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不死者との邂逅
近くの森で
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・近くの森で
集落に霊がいない。であれば、霊がいそうな森の中へ俺とタンポポは向かうことにした。毎日のように弱肉強食が繰り返されている森の中であれば何らかの霊がいるのではないかと思ったが……
「へんですね。全然いません……怖いぐらいです」
「普通、霊が出てきた方がこわいもんだけど……確かにこれは逆にちょっと怖いな」
死霊も霊も動物霊すらいない。こうなってくると逆に不気味だ。周りも暗く足元も悪い。
「……なぁ、タンポポ、この辺り、イノシシとかでるんだったか?」
「え? あ、はい、そうですね」
「……動物の声とか聞こえるか?」
タンポポは一瞬ぽかんっとして何か違和感を覚えていたようだが、俺の質問にハッとして耳を澄ます。頭の上でぴこぴこと耳が動くのは可愛らしくいつまでも見て居られるがタンポポが必死そうなので黙って見守る。
「何にも聞こえませんね……」
「何の木の実かわからないけど、こういうものがある所って大体これを食べる生物が住み着くもんだけどな」
落ちている木の実……栗のいがいがに包まれたどんぐりのような木の実がそこら中に落ちている。これだけ落ちているのだからこれを餌にする動物のひとつやふたついてもおかしくない。そして、それを食べる肉食動物もいてしかるべきだ。
「危険がないのはいいけど、また別の意味で怖くなってくるな……こういうことができそうな死霊系の怪物っているのか?」
「昔、死霊魔法使いが土地そのものに『ここで息絶えるとゾンビになる』魔法を使って、一夜で町1つがゾンビになり……朝日と共に消え失せた。術士もゾンビになっていたので同時に消え失せ、残った日記で明らかになったという話は読んだことがありますけど」
なるほど、それなら確かに……集落の1人がゾンビを目撃し、報告すべきか悩んでいる内に森の動物がゾンビになり……朝日と共に消滅という流れなら、かなり無理やりだが、タンポポの妹の話も納得は出来る。
「だとしても身体は残るので……もう少しだけ森の中を歩いてもいいですか?」
「ナイフだけは抜いておいてくれよ……俺は何もできないから」
「はい」
タンポポは護身用のナイフを抜き身にして、ランプを頼りに慎重に森の中を歩いていく。俺はそんなタンポポの先を歩くようにして段差がないか確かめながら歩く。便利なことにどんなに暗闇でも俺はなんとなく見えることができるから便利だ。
ふわっ……と、なんとも言えない、心地よい香りが鼻腔をくすぐる。鼻に何かを感じたのはあの臭い聖水以来だったが、あれとは比べ物にならないぐらいにいい匂いだ。おそらくは花の匂いだろう。
「なぁ、タンポポ。何か匂いを感じるか?」
「……??? 特に感じませんけど……ひょっとして、なにか感じてるんですかっ!?」
「聖水とは全く違ういい匂いがする」
俺が聖水から嫌な臭いを感じたと話した時から、タンポポは聖水と真逆の効果を持つものを作れるのではないかと理論立てていた。タンポポにとって論文はお金を稼ぐ手段以上のものがあるようだと感じていたので何か手伝えるならそれは嬉しい。
「匂いをたどろうと思うがいいか?」
「もちろんですっ!」
不思議なことにどんなに風が吹いても匂いが飛ぶということもなく。どこからこの匂いが漂ってくるかはっきりとわかる。暫く歩くと不意に開けた場所に出る。
「わぁ……」
タンポポが短く声をあげる。俺は声をあげることすらできなかった。
そこには見渡す限り、絨毯のように彼岸花のような真っ赤な華の花畑だった。その上を無数の光る玉……霊が空中を泳いでいた。どちらも数えることが不可能だと思えてしまう量である。しかし、空中を泳いでいる霊のひとつが強くひかっては跡形もなく消えていくところも見ることができた。おそらくあれが消滅というものなのだろう。
「なるほど……タンポポ、この花のことは知ってるか?」
「いえ、こんな花、初めて見ました。とっても綺麗ですね」
「そうか……俺の世界で似たような花があって彼岸花っていうんだ」
タンポポに限らず、俺がこの世界にはないであろう熟語、単語を教えるとフリーズする。タンポポたちは意味をすり合わせている時間ということだったが、急にそんな状態になるので最初のころはとてもびっくりした。
「彼岸……天国や地獄とはまた違った場所なんですね」
「俺もそんなに詳しくないけど。そんな感じ……俺の世界の彼岸花は夏ぐらいに咲くからたぶん別なんだと思うけど」
とりあえず、これでひとつ謎は解けた。森の中に霊がいなかったのはここに引き寄せられたからである。解けた所で謎が更に増える。どう考えてもこの数自生するのはおかしい。誰かの手が入っているのは間違いない……しかし、この辺りの出身のタンポポが知らない植物を一体だれが何のためにここに植えたのかということである。
集落に霊がいない。であれば、霊がいそうな森の中へ俺とタンポポは向かうことにした。毎日のように弱肉強食が繰り返されている森の中であれば何らかの霊がいるのではないかと思ったが……
「へんですね。全然いません……怖いぐらいです」
「普通、霊が出てきた方がこわいもんだけど……確かにこれは逆にちょっと怖いな」
死霊も霊も動物霊すらいない。こうなってくると逆に不気味だ。周りも暗く足元も悪い。
「……なぁ、タンポポ、この辺り、イノシシとかでるんだったか?」
「え? あ、はい、そうですね」
「……動物の声とか聞こえるか?」
タンポポは一瞬ぽかんっとして何か違和感を覚えていたようだが、俺の質問にハッとして耳を澄ます。頭の上でぴこぴこと耳が動くのは可愛らしくいつまでも見て居られるがタンポポが必死そうなので黙って見守る。
「何にも聞こえませんね……」
「何の木の実かわからないけど、こういうものがある所って大体これを食べる生物が住み着くもんだけどな」
落ちている木の実……栗のいがいがに包まれたどんぐりのような木の実がそこら中に落ちている。これだけ落ちているのだからこれを餌にする動物のひとつやふたついてもおかしくない。そして、それを食べる肉食動物もいてしかるべきだ。
「危険がないのはいいけど、また別の意味で怖くなってくるな……こういうことができそうな死霊系の怪物っているのか?」
「昔、死霊魔法使いが土地そのものに『ここで息絶えるとゾンビになる』魔法を使って、一夜で町1つがゾンビになり……朝日と共に消え失せた。術士もゾンビになっていたので同時に消え失せ、残った日記で明らかになったという話は読んだことがありますけど」
なるほど、それなら確かに……集落の1人がゾンビを目撃し、報告すべきか悩んでいる内に森の動物がゾンビになり……朝日と共に消滅という流れなら、かなり無理やりだが、タンポポの妹の話も納得は出来る。
「だとしても身体は残るので……もう少しだけ森の中を歩いてもいいですか?」
「ナイフだけは抜いておいてくれよ……俺は何もできないから」
「はい」
タンポポは護身用のナイフを抜き身にして、ランプを頼りに慎重に森の中を歩いていく。俺はそんなタンポポの先を歩くようにして段差がないか確かめながら歩く。便利なことにどんなに暗闇でも俺はなんとなく見えることができるから便利だ。
ふわっ……と、なんとも言えない、心地よい香りが鼻腔をくすぐる。鼻に何かを感じたのはあの臭い聖水以来だったが、あれとは比べ物にならないぐらいにいい匂いだ。おそらくは花の匂いだろう。
「なぁ、タンポポ。何か匂いを感じるか?」
「……??? 特に感じませんけど……ひょっとして、なにか感じてるんですかっ!?」
「聖水とは全く違ういい匂いがする」
俺が聖水から嫌な臭いを感じたと話した時から、タンポポは聖水と真逆の効果を持つものを作れるのではないかと理論立てていた。タンポポにとって論文はお金を稼ぐ手段以上のものがあるようだと感じていたので何か手伝えるならそれは嬉しい。
「匂いをたどろうと思うがいいか?」
「もちろんですっ!」
不思議なことにどんなに風が吹いても匂いが飛ぶということもなく。どこからこの匂いが漂ってくるかはっきりとわかる。暫く歩くと不意に開けた場所に出る。
「わぁ……」
タンポポが短く声をあげる。俺は声をあげることすらできなかった。
そこには見渡す限り、絨毯のように彼岸花のような真っ赤な華の花畑だった。その上を無数の光る玉……霊が空中を泳いでいた。どちらも数えることが不可能だと思えてしまう量である。しかし、空中を泳いでいる霊のひとつが強くひかっては跡形もなく消えていくところも見ることができた。おそらくあれが消滅というものなのだろう。
「なるほど……タンポポ、この花のことは知ってるか?」
「いえ、こんな花、初めて見ました。とっても綺麗ですね」
「そうか……俺の世界で似たような花があって彼岸花っていうんだ」
タンポポに限らず、俺がこの世界にはないであろう熟語、単語を教えるとフリーズする。タンポポたちは意味をすり合わせている時間ということだったが、急にそんな状態になるので最初のころはとてもびっくりした。
「彼岸……天国や地獄とはまた違った場所なんですね」
「俺もそんなに詳しくないけど。そんな感じ……俺の世界の彼岸花は夏ぐらいに咲くからたぶん別なんだと思うけど」
とりあえず、これでひとつ謎は解けた。森の中に霊がいなかったのはここに引き寄せられたからである。解けた所で謎が更に増える。どう考えてもこの数自生するのはおかしい。誰かの手が入っているのは間違いない……しかし、この辺りの出身のタンポポが知らない植物を一体だれが何のためにここに植えたのかということである。
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