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幸か不幸か予定通り
衝撃で思い出した
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身体中に電流が走り、後頭部をパーンと叩かれたような音がした。
その瞬間ものすごい映像が頭の中に流れ込んできて、堪らず私は倒れ込んだ。
周りから、ざわざわと人の話す声が聞こえる。
「お気の毒…」
「自業自得よ…」
何これ?何これ?私は床についた自分の華奢な指を見詰めた。
水仕事なんてしてない綺麗な手…王妃の私の手。
「よいか。本日を持って第一王妃の権限を第二王妃に移す!以上だ」
そう言って私の旦那、国王陛下のクラシス=パイロ=ベイフィートは第二妃のプリエレアンナ様と二人で大広間から退出されて行った。
「まあ、立てないみたいよ、良い気味だわ」
いやいや、そうじゃないから!立てないのは旦那から見下り半を突き付けられたってことじゃないから!
私の前世、異世界人だった…
衝撃の事実を雷に打たれたみたいに思い出すなんて、しかもショックで腰を抜かすなんて…アイタタ…
私は自身の腰に治療魔法をかけた。魔法があって便利だった。
そして何とか立ち上がると、ヨロヨロしながら自分の部屋へ戻った。
あれ?
部屋の前に辿り着くと、私付きのメイドの二人がいる。何か大きめの旅行鞄のようなものを持って室内に入ろうとしている?
メイドの二人は私が帰って来たのに気が付くと、慌てて走り去ってしまった。
何だろう?
それは部屋に入って分かった。衣装部屋からドレスが引っ張り出されており、更に奥の宝石を保管している部屋は鍵穴を壊そうとしていた形跡があった。
成程、あの子達何か盗んでいこうとしていたのね。そりゃそうか、今まであの子達を虫けらのように扱っていたもの。恨んでいても仕方ないわね。あんな性悪女じゃね~
正直、自分で自分が苦手だわ。
私の名前はミランジェ=エスベラータ=ベイフィート。
名前まで性悪っぽいよね。
隣国のトキワステラーテ王国の元第二王女。年齢は18才。
このベイフィート王国の第一王妃だった。そう、だった。
形としては第一妃のまま据え置かれるだろう。だって第二妃は伯爵家のご出身だものね。まあ実質御側置きされるのは第二妃で私はお役御免と言う訳で…
あれ?私ご飯とかどうするの?お金は?外出とかしていいのかしら?
何せ記憶が戻るまでの私はすべて城の中で用事を済ませていた。自分は座っているだけで動くのはメイドのみ。
お酒を浴びるように飲んで高いドレスを注文しまくって宝石を買いまくっていた。幸いにも異性とのお付き合いはしていなくて、ふしだらな交際の心配だけはなかった。
他は問題だらけだけど…
これさ、メイド二人共いなくなったら普通の元王女殿下だったら困るよね?
まあ私は元異世界人で困りはしないけど。元々アパレルの縫製部に勤めていて手に職はあるし、一人暮らし歴20年の大ベテランだ。
38才のおばさんの死因がコンビニの前で転んで縁石に頭を強打って…冴えないな。
てか、コンビニを思い出していたらお腹空いてきた…。そうだ、部屋の横にミニキッチンがあったはず。豪華な私室の横のミニキッチンの中に入り、冷保管庫…つまりは氷室&冷蔵庫ね、の中を開けてみた。
「おいっケーキと果物しかないじゃないか」
それもそうか、夕食はどこかから運んで来ていたものね。これは困った…いきなり城の厨房に行って、ご飯をくれ…と言っても不審者丸出しではないか。
他の食器棚を開けて見ると、茶器や紅茶、黒茶と呼ばれているコーヒーっぽいものの豆はある。
よし…水道とガス?…魔力が動力源だが設備もされている。
「食材を準備出来ればここで調理は可能ね」
食材は市場…で買うのかな?そもそもスーパーとかコンビニとか無いはずよね。う~ん、市場とか城から近いのかな?それすらも知らないわ。
今までの自堕落生活のせいで、圧倒的な知識不足だと気が付いた。
とりあえず、果物(蜜柑っぽい)を剥いて、紅茶を入れて食べてみた。
「大丈夫ね、よし」
