転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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VS聖騎士

サラとリッチー

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・サラとリッチー
 休日が明けると仕事になる。仕事の前に俺は聖騎士がたずねてきたことを全員に共有した。エリザベスの知り合いの様だったし、何か大きな問題になりそうな感じではなかったが、念の為である。何といっても今日はそのエリザベスが死霊術を学びに来る日なのだ。タンポポもエリザベスの対応をするために準備に余念がない。俺に力になれることと言えば、エリザベスが扱う死霊術の実験体になることぐらいなのだが、俺ぐらい意識がはっきりとしている死霊の方が初心者にはいいらしい。もちろん、全ての霊が俺のように意志をしっかり伝えてくるわけではないとわかっていればの話のようで毎回のようにタンポポはエリザベスにそれを伝えている。
 あとは俺は特に大きな要求をしないのもある。死霊術は霊との契約により成り立っている部分が大きい。領主の娘であるエリザベスが霊とは言え勝手に契約をするのは危険なのだ。あとは……霊になってもご盛んな霊もいる。小さな子でも関係なくそういうことを求める霊もいるのである。
「▲▲▲。△△△!!! んっんっん! おはようございますわっ!!! タンポポ先生、今日もよろしくお願いしますわ。それと今日は見学もいるのだけど大丈夫かしら?」
「はい、おはようございます。今日もしっかり、魂の交流ソウルコンタクトが使えてます。見学というと……そちらの?」
「タンポポ、今朝話した聖騎士だ」
 サラは此方を見るとすぐさま口を開く。
「リッチーはどこ」
「えっと……ここにいます」
 サラは一瞬体をびくっとさせてからきょろきょろと周りを慎重に見渡してから、ほっと一息入れてから再び同じことを尋ねた。
「リッチーはどこ?」
「ここにいますわ。サラおねえさま、ヤクモさんに会いに来たのならおっしゃって下さればすぐに紹介しましたのに」
「いや、ヤクモには昨日会ったわ……わたくしが探しているのはリッチーを使っている術士の方ではなくリッチーそのものよ。ヤクモが術士なんでしょう? あなたにも事情を聞きたいからわかるようにしてあげているの」
「術士はタンポポ先生ですわよ?」
「ヤクモは家名があるの!? 実は貴族とか!?」
 ことごとくかみ合わない。聞いている途中でどんな勘違いが起きているのかはわかったが、一体全体どうしてそんな勘違いが起こったのか……そうなると、昨日の会話の途中でサラがあんな表情になったのも頷ける。とりあえず手っ取り早く目の前で浮かんで天井を突き抜けてから戻って来て見せる。
 戻ってくるとぽかんっとしたサラがそこにいた。
「え、あれ? えぇ、えっと……確かにリッチーは霊が人の形をとっているものを指すけど……こんな完璧な状態で人型になんてありえない」
「そうですよね。ボクも初めて会った時にとってもびっくりしました」
「そうなんですの? エリザベスはヤクモさんしか霊には出会ったことがないのでわかりませんわ」
「諸説あるので、そういうのもあるんだ程度にとどめておいてほしいんですが……霊は不安定で消えやすいんです。心残りがあれば残ってしまうそうですが……それでもそう長くない。少しでも消滅や成仏を長引かせるために最低限動ける程度、魔法が使える、魔術が使える程度の人型と考えると骨ぐらいでとどめるリッチーが多いと言われているんです。リッチーそのものが一生で一度会うかどうかなので個体数はそこまで多くないんですが」
 タンポポがしっかり先生をしているところを見るとほっこりする。その説明にエリザベスも健気に頷いて、同じことを呟いて反芻もしている。努力は報われてほしいものだ。俺がそんなことを考えているとサラが懐から何かを取り出す。昨日からサラから感じていた臭いが強くなる。鼻は実際ないが曲がりそうな感覚だ。取り出したのはどうやら何かの薬品が入った瓶の用で、その瓶を開けると周りに振りまく。
「ぎゃー!? それ聖水ですか!? 営業妨害ですよ!?」
 タンポポが叫んでくれたので、瓶の中身の正体を知ることができた。この鼻の曲がりそうな臭いのものが聖水らしい。なるほど、確かにこれはすぐにでもこの場から退散したくなる。
「そうよ! 聖女様が1週間祈りを捧げてようやくできるわたくしたち聖騎士に持たされるお守りよ! 近くで振りまければ武器にもなる優れもの! こんな近くでこれを使えるとは思わなかったわ! この至近距離なら例えリッチーでも消滅するはずよ」
「……くっさい。タンポポは何にも匂わないのか」
「だ、大丈夫そうですね。うすうすわかっていましたが……ボクたちひょっとして大変な約束をしてしまったんじゃないでしょうか? え、臭いですか? 水の匂いがするだけですね……それよりも臭いを感じられるんですか!? 一体どんな香りなんです?」
「どんなって……伝わるかわかんないけど、忘れ去られた肥溜めとか。確かにこれは霊も近寄りたくないわ」
「色々仮説が立ちそうですね。またお手伝いお願いできますか」
 タンポポが俺に対する遠慮と心配がなくなってきている気がする。これは喜ばしい事でもあり悲しい事でもあるような気がして複雑な気分である。
「ちょっと、無視しないでちょうだい! な、なんで消えてないのよ」
「俺が聞きたいぐらいだ」
 サラは確信していた勝利が訪れないことをしり驚愕の表情を浮かべている。何にしても俺に害意をもって接してきたのは間違いない。どうしたものかと頭を悩ませるのだった。
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