転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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不死者との邂逅

平和なラメン

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・平和なラメン
「何も変わったところは無さそうですけど……死霊は夜に活発になりますからね。長に話を聞きに行きましょう!」
 タンポポがいつにも増してやる気が漲っている。妹から頼まれごとをされたのがよほど嬉しかったようだ。
 俺が見る限り、ラメンという集落……タンポポが暮らしていたキャラダイスと比べると……よく言えば無駄なく纏まっていた。悪く言えば、何かがひとつでもなくなると回らなくなりそうだと思ってしまうほど小さな集落だった。タンポポから聞いて予想していたがあのゼン神教の教会も無さそうだった。キャラダイスとの大きな違いは集落をぐるっと囲むように堀が掘られており、更に小さな柵もある。そして、見張りもいない。人は来ないが、野生動物が頻繁にくる……と言った感じなのだろう。近くに森があるのでイノシシとかか。
 タンポポが動くのに合わせて、俺も後ろをついて行くように動く。よそ見をしなかったのは、キャラダイスに始めてきた時は色々物珍しがったが、そろそろ慣れたというのとあるが、タンポポの鞄の中に入っているので今は実体があるので当たらないように動くので精一杯と言うのもある。
「ごめんください。隣の村のナズナから死霊系の怪物が出ると聞いてやってきました」
「うん? となりの……あぁ、いらっしゃい」
 タンポポは何回かこの集落に来たことがあるようで迷うことなく長の家まで辿り着いた。小さな集落でも長の家と交流があるということはひょっとするとタンポポはそれ相応の人の娘なのかもしれない。
 出てきたのはたぶん、初老の男性だ。獣感が強く皮膚のシワで判断がつかない。声の質と髪質でなんとなく判断するしかない。
「しかし……死霊ねぇ……?」
「……なにかご存知ないですか?」
「うーん。ここにいる人からそんな悩みは聞かされてないねぇ。最近は野生動物の被害すらほとんどないんだから」
「そ、そうですか……」
 やる気満々だったタンポポは見る見るうちに萎れていく。しっぽも気のせいかしょんぼりしているように見える。
「ここで1泊か2泊ぐらいしていったらどうだ? 何も無ければそれでいいし……今日合わせて2回か3回ぐらい夜を過ごせば何かわかるかもしれないだろ」
「うーん。そうですね……分かりました。とりあえず、宿を取りに行きましょう! お話ありがとうございました。あ、ボク、死霊術士をしているので、霊関係でお困りのことがあれば!」
「ああ、それはありがたい。我々の集落もゼン神教とは付き合いを改めようという事になったからね。とある死霊術士が偶然出会った異世界の人……正確には霊のようだが……ぜひ会ってみたいものだよ」
 どんな伝わり方をしているのかは分からないが……すごく恥ずかしいというかいたたまれないというか……
「ですってヤクモさん」
「……はぁ、人がいる前では俺の名前を出さないだろ」
 タンポポの実家につくまでの取り決めとして念の為、出来るだけ俺は声を出さない。タンポポも出来るだけ俺の名前を呼ばないと取り決めていた。特に俺は消滅した事になっている。消滅していないことが分かればきっと色々と不味いことになるだろう。目的地が近くなってきたとはいえ油断は出来ない。
「あとで皆に聞いてみるが少なくとも死人は出ていないが……何か悪いものが飛んでいたら何とかしてくれると助かるよ」
「任せてください」
 長の家を出ると日が傾き始めていた。経験上、この時期なのかこの世界だからなのかは分からないが傾き始めると早い。早めに宿を見つけるべきだろう。
 この集落に宿はひとつしか無かった。酒場と宿を兼業していて部屋は立派とは言えないが寝るだけであれば問題がない。
「ふう……窮屈ってわけではないけど、やっぱり外の方が開放感はあるな」
「そういう物なんですね……感想とかなかなか聞かないので新鮮です」
 荷物を置いて改めて外に出る。キャラダイスと比較するとどうしても寂れているように感じて活気も少なく感じてしまう。
「キャラダイスと比べたらダメですよ。あそこは辺境ではあるものの、かなり栄えている場所ですから。果ての都、始まりの街なんて言われたりする場所ですし」
「なるほど……」
 それとなくそんな事をタンポポに伝えるとそんな言葉が帰ってきた。
「それでもすこーしだけ、知っている時より寂れている気はしますね。寂れているというか……なんというか……うーん。忙しないんですけど、なんだか……ヤクモさんの言う通り活気がないんですかね?」
 タンポポも少しだけ違和感を感じているようで首を傾げてしまう。
「霊もとんでないな……この立地でこの時間ならひとつふたつ飛んでてもおかしくなさそうだが」
「そういえばそう……ですね? 珍しいかもしれないです」
 小さな集落である。ぐるっと一周するのにそんなに時間はかからなかった。しかし、1周しても何事もないどころか霊すら見かけず……タンポポと一緒に俺は首を傾げることとなった。
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