昔の感覚で湯を沸かす、茶器を洗う…。すべて同じ感覚で体が動く。家事全般は普通にこなせそうだ。
さて、一応の腹ごしらえは出来たので…部屋の中を一周してみた。
本棚はあるけれど、一冊も本は入ってない。読んでいた記憶もないし当たり前か。
クローゼットの中はギラギラしたドレスがぎっしり収まっている。クローゼット自体はなんと20畳間くらいあって、奥へ入ると靴やパーティーバッグがこれもぎっしり収まっていた。
後は隣の部屋に寝室と鍵のかけてある宝石類を置いている部屋。
胸元からチェーンにつけた鍵を取り出して、宝石類を置いてある部屋の鍵を開けた。
やむを得ない、何をするにもお金がいる。一番小ぶりでせめて生活必需品が買えるくらいの小さな宝石…大量にある宝石箱の奥の方から適当に掴んで巾着に入れた。
恐らく、またメイドがやって来る。そして次は宝石類からすべてを奪っていくだろう。
急いで巾着を鍵と同じく胸元に隠した。
手癖の悪いメイドだ…つまりそんな質のメイドしか私の側にはいなかった。自業自得だ。あんな傲慢な主に誰が付き従うものか…笑いが起きる。
主の質が悪いとメイドの質も落ちる…
私は廊下に出た。
すると近衛が二人、素早く寄って来た。
「外出はお控え下さい」
こんな時に外に遊びに行くと思われているのか。
「いえ、図書室に行きたいのですが構いませんか?」
「ぅえ?」
変な声を近衛のお兄様は出した。
そりゃそうだろう、今までそんな部屋に用事はなかったからね。
とりあえず知識を得るのは本からでしょう?
近衛のお兄様1人に誘われて、角を二度三度曲がると意外に近くに図書室はあった。
「ありがとう」
案内してくれたお兄様にお礼を言ってから、図書室に滑り込んだ。
確かに、全てを思い出す前の私は性悪だった。ただ今なら分かる。
私は自分の手を見た。キラキラと魔力の粒子が手から放出されている。目を上げると図書室の窓にキツイ見た目の銀髪のすごい美女が映ってる。
「何とかしなくちゃ…」
私が口を動かすと美女も同じく、口を動かしている。
私はまず本棚から数冊本を取り出した。
私はまず歴史書の中から自分の生まれた国、トキワステラーテ王国の歴史を読んだ。
トキワステラーテ王国は建国1200年になる。元々、初代の王が大陸一の治療術士『復活の御手』の使い手だと言われている。
我が国の歴代の王や王族は皆が、最上位治療術士と同等の治療術能力を持っている。
私はそんな中、どうやら先祖返りで世界最高の『復活の御手』の唯一の使い手らしい。
正直に言うと私は、この力を隠してきた。物心つく前は使っていたのかもしれないが、隠してきたつもりだ。
理由は簡単。
姉を押し退けて女王にはなりたくないし、一生誰かを癒す為だけに生きたくはない。
ところがそうやって能力を隠していると、国王陛下である父親に『能力の低いやる気の無い王女』という印象を与えてしまっていたらしい。
能力の低い王女は駒だとでもというのか、僅か15才でベイフィート王国へ嫁がされてしまったのだ。まあ、自分を隠しているのも疲れたし、嫁ぎ先でのびのびするか~と思っていたら、嫁いで来て気が付いた。
このベイフィート王国…特に王宮内は黒く澱んでいた。私くらいの治療術士でないと感じとれない僅かな暗黒の澱み…もしかして国の中枢の内側から瓦解しかけている?
そんな国で万が一国王陛下の御子を授かった場合、間違いなく私の能力も引き継いでしまう。こんな暗黒の澱みが巣食う場所で子育てなんて出来る?
嫌だ…早く逃げ出したい。
私は自堕落な王女のフリをした。
普通に逃げても追いかけられて捕まえられる。だったら追い出してもらえばいい。放逐されたいが為に、遊び回った。
今考えたらこのやり方はマズイよね?良くある『悪役令嬢転生』のアレと一緒よ。断罪されて処刑がオチだ。
でも良かった。一か八かの芝居を打って放逐ではないにしても、放置されるほうになったものね。
よしよし…。私は図書室でこの国の地図と他国の地図や歴史の載った本と冒険者ギルドとは、と書かれた本と小説の類を抱えた。本に魔法を使うと重さも軽減される。
本を抱えて図書室から出ると近衛のお兄様が3人に増えていた。どうしたの?
