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月の砂漠のかぐや姫 第216話
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駱駝の声は王柔の制止を振り切って走って逃げだした時と同様に激しく、何かに怯えているかのような声でした。そして、何度も繰り返されるその声はものすごい勢いで大きくなってきていました。さらに、ドドッドドドッと駱駝の脚が地面を蹴る音さえもが、洞窟中に響くようになってきました。
「王柔殿、あぶないっ。逃げてっ」
「うわっ、理亜っ」
青い光の塊の中から茶色の何かが出てきたかと思うと、あっという間に大きくなりました。一度は逃げ出した駱駝が、羽磋たちのところまで戻ってきたのです。でも、それはトボトボと歩いて主人の元へ戻って来たのではなく、まるでサバクオオカミにでも追いかけられているかのように、洞窟の奥から羽磋たちの方へと全力で走りながら戻って来たのでした。
グボッ、ブオオオッ!
駱駝の悲鳴のような声が、羽磋と王柔の正面から放たれました。どうやら、駱駝には主人の元で立ち止まる気など全く無いようでした。駱駝のカッと開かれた目と力強く地面を蹴る前足から発せられる圧力が、ブワッと二人に襲い掛かりました。
咄嗟に羽磋は王柔の肩を押すと、自分はその場から飛び退って洞窟の岩壁に貼り付きました。羽磋に肩を押された王柔は理亜の方へ急いで走り、彼女を洞窟の端の方へ寄せて自分の身体で包むようにしました。
ビョオオウ! シュオオオッ!
これまでに感じたことのないほどの強い風が、二人の横を吹き抜けました。その後で、風が舞いあげた細かな砂粒が二人の身体にぶつかってきました。その風とは、洞窟の奥の方からやって来て全速力で二人の横を走り抜けていった、あの駱駝でした。
洞窟の端で小さくなって駱駝の突進をかわした二人がようやく体を動かせるようになったのは、しばらく時間が経ってからでした。それがあまりに突然で、しかも前方から大黄な茶色の岩がぶつかってきたような恐ろしい出来事だったので、心が落ち着きを取り戻すまでに時間が必要だったからでした。
「一体、なんだったんでしょう。羽磋殿」
危うく自分たちを踏み潰すところだった駱駝が走り去っていった洞窟の先の方を見ながら、驚いた様子で王柔は羽磋に尋ねました。王柔が見つめているのは自分たちがこれまでに歩いてきた方向で、そちらに向けてずっと進んでいけば、やがてあの大空間に戻れるはずでした。
自分たちの横を駆け抜けた後も駱駝はずっと走り続けていたようで、しばらくの間は洞窟の奥の方から駱駝が上げる悲鳴のような声と激しく地面を蹴る蹄の音が王柔たちの耳にも聞こえ続けていましたが、それも段々と小さくなっていき、今では全く聞こえなくなっていました。
「いえ、駱駝がどうして戻ってきたのかは僕にもわかりません。ですが、なにか恐ろしい獣にでも追われていたのか、悲鳴のような声を上げながら走っていきましたね」
羽磋は貼り付いていた壁から離れて、王柔の近くまでやってきました。彼は王柔と同じように駱駝の走っていった先を見ると、次に駱駝が走ってきた方、つまり、自分たちがこれから進もうとする先の方を見ました。一体駱駝が何に怯えていたのか、それが気になったからでした。彼らが進む先は、足元を流れるほのかに青く光る川が流れていく先でもあり、暗闇の中でボウッと浮かぶ青い光の塊のようになっていましたが、その光以外には何も見て取ることはできませんでした。
洞窟の先の方の青い光の塊をじっと見ていると、羽磋は自分の心の中に「怯え」や「臆病」がまた芽を出して来るのを感じました。彼は慌てて、その青い光の塊から目をそらしました。何故だかはわかりません。でも、洞窟の前方の青い光を見ていると、「この洞窟から本当に出て行けるのだろうか」という不安や、「この先に何か恐ろしいものがいるかもしれない」という怯えが心の中に浮かんでくるのでした。
駱駝が戻ってくる前に羽磋が前方の青い光の輝きを見ていて気分が悪くなった時も、その様な感情が彼の心の中に沸き立っていました。その時は今よりも長くその光を見つめていたからか、この先についての不安や恐怖だけではなく、過去の思い出したくない哀しい出来事までもが心の中に蘇ってきて、彼を傷つけていたのでした。
青い光の輝き、それに何か秘密があるのかも知れません。
大空間から伸びる二つの洞窟のどちらに入るかを考えていたときに羽磋が調べたところによると、青い光の輝きが強い洞窟の方が精霊の力が強いことがわかっていました。このことから考えると、前方の青い光の輝きの塊や足元に流れる川の水のほのかな青い輝きは精霊の力の現れで、駱駝があのような状態になったのも、その川の水を飲むことによって精霊の力を体内に取り込んだことが原因であるのかもかもしれません。ただ、精霊の力が必ず人に良いことをもたらすとは限りません。ひょっとしたら、青い光の輝きは……。
「王柔殿、あぶないっ。逃げてっ」
「うわっ、理亜っ」
青い光の塊の中から茶色の何かが出てきたかと思うと、あっという間に大きくなりました。一度は逃げ出した駱駝が、羽磋たちのところまで戻ってきたのです。でも、それはトボトボと歩いて主人の元へ戻って来たのではなく、まるでサバクオオカミにでも追いかけられているかのように、洞窟の奥から羽磋たちの方へと全力で走りながら戻って来たのでした。
グボッ、ブオオオッ!
