転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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不死者との邂逅

こっくりさん

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・こっくりさん
 こっくりさんのやり方はかなり地方性がある。子どもの間で流行ってしまった影響か形も名前すらも変わってしまっているものもある。しかし、変わっていないやり方というものもある。最初はコインを紙の真ん中に置いて、そのコインに自分の人差し指を置くおく。それに指を乗せて呼び出したい対象の名前を交えた呪文を口にする。コインがひとりでに動き出したら質問をする。最後に呼び出したこっくりさんに帰ってもらったら完了である。
「今回の場合は『こっくりさんこっくりさん、おいでくださいましたら、鳥居にお越しください』でいいはずだ。コインがひとりでにこの鳥居のマークに来たら降霊できた証拠になるらしい。注意事項としては指を離してはいけないということだな……」
「なるほど……不思議な降霊方法ですね」
 この世界はやろうと思えば霊を実際に見ることができる世界だ。霊を見たり交信するだけなら死霊魔術を習えばいいということを考えるとこういった降霊術が生まれなかったのもうなずける。
「普通は数人でやるもので……たしか、大本はウィジャ盤っていうこれに似たものが基になっていたはずだ。あれは確か穴の開いた板に全員が手を添える感じだったかな」
 俺は知っている範囲の知識をタンポポに伝えていく。タンポポがウキウキしているのを見ると是非とも何かが起こってほしいと思ってしまうが、こういったものを俺自身は信じていなかった。今は信じているかというと……やっぱり半信半疑である。霊の存在もこの世界だからいるのかもしれないと考えてしまう。聖騎士の素質と俺の世界の霊能力者を結び付けて考えたが、それはたまたま似ていただけかもしれないと思ってしまう。
「それでは……こっくりさん、こっくりさん、おいでくださいましたら、鳥居にお越しください」
 タンポポが銅貨に指を置いて何度か口に出して呼びかけてみたが、コインが動く様子もない。俺はペンの中から這い出して周りを確認してみたが、霊らしきものがやってくる様子もない。タンポポはコインから手を離し、腕組みをしてしばらく考える。
「ヤクモさんの世界に魔法や魔術は存在しないんですよね? そして、霊を見れる人も一握り……うーん。だとすると……」
 タンポポは難しい表情になりながら、声は楽し気にはずんでいる。何かを考えたり、するのが好きなのだとわかる声だ。もともと、これはタンポポに彼岸花を諦めさせるために俺が絞り出した策だったので、タンポポが少しでも元気になってくれれば俺はそれでよかった。そりゃ、何か起こってくれた方が元気にはなるのだろうが、今の様子でも十分元気を取り戻したようにみえる。
「▲▲▲、▲▲トリイ■■■」
 タンポポが急に訳の分からない言葉を話す。タンポポが魔術を意図的にきった状態で言葉を発したようだ。しかし、変化は起こらない……失敗かと思った瞬間、床からにゅっと小さな光の玉が登って来た。それを皮きりに四方八方から霊が集まってくる。
「うぉ。ちょっと、待ってろ。タンポポ。森から霊がこっち飛んできてる」
 俺は急いで壁から彼岸花畑があった方の壁から外を見てみる。あちらからたくさんの霊が此方に向けてふよふよと飛んでくるのが見える。
「ボクも見たいですっ!」
「タンポポはそこにいろ……手、離したら諸説あるが大体はろくなことにならないから」
 タンポポがそわそわしながら窓を覗こうとするが、窓は彼岸花畑があった方向とは反対側についており見ることは叶わない。しかし、あっという間に部屋中に霊が集まってしまう。彼岸花畑とは圧倒的に面積が違うここではみっちりとまぶしいぐらいに霊で部屋が溢れかえってしまっている。
「……タンポポ、これはどう思う……?」
魂の交流ソウルコンタクトは、どう考えても彼岸花畑まで声が届かないので……この降霊術の成果だと思います。あっ動きましたっ。す、すごい、霊が物理干渉してくるなんて聞いたことがないですよ」
 とても賑やかな状態になった部屋……俺には霊の光のせいで何が何やらわからないが、コインが動き始めたらしい。異世界だから当たり前と思う反面、俺は本当にできてしまったことに驚いていた。
「あとはこっくりさんに聞きたいことを聞けば教えてくれる。聞きたいことを全部聞き終えたら、こっくりさんこっくりさん、鳥居からお帰り下さいっと言って鳥居に銅貨が動いたらお終いだな。紙はしっかり燃やして、銅貨は明日の夜までに使わなきゃいけないはずだ」
「なるほど……ボクとしては見えない範囲、声の届かない範囲の霊を引き寄せたというだけで分厚い論文を書かなきゃいけないレベルなんですけど……聞きたいこと……聞きたいこと」
 特段なにか聞きたいことがあって呼び出したわけではなかった。面白半分でこういった儀式をすると手痛いしっぺ返しのようなものが怖い話では良くある話だ。タンポポに何事もないことを祈ると同時に何かあった時は俺ができる範囲で何とかしよう。とりあえずはタンポポを護れる位置へと移動する。
「とりあえず、死霊に関する事件があったかどうか聞いてみますね。▲▲▲▲▲▲?」
 タンポポの言葉に霊たちが話し合うようにぷるぷると動く。
「はいに動きました。やっぱり何か事件があったみたいです! えっと、えっと、どんな事件か、何が起こったかわかりますか? あ、えっと▲▲▲▲▲?」
 普段は霊と対話するときに魂の交流を使っている影響か、魂の交流を無意識に使ってしまう様だ。気が付いてから慌てて言い直す。
「ふん、ふんふん……えっ……ヤクモさん、ちょっと、まずいかもしれないです……」
「ん、何か問題か?」
「死霊の中で最強の一角に数えられるリッチー……その他に不死者というものがいてですね。普通の冒険者なら何とかなるかもしれないんですが、ボクたちとは相性が最悪で……」
 不死者……ゲームなどでは死霊の中にゾンビなども分類されることもある。この世界でもそういったものが死霊の中に数えられるということなのだろう。
「不死者は肉体を持っているので……物理的に強いんです。逆に物理攻撃が通るのでものすごく頑張れば魔法や魔術の使えない冒険者でも打ち倒せると言えば打ち倒せます」
 なるほど……そんなのが関わっていることを考えると……確かに相性はよくない。タンポポは冒険者をやっているが研究職らしく、運動はそこまで得意ではないのだ。
「▲▲▲? △△△? ……ヤクモさん、大変です。これすごく便利です。便利すぎて困ります。不死者は森の中にある小さな家に住んでいるらしいです。やっぱりあの彼岸花畑とも関係があるらしいです」
「……不死者っていうのは日光は?」
「もちろん、弱点ですね」
 ……うん、これは酷い……ミステリなどで霊能力が禁止されている理由がよくわかる。超常現象で答えを得るこれはチートすぎる。
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