「お部屋にお戻り下さい」
あらまあ…恐らく国王陛下に報告に行ったのね?図書室にも自由に出入りさせてもらえないのか…。まあいいか!今度からは町の本屋さんで本は手に入れるからいいものね~。
「ご入用の物がありましたら私共がお部屋に届けますので」
「はい、分かりました」
私が素直に応じているから、先ほどから近衛のお兄様方の百面相が面白い。
そうして近衛のお兄様方に連行されるように部屋に戻ってみると、案の定部屋の前に5人くらいのメイドが居て私の姿が見えると、急いで逃げて行った。
部屋は荒らされていた。おかしいことに、近衛のお兄様方はこの現状に何も言わない。私はそのまま部屋に入ると奥のカギのかかっている部屋に行ってみた。
「あらら…惜しい」
鍵は途中まで壊せていたが、最終的に開けられなかったみたいだ。近衛のお兄様方はドアの外からこちらを窺っている。
私はさりげなく『復活の御手』の力を使った。これで私以外は誰も開けられない。
壊れた鍵が元に戻った。気が変わったのだ。この中の宝石なんて私には必要無い…と思っていたが、あのメイド達にくれてやるのも勿体ないと思ったのだ。
そう私が宝石をお金に換えて、市井で使って経済活動に貢献してあげればいいじゃないかと気が付いたのだ。
さて…部屋を片付けようかな。ああ、何だか楽しくなってきた!
私はまだ覗き込んでいる近衛のお兄様の前で扉を閉めると、部屋の掃除を始めた。
クローゼットに入っていた派手なドレスはほぼ、無くなっていた。靴もほとんどない。鞄も無い。
「いいでしょいいでしょう~これあれだね、洋裁を仕事にしてきた私への挑戦状だね?」
私はクローゼットに残っていた数枚の地味なドレスの飾りを外していった。
針と糸は辛うじてクローゼットの奥に刺繍用のものがあったのでそれで代用した。
ドレスの飾りを外し、糸切りバサミで大胆に裾をカットしていく。今度、洋裁道具一式買っておこうかな~
そして他に残っていたドレスも同様に飾りを外し裾をカットし、脹脛ぐらいまで隠れるワンピースにリメイクした。
「どうだ!流石、私!」
裾を切って余った布で巾着袋を縫っていく。そしてクローゼットにはストール類は残されていたので、ポンチョの形にリメイクした。
靴は歩きやすそうな踵のものが無いので、これも残されたひざ掛けや布で耐久性が心配だが柔らかめなローファーっぽいものが完成した。
「そうだ、魔法かけて耐久性をあげてみよう」
早速図書室で借りてきた『魔法の使い方』というタイトルの本を読む。
「なるほど、防御魔法と硬質化の魔法?嫌だ、靴擦れになっちゃうかも~解除魔法は…」
ああ、楽しいな。
自分の好きなことに時間使えるってこれたまんないね。喉が渇いて来たので、コーヒーっぽい飲み物を沸かして飲んでみた。戸棚から砂糖っぽいものを出してきて舐めてみた。
「よしよし、うん」
ばっちりと、コーヒーだった。コーヒー豆というより小豆みたいな豆、名前なんて言うのかな~市場で買えるようにしておきたいな。
自分のリメイクした服に着替えると、髪を解き…一つ括りにしてまとめ上げた。ポンチョを被ると鏡の前に立つ。
「いけない、派手メイクのままだった」
私は洗面台で化粧を落として、化粧水だけを塗ってみた。
「まだ若いから肌がピチピチね~」
これで準備は整った。まずは腹ごしらえだ。この部屋の前は近衛のお兄様が見張っている。
脱出ルートは『魔法を使う』しかない。
私は先ほど読んだ魔法の本を見ながら、転移魔法を試みた。
魔力の粒子が体を包む。体に浮遊感を感じ、何かに引っ張られる感覚が2、3秒した後にゆっくりと目を開けて見た。
あ…あれ?
どこだろう、ここ?
