転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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キャラダイスの町

死霊術士ギルドでの朝

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・死霊術士ギルドでの朝
 俺は今日ほど朝日が待ち遠しかったことはなかったと思う。死霊術士の仕事はもちろん、昼にも仕事があるが夜は仕事『仲間』になる死霊たちが動き出す時間ということもあり、夜の町を徘徊するのが死霊術士ギルドに務める者たちの日課になっていた。これはいい。俺はタンポポについて歩いて行けばよかったし、街の隅々まで探索できるのは楽しかったし、その時に、ギルドのメンバーに成仏の研究を引き換えに死霊術士ギルドの仲間としてしばらく働くことを伝えるとタンポポは喜んでくれた。問題はその後……死霊術士ギルドの面々は力尽きるまで色々な質問を俺に投げかけた。
「死霊の状態で睡眠をとるとその全てが走馬灯になると聞くがほんとうかのぅ?」
「俺が夢だと思ってたのあれ、走馬灯だったの? あの夢はもう見たくないから教からはもう絶対寝ないことにする」
「ヤクモは足がないけど、死因はここからの出血多量とかかい?」
「死因はたぶん本による圧死だからそれはないと思う……これは成仏しかかっていたのにゼンに止められたせいだな」
「ヤクモさんは何か……こう、生前特別な訓練などをしていたんですか?」
「いや……たぶん、ゼンが地球産の魂は強いとかいっていたからその影響じゃないか?」
「リッチー様はすり抜けたものを眼で見た以上に理解すると聞いてますが、私の身体はいかがでしたか?」
「やっぱわかっててやってたのか!? こわっ。どうですかときかれても……臍の上の方にほくろがふたつあって顔みたいだったな」
 こんなことが深夜から朝日が昇る直前まで続いていた。身体がないおかげか疲労とは無縁になっていたが、精神的な疲労というものは死しても尚、襲ってくるようである。最後まで残っていたのはマドラーであったが、マドラーの最後の質問を答えた辺りでカーテンの隙間からうっすらと日差しが差し込んできていた。マドラーの意識が完全にないことを確認した俺はカーテンを開けることはできないので、そのまま窓から上半身を乗り出してこの世界に来てから初めての朝日が登る所をみた。まぶしくても物理的に眩む目をもっていないおかげか朝日をいくら直視しても眼が痛みを訴えてくることはない。小鳥が気持ちの良さそうな風と一緒に俺の身体をすり抜けていく。実にすがすがしい朝だ。
「ぎゃー!? ヤクモさん!? 何をしているんですか!?」
 なんだか下半身の方から声が聞こえてくる。この声はタンポポの声だろう。そんなに慌てることがあるのだろうかと思ったが……寝起きに30過ぎのおっさんの壁尻を見つけたと考えると目覚めはいいものではなさそうである。タンポポに謝ろうと思い、身体をひっこめようとするとタンポポが俺をどうにかして引っ張り戻そうとしてくれていたのか偶然にもタンポポの身体に少しの間だが重なってしまう。マドラーよりも多少いろんなところが肉付きが良く獣人ゆえか毛深い。そういえば、ダンジョンから帰ってから色々忙しかったがタンポポは論文をまとめる際に着替えていたのだろう、ダンジョンで見た白ではなくピンクの下着に変わっているようだ。
「……タンポポ、これは事故だから、あの、な?」
「事故だからじゃないですよ。どこか痛い所とかはないですか? 記憶の混濁などもありませんか!?」
 必死で俺の身体を頭の先から消えてスケスケになっている所までしっかりと観察する。
「や、どこも別に異常はないけど」
「はぁぁ……あ、あのですね。ヤクモさん。死霊はゼン神を象徴する太陽に弱いんです。夕暮れぐらいだったら何ともないですけど……朝日なんて特にゼン神の力が一番強く乗っているなんていわれているので死霊は大きなダメージを受けちゃうんですよ」
「そ、そうだったのか、でも、うん、俺はこの通り無事だし、記憶の混濁も起きていないと思う」
 その言葉にタンポポは暫く俺を睨んでいたが、とりあえず、納得したのかほっと胸をなでおろす。タンポポが大騒ぎしたことで雑魚寝状態になっていた死霊術士ギルドの面々も眠い目をこすりながら起き始める。そして、タンポポに今起きたことを説明されるとギルドの面々は先ほどのタンポポと同じように俺の身体の隅から隅まで確認する。タンポポのように心配だけというよりは……信じられないものを見るような目というか珍しい玩具を見つけた子供の眼で俺を見ている気がする。
「本当に規格外な霊じゃな。日光を浴びせて弱らせてからどうにか、部分的に成仏させる手も考えたが使えそうにないのぅ」
「あっはっはっは、アタイたちとしては強い死霊は大歓迎なんだけどね。アタイらヤクモを成仏させられるかな……消滅すら危うそうだよ」
「死霊を超えた死霊……ヤクモ様すばらしいです! いかにリッチー様でも朝日を浴びたらかなりのダメージを受けるでしょうに。タンポポ大丈夫です。ヤクモ様は私が最後に見た時から寸分の狂いもなくそのままです。私が保証します。日光を完全に克服した死霊なんでしょう」
 え、こわっ……何も変わってないって断言できるのが怖すぎる。きっと、魔術とか魔法を使用したのだろう……俺はそう信じることにした。
「そうでした、タンポポ、今日もいつも通り病院周りをお願いしたいの。それが終わったら戻ってきて論文を書いたり掃除とかしてくれても……」
「はいっ。わかりました。その分のお給金しかいただきませんので、終わり次第、夜まで自由時間でいいですか?」
「……あんまり無茶はしないでね」
 マドラーが渋い顔をしながらタンポポに許可を出す。タンポポはここでもしっかりしているようでお金に困っているというのに楽な仕事を蹴って冒険者ギルドに顔を出すつもりでいるらしい。
「タンポポ、俺もいくよ。ここにいてもやることなさそうだし」
「わ、わかりました。力を借りる時はまたしっかりと対価を支払いますので」
 俺は別に成仏の研究をしてもらえるならそれでいいのだが、タンポポとしてはそれでは釣り合わないということなのだろう。俺はタンポポの納得を最優先させてとりあえず、頷いておくことにした。それを見てタンポポも頷いて急いで支度を始める。昨日は流れで雑魚寝になってしまったが、どうやらタンポポはここに下宿しているのか着替えがあり、今のコーデは昨日のワンピースだけではなく、少し分厚めのローブを身に付けていた。
「それではいってきます」
「気を付けてね」
 マドラーに見送られながら、俺とタンポポは扉の前まで来る。扉を開ける前にタンポポは自らのローブを開いて見せる。ローブの中は綺麗に真っ黒に染められており、かなり上等な生地で出来ていることもわかった。しかし、タンポポの行動の意味はよくわからない。
「ヤクモさん、どうぞ!」
 どうぞと言われても……あぁ、これひょっとして遮光できるものなのだろうか。契約中の霊が消滅しないようにするための工夫なのだろう……しかし、それについてはマドラーにお墨付きをもらっているので大丈夫だと思うのだが。
「……大丈夫とわかっていても心配になりますよ」
「わ、わかった、辛くなったら声をかける。それでいいだろう」
 俺の言葉にタンポポはしぶしぶ了承してローブを元に戻して外に出る。日差しを浴びても特に何も身体に変化も問題もない。しかし、タンポポは確かにしっかり線引きをしないと辛くなる子なのだと理解できてしまった。タンポポは優しすぎるのだ。霊が通常どの程度現世に留まれるのかはわからないが、この優しさを何度も何度もすぐに消えてしまう存在に与えるのはきっと辛いだろう。結局、病院につくまでタンポポは安心できなかったのか数歩あるく度に俺の方を見ては大丈夫かと問いかけるのだった。
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