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夫と妻
優雅に縫っていられるか!
私は窓辺に座り、花嫁のヴェールに想いを籠めて一針一針縫って……
いられるかっ!急げっ急げ…
フルスピードで小さな輝石を縫い付けていく。
「姫様、此方の飾りはこの位置ですか?」
私は仕立て屋のユリナの仕立て中のドレープの飾りを確認した。
「うん、大丈夫ね。この飾りは胸の刺繍と続き柄だから配置に気をつけて。すみません、リュージエンス殿下の腕の飾りを確認したいのですが」
「こっちです!」
同じく仕立て屋のポートさんが奥の作業台から手を上げた。
「腕の袖口はこの配置でいいですか?」
ポートさんの手元を見る。うん、刺繍がグラデーションみたいになって綺麗だ。
「流石、素晴らしい刺繍ですね。リュージエンス殿下、この刺繍が終わりましたら一度袖を通してみて下さいますか?」
私は作業室の部屋に置いてあるソファで、長ーい足を組んで小説を読んでいるリュー君に声をかけた。
護衛…と称して私について来ているだけだから、暇でしょう?と聞いたら次の日から小説を持参して読んでいる。
結構熱心に読んでいるけど、何の本?
「うん、いいよ」
私はそう言って笑ったリュー君を手招きして呼んで、作業室の横にあるミニキッチンに入った。
「待っているだけで退屈でしょう?ユリナが買って来てくれたお菓子と、黒茶があるからお茶入れるわね」
私はそう言ってお茶の準備を始めた。
「ミランジェ…」
「何~?」
「ミランジェは俺と会うより花嫁衣装を作ってる方が楽しいの?」
んなっ?びっくりしてリュー君を見上げた。リュー君はミニキッチンのシンクに凭れて、私に向かってとんでもない色気と魔力を垂れ流してきた。
リュー君は手を伸ばしてくると、私の髪の毛先をゆっくりと触っている。
「ミランジェは俺と会えるの嬉しくないの?」
どしたの?リュー君?はっ…!
「もしかして…リュー君、熱でもあるの?」
リュー君は目を見開くと
「あれ~?おかしいな…」
そう言って、手に持っていた小説を開いた。
「『そんなことないよ!私もカルテルに会えて嬉しいよ…。と言ってマレリアはカルテルに近づいた。カルテルはそんなマレリアを引き寄せるときつく抱き締めた。そしてマレリアの唇を割り強引に舌を絡め、甘く甘く吸い上げ…』」
「ちょ…ちょっ!何よそれ?」
リュー君は小説の表紙を私に見えるように見せた。
「劣情の果て~幼馴染のすべてを奪う~何これ?」
「ギルドの受付の女の子が言ってただろ?今、幼馴染の恋愛小説が流行ってるって~書物店行ったら、店頭に並んでてさ読んでみたら面白いの。物凄いエロいし」
「ちょっと貸して」
私はリュー君から小説を受けとると中を見た。
『カルテルはマレリアの白い肌に指を這わせた…滑らかな弾力のある肌に欲情がそそられる。
「ああん…カル…テル、そこは、ダメぇ…」
カルテルは太腿からゆっくりと秘所へと指を差し入れた…』
「…!リュー君!」
エロい…エロ過ぎる。これ官能小説というジャンルではないか?
リュー君はニヤニヤしている。エロ地蔵めっ!
「この…如何わしい小説と私への発言はどういう関係があるのよ」
リュー君は背を屈めて私に顔を近づけてきた。
「だって小説のカルテルも自分に気持ちを向けてくれないマレリアに焦れてるからさ、俺も一緒だし…ミランジェ、口開けて…」
えっ…と思ってるとリュー君の顔が近づいてくる。少し唇が触れた…と思ったら
「きゃっ!」
と、叫び声が上がりユリナがミニキッチンの戸口で顔を真っ赤に染めていた。
「す、す、すみ、すみませ…見てません!見てませんからぁ!」
ユリナが叫びながら逃げて行った。私は固まっていた。
「お茶、沸いてるよ」
私の頭も沸いてるよ!何をいきなりするんだエロ地蔵!