どうやらいきなり知らない所…恐らく市井の路地?だと思われる所に転移してしまったようだ。
路地から少し顔を出して辺りを行きかう人達の姿、服装…言葉遣いなどを観察する。
よし、今の私が歩いていても違和感はなさそうだ。私は路地から表通りへと足を踏み出した。
さあ、今日から新たに頑張るわよ!
その瞬間ものすごい映像が頭の中に流れ込んできて、堪らず私は倒れ込んだ。
周りから、ざわざわと人の話す声が聞こえる。
「お気の毒…」
「自業自得よ…」
何これ?何これ?私は床についた自分の華奢な指を見詰めた。
水仕事なんてしてない綺麗な手…王妃の私の手。
「よいか。本日を持って第一王妃の権限を第二王妃に移す!以上だ」
そう言って私の旦那、国王陛下のクラシス=パイロ=ベイフィートは第二妃のプリエレアンナ様と二人で大広間から退出されて行った。
「まあ、立てないみたいよ、良い気味だわ」
いやいや、そうじゃないから!立てないのは旦那から見下り半を突き付けられたってことじゃないから!
私の前世、異世界人だった…
衝撃の事実を雷に打たれたみたいに思い出すなんて、しかもショックで腰を抜かすなんて…アイタタ…
私は自身の腰に治療魔法をかけた。魔法があって便利だった。
そして何とか立ち上がると、ヨロヨロしながら自分の部屋へ戻った。
あれ?
部屋の前に辿り着くと、私付きのメイドの二人がいる。何か大きめの旅行鞄のようなものを持って室内に入ろうとしている?
メイドの二人は私が帰って来たのに気が付くと、慌てて走り去ってしまった。
何だろう?
それは部屋に入って分かった。衣装部屋からドレスが引っ張り出されており、更に奥の宝石を保管している部屋は鍵穴を壊そうとしていた形跡があった。
成程、あの子達何か盗んでいこうとしていたのね。そりゃそうか、今まであの子達を虫けらのように扱っていたもの。恨んでいても仕方ないわね。あんな性悪女じゃね~
正直、自分で自分が苦手だわ。
私の名前はミランジェ=エスベラータ=ベイフィート。
名前まで性悪っぽいよね。
隣国のトキワステラーテ王国の元第二王女。年齢は18才。
このベイフィート王国の第一王妃だった。そう、だった。
形としては第一妃のまま据え置かれるだろう。だって第二妃は伯爵家のご出身だものね。まあ実質御側置きされるのは第二妃で私はお役御免と言う訳で…
あれ?私ご飯とかどうするの?お金は?外出とかしていいのかしら?
何せ記憶が戻るまでの私はすべて城の中で用事を済ませていた。自分は座っているだけで動くのはメイドのみ。
お酒を浴びるように飲んで高いドレスを注文しまくって宝石を買いまくっていた。幸いにも異性とのお付き合いはしていなくて、ふしだらな交際の心配だけはなかった。
他は問題だらけだけど…
これさ、メイド二人共いなくなったら普通の元王女殿下だったら困るよね?
まあ私は元異世界人で困りはしないけど。元々アパレルの縫製部に勤めていて手に職はあるし、一人暮らし歴20年の大ベテランだ。
38才のおばさんの死因がコンビニの前で転んで縁石に頭を強打って…冴えないな。
てか、コンビニを思い出していたらお腹空いてきた…。そうだ、部屋の横にミニキッチンがあったはず。豪華な私室の横のミニキッチンの中に入り、冷保管庫…つまりは氷室&冷蔵庫ね、の中を開けてみた。
「おいっケーキと果物しかないじゃないか」
それもそうか、夕食はどこかから運んで来ていたものね。これは困った…いきなり城の厨房に行って、ご飯をくれ…と言っても不審者丸出しではないか。
他の食器棚を開けて見ると、茶器や紅茶、黒茶と呼ばれているコーヒーっぽいものの豆はある。
よし…水道とガス?…魔力が動力源だが設備もされている。
「食材を準備出来ればここで調理は可能ね」
食材は市場…で買うのかな?そもそもスーパーとかコンビニとか無いはずよね。う~ん、市場とか城から近いのかな?それすらも知らないわ。
今までの自堕落生活のせいで、圧倒的な知識不足だと気が付いた。
とりあえず、果物(蜜柑っぽい)を剥いて、紅茶を入れて食べてみた。
「大丈夫ね、よし」
