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不死者との邂逅
棺桶の中の攻防
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・棺桶の中の攻防
タンポポに怖がられてしまったので、壁の中から出してもらい改めて状況を確認する。壁が崩壊し、棺桶にしっかりと日光が当たっている。とりあえず、これで棺桶の中に入っている吸血鬼は簡単に出てくることは出来なくなっただろう。
「ここからどうするんですか?」
「問題はそれなんだよな」
タンポポは非戦闘員である。戦闘に巻き込まれると死んでしまう可能性がある。なので、出来れば相手には棺桶の中にずっといてほしい。そもそも目的としては集落の人達をゾンビやグールにさせないこと。戦わずしてそれができるのであれば、そっちの方がいい。で、あるならばとりあえず話し合いだろう。安全に話し合うためとはいえ、家をぶち壊した相手の話を聞いてくれるとは思えないが物は試しである。
幸いなことに棺桶もしっかりと透過できるようなので話し合い自体は可能だろう。俺はなるべく驚かせないようにゆっくりと棺桶の中へと顔を入れていく。すぐそこに俺が見てきた中でも五指に入るだろう美貌の顔がある。近くで見るとその顔の良さがより一層わかる。白塗りして動かなかったら石膏像と見間違える自信がある。
『おい、なんのつもりだ。何か話が合ってこんなことをしているんだろ』
「あ、ああ、悪い」
頭の中に声が響いてくる。以前、冒険者ギルドでうけた魔法と同じような感覚だ。しかし、こちらの魔法の方がよどみなく綺麗に頭の中に響いている気がする。かなり慣れているという事なんだろうか。
「単刀直入にいうか……俺はヤクモだ。この付近で死霊系の怪物がでて何かしていると聞いて近くの集落に来ている」
『それぐらい知ってる。集落のやつらの目を通してみていたからな』
「なるほど、話が早くて助かる……集落の人がグールやゾンビになるのを防ぎたいんだが、どうすればいい?」
『僕が離れたいと思えばその時点で魂の汚染はなくなって死んでもゾンビやグールにはならずに済むはずだ』
交渉しなければならないというのに相手の見た目が幼いせいで敬語が簡単に出てきてくれない。というよりも……今の俺には生きる上で必要な人間関係というものが必要なくなってしまったので気が大きくなってきてしまっている気がする。たぶん、目の前にいる相手もかなり強いのだろうが……専門家がどうやったら消滅させられるか悩んでしまうぐらい俺は無敵らしいというのもあり、脅威を感じない。
「離れたいって……集落の人達はどんな状況なんだ?」
『僕の魂を少し入れてる状態でな、魂が僕ので汚染されている』
ひとつの身体に魂がふたつ入っている状態なのだろうか? 魂を分けてこいつは大丈夫なのだろうか? 俺の中で色んな疑問が沸き起こるが、問題はそこではない。原因が分かったので一度顔を棺桶から引き上げる。
「集落の人は魂をこいつので汚染されている状態なんだそうだ」
「な、なるほど、確かにその状態で死んでしまった場合、ゾンビやグールになってしまいます」
「どうにかできそうか?」
「ボクにはどうしようもないです。分離した魂に個別にお話して満足して離れてもらう方法もありますが……」
「もともとこいつだから、説得するなら大本を説得した方が早いと。仮にこいつを倒せるとしたらどうだ?」
「別の身体に入っている魂が消滅する保証がありません」
「ちなみに、ゾンビやグールに噛まれるとどうなる?」
「ゾンビやグールになります」
とてもとても厄介な状況らしい。放っておいたら村中にゾンビが溢れることになるようだ。棺桶に俺を入れてもらいタンポポが十分離れてから蓋を開けて倒してしまうという方法もあったが、それをして分離させている魂が消えなかったら、きっと説得には応じてくれないだろう。俺は再び棺桶の中に顔を入れる。
その瞬間、俺に何かが触れる。小さな手のように感じ、棺桶の中へと引きずり込まれる感覚。
『ふははははっ。馬鹿め。僕は死霊魔法使いだぞ? 死霊の扱い方を心得ているに決まっているだろう。準備しておいてよかった』
「霊に物理干渉ができるのか!?」
久しぶりに本当に触れられているという感触がある。こんな状況でなければその久しぶりの感覚を楽しめたのだろうが、こいつは明らかに何かを仕掛けようとしている。必死に振りほどこうと身体を動かすが見た目以上に力が強いのか、魔法の力なのか振りほどくことができない。
『くっ。確かに強靭な魂を持っているようだが、僕の敵じゃない。というかなんだ貴様、どうしてここまで魂が保持できている』
「知るかっ。話せっ」
『ふんっ。いいさ、魂に直接聞いてくれる』
牙をのぞかせながら大きく口を開いて俺の首筋に噛みついてくる。狭い棺桶の中では逃げ場はなく俺は噛みつかれてしまう。不思議なことに痛みはなく、少し心地よささえあった。
『っっっっ。これはっっっ。面白いっ』
あいつの声が小さく聞こえたのを最後に周りが急に静かになっていった。
タンポポに怖がられてしまったので、壁の中から出してもらい改めて状況を確認する。壁が崩壊し、棺桶にしっかりと日光が当たっている。とりあえず、これで棺桶の中に入っている吸血鬼は簡単に出てくることは出来なくなっただろう。
「ここからどうするんですか?」
「問題はそれなんだよな」
タンポポは非戦闘員である。戦闘に巻き込まれると死んでしまう可能性がある。なので、出来れば相手には棺桶の中にずっといてほしい。そもそも目的としては集落の人達をゾンビやグールにさせないこと。戦わずしてそれができるのであれば、そっちの方がいい。で、あるならばとりあえず話し合いだろう。安全に話し合うためとはいえ、家をぶち壊した相手の話を聞いてくれるとは思えないが物は試しである。
幸いなことに棺桶もしっかりと透過できるようなので話し合い自体は可能だろう。俺はなるべく驚かせないようにゆっくりと棺桶の中へと顔を入れていく。すぐそこに俺が見てきた中でも五指に入るだろう美貌の顔がある。近くで見るとその顔の良さがより一層わかる。白塗りして動かなかったら石膏像と見間違える自信がある。
『おい、なんのつもりだ。何か話が合ってこんなことをしているんだろ』
「あ、ああ、悪い」
頭の中に声が響いてくる。以前、冒険者ギルドでうけた魔法と同じような感覚だ。しかし、こちらの魔法の方がよどみなく綺麗に頭の中に響いている気がする。かなり慣れているという事なんだろうか。
「単刀直入にいうか……俺はヤクモだ。この付近で死霊系の怪物がでて何かしていると聞いて近くの集落に来ている」
『それぐらい知ってる。集落のやつらの目を通してみていたからな』
「なるほど、話が早くて助かる……集落の人がグールやゾンビになるのを防ぎたいんだが、どうすればいい?」
『僕が離れたいと思えばその時点で魂の汚染はなくなって死んでもゾンビやグールにはならずに済むはずだ』
交渉しなければならないというのに相手の見た目が幼いせいで敬語が簡単に出てきてくれない。というよりも……今の俺には生きる上で必要な人間関係というものが必要なくなってしまったので気が大きくなってきてしまっている気がする。たぶん、目の前にいる相手もかなり強いのだろうが……専門家がどうやったら消滅させられるか悩んでしまうぐらい俺は無敵らしいというのもあり、脅威を感じない。
「離れたいって……集落の人達はどんな状況なんだ?」
『僕の魂を少し入れてる状態でな、魂が僕ので汚染されている』
ひとつの身体に魂がふたつ入っている状態なのだろうか? 魂を分けてこいつは大丈夫なのだろうか? 俺の中で色んな疑問が沸き起こるが、問題はそこではない。原因が分かったので一度顔を棺桶から引き上げる。
「集落の人は魂をこいつので汚染されている状態なんだそうだ」
「な、なるほど、確かにその状態で死んでしまった場合、ゾンビやグールになってしまいます」
「どうにかできそうか?」
「ボクにはどうしようもないです。分離した魂に個別にお話して満足して離れてもらう方法もありますが……」
「もともとこいつだから、説得するなら大本を説得した方が早いと。仮にこいつを倒せるとしたらどうだ?」
「別の身体に入っている魂が消滅する保証がありません」
「ちなみに、ゾンビやグールに噛まれるとどうなる?」
「ゾンビやグールになります」
とてもとても厄介な状況らしい。放っておいたら村中にゾンビが溢れることになるようだ。棺桶に俺を入れてもらいタンポポが十分離れてから蓋を開けて倒してしまうという方法もあったが、それをして分離させている魂が消えなかったら、きっと説得には応じてくれないだろう。俺は再び棺桶の中に顔を入れる。
その瞬間、俺に何かが触れる。小さな手のように感じ、棺桶の中へと引きずり込まれる感覚。
『ふははははっ。馬鹿め。僕は死霊魔法使いだぞ? 死霊の扱い方を心得ているに決まっているだろう。準備しておいてよかった』
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久しぶりに本当に触れられているという感触がある。こんな状況でなければその久しぶりの感覚を楽しめたのだろうが、こいつは明らかに何かを仕掛けようとしている。必死に振りほどこうと身体を動かすが見た目以上に力が強いのか、魔法の力なのか振りほどくことができない。
『くっ。確かに強靭な魂を持っているようだが、僕の敵じゃない。というかなんだ貴様、どうしてここまで魂が保持できている』
「知るかっ。話せっ」
『ふんっ。いいさ、魂に直接聞いてくれる』
牙をのぞかせながら大きく口を開いて俺の首筋に噛みついてくる。狭い棺桶の中では逃げ場はなく俺は噛みつかれてしまう。不思議なことに痛みはなく、少し心地よささえあった。
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