転生を断ったら最強無敵の死霊になりました~八雲のゆるゆる復讐譚~

ろっぽんせん

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不死者との邂逅

事件解決?

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・事件解決?
「こ、こんなの受け取れませんよ!? あのバードが消滅していないことが知られたら教会が動くじゃないですか」
 混乱状態から立ち直ったタンポポがバードが書いたという論文を返そうとするが、バードはそれを受け取らない。
「もちろんお前の名前で発表するんだ、なるべく早めに頼む」
「ボクの名前で……ふむ。これって吸血鬼に関することじゃないですか!? こんなことを研究しているなんて思われたら今度はボクがお尋ね者になりかねないんですけど!」
 タンポポは受け取った論文をじっくりと読みながら、口を開く。眼は論文にくぎ付けなので興味深くはあるらしい。小難しいことは解らないが、タンポポが生き生きとしていることがわかるので、暫く眺めていたが話が平行線になりそうなのでそろそろ口を挟もうと思う。
「そもそも、バードはどうして1人でこんなところに住んでるんだよ」
「そりゃ、消滅していない、更にゾンビやグールや吸血鬼を生み出した存在だからそれを知られると教会が動くからだな。そして何よりも僕は美しいからな……僕はひとりでこの完璧できれいな顔をずっと見て居たいだけだというのにあいつらはそれを放っておいてくれない。美しさとは罪だな」
「まぁ、綺麗なのは認めるが明らかに理由は前者だけだろ! まぁ、うん。それならあれだ。集落の中で暮らせばいい。たぶん、お前がいるとわからなければ教会の奴らはやってこない」
「……確かにあの集落には教会はなかったが……そうだとしても教会の関係者が巡業にくるだろう」
「色々あって、追い出し運動が始まりつつあるんだよ……そのせいで霊関係が弱くなるかもしれないし、お前は重宝されると思うんだが」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください! た、確かに教会がないなら死霊魔法や死霊魔術をやっている人がいいのはそうですが、この人はいろいろと問題がある人でして、ボクたち死霊魔法や死霊魔術が忌避されるようになった原因の一部と言いますか……割と他人の迷惑、霊の尊厳など無視して実験をしてきた人なので」
 どうにもタンポポは反対のようだ。そしてタンポポが話した事実を俺は知らなかったので早計だったのかもしれない。しかし、この事実はしばらくすればバード自身も気が付いたことだと思う。それがほんの少し早まっただけ……と思うことにしよう。そうなるとこの森に住むにしても集落に住むにしても何らかの手を打たないといけない気がする。
「……あの、バードさん、この論文は事実なんでしょうか?」
「当たり前だろう! 僕が長年研究してきたことだからな」
「……ヤクモさん、バードさんに何か命令してみてください。こう、力を籠める感じで」
「は、無駄だぞ。魂の扱いは僕の方がうまい。しっかりと押さえ付けてあるからな」
 なんだかよくわからないが、とりあえず命令すればいいらしい。バードが何を言っているのかもよくわからないが……とりあえず、力を籠めるように命令? なんだろう……
「手をあげろ!」
 力が籠っていたかはわからないが、とりあえずひとつ命令をしてみる。するとバードの手がすっとあげられる。
「……なんだと!?」
「この論文に魂のことが書かれていまして……2つ以上の魂が入っている場合、より魂の濃い方が命令を下せるそうです、技術でカバーすることも出来るらしいんですが、ヤクモさんの規格外魂ならまぁ、こうなるかなと」
 どうやら、俺はこの吸血鬼を好きにどうにかできる権利を有してしまったらしい。
「うまくすれば、何か悪いことをした時や企んだ時も察知できるみたいですね……あとでこの論文をヤクモさんに読み聞かせしますね。そうすれば安心かと」
「いや、ま、まて、こんなことはあり得ない。僕は完全に抑え込んでいるのに……というかこの感覚は……ヤクモとかいったな、貴様は何者だ」
「何者だって言われても……俺について何か気が付いたなら言ってほしいんだが」
「貴様の魂はほんの僅かだが神格がある。かつて人々から崇められた聖女と似たような魂になっているんだ……どういうことだ?」
 心当たりがないわけではない、タンポポが食事の度に俺に対して祈ってくれている。俺自身、そこまで信心深いわけじゃないので祈る対象の名前を知らないので代わりにタンポポは俺に祈ってくれていたのだ。この辺りの人が似たように俺に対して祈っていたとしたら。鰯の頭も信心から……そんなことわざが俺の脳裏をよぎる。タンポポの町の規模はわからないが……このまま信仰が拡がった場合、一体どうなってしまうのか。予想の域を出ないが大変なことになりそうである。
「一応聞きたいんだが……信仰と神格に関係はあると思うか?」
「あるだろうな……その聖女はゼン神を崇めていたが、周りの信者は彼女そのものを崇めていた」
「信仰がなくなったら神格は消えると思うか?」
「消えるだろうな。その聖女も自身が信仰されるのを嫌い、自らを貶め、聖職者の地位を離れてからは神格はなくなった」
 そんなことを知っているバードはいったい何者なのか、伝説として語り継がれているだけあり、色々知っているのだろう。
 もしも、このまま色んな信仰を集めることができたなら、それはきっと復讐になるのかもしれない。
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