リュー君は軽やかにミニキッチンを出て行った。
私はヤカンの沸騰音に慌ててコンロの火を止めた。そして黒茶の豆を戸棚から出した。
ハハッ…手が震えている。我ながらいい年をして情けない。キスごときと言ってはなんだけど物凄くびっくりした。心臓がバクバク音をたてている。
落ち着け~落ち着け~
私は黒茶と焼き菓子をトレイに乗せると、ソファに優雅に座るリュー君の前にお出しした。
「ありがとう」
地蔵は澄ました顔で微笑んでいる。腹立つな~
「リュージエンス殿下、袖を通して頂けますか?」
奥の作業台からポートさんがリュー君の衣装を持って出て来た。
「いいよ~」
リュー君はロングジャケットを鏡の前で羽織っている。無駄に恰好が良い…ぐぬぬ。
「どうですか?姫様」
気持ちを切り替えてリュー君の側に膝を突くとコートの端の飾りを見て行く。うん…縫製もばっちりだね。
「背中から腰の切り返しの図案これで大丈夫ね?シャツと柄が合っている?」
ポートさんが図案を確認している横でユリナが裾の返しの仕付け糸を外している。
私は鏡越しにリュー君の正面を見てみた。横で同じく姿見を覗き込んでいるユリナに聞いた。
「パンツは紺色よね?」
「はい」
「銀色の差し色で裾の飾りを作りましょうか…足元が淋しいわ」
私はリュー君の足元に銀色の布地を何種類か当てていく。
「その紫がかったお色目の方が映えますね」
ユリナがそう言った色は確かにいい感じだ。よし。
「これで裾飾りにしますね」
「はいっ」
あ~楽しい。自分の着る服よりやっぱり人に着てもらう服の方が燃えるわ~
「あ…あのひ…姫さまっ」
ユリナに小さい声で呼び止められて彼女を見れば、モジモジしている。
「先ほどはすみません…そのお邪魔してしまって…」
先ほど…ああ、そうだった。ユリナに見られていた。
「こちらこそごめんなさいね~あんな所で盛っちゃって…リュー君ってば如何わしい小説読んで興奮しちゃってたのよね」
「如何わしい小説…?」
「ほら今、流行っているとかいう幼馴染の可愛い恋から激情の愛に変わるだったかしら?あの小説ね」
ユリナは笑顔になった。
「その小説、知ってます!『恋慕の果て~恋から愛に変わる時~』ですよね!」
あれ?そんなタイトルだったかな…
「あれ?劣情の果て~幼馴染の…なんとかとかだったような…?」
ユリナがきゃ…と小さく呟いて真っ赤になった。
「そ…それぇ、恋慕の続編で…その…年齢指定があって18才以下は買えない本なんですょ…」
な、なんだってぇ!?いわゆる18禁のエロ本というやつじゃないのかっ!?
私はキッ…とお菓子を食べているリュー君を睨んだ。
「ちょっとリュー君!18禁…じゃない…え~と、未成…でもない、この仕立て屋にはね~ユリナ以外にもまだ年端も行かない子供達がお針子の仕事で働いているような環境の場所なのよ?そんな職場に如何わしい本を持ち込むなんて破廉恥よ!」
リュー君はお菓子をモグモグ食べながら
「だって俺読んでいい年齢だもん~」
と、ほざいた。アホか!情操教育上宜しくないわ!私はダッシュでリュー君に近づくと例の如何わしい小説を取り上げようとした。
「これは没収よ!」
「何するんだよっ…!」
しかし、取り上げようとした小説はリュー君の素早い動きで掴み損ねた。リュー君と睨み合う。
「じゃあ条件を指定するわ。ユリナや子供達の前では読まない事」
「りょーかい」
リュー君は別の戦記小説を読みだした。ふぅ~やれやれ。私が振り返るとポートさんがニコニコした笑顔でこちらを見ていた。
「姫様と殿下、本当に仲が宜しいですね~」
するとユリナが目をキラキラと輝かせていた。
「本当っ小説の幼馴染の2人みたいです!淡い恋が…大人の恋に変わって…ああっ素敵~知ってます?姫様と殿下の恋物語が恋慕の小説の内容みたいだって巷じゃ大盛り上がりですよ~」
するとポートさんが急に声を張り上げた。
「2人は幼馴染だった…姫は政略結婚で隣国へ嫁ぎ…2人は引き裂かれた…そして、姫が国に戻り…そこへ引き裂かれても尚思い続けていた王子が姫を迎えに来たぁぁ!…ってこれも巷の噂じゃ次の恋慕の続編は姫様と殿下の実話になるんじゃないかと…」
ぎゃ!そんな根も葉もない話を書籍化なんてぇ~
すると地蔵が色っぽい目で私を見ながらとんでもないことを口走ってきた。
「わ~っ凄いね。大体合ってるね~でもね、お城を飛び出したミランジェと俺が偶然ギルド前で再会して…美しくなったミランジェに再度惚れ直した…て設定も入れておいて欲しいな~」
「きゃああ!素敵ッ!何ですかそれ?そんなことがあったんですかっ!?」
ユリナ興奮しすぎよ。
「ちょっとリュー君っ、おかしな脚色し過ぎよ!」
「何でよ?綺麗になったな~て思って惚れ直したのは事実だよ?」
ぐぬぬ…。嘘つけよ!ギルド前で再会した時にそんなこと言ってなかったでしょう?!しかしここで全否定をすると私達の政略結婚の理由がバレるし…。くうう地蔵め~余計な事をっ。
「ああ~そうだ!昔はリュー君もぽっちゃり…」
「わああああっ!」
リュー君が一瞬で私の側に飛び込んで来ると、私の口を塞いだ。
「わあ~愛しの奥さんは何言うのかな~?」
「うふふ…ごめんあそばせ。わたくしもうお針子の仕事に戻りますわぁ~」
うふふ…私はご機嫌でお針子作業に戻った。地蔵が睨んできたって怖くないもんね~
私は結婚式の衣装を縫っていたが、その他の準備はお任せで全部してもらっている。
よく考えれば、前世だったら、式場の予約、招待状の配布、細々とした打ち合わせは花嫁と花婿で全部行わなければいけない。のんびり服を縫っていられるのもお姫様だからだな…有難い。
通常王族の式に一年以上は時間がかかるものだが…たった三ヶ月で準備が整う…らしい。これはトキワステラーテのお父様…もしかしたらリュー君のお父様、サザウンテロス国王陛下も一枚噛んでいるのかもしれない。
国王陛下2人が何か思惑があって動いていたらそりゃ準備も早いよね~
と…思いながら婚礼衣装の9割がたは仕上がったので、今日はカッシーラ伯の乳母のおばあ様からのご注文のパッチワーク制作に打ち込んでいます。
この仕立て屋は端切れは一杯あるものね。少しずつ分けて下さるし、材料には事欠かないわ~
端切れを並べて絵柄のバランスを見ていると、最終仕上げの試着を終えてリュー君が戻って来た。
何となくだけど、リュー君の婚礼衣装の最終の出来上がりは結婚式本場で見たい。そう言ったらリュー君は後光入りのそれはそれは綺麗な微笑みを浮かべて
「じゃあ俺もミランジェの出来上がりは本番の楽しみにしようかなっ!」
とおっしゃった。眩しいなあ…そんなに魔力をキラキラさせる必要あるかな?
私がパッチワークの制作を始める横で座って静かに小説を(例の官能小説)読んでいるリュー君。
「ねえ、その小説…そんなに面白い?」
チラッと私を見てからまた本に目を戻す色っぽい地蔵…
「うん…このマレリアをミランジェだと想像すれば、楽しくて仕方ないよ」
涼しい顔して何を言う言うんだ。リュー君の横顔を睨んでやる。
地蔵の頭にもパッチワーク縫い付けてやろうかぁ~?ああん?
いられるかっ!急げっ急げ…
フルスピードで小さな輝石を縫い付けていく。
「姫様、此方の飾りはこの位置ですか?」
私は仕立て屋のユリナの仕立て中のドレープの飾りを確認した。
「うん、大丈夫ね。この飾りは胸の刺繍と続き柄だから配置に気をつけて。すみません、リュージエンス殿下の腕の飾りを確認したいのですが」
「こっちです!」
同じく仕立て屋のポートさんが奥の作業台から手を上げた。
「腕の袖口はこの配置でいいですか?」
ポートさんの手元を見る。うん、刺繍がグラデーションみたいになって綺麗だ。
「流石、素晴らしい刺繍ですね。リュージエンス殿下、この刺繍が終わりましたら一度袖を通してみて下さいますか?」
私は作業室の部屋に置いてあるソファで、長ーい足を組んで小説を読んでいるリュー君に声をかけた。
護衛…と称して私について来ているだけだから、暇でしょう?と聞いたら次の日から小説を持参して読んでいる。
結構熱心に読んでいるけど、何の本?
「うん、いいよ」
私はそう言って笑ったリュー君を手招きして呼んで、作業室の横にあるミニキッチンに入った。
「待っているだけで退屈でしょう?ユリナが買って来てくれたお菓子と、黒茶があるからお茶入れるわね」
私はそう言ってお茶の準備を始めた。
「ミランジェ…」
「何~?」
「ミランジェは俺と会うより花嫁衣装を作ってる方が楽しいの?」
んなっ?びっくりしてリュー君を見上げた。リュー君はミニキッチンのシンクに凭れて、私に向かってとんでもない色気と魔力を垂れ流してきた。
リュー君は手を伸ばしてくると、私の髪の毛先をゆっくりと触っている。
「ミランジェは俺と会えるの嬉しくないの?」
どしたの?リュー君?はっ…!
「もしかして…リュー君、熱でもあるの?」
リュー君は目を見開くと
「あれ~?おかしいな…」
そう言って、手に持っていた小説を開いた。
「『そんなことないよ!私もカルテルに会えて嬉しいよ…。と言ってマレリアはカルテルに近づいた。カルテルはそんなマレリアを引き寄せるときつく抱き締めた。そしてマレリアの唇を割り強引に舌を絡め、甘く甘く吸い上げ…』」
「ちょ…ちょっ!何よそれ?」
リュー君は小説の表紙を私に見えるように見せた。
「劣情の果て~幼馴染のすべてを奪う~何これ?」
「ギルドの受付の女の子が言ってただろ?今、幼馴染の恋愛小説が流行ってるって~書物店行ったら、店頭に並んでてさ読んでみたら面白いの。物凄いエロいし」
「ちょっと貸して」
私はリュー君から小説を受けとると中を見た。
『カルテルはマレリアの白い肌に指を這わせた…滑らかな弾力のある肌に欲情がそそられる。
「ああん…カル…テル、そこは、ダメぇ…」
カルテルは太腿からゆっくりと秘所へと指を差し入れた…』
「…!リュー君!」
エロい…エロ過ぎる。これ官能小説というジャンルではないか?
リュー君はニヤニヤしている。エロ地蔵めっ!
「この…如何わしい小説と私への発言はどういう関係があるのよ」
リュー君は背を屈めて私に顔を近づけてきた。
「だって小説のカルテルも自分に気持ちを向けてくれないマレリアに焦れてるからさ、俺も一緒だし…ミランジェ、口開けて…」
えっ…と思ってるとリュー君の顔が近づいてくる。少し唇が触れた…と思ったら
「きゃっ!」
と、叫び声が上がりユリナがミニキッチンの戸口で顔を真っ赤に染めていた。
「す、す、すみ、すみませ…見てません!見てませんからぁ!」
ユリナが叫びながら逃げて行った。私は固まっていた。
「お茶、沸いてるよ」
私の頭も沸いてるよ!何をいきなりするんだエロ地蔵!
リュー君は軽やかにミニキッチンを出て行った。
私はヤカンの沸騰音に慌ててコンロの火を止めた。そして黒茶の豆を戸棚から出した。
ハハッ…手が震えている。我ながらいい年をして情けない。キスごときと言ってはなんだけど物凄くびっくりした。心臓がバクバク音をたてている。
落ち着け~落ち着け~
私は黒茶と焼き菓子をトレイに乗せると、ソファに優雅に座るリュー君の前にお出しした。
「ありがとう」
地蔵は澄ました顔で微笑んでいる。腹立つな~
「リュージエンス殿下、袖を通して頂けますか?」
奥の作業台からポートさんがリュー君の衣装を持って出て来た。
「いいよ~」
リュー君はロングジャケットを鏡の前で羽織っている。無駄に恰好が良い…ぐぬぬ。
「どうですか?姫様」
気持ちを切り替えてリュー君の側に膝を突くとコートの端の飾りを見て行く。うん…縫製もばっちりだね。
「背中から腰の切り返しの図案これで大丈夫ね?シャツと柄が合っている?」
ポートさんが図案を確認している横でユリナが裾の返しの仕付け糸を外している。
私は鏡越しにリュー君の正面を見てみた。横で同じく姿見を覗き込んでいるユリナに聞いた。
「パンツは紺色よね?」
「はい」
「銀色の差し色で裾の飾りを作りましょうか…足元が淋しいわ」
私はリュー君の足元に銀色の布地を何種類か当てていく。
「その紫がかったお色目の方が映えますね」
ユリナがそう言った色は確かにいい感じだ。よし。
「これで裾飾りにしますね」
「はいっ」
あ~楽しい。自分の着る服よりやっぱり人に着てもらう服の方が燃えるわ~
「あ…あのひ…姫さまっ」
ユリナに小さい声で呼び止められて彼女を見れば、モジモジしている。
「先ほどはすみません…そのお邪魔してしまって…」
先ほど…ああ、そうだった。ユリナに見られていた。
「こちらこそごめんなさいね~あんな所で盛っちゃって…リュー君ってば如何わしい小説読んで興奮しちゃってたのよね」
「如何わしい小説…?」
「ほら今、流行っているとかいう幼馴染の可愛い恋から激情の愛に変わるだったかしら?あの小説ね」
ユリナは笑顔になった。
「その小説、知ってます!『恋慕の果て~恋から愛に変わる時~』ですよね!」
あれ?そんなタイトルだったかな…
「あれ?劣情の果て~幼馴染の…なんとかとかだったような…?」
ユリナがきゃ…と小さく呟いて真っ赤になった。
「そ…それぇ、恋慕の続編で…その…年齢指定があって18才以下は買えない本なんですょ…」
な、なんだってぇ!?いわゆる18禁のエロ本というやつじゃないのかっ!?
私はキッ…とお菓子を食べているリュー君を睨んだ。
「ちょっとリュー君!18禁…じゃない…え~と、未成…でもない、この仕立て屋にはね~ユリナ以外にもまだ年端も行かない子供達がお針子の仕事で働いているような環境の場所なのよ?そんな職場に如何わしい本を持ち込むなんて破廉恥よ!」
リュー君はお菓子をモグモグ食べながら
「だって俺読んでいい年齢だもん~」
と、ほざいた。アホか!情操教育上宜しくないわ!私はダッシュでリュー君に近づくと例の如何わしい小説を取り上げようとした。
「これは没収よ!」
「何するんだよっ…!」
しかし、取り上げようとした小説はリュー君の素早い動きで掴み損ねた。リュー君と睨み合う。
「じゃあ条件を指定するわ。ユリナや子供達の前では読まない事」
「りょーかい」
リュー君は別の戦記小説を読みだした。ふぅ~やれやれ。私が振り返るとポートさんがニコニコした笑顔でこちらを見ていた。
「姫様と殿下、本当に仲が宜しいですね~」
するとユリナが目をキラキラと輝かせていた。
「本当っ小説の幼馴染の2人みたいです!淡い恋が…大人の恋に変わって…ああっ素敵~知ってます?姫様と殿下の恋物語が恋慕の小説の内容みたいだって巷じゃ大盛り上がりですよ~」
するとポートさんが急に声を張り上げた。
「2人は幼馴染だった…姫は政略結婚で隣国へ嫁ぎ…2人は引き裂かれた…そして、姫が国に戻り…そこへ引き裂かれても尚思い続けていた王子が姫を迎えに来たぁぁ!…ってこれも巷の噂じゃ次の恋慕の続編は姫様と殿下の実話になるんじゃないかと…」
ぎゃ!そんな根も葉もない話を書籍化なんてぇ~
すると地蔵が色っぽい目で私を見ながらとんでもないことを口走ってきた。
「わ~っ凄いね。大体合ってるね~でもね、お城を飛び出したミランジェと俺が偶然ギルド前で再会して…美しくなったミランジェに再度惚れ直した…て設定も入れておいて欲しいな~」
「きゃああ!素敵ッ!何ですかそれ?そんなことがあったんですかっ!?」
ユリナ興奮しすぎよ。
「ちょっとリュー君っ、おかしな脚色し過ぎよ!」
「何でよ?綺麗になったな~て思って惚れ直したのは事実だよ?」
ぐぬぬ…。嘘つけよ!ギルド前で再会した時にそんなこと言ってなかったでしょう?!しかしここで全否定をすると私達の政略結婚の理由がバレるし…。くうう地蔵め~余計な事をっ。
「ああ~そうだ!昔はリュー君もぽっちゃり…」
「わああああっ!」
リュー君が一瞬で私の側に飛び込んで来ると、私の口を塞いだ。
「わあ~愛しの奥さんは何言うのかな~?」
「うふふ…ごめんあそばせ。わたくしもうお針子の仕事に戻りますわぁ~」
うふふ…私はご機嫌でお針子作業に戻った。地蔵が睨んできたって怖くないもんね~
私は結婚式の衣装を縫っていたが、その他の準備はお任せで全部してもらっている。
よく考えれば、前世だったら、式場の予約、招待状の配布、細々とした打ち合わせは花嫁と花婿で全部行わなければいけない。のんびり服を縫っていられるのもお姫様だからだな…有難い。
通常王族の式に一年以上は時間がかかるものだが…たった三ヶ月で準備が整う…らしい。これはトキワステラーテのお父様…もしかしたらリュー君のお父様、サザウンテロス国王陛下も一枚噛んでいるのかもしれない。
国王陛下2人が何か思惑があって動いていたらそりゃ準備も早いよね~
と…思いながら婚礼衣装の9割がたは仕上がったので、今日はカッシーラ伯の乳母のおばあ様からのご注文のパッチワーク制作に打ち込んでいます。
この仕立て屋は端切れは一杯あるものね。少しずつ分けて下さるし、材料には事欠かないわ~
端切れを並べて絵柄のバランスを見ていると、最終仕上げの試着を終えてリュー君が戻って来た。
何となくだけど、リュー君の婚礼衣装の最終の出来上がりは結婚式本場で見たい。そう言ったらリュー君は後光入りのそれはそれは綺麗な微笑みを浮かべて
「じゃあ俺もミランジェの出来上がりは本番の楽しみにしようかなっ!」
とおっしゃった。眩しいなあ…そんなに魔力をキラキラさせる必要あるかな?
私がパッチワークの制作を始める横で座って静かに小説を(例の官能小説)読んでいるリュー君。
「ねえ、その小説…そんなに面白い?」
チラッと私を見てからまた本に目を戻す色っぽい地蔵…
「うん…このマレリアをミランジェだと想像すれば、楽しくて仕方ないよ」
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