226 / 361
月の砂漠のかぐや姫 第224話
しおりを挟む
「どうされました、王柔殿」
王柔の声の調子が急に様子が変わったのに驚いた羽磋は、しっかりと体を起こして彼の方を見ました。王柔は川辺で駱駝と理亜とを集めて、何かをしているようです。
「王柔殿、何をなされているんですか。何かを探しているとか?」
「い、いえ、羽磋殿・・・・・・」
王柔は弱々しい声で答えました。今では彼は自分が何をしてしまったがわかっていて、それが何か悪いことを引き起こしはしないかと不安になってきていたのでした。
「あの、駱駝に水を飲ませているんです」
「ああ、そうですか。ありがとうございます、世話をしていただいて・・・・・・」
羽磋はまだ少し頭が働かない状態で、うまく状況を整理できませんでした。でも、王柔の話す内容が自分の心の中の何かに引っかかるような気がしました。それに、自分の耳に入ってきた王柔の声も、何かを心配しているようなとても心細いものに感じられました。
何だろう、何だろう。水。駱駝。水。飲む・・・・・・。光・・・・・・。
次の瞬間、羽磋の中で全てが繋がりました。
「ええっ。王柔殿。駱駝に川の水を飲ませたのですかっ。この川の水は、あの広い空間の水よりも青い光を放っている、つまり、精霊の力を強く含んでいるということなのにっ」
そうです。羽磋はあの広い空間にいるときでさえ、「青い光を放つ水には精霊の力が働いているから飲みたくない」と考えていました。この洞窟を流れている川の水は、その大空間に池のように溜まっていた水よりも青い光を強く放っていますから、精霊の力を強く含んでいると考えられます。それなのに、王柔はその水を駱駝に飲ませたと言っているのです。
驚きのあまり、羽磋は自分の調子が悪かったことも、ここが狭い洞窟の中であることも忘れて、大声を上げながら勢い良く立ち上がったのでした。
羽磋の上げた大声に驚いたのか、一心不乱に水を飲んでいた駱駝は頭を上げて羽磋の方に振り向きました。駱駝の口の周りは水に濡れてビショビショで、顎下から伸びた髭の先からは、水滴がぽつぽつと地面に垂れ続けていました。
「大丈夫か、何か変わった様子はないか」と見つめる羽磋の目と駱駝の目が合いました。交易路から落下した後は、駱駝には水もエサも与えられていませんでした。それでも駱駝は乾きと飢えに強いので大丈夫だという羽磋の考えのとおり、駱駝は胃の中のものを反芻してのんびりとしているように見えていたのですが、やはり水を与えられて喉の渇きを癒せれば嬉しいのでしょう。風と砂から目を守るために長く伸びたまつ毛の下で、駱駝の目はとても満足そうに光っていました。
その様子を見て、羽磋はホッと息を吐きました。
精霊の力が働いているこの青く輝く水を飲むと、何かとんでもないことが起きるのではないかと心配していたのですが、どうやら何ごとも起こらずに済みそうです。
「羽磋殿、すみません。お疲れのようだったので・・・・・・」
駱駝の横で手綱を握っている王柔が羽磋に謝りました。彼もこの青く輝く水には精霊の力が働いていると羽磋と話をしていたのを思い出していたので、それを駱駝に飲ましてしまったことが間違いだったかと心配になっているのでした。ただ、王柔自身は精霊の力の働きについてあまりは心配しておらず、むしろ彼が心配しているのはそれで羽磋が機嫌を損ねはしないかと言うことでした。
「いえ、こちらこそすみません。急に立ち上がって大声を出したりして。ちょっと心配をしていたことだったので、びっくりしてしまったんです。精霊の力ということで気にしすぎていたのかもし・・・・・・」
グウェエッ!
頭を掻きながら王柔に対して説明をする羽磋の言葉が、奇妙な鳴き声で遮られました。
「えっ、今の声は」
グヴェッ、グッ! グブゥ!
羽磋の言葉が再び鳴き声で遮られました。それは先ほどの声よりも、もっと高くもっと大きくなっていました。
グッ! ギュベェッ! グ、グッ! ウェウェッ! グッ! ブェッ!
