転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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キャラダイスでの大事件

わがままお嬢様エリザベス

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・わがままお嬢様エリザベス
 俺は2人を乗せてお試しの低空飛行で浮かんでいる。
 現在、箒である俺の身体にはロープが数か所に巻き付けてある。そのいつくかの先には鞄が括り付けられているのだが、一番広い面を地面に対して垂直になるように固定してある。鞄を使った即席のあぶみのようなものを作ってタンポポとエリザベスの安定性をあげた。これで簡単にバランスを崩すということはなくなり、落ちる可能性もずいぶんと減った。さらにさらに年には念を入れて、エリザベスにもタンポポにも俺に結んであるロープが伸びている。更にタンポポとエリザベスをつないでこれでもか問うほど安全対策をこうじた。荷物を括り付けるためのロープを持って来ておいてよかった。
「エリザベス様、身を乗り出しちゃだめですよっ! あぶないですから!!」
 それでも用心に越したことはないのでタンポポにはエリザベスの安全を優先してもらっている。エリザベスを家に送り届けるルートは完全に俺任せとなった。
「とりあえず、できるだけ遠回りしながら家に向かうルートにするぞ。直接向かったら色々面倒なことになりそうだし」
 タンポポがとんとんっと箒の柄を2回指でたたく。念の為決めておいたこっそりと意思疎通をするための手段。2回のノックは同意の合図だ。
「それじゃあ、一気に高度を上げるからつかまっておいてくれ」
「エリザベス様、高度を上げるそうです。しっかりと掴まっていてください」
「▲▲▲!」
 エリザベスは楽しそうな声をあげるとしっかりと柄を握りしめる。一気に高度を上げて、この町のどんな建物よりも高く飛び、くるりくるりと旋回する。といっても俺の感覚からすれば4階建ての建物の屋上程度の高さで対して珍しい高さではない。タンポポもこの程度の高さであればもう慣れっこになってしまったようで落ち着いている。対してエリザベスは声は明るく、楽し気に何かを言っているが柄を握る力は先ほどよりも強くなり、手汗も感じられる。
「エリザベスは大丈夫そうか?」
「ものすごい楽しんでます! エリザベス様!? 無理です! もっと速くはできません!」
 なるほど、もっと速いのがお望みか……力については全然問題なく人間以上の力が出せるのだが、速度については生前の足の速度程度の速さしかでない。自分がそこまで速く動くイメージが明確にできないのが原因なんだとは思っているがこれがなかなか難しい。タンポポもそれがわかっているので断ってくれているのだが……
「▲!!!! ▲▲▲▲!!!!!」
 明らかにエリザベスがヒートアップしてきている。これ以上面倒を起こされてもたまらない。
「わかった……ちょっと準備するから、エリザベスにもしっかりと掴まっておくようにいっておいて。あと姿勢は低い方がいい」
「え、はい? エリザベス様、ヤクモさんがしっかり掴まっておくようにと。できるだけ姿勢も低くしてほしいと」
「▲▲!」
 エリザベスの明るい声が響く。とりあえず、ご機嫌は戻ったようだ。俺は町の少し外にある森を開いてできた空き地の方へと向かう。
「でも、ヤクモさん、大丈夫ですか? これ以上速くはうごけませんよね?」
「俺はね。とりあえず掴まっておいて。2人ともしっかりと握ってよ」
「???? あっ……! エリザベス様しっかりと握っておいてください!!!」
 タンポポも気が付いたようでエリザベスにしっかりと柄を握っておくように指示を出す。2人が俺の柄をしっかりと握ったことを確認すると、俺は全力で力を抜いた。
 あとはバランスをとりながら自由落下を楽しむだけである。落ちている間は重力に引っ張られる。重力に引っ張られるのは俺の力ではない……人だったら、最高時速200kmとかでるとか何かの本で読んだ気がする。さすがにそこまで出るとブレーキがかけられないので、ある程度落ちた所でゆっくりと力を込めていく。落下速度がだんだんと落ち着いていき、地面の少し上で完全に停止する。
 エリザベスとタンポポがふらふらと箒から降りて空き地に大の字で倒れてしまう。
「や、ヤクモさん、も、もっと事前にせ、説明をお願いします」
「ごめんごめん、タンポポにもサプライズをしたいなと思って」
 ごめん、正直に言おう、タンポポの尻尾がもっさもさに膨らんでいる尻尾がみたいだけとは言えない。タンポポは俺の説明に頬を膨らませながら、絡まったロープを解くようにうつ伏せになったり仰向けになったりと忙しそうに動き始める。
 問題は、エリザベスの方だった。先ほどから大の字で倒れたきりである。呼吸は荒いがしっかりとしているように見えるので生きてはいるとは思うが……少女には少し刺激が強すぎたのかもしれない。タンポポの尻尾の観察もしたいが、とりあえずエリザベスの様子を探るために近づいていく。
「▲▲▲!!! ▲▲▲~!!!!!!!!」
 俺に目はないが、仰向けのエリザベスと目があった……気がする。その瞬間、エリザベスは突如として立ち上がり、俺にしがみついてくる。テンションが高すぎて怒っているのか、喜んでいるのかがわかりにくい。
「無理です! もう一回は無理です! ボクが死にます!」
 エリザベスはフリーフォールもどきをとても気に入ってくれたようだ。
「タンポポ、もし、これでエリザベスがくたくたになって眠ってくれたら、帰るのが楽になるかもしれないぞ」
「ボクの方がさきにくたくたになりそうです……けど、それは魅力的ですね」
 しかし、俺とタンポポは舐めていた……この年頃の無尽蔵すぎる体力を……かなりの時間、色んな方法でフリーフォールをさせられて、俺はともかくタンポポがゾンビのようになるまでにそれほど時間はかからなかった。
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