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幸か不幸か予定通り
予定通りにならなかった
リュー君の後に続いて部屋に入ると3人男性が居て、ワランジさんと後の2人はなんと知っている魔質の方だった。
お1人は南の辺境伯、カッシーラ伯だ。国王陛下の腹違いの弟にあたる。もう一人は公爵家の嫡男のマジアリート様だ。これまた国王陛下の従弟にあたられる。一応、私の元親戚?の皆さまのようだ。
「お久しぶりです。カッシーラ伯。マジアリート様も御機嫌よう」
私が淑女の礼をして膝を落としてもカッシーラ伯もマジアリート様も微動だにしない。
はあぁ…私って嫌われてるな~性格悪いしな。
「ミランジェ、座って」
リュー君に促されて元親戚の対面のソファに腰かけた。カッシーラ伯とマジアリート様の魔質は綺麗だ。さすが王族筋、魔力も大きい。
「伯らはこの冒険者ギルドに依頼で訪れたのだ。このベイフィールド王国の辺境伯領に魔獣が溢れて困っていると…国に嘆願をしても、子供の使いのような兵士しか寄越さんらしい」
思わず辺境伯…元義弟の顔を見た。しかし義弟は私を睨んでくる。そこでマジアリート様が口を開いた。
「こうなればミランジェ妃のご実家のトキワステラーテ王国から兵をお借り出来ないかとお願いに伺いたく今日、カッシーラ伯は自領からこちらに来られていたのですが…ミランジェ妃は愛人と逃げた…としかも、城の宝物庫を荒らしていた…と。今、城は大変な騒ぎになっています」
「えええっ!?」
仰天して元国王妃なのを忘れて大声を出してしまった。わた…私が、宝物庫に盗みに入ったですって!?
「ミランジェ…お前が市井で一人で居た…というのは放逐されたので間違いないよな?その理由は何だ?」
リュー君に聞かれて、ここでその話をしなくちゃいけないの~と困ってしまった。自分の身の上話をするということは、『復活の御手』のことも言わなくちゃいけないし…。ちょっと辺境伯に聞いてみようかしら…。
「あの、少しお聞きしたいことが…」
「何でしょうか?」
ああ…やっぱり弟なだけあってクラシスに似ているわ…
「魔獣が溢れ出したのは5年ほど前からでは?」
辺境伯は身じろいだ。
「ええ…そうですね。それぐらいからです」
やっぱりそうか…私が嫁いで来て城の内部に巣食う黒い魔力の塊…年々大きくなっているけど成長速度からして、逆算したら5年前くらいから芽吹いた感じだもの。あの魔力の塊は、魔の眷属を呼び寄せている。私が城にいる時はあいつらは私には近づいて来なかった…。だけど周りの人は少しづつ黒い魔に侵されつつあった。
その当時のミランジェは自分可愛さに他の人を助けようなんて考えてなかったけどね。性格悪いから、私。
「ミランジェ何か知っているのか?」
お地蔵様からとんでもない威圧的な魔圧が放たれる!
こりゃ…さすがの自愛溢れるお地蔵様、リュー君も怒るんじゃないかな…やっぱりこの話し合いが終わったら地の果て?があるかどうかは分からないけれど、逃げられる所まで逃げてやろう。
「ベイフィールド城の内部には禍々しい魔の塊が巣食っております。アレが魔の眷属を呼び寄せているのです」
室内を静寂が包む…
ほらね?誰も信じないでしょ?だから言いたくなかったのよ。どうせここでまた言い出すわよ。
「何を言い出すかと思えば…。そんなことより盗んだ宝物をお返し頂こう」
マジアリート様が私を睨みつけながら言った。
ほら、やっぱり。どうせ誰も信用してくれないと思ったのよ。だから言わなかったし、言えなかった。
「そんなもの盗んでいません」
「マジアリート、先ほども言ったがミランジェは一人で大通りを歩いていた。手荷物は背中に背負っている袋のみだった」
「愛人と共謀しているそうじゃないですか!その愛人が宝物を思っているのですよ」
「愛人って誰?」
「さぁ?」
リュー君に聞かれたけど、該当する人物が思い当たらない。
「あ、だったら、今からミランジェが住んでいる家に皆で行ってみるっていうのはどう?」
「ぎゃっ!?お地蔵っ!何を言い出すかと思えばっ…今、どさくさで言っちゃうけど今ここにいるマジアリート様とカッシーラ伯といえば貴族の若いお嬢様方の人気を二分する独身イケメンの代表格の2人なのよ!そのおふたりにあの小汚い家にお越し頂くっていうのなら、お掃除をする時間に30分は欲しいところよね!」
「ち…ちょっと待て!さっきはウチ来る?とか軽いノリで俺をその小汚い?所に誘っていたじゃないか!?イケ?何かわかんないけど、俺には汚いままでよくって、カッシーラ伯達は綺麗にしておかなくちゃいけないって、何だか差別じゃねーか?」
「元ぽっちゃりのくせに贅沢よっ!」
「ぽっちゃりって言うな!」
「ゲホン、ゴホン…」
カッシーラ伯の咳払いにハッとしてリュー君と私はソファに座り直した。
「兎に角、その家とやらを確かめさせても貰っても宜しいでしょうか?」
私は溜め息を一つついてから、カッシーラ伯に頷いて見せた。
また取り調べを受ける被疑者の姿、再びである。商店街の外れに向かう足取りが重くなる。
「こちらで御座います」
ゾロゾロと異様な集団は商店街の外れの、我が家の前で止まった。
私は一同を振り返った…皆さま、ポカンとしている。
「馬小屋…でしょうか?」
「マジアリート様、一応私の一人住まいの民家です」
「手で押せば倒れるのでは?」
「カッシーラ伯、私は無事に室内で生存しておりました」
「ボロいな…」
「……ちっ」
お地蔵様には舌打ちだけして威嚇しておいた。
私はリュックサックの中から鍵を取り出すと、扉の鍵を開け中に男性達を招き入れた。
「中は意外にしっかりしていますね」
「魔法を使いましたから」
私がそう答えるとカッシーラ伯とマジアリート様とリュー君…それと草鞋ことワランジさんの4人は私の顔をマジマジと見詰めてきた。
「復活の御手の力を使いましたから」
皆が目を剥いた。と、同時に何かを叫んだのですぐに消音魔法を張った。
因みにどうでもいいことだけれども、この家には元店舗の部分で使っていたレジ置き場?のようなカウンターはあるが、住居スペースには家具類が一切ない。ベッドもない。男性陣は一斉に室内の家探しに向かって行った。
そして10分少々で戻って来た。
「家具も何も無いね」
「だって今日借りたばかりなんですもの」
マジアリート様は最初の頃より、私に対する警戒する魔質を緩められている。元々同い年だし、言葉使いもちょっと気安くなっている気がしている。
「借りた…ってミランジェが家屋斡旋所に行ったの?」
知らなかった…不動産屋さんってこの世界じゃそんな呼び名なの?道行くおば様に「住む家を貸してくれる商会ってどこですか?」とかしか聞いてないから…
「ええ、三軒ほど回って探したのよ。値切ってみたの!ここの一ヶ月のお家賃銀貨3枚よ!」
因みに銀貨3枚は大体4500円ほどだ。男性達は恐らくワランジさん以外はお坊ちゃん達だ。皆、ぎゃ…嘘だ!と悲鳴を上げた。
「馬小屋並みの広さとはいえ、銀貨三枚って俺の昼飯代くらいだぞ?」
嘘でしょ?昼食代4500円も使っているの?私はカッシーラ伯をジロリと睨んだ。カッシーラ伯は何だよ?と小声で聞いてきた。
「食事代高すぎますよ。一食ワンコイ…失礼一日銀貨一枚でもいけますよ」
「嘘だろ!?」
「リュー君が驚いてどうするのよ?私はもっと安くあげられるわよ?外食するから高いのでしょう?お弁当になさいな」
「オベントー?」
お坊ちゃん達は皆小首を傾げている。あれ?この世界にお弁当ってないのかしら?…と思ったら草鞋ことワランジさんが、そうですよ~、と助け船を出してくれた。
「手作りで持って行けば材料費だけで食事代大分安く上がりますよ!」
「そうよね?ワランジさん!昼食お弁当にしたら月に金貨二枚は節約できるわね!」
ワランジさんと節約トークを繰り広げていたらお坊ちゃん達はドン引きしていたみたいで、気が付いたら三人とも店舗用のカウンターの上に上がって座り込んでいた。あら?ごめんあそばせ~。私とワランジさんはリュー君のお傍に駆け寄った。リュー君は、もう気が済んだ?と聞いてから話し出した。
「さっきも言っていたけど『復活の御手』ってトキワステラーテ王国の建国者の初代王のあの力のこと?」
私はリュー君に何度も頷いてみせた。でもリュー君は怪訝な顔していた。
「でもさ、子供の時からミランジェの事知っているけど、そんな力持ってるって言ってたっけ?」
「黙っていたもの」
「どうして?」
「だって復活の御手の力が使えるって言えば女王にさせられちゃうでしょ?」
「そうなの?」
「え?」
私とリュー君のやり取りを黙って聞いていたマジアリート様が突然会話に加わってきた。
「そうなの?だってトキワステラーテ王国って継承権は生まれ年順だろう?ミランジェ妃の上に姉上がいるなら継承権は変わらないと思うけど?」
そ、そうなの?マジアリート様をマジマジと見てしまう。あれ、駄洒落を言ってしまったよ。
「ミランジェ、復活の御手が女王になるって誰から聞いたんだよ」
「……自己判断?」
リュー君、カッシーラ伯、マジアリート様3人が同時に大きな溜め息をついた。
「短慮だ」
「聞けばすむことだ」
「俺に相談しろよ~」
「それはマズいっすよ」
カッシーラ伯、マジアリート様…地蔵とおまけに草鞋にまで言われて、思わずムッとしてしまう。
「でも復活の御手の力が使えたら、自分の自由な時間が…」
「王女殿下にお生まれなら民の為、国の為に御身を捧げなくてはいけないのはご存じのはずだ」
ひぇぇぇ!カッシーラ伯に刀でズバッと切り付けられられたみたいな、心の衝撃があったよ。今なら分かるけど、このミランジェ王女様は割とおバカなんだよ…復活の御手の力→女王になっちゃう→自由に遊べない→王族やめちゃえ…なんて短絡的思考のもと、穴だらけの放逐計画を考えてしまったのよ。
自分じゃないけど、自分の起こした計画なのよね…。くぅぅ…アホのミランジェめ!自分だけどさぁ。
「復活の御手の力って、伝承に書いてある通りなの?例えば壊れたものを完全復活させることが出来るって」
リュー君が小首を傾げているので、何か試せないかな~と周りを見てみた。
「ああ、コレが良いわ。皆さまご注目を~」
この家の鍵を取り出した。年季の入った鍵だ。魔法で施錠しているのでこの鍵はお飾りなので、錆びてボロボロのままにしていたけど…
私は掌に鍵を乗せると、復活の御手の力を鍵に注いだ。淡い光に包まれて錆び錆びの鍵は…白銀色の輝きを放つ綺麗な鍵の姿になっていた。
「おおおっ!」
男性陣の歓喜の声があがる。
「素晴らしいな…まさに在りし日の姿に復元する力か…他にはどういう力が?」
カッシーラ伯に問われたので、もう隠すのは諦めた。宝物ドロボーという疑いをかけられているのだ。ここで嘘をついて逃れてもバレた時に、信じてもらえなくなるかもしれない。
「ではお話致します」
私は顔を上げた。
お1人は南の辺境伯、カッシーラ伯だ。国王陛下の腹違いの弟にあたる。もう一人は公爵家の嫡男のマジアリート様だ。これまた国王陛下の従弟にあたられる。一応、私の元親戚?の皆さまのようだ。
「お久しぶりです。カッシーラ伯。マジアリート様も御機嫌よう」
私が淑女の礼をして膝を落としてもカッシーラ伯もマジアリート様も微動だにしない。
はあぁ…私って嫌われてるな~性格悪いしな。
「ミランジェ、座って」
リュー君に促されて元親戚の対面のソファに腰かけた。カッシーラ伯とマジアリート様の魔質は綺麗だ。さすが王族筋、魔力も大きい。
「伯らはこの冒険者ギルドに依頼で訪れたのだ。このベイフィールド王国の辺境伯領に魔獣が溢れて困っていると…国に嘆願をしても、子供の使いのような兵士しか寄越さんらしい」
思わず辺境伯…元義弟の顔を見た。しかし義弟は私を睨んでくる。そこでマジアリート様が口を開いた。
「こうなればミランジェ妃のご実家のトキワステラーテ王国から兵をお借り出来ないかとお願いに伺いたく今日、カッシーラ伯は自領からこちらに来られていたのですが…ミランジェ妃は愛人と逃げた…としかも、城の宝物庫を荒らしていた…と。今、城は大変な騒ぎになっています」
「えええっ!?」
仰天して元国王妃なのを忘れて大声を出してしまった。わた…私が、宝物庫に盗みに入ったですって!?
「ミランジェ…お前が市井で一人で居た…というのは放逐されたので間違いないよな?その理由は何だ?」
リュー君に聞かれて、ここでその話をしなくちゃいけないの~と困ってしまった。自分の身の上話をするということは、『復活の御手』のことも言わなくちゃいけないし…。ちょっと辺境伯に聞いてみようかしら…。
「あの、少しお聞きしたいことが…」
「何でしょうか?」
ああ…やっぱり弟なだけあってクラシスに似ているわ…
「魔獣が溢れ出したのは5年ほど前からでは?」
辺境伯は身じろいだ。
「ええ…そうですね。それぐらいからです」
やっぱりそうか…私が嫁いで来て城の内部に巣食う黒い魔力の塊…年々大きくなっているけど成長速度からして、逆算したら5年前くらいから芽吹いた感じだもの。あの魔力の塊は、魔の眷属を呼び寄せている。私が城にいる時はあいつらは私には近づいて来なかった…。だけど周りの人は少しづつ黒い魔に侵されつつあった。
その当時のミランジェは自分可愛さに他の人を助けようなんて考えてなかったけどね。性格悪いから、私。
「ミランジェ何か知っているのか?」
お地蔵様からとんでもない威圧的な魔圧が放たれる!
こりゃ…さすがの自愛溢れるお地蔵様、リュー君も怒るんじゃないかな…やっぱりこの話し合いが終わったら地の果て?があるかどうかは分からないけれど、逃げられる所まで逃げてやろう。
「ベイフィールド城の内部には禍々しい魔の塊が巣食っております。アレが魔の眷属を呼び寄せているのです」
室内を静寂が包む…
ほらね?誰も信じないでしょ?だから言いたくなかったのよ。どうせここでまた言い出すわよ。
「何を言い出すかと思えば…。そんなことより盗んだ宝物をお返し頂こう」
マジアリート様が私を睨みつけながら言った。
ほら、やっぱり。どうせ誰も信用してくれないと思ったのよ。だから言わなかったし、言えなかった。
「そんなもの盗んでいません」
「マジアリート、先ほども言ったがミランジェは一人で大通りを歩いていた。手荷物は背中に背負っている袋のみだった」
「愛人と共謀しているそうじゃないですか!その愛人が宝物を思っているのですよ」
「愛人って誰?」
「さぁ?」
リュー君に聞かれたけど、該当する人物が思い当たらない。
「あ、だったら、今からミランジェが住んでいる家に皆で行ってみるっていうのはどう?」
「ぎゃっ!?お地蔵っ!何を言い出すかと思えばっ…今、どさくさで言っちゃうけど今ここにいるマジアリート様とカッシーラ伯といえば貴族の若いお嬢様方の人気を二分する独身イケメンの代表格の2人なのよ!そのおふたりにあの小汚い家にお越し頂くっていうのなら、お掃除をする時間に30分は欲しいところよね!」
「ち…ちょっと待て!さっきはウチ来る?とか軽いノリで俺をその小汚い?所に誘っていたじゃないか!?イケ?何かわかんないけど、俺には汚いままでよくって、カッシーラ伯達は綺麗にしておかなくちゃいけないって、何だか差別じゃねーか?」
「元ぽっちゃりのくせに贅沢よっ!」
「ぽっちゃりって言うな!」
「ゲホン、ゴホン…」
カッシーラ伯の咳払いにハッとしてリュー君と私はソファに座り直した。
「兎に角、その家とやらを確かめさせても貰っても宜しいでしょうか?」
私は溜め息を一つついてから、カッシーラ伯に頷いて見せた。
また取り調べを受ける被疑者の姿、再びである。商店街の外れに向かう足取りが重くなる。
「こちらで御座います」
ゾロゾロと異様な集団は商店街の外れの、我が家の前で止まった。
私は一同を振り返った…皆さま、ポカンとしている。
「馬小屋…でしょうか?」
「マジアリート様、一応私の一人住まいの民家です」
「手で押せば倒れるのでは?」
「カッシーラ伯、私は無事に室内で生存しておりました」
「ボロいな…」
「……ちっ」
お地蔵様には舌打ちだけして威嚇しておいた。
私はリュックサックの中から鍵を取り出すと、扉の鍵を開け中に男性達を招き入れた。
「中は意外にしっかりしていますね」
「魔法を使いましたから」
私がそう答えるとカッシーラ伯とマジアリート様とリュー君…それと草鞋ことワランジさんの4人は私の顔をマジマジと見詰めてきた。
「復活の御手の力を使いましたから」
皆が目を剥いた。と、同時に何かを叫んだのですぐに消音魔法を張った。
因みにどうでもいいことだけれども、この家には元店舗の部分で使っていたレジ置き場?のようなカウンターはあるが、住居スペースには家具類が一切ない。ベッドもない。男性陣は一斉に室内の家探しに向かって行った。
そして10分少々で戻って来た。
「家具も何も無いね」
「だって今日借りたばかりなんですもの」
マジアリート様は最初の頃より、私に対する警戒する魔質を緩められている。元々同い年だし、言葉使いもちょっと気安くなっている気がしている。
「借りた…ってミランジェが家屋斡旋所に行ったの?」
知らなかった…不動産屋さんってこの世界じゃそんな呼び名なの?道行くおば様に「住む家を貸してくれる商会ってどこですか?」とかしか聞いてないから…
「ええ、三軒ほど回って探したのよ。値切ってみたの!ここの一ヶ月のお家賃銀貨3枚よ!」
因みに銀貨3枚は大体4500円ほどだ。男性達は恐らくワランジさん以外はお坊ちゃん達だ。皆、ぎゃ…嘘だ!と悲鳴を上げた。
「馬小屋並みの広さとはいえ、銀貨三枚って俺の昼飯代くらいだぞ?」
嘘でしょ?昼食代4500円も使っているの?私はカッシーラ伯をジロリと睨んだ。カッシーラ伯は何だよ?と小声で聞いてきた。
「食事代高すぎますよ。一食ワンコイ…失礼一日銀貨一枚でもいけますよ」
「嘘だろ!?」
「リュー君が驚いてどうするのよ?私はもっと安くあげられるわよ?外食するから高いのでしょう?お弁当になさいな」
「オベントー?」
お坊ちゃん達は皆小首を傾げている。あれ?この世界にお弁当ってないのかしら?…と思ったら草鞋ことワランジさんが、そうですよ~、と助け船を出してくれた。
「手作りで持って行けば材料費だけで食事代大分安く上がりますよ!」
「そうよね?ワランジさん!昼食お弁当にしたら月に金貨二枚は節約できるわね!」
ワランジさんと節約トークを繰り広げていたらお坊ちゃん達はドン引きしていたみたいで、気が付いたら三人とも店舗用のカウンターの上に上がって座り込んでいた。あら?ごめんあそばせ~。私とワランジさんはリュー君のお傍に駆け寄った。リュー君は、もう気が済んだ?と聞いてから話し出した。
「さっきも言っていたけど『復活の御手』ってトキワステラーテ王国の建国者の初代王のあの力のこと?」
私はリュー君に何度も頷いてみせた。でもリュー君は怪訝な顔していた。
「でもさ、子供の時からミランジェの事知っているけど、そんな力持ってるって言ってたっけ?」
「黙っていたもの」
「どうして?」
「だって復活の御手の力が使えるって言えば女王にさせられちゃうでしょ?」
「そうなの?」
「え?」
私とリュー君のやり取りを黙って聞いていたマジアリート様が突然会話に加わってきた。
「そうなの?だってトキワステラーテ王国って継承権は生まれ年順だろう?ミランジェ妃の上に姉上がいるなら継承権は変わらないと思うけど?」
そ、そうなの?マジアリート様をマジマジと見てしまう。あれ、駄洒落を言ってしまったよ。
「ミランジェ、復活の御手が女王になるって誰から聞いたんだよ」
「……自己判断?」
リュー君、カッシーラ伯、マジアリート様3人が同時に大きな溜め息をついた。
「短慮だ」
「聞けばすむことだ」
「俺に相談しろよ~」
「それはマズいっすよ」
カッシーラ伯、マジアリート様…地蔵とおまけに草鞋にまで言われて、思わずムッとしてしまう。
「でも復活の御手の力が使えたら、自分の自由な時間が…」
「王女殿下にお生まれなら民の為、国の為に御身を捧げなくてはいけないのはご存じのはずだ」
ひぇぇぇ!カッシーラ伯に刀でズバッと切り付けられられたみたいな、心の衝撃があったよ。今なら分かるけど、このミランジェ王女様は割とおバカなんだよ…復活の御手の力→女王になっちゃう→自由に遊べない→王族やめちゃえ…なんて短絡的思考のもと、穴だらけの放逐計画を考えてしまったのよ。
自分じゃないけど、自分の起こした計画なのよね…。くぅぅ…アホのミランジェめ!自分だけどさぁ。
「復活の御手の力って、伝承に書いてある通りなの?例えば壊れたものを完全復活させることが出来るって」
リュー君が小首を傾げているので、何か試せないかな~と周りを見てみた。
「ああ、コレが良いわ。皆さまご注目を~」
この家の鍵を取り出した。年季の入った鍵だ。魔法で施錠しているのでこの鍵はお飾りなので、錆びてボロボロのままにしていたけど…
私は掌に鍵を乗せると、復活の御手の力を鍵に注いだ。淡い光に包まれて錆び錆びの鍵は…白銀色の輝きを放つ綺麗な鍵の姿になっていた。
「おおおっ!」
男性陣の歓喜の声があがる。
「素晴らしいな…まさに在りし日の姿に復元する力か…他にはどういう力が?」
カッシーラ伯に問われたので、もう隠すのは諦めた。宝物ドロボーという疑いをかけられているのだ。ここで嘘をついて逃れてもバレた時に、信じてもらえなくなるかもしれない。
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