
そしてこの咄嗟の判断をし、実行してのける人物はそうそう居ないだろう。普通の人ならば何も分からず火の粉に皮膚を焼かれてしまうか、避けようと動き出そうとして火の粉を浴びるかだ。
「お主ら少しはやるのだな。我の眷属を差し向けて死ななかったのはお主らが初めてだ」
「それじゃさっさと外に出してくれ」
「ならば、これに耐えて見せよ」
討伐不可能と言うだけあって実力は咲夜達でも足元にも及ばない。だがその攻撃を躱す咲夜達は常軌を逸しているだろう。しかし、それでも限度はある。
例えばそう、不死鳥が姿を崩して炎になり魔力を総動員して視界を埋め尽くす炎の海が作り出された時とか。その波がじわりじわりと迫ってきている時とか。
「っ、【】」
咄嗟に魔法語を言うフィルだが、作り出された水は炎の熱であっという間に蒸発して消える。元々彼が得意なのは火属性であり、水属性ではないのだ。
「無理だ、転移石を使え!」
「あぁ!……使用!」
フィルの指示に従って一が石を握ってそう叫んだ。その手中で石がパキン、と割れて若干のタイムラグがあった後にその姿が掻き消える。
「「使用!」」
「しよ……あっ!」
「っ、ゆあ!」
カラン、と。暑さの中で汗ばんだゆあの手のひらから石が滑り落ちる。そのままコロコロと転がって炎に呑まれ、一瞬で炭化してしまう。しかしその直後、呆然とするゆあの手に、割れて転移する直前の石が押し付けられる。
「咲夜!?なん……!」
「ゆあ、頑張って」
にこりと笑んだ咲夜を一瞬見たゆあの姿が、消える。現状を打破する方法は、思いつかない。だから咲夜は迫り来る炎の壁をじっと無言で見つめた。
「ったく、サクヤは馬鹿だな」
「……フィル!」
その横にそっと寄り添うように立ち、呆れたように笑うのはフィル。咲夜がゆあに渡すのを見て、躊躇い無く自分の分を投げ捨てたのだ。本当は咲夜を帰したかったが、時間なかった。
二人はあまりに突然見えた死という存在を、ほとんど恐れずただ静かに感じる。そして炎が自分たちを呑み込むこの瞬間を、じっと待っていた。
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