その奇妙な大声は、呆然としながら羽磋が見つめる先、驚きのあまり固まってしまった王柔のすぐ横で上がっていました。それは、興奮したかのように大きく首を上下させながら、駱駝が上げているものでした。
「おいっ、どうしたっ。大人しくしろよっ」
引き綱を握っている王柔はなんとかして駱駝を大人しくさせようとしますが、興奮が鎮まる様子は全くありません。駱駝の近くにいた理亜は、羽磋の方に走って逃げました。羽磋は王柔に手を貸そうとしましたが、あまりに駱駝が激しく動くので近くに寄ることができませんでした。駱駝は急にどうしてしまったのでしょうか。つい先ほどは、心ゆくまで水を飲むことができて、満足そうにしていたというのに。
とうとう、駱駝は洞窟の奥へと走り出そうとしました。もちろん、大事な駱駝が逃げ出そうとするのを王柔は全力で止めようとします。でも、駱駝の走り出す力が強過ぎて、王柔は手綱を持ち続けることができませんでした。
王柔の声の調子が急に様子が変わったのに驚いた羽磋は、しっかりと体を起こして彼の方を見ました。王柔は川辺で駱駝と理亜とを集めて、何かをしているようです。
「王柔殿、何をなされているんですか。何かを探しているとか?」
「い、いえ、羽磋殿・・・・・・」
王柔は弱々しい声で答えました。今では彼は自分が何をしてしまったがわかっていて、それが何か悪いことを引き起こしはしないかと不安になってきていたのでした。
「あの、駱駝に水を飲ませているんです」
「ああ、そうですか。ありがとうございます、世話をしていただいて・・・・・・」
羽磋はまだ少し頭が働かない状態で、うまく状況を整理できませんでした。でも、王柔の話す内容が自分の心の中の何かに引っかかるような気がしました。それに、自分の耳に入ってきた王柔の声も、何かを心配しているようなとても心細いものに感じられました。
何だろう、何だろう。水。駱駝。水。飲む・・・・・・。光・・・・・・。
次の瞬間、羽磋の中で全てが繋がりました。
「ええっ。王柔殿。駱駝に川の水を飲ませたのですかっ。この川の水は、あの広い空間の水よりも青い光を放っている、つまり、精霊の力を強く含んでいるということなのにっ」
そうです。羽磋はあの広い空間にいるときでさえ、「青い光を放つ水には精霊の力が働いているから飲みたくない」と考えていました。この洞窟を流れている川の水は、その大空間に池のように溜まっていた水よりも青い光を強く放っていますから、精霊の力を強く含んでいると考えられます。それなのに、王柔はその水を駱駝に飲ませたと言っているのです。
驚きのあまり、羽磋は自分の調子が悪かったことも、ここが狭い洞窟の中であることも忘れて、大声を上げながら勢い良く立ち上がったのでした。
羽磋の上げた大声に驚いたのか、一心不乱に水を飲んでいた駱駝は頭を上げて羽磋の方に振り向きました。駱駝の口の周りは水に濡れてビショビショで、顎下から伸びた髭の先からは、水滴がぽつぽつと地面に垂れ続けていました。
「大丈夫か、何か変わった様子はないか」と見つめる羽磋の目と駱駝の目が合いました。交易路から落下した後は、駱駝には水もエサも与えられていませんでした。それでも駱駝は乾きと飢えに強いので大丈夫だという羽磋の考えのとおり、駱駝は胃の中のものを反芻してのんびりとしているように見えていたのですが、やはり水を与えられて喉の渇きを癒せれば嬉しいのでしょう。風と砂から目を守るために長く伸びたまつ毛の下で、駱駝の目はとても満足そうに光っていました。
その様子を見て、羽磋はホッと息を吐きました。
精霊の力が働いているこの青く輝く水を飲むと、何かとんでもないことが起きるのではないかと心配していたのですが、どうやら何ごとも起こらずに済みそうです。
「羽磋殿、すみません。お疲れのようだったので・・・・・・」
駱駝の横で手綱を握っている王柔が羽磋に謝りました。彼もこの青く輝く水には精霊の力が働いていると羽磋と話をしていたのを思い出していたので、それを駱駝に飲ましてしまったことが間違いだったかと心配になっているのでした。ただ、王柔自身は精霊の力の働きについてあまりは心配しておらず、むしろ彼が心配しているのはそれで羽磋が機嫌を損ねはしないかと言うことでした。
「いえ、こちらこそすみません。急に立ち上がって大声を出したりして。ちょっと心配をしていたことだったので、びっくりしてしまったんです。精霊の力ということで気にしすぎていたのかもし・・・・・・」
グウェエッ!
頭を掻きながら王柔に対して説明をする羽磋の言葉が、奇妙な鳴き声で遮られました。
「えっ、今の声は」
グヴェッ、グッ! グブゥ!
羽磋の言葉が再び鳴き声で遮られました。それは先ほどの声よりも、もっと高くもっと大きくなっていました。
グッ! ギュベェッ! グ、グッ! ウェウェッ! グッ! ブェッ!
その奇妙な大声は、呆然としながら羽磋が見つめる先、驚きのあまり固まってしまった王柔のすぐ横で上がっていました。それは、興奮したかのように大きく首を上下させながら、駱駝が上げているものでした。
「おいっ、どうしたっ。大人しくしろよっ」
引き綱を握っている王柔はなんとかして駱駝を大人しくさせようとしますが、興奮が鎮まる様子は全くありません。駱駝の近くにいた理亜は、羽磋の方に走って逃げました。羽磋は王柔に手を貸そうとしましたが、あまりに駱駝が激しく動くので近くに寄ることができませんでした。駱駝は急にどうしてしまったのでしょうか。つい先ほどは、心ゆくまで水を飲むことができて、満足そうにしていたというのに。
とうとう、駱駝は洞窟の奥へと走り出そうとしました。もちろん、大事な駱駝が逃げ出そうとするのを王柔は全力で止めようとします。でも、駱駝の走り出す力が強過ぎて、王柔は手綱を持ち続けることができませんでした。
0
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
異世界でカイゼン
soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)
この物語は、よくある「異世界転生」ものです。
ただ
・転生時にチート能力はもらえません
・魔物退治用アイテムももらえません
・そもそも魔物退治はしません
・農業もしません
・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます
そこで主人公はなにをするのか。
改善手法を使った問題解決です。
主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。
そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。
「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」
ということになります。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる