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キャラダイスでの大事件
呼ばれてないけど飛び出すエリザベス
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・呼ばれてないけど飛び出すエリザベス
鞄の中から現れた女の子にタンポポが驚いて眼を見開き尻尾を膨らませる。そんなことお構いなしに鞄から出て来た少女は矢継ぎ早に次々と発言を飛ばす。
「さっき、飛んでましたわよね? エリザベス、鞄の中にいたからイマイチわからなかったのでもう一度、エリザベスを乗せて飛んでくださるかしら?」
「エリザベスって……あ、あのエリザベス様ですか?」
「あのがどれをさすのかはわかないですわね……ここの領主の娘を指すのならいかにもそうですわ!」
「どうして、鞄の中にいたんですか?」
「家出ですわ!!!! タンポポなら空を飛んでエリザベスをどこか遠くに運べるでしょう! だからお父様にお願いして依頼を出してもらったんですわ! あとは鞄の中に隠れて運ばれるのを待つだけで外に出られる! エリザベスの計画は完璧ですわー!」
自信満々に言い切る姿にタンポポはいっそすがすがしさを覚えたが、この状態は困ったことになってしまう。これは一応、依頼の詐称行為にあたる。依頼の詐称行為はその大なり小なりにかかわらず、詐称した人は無期限に冒険者ギルドへ依頼ができなくなってしまう。エリザベスは今年で10歳。少女の彼女には事の重大さがわかっていないようだが、領主の娘が依頼を詐称したとなれば意味合いが変わってくるのだ。
お金を持っている人たちは冒険者ギルドのいいお客さんである。領主は更に特別で、戦争やモンスターの襲撃など有事に抱えている兵で足らない場合は冒険者の手を借りるのだ。悪いことに今回の依頼は領主の名前で出されている。領主が冒険者ギルドから出禁を喰らうことはないだろうが、この問題はただのDランク冒険者のタンポポひとりで考えるには荷が重すぎる問題だった。
「ヤクモさん、どうしましょう。領主の娘でした……家出したとのことでして、あと、ヤクモさんにとっても乗りたがっています」
「あら、ヤクモさんっておっしゃるのね。どこにいるかはわかりませんけど……この箒がそうかしら?」
おてんばお嬢様はタンポポがもっている箒へと視線を注ぐ。
~~~~
「ヤクモさん、どうしましょう。領主の娘でした……家出したとのことでして。あと、ヤクモさんにとっても乗りたがっています」
ふわふわの青色のドレスに身を包み、金髪のサラサラの髪はこの世界では稀に見るほど手入れされていて綺麗だ。タンポポよりも背は小さく、年齢もかなり下に見える。俺を見てくる勝気そうな瞳には自信と希望に満ち溢れており、見ているだけで元気がもらえそうな気がする。何かを言っているようだが、たぶん、ろくなことは言っているとは思えなかった。
「家出ねぇ……これ、すぐにでも送り届けた方がいいよな?」
「そうですね。ボクたちなら遠くに簡単にいけるだろうから家出を手伝えという感じでした」
あんまりにもエリザベスが俺のことを見てくるものだから、とりあえず動いてやろうと思い立った状態でくるくると周って見せたり、倒れると見せかけて起き上がったりして見せつつタンポポと会話していく。もうこの身体にも慣れたものである。エリザベスがきゃっきゃ喜んでいるのでこのアプローチで間違っていなかったようだ。
「無理をすれば2人乗りぐらいは出来るよな? 騙すようで悪いがちょっと遠回りして領主の家に送り届ければいいんじゃないか」
「そうですね……わかりました。お嬢様とりあえず、箒に乗ってもいいですが落ちると本当に危険なので、ボクにおんぶかだっこです」
なるほど、俺に直接乗らなくてもタンポポに乗ればなんとかなるか。俺が違う視点を持っている人がいることに感謝をしていたが、どうやらエリザベスはそれが気に入らなかったようでぎゃーぎゃーと喚き始める。あまりのマシンガントークにタンポポが口をはさむ暇がない。こういう時はたぶん……直接乗りたいとか言っているのだろう。ということは俺が乗せる意思を見せればエリザベスは少し落ち着くかもしれないと思い、俺は一度地面と水平になり、エリザベスが乗りやすい高さで止まってみる。予想通りエリザベスがぴたりと泣き止む。エリザベスの小さなお尻が俺に乗る。何歳かはわからないが、さすが良いもの食べているなという感じ。何を考えているんだろうな俺は……とりあえず、少し高度をあげるとエリザベスのお尻がすとんっと外れそうになる。まだまだ成長の途中、引っかかるものがなしバランスもとりずらいだろう。そこで諦めてくれればよかったのだが、このお嬢様以外にもガッツがあった。今度は跨ろうとするがドレスの分厚い布がそれを邪魔する。タンポポの着用しているモノとはあまりに素材が違い過ぎる。箒にスカートをかぶせるように跨ればそれも解決だろう。
「あ、ヤクモさんは男性です」
エリザベスが何かを聞いたようでタンポポが答えを返す。その答えを聞いた途端にエリザベスは赤くなる。うん、エリザベスがきちんと淑女の教育を受けていてよかったと思う。これで乗るのは難しくなったはずだ。
「▲▲▲!」
周りの空気が一瞬で冷えるような感覚。いつの間にかエリザベスの手には透明度の高い氷がまとわりついている。その氷でエリザベスは躊躇なくドレスを破る。綺麗なドレスをあっという間にずたずたに引き裂くとあまりのことにその場でとどまっていた俺に跨って見せる。
「パワフルな子どもだなぁ」
「ボク、頭が痛くなってきました」
「タンポポ、ロープあったよな。あれで色々安全策を作ろう」
タンポポの頭が痛くなってきたという言葉に俺は心の中で同意しながらできる範囲での安全策を考えるのだった。
鞄の中から現れた女の子にタンポポが驚いて眼を見開き尻尾を膨らませる。そんなことお構いなしに鞄から出て来た少女は矢継ぎ早に次々と発言を飛ばす。
「さっき、飛んでましたわよね? エリザベス、鞄の中にいたからイマイチわからなかったのでもう一度、エリザベスを乗せて飛んでくださるかしら?」
「エリザベスって……あ、あのエリザベス様ですか?」
「あのがどれをさすのかはわかないですわね……ここの領主の娘を指すのならいかにもそうですわ!」
「どうして、鞄の中にいたんですか?」
「家出ですわ!!!! タンポポなら空を飛んでエリザベスをどこか遠くに運べるでしょう! だからお父様にお願いして依頼を出してもらったんですわ! あとは鞄の中に隠れて運ばれるのを待つだけで外に出られる! エリザベスの計画は完璧ですわー!」
自信満々に言い切る姿にタンポポはいっそすがすがしさを覚えたが、この状態は困ったことになってしまう。これは一応、依頼の詐称行為にあたる。依頼の詐称行為はその大なり小なりにかかわらず、詐称した人は無期限に冒険者ギルドへ依頼ができなくなってしまう。エリザベスは今年で10歳。少女の彼女には事の重大さがわかっていないようだが、領主の娘が依頼を詐称したとなれば意味合いが変わってくるのだ。
お金を持っている人たちは冒険者ギルドのいいお客さんである。領主は更に特別で、戦争やモンスターの襲撃など有事に抱えている兵で足らない場合は冒険者の手を借りるのだ。悪いことに今回の依頼は領主の名前で出されている。領主が冒険者ギルドから出禁を喰らうことはないだろうが、この問題はただのDランク冒険者のタンポポひとりで考えるには荷が重すぎる問題だった。
「ヤクモさん、どうしましょう。領主の娘でした……家出したとのことでして、あと、ヤクモさんにとっても乗りたがっています」
「あら、ヤクモさんっておっしゃるのね。どこにいるかはわかりませんけど……この箒がそうかしら?」
おてんばお嬢様はタンポポがもっている箒へと視線を注ぐ。
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「ヤクモさん、どうしましょう。領主の娘でした……家出したとのことでして。あと、ヤクモさんにとっても乗りたがっています」
ふわふわの青色のドレスに身を包み、金髪のサラサラの髪はこの世界では稀に見るほど手入れされていて綺麗だ。タンポポよりも背は小さく、年齢もかなり下に見える。俺を見てくる勝気そうな瞳には自信と希望に満ち溢れており、見ているだけで元気がもらえそうな気がする。何かを言っているようだが、たぶん、ろくなことは言っているとは思えなかった。
「家出ねぇ……これ、すぐにでも送り届けた方がいいよな?」
「そうですね。ボクたちなら遠くに簡単にいけるだろうから家出を手伝えという感じでした」
あんまりにもエリザベスが俺のことを見てくるものだから、とりあえず動いてやろうと思い立った状態でくるくると周って見せたり、倒れると見せかけて起き上がったりして見せつつタンポポと会話していく。もうこの身体にも慣れたものである。エリザベスがきゃっきゃ喜んでいるのでこのアプローチで間違っていなかったようだ。
「無理をすれば2人乗りぐらいは出来るよな? 騙すようで悪いがちょっと遠回りして領主の家に送り届ければいいんじゃないか」
「そうですね……わかりました。お嬢様とりあえず、箒に乗ってもいいですが落ちると本当に危険なので、ボクにおんぶかだっこです」
なるほど、俺に直接乗らなくてもタンポポに乗ればなんとかなるか。俺が違う視点を持っている人がいることに感謝をしていたが、どうやらエリザベスはそれが気に入らなかったようでぎゃーぎゃーと喚き始める。あまりのマシンガントークにタンポポが口をはさむ暇がない。こういう時はたぶん……直接乗りたいとか言っているのだろう。ということは俺が乗せる意思を見せればエリザベスは少し落ち着くかもしれないと思い、俺は一度地面と水平になり、エリザベスが乗りやすい高さで止まってみる。予想通りエリザベスがぴたりと泣き止む。エリザベスの小さなお尻が俺に乗る。何歳かはわからないが、さすが良いもの食べているなという感じ。何を考えているんだろうな俺は……とりあえず、少し高度をあげるとエリザベスのお尻がすとんっと外れそうになる。まだまだ成長の途中、引っかかるものがなしバランスもとりずらいだろう。そこで諦めてくれればよかったのだが、このお嬢様以外にもガッツがあった。今度は跨ろうとするがドレスの分厚い布がそれを邪魔する。タンポポの着用しているモノとはあまりに素材が違い過ぎる。箒にスカートをかぶせるように跨ればそれも解決だろう。
「あ、ヤクモさんは男性です」
エリザベスが何かを聞いたようでタンポポが答えを返す。その答えを聞いた途端にエリザベスは赤くなる。うん、エリザベスがきちんと淑女の教育を受けていてよかったと思う。これで乗るのは難しくなったはずだ。
「▲▲▲!」
周りの空気が一瞬で冷えるような感覚。いつの間にかエリザベスの手には透明度の高い氷がまとわりついている。その氷でエリザベスは躊躇なくドレスを破る。綺麗なドレスをあっという間にずたずたに引き裂くとあまりのことにその場でとどまっていた俺に跨って見せる。
「パワフルな子どもだなぁ」
「ボク、頭が痛くなってきました」
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