駱駝の悲鳴のような声が、羽磋と王柔の正面から放たれました。どうやら、駱駝には主人の元で立ち止まる気など全く無いようでした。駱駝のカッと開かれた目と力強く地面を蹴る前足から発せられる圧力が、ブワッと二人に襲い掛かりました。
咄嗟に羽磋は王柔の肩を押すと、自分はその場から飛び退って洞窟の岩壁に貼り付きました。羽磋に肩を押された王柔は理亜の方へ急いで走り、彼女を洞窟の端の方へ寄せて自分の身体で包むようにしました。
ビョオオウ! シュオオオッ!
これまでに感じたことのないほどの強い風が、二人の横を吹き抜けました。その後で、風が舞いあげた細かな砂粒が二人の身体にぶつかってきました。その風とは、洞窟の奥の方からやって来て全速力で二人の横を走り抜けていった、あの駱駝でした。
洞窟の端で小さくなって駱駝の突進をかわした二人がようやく体を動かせるようになったのは、しばらく時間が経ってからでした。それがあまりに突然で、しかも前方から大黄な茶色の岩がぶつかってきたような恐ろしい出来事だったので、心が落ち着きを取り戻すまでに時間が必要だったからでした。
「一体、なんだったんでしょう。羽磋殿」
危うく自分たちを踏み潰すところだった駱駝が走り去っていった洞窟の先の方を見ながら、驚いた様子で王柔は羽磋に尋ねました。王柔が見つめているのは自分たちがこれまでに歩いてきた方向で、そちらに向けてずっと進んでいけば、やがてあの大空間に戻れるはずでした。
自分たちの横を駆け抜けた後も駱駝はずっと走り続けていたようで、しばらくの間は洞窟の奥の方から駱駝が上げる悲鳴のような声と激しく地面を蹴る蹄の音が王柔たちの耳にも聞こえ続けていましたが、それも段々と小さくなっていき、今では全く聞こえなくなっていました。
「いえ、駱駝がどうして戻ってきたのかは僕にもわかりません。ですが、なにか恐ろしい獣にでも追われていたのか、悲鳴のような声を上げながら走っていきましたね」
羽磋は貼り付いていた壁から離れて、王柔の近くまでやってきました。彼は王柔と同じように駱駝の走っていった先を見ると、次に駱駝が走ってきた方、つまり、自分たちがこれから進もうとする先の方を見ました。一体駱駝が何に怯えていたのか、それが気になったからでした。彼らが進む先は、足元を流れるほのかに青く光る川が流れていく先でもあり、暗闇の中でボウッと浮かぶ青い光の塊のようになっていましたが、その光以外には何も見て取ることはできませんでした。
洞窟の先の方の青い光の塊をじっと見ていると、羽磋は自分の心の中に「怯え」や「臆病」がまた芽を出して来るのを感じました。彼は慌てて、その青い光の塊から目をそらしました。何故だかはわかりません。でも、洞窟の前方の青い光を見ていると、「この洞窟から本当に出て行けるのだろうか」という不安や、「この先に何か恐ろしいものがいるかもしれない」という怯えが心の中に浮かんでくるのでした。
駱駝が戻ってくる前に羽磋が前方の青い光の輝きを見ていて気分が悪くなった時も、その様な感情が彼の心の中に沸き立っていました。その時は今よりも長くその光を見つめていたからか、この先についての不安や恐怖だけではなく、過去の思い出したくない哀しい出来事までもが心の中に蘇ってきて、彼を傷つけていたのでした。
青い光の輝き、それに何か秘密があるのかも知れません。
大空間から伸びる二つの洞窟のどちらに入るかを考えていたときに羽磋が調べたところによると、青い光の輝きが強い洞窟の方が精霊の力が強いことがわかっていました。このことから考えると、前方の青い光の輝きの塊や足元に流れる川の水のほのかな青い輝きは精霊の力の現れで、駱駝があのような状態になったのも、その川の水を飲むことによって精霊の力を体内に取り込んだことが原因であるのかもかもしれません。ただ、精霊の力が必ず人に良いことをもたらすとは限りません。ひょっとしたら、青い光の輝きは……。
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