昔の感覚で湯を沸かす、茶器を洗う…。すべて同じ感覚で体が動く。家事全般は普通にこなせそうだ。
さて、一応の腹ごしらえは出来たので…部屋の中を一周してみた。
本棚はあるけれど、一冊も本は入ってない。読んでいた記憶もないし当たり前か。
クローゼットの中はギラギラしたドレスがぎっしり収まっている。クローゼット自体はなんと20畳間くらいあって、奥へ入ると靴やパーティーバッグがこれもぎっしり収まっていた。
後は隣の部屋に寝室と鍵のかけてある宝石類を置いている部屋。
胸元からチェーンにつけた鍵を取り出して、宝石類を置いてある部屋の鍵を開けた。
やむを得ない、何をするにもお金がいる。一番小ぶりでせめて生活必需品が買えるくらいの小さな宝石…大量にある宝石箱の奥の方から適当に掴んで巾着に入れた。
恐らく、またメイドがやって来る。そして次は宝石類からすべてを奪っていくだろう。
急いで巾着を鍵と同じく胸元に隠した。
手癖の悪いメイドだ…つまりそんな質のメイドしか私の側にはいなかった。自業自得だ。あんな傲慢な主に誰が付き従うものか…笑いが起きる。
主の質が悪いとメイドの質も落ちる…
私は廊下に出た。
すると近衛が二人、素早く寄って来た。
「外出はお控え下さい」
こんな時に外に遊びに行くと思われているのか。
「いえ、図書室に行きたいのですが構いませんか?」
「ぅえ?」
変な声を近衛のお兄様は出した。
そりゃそうだろう、今までそんな部屋に用事はなかったからね。
とりあえず知識を得るのは本からでしょう?
近衛のお兄様1人に誘われて、角を二度三度曲がると意外に近くに図書室はあった。
「ありがとう」
案内してくれたお兄様にお礼を言ってから、図書室に滑り込んだ。
確かに、全てを思い出す前の私は性悪だった。ただ今なら分かる。
私は自分の手を見た。キラキラと魔力の粒子が手から放出されている。目を上げると図書室の窓にキツイ見た目の銀髪のすごい美女が映ってる。
「何とかしなくちゃ…」
私が口を動かすと美女も同じく、口を動かしている。
私はまず本棚から数冊本を取り出した。
私はまず歴史書の中から自分の生まれた国、トキワステラーテ王国の歴史を読んだ。
トキワステラーテ王国は建国1200年になる。元々、初代の王が大陸一の治療術士『復活の御手』の使い手だと言われている。
我が国の歴代の王や王族は皆が、最上位治療術士と同等の治療術能力を持っている。
私はそんな中、どうやら先祖返りで世界最高の『復活の御手』の唯一の使い手らしい。
正直に言うと私は、この力を隠してきた。物心つく前は使っていたのかもしれないが、隠してきたつもりだ。
理由は簡単。
姉を押し退けて女王にはなりたくないし、一生誰かを癒す為だけに生きたくはない。
ところがそうやって能力を隠していると、国王陛下である父親に『能力の低いやる気の無い王女』という印象を与えてしまっていたらしい。
能力の低い王女は駒だとでもというのか、僅か15才でベイフィート王国へ嫁がされてしまったのだ。まあ、自分を隠しているのも疲れたし、嫁ぎ先でのびのびするか~と思っていたら、嫁いで来て気が付いた。
このベイフィート王国…特に王宮内は黒く澱んでいた。私くらいの治療術士でないと感じとれない僅かな暗黒の澱み…もしかして国の中枢の内側から瓦解しかけている?
そんな国で万が一国王陛下の御子を授かった場合、間違いなく私の能力も引き継いでしまう。こんな暗黒の澱みが巣食う場所で子育てなんて出来る?
嫌だ…早く逃げ出したい。
私は自堕落な王女のフリをした。
普通に逃げても追いかけられて捕まえられる。だったら追い出してもらえばいい。放逐されたいが為に、遊び回った。
今考えたらこのやり方はマズイよね?良くある『悪役令嬢転生』のアレと一緒よ。断罪されて処刑がオチだ。
でも良かった。一か八かの芝居を打って放逐ではないにしても、放置されるほうになったものね。
よしよし…。私は図書室でこの国の地図と他国の地図や歴史の載った本と冒険者ギルドとは、と書かれた本と小説の類を抱えた。本に魔法を使うと重さも軽減される。
本を抱えて図書室から出ると近衛のお兄様が3人に増えていた。どうしたの?
「お部屋にお戻り下さい」
あらまあ…恐らく国王陛下に報告に行ったのね?図書室にも自由に出入りさせてもらえないのか…。まあいいか!今度からは町の本屋さんで本は手に入れるからいいものね~。
「ご入用の物がありましたら私共がお部屋に届けますので」
「はい、分かりました」
私が素直に応じているから、先ほどから近衛のお兄様方の百面相が面白い。
そうして近衛のお兄様方に連行されるように部屋に戻ってみると、案の定部屋の前に5人くらいのメイドが居て私の姿が見えると、急いで逃げて行った。
部屋は荒らされていた。おかしいことに、近衛のお兄様方はこの現状に何も言わない。私はそのまま部屋に入ると奥のカギのかかっている部屋に行ってみた。
「あらら…惜しい」
鍵は途中まで壊せていたが、最終的に開けられなかったみたいだ。近衛のお兄様方はドアの外からこちらを窺っている。
私はさりげなく『復活の御手』の力を使った。これで私以外は誰も開けられない。
壊れた鍵が元に戻った。気が変わったのだ。この中の宝石なんて私には必要無い…と思っていたが、あのメイド達にくれてやるのも勿体ないと思ったのだ。
そう私が宝石をお金に換えて、市井で使って経済活動に貢献してあげればいいじゃないかと気が付いたのだ。
さて…部屋を片付けようかな。ああ、何だか楽しくなってきた!
私はまだ覗き込んでいる近衛のお兄様の前で扉を閉めると、部屋の掃除を始めた。
クローゼットに入っていた派手なドレスはほぼ、無くなっていた。靴もほとんどない。鞄も無い。
「いいでしょいいでしょう~これあれだね、洋裁を仕事にしてきた私への挑戦状だね?」
私はクローゼットに残っていた数枚の地味なドレスの飾りを外していった。
針と糸は辛うじてクローゼットの奥に刺繍用のものがあったのでそれで代用した。
ドレスの飾りを外し、糸切りバサミで大胆に裾をカットしていく。今度、洋裁道具一式買っておこうかな~
そして他に残っていたドレスも同様に飾りを外し裾をカットし、脹脛ぐらいまで隠れるワンピースにリメイクした。
「どうだ!流石、私!」
裾を切って余った布で巾着袋を縫っていく。そしてクローゼットにはストール類は残されていたので、ポンチョの形にリメイクした。
靴は歩きやすそうな踵のものが無いので、これも残されたひざ掛けや布で耐久性が心配だが柔らかめなローファーっぽいものが完成した。
「そうだ、魔法かけて耐久性をあげてみよう」
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ああ、楽しいな。
自分の好きなことに時間使えるってこれたまんないね。喉が渇いて来たので、コーヒーっぽい飲み物を沸かして飲んでみた。戸棚から砂糖っぽいものを出してきて舐めてみた。
「よしよし、うん」
ばっちりと、コーヒーだった。コーヒー豆というより小豆みたいな豆、名前なんて言うのかな~市場で買えるようにしておきたいな。
自分のリメイクした服に着替えると、髪を解き…一つ括りにしてまとめ上げた。ポンチョを被ると鏡の前に立つ。
「いけない、派手メイクのままだった」
私は洗面台で化粧を落として、化粧水だけを塗ってみた。
「まだ若いから肌がピチピチね~」
これで準備は整った。まずは腹ごしらえだ。この部屋の前は近衛のお兄様が見張っている。
脱出ルートは『魔法を使う』しかない。
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魔力の粒子が体を包む。体に浮遊感を感じ、何かに引っ張られる感覚が2、3秒した後にゆっくりと目を開けて見た。
あ…あれ?
どこだろう、ここ?
どうやらいきなり知らない所…恐らく市井の路地?だと思われる所に転移してしまったようだ。
路地から少し顔を出して辺りを行きかう人達の姿、服装…言葉遣いなどを観察する。
よし、今の私が歩いていても違和感はなさそうだ。私は路地から表通りへと足を踏み出した。
さあ、今日から新たに頑張るわよ!
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全43話+番外編です。
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