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夫と妻
二回目なので…
リュー君に押し切られるようにして、私はトキワステラーテ王国へ向かうことになった。鞄とブランケットのご注文を受けた分は出来上がり次第お持ちします…と皆様にお伝えした。
乳母のおばあ様の冷え防止に出来るだけ早くブランケットも仕上げなければいけない。
そうそう
何でも、アレクシス=カッシーラー辺境伯(正式名)もリュー君と私の婚姻の式典に正式にお呼ばれされているらしい。城を出る前にカッシーラー伯に出来上がったウエストポーチを渡すと、それは喜ばれて何度もティーカップを入れたり…書類を出したり…楽しんでおられた。マジアリート様と似たような動きだね、流石従兄弟同士。
「じゃあ行こうか~」
と、リュー君と私はやっぱりギルドの転移魔法を使ってトキワステラーテ王国へ入国?した。
「はぁ~やっぱりカッシーラー辺境伯領は寒かったな」
「だよね~。あ、お城はこっちよ」
私がギルドを出るとリュー君に道を示した。リュー君はニコニコしながら私に手を差し出してきた。ああ…介護スタッフ、リュー君の出番なのね…。ここで流石に転んだりはしないと思うけど?
ギルド前の大通りの人混みの中で、まるでエスコートするかのような色気を醸し出すお地蔵様…こらっギルド前で何を王子様オーラを出してるのよっ!
「手なんか添えてもらわなくても歩けるけど」
するとリュー君は正にお地蔵様のような薄い目で私を見てきた。な、なに?
「ふぅ…ミランジェは残念だな…」
「はあっ!?今、デスッ…っ…馬鹿にした?」
リュー君はもう一度溜め息をついてから私の手を引き寄せると、
「人が多いから…」
と何故だが体を密着させてきた。そして、そのまま歩きだそうとした。
その時に突然
「あぁ!?イチャイチャしてるよ!」
「これは警邏で捕縛しなくちゃね!」
と、声が聞こえて通りの向こうを見ると私の従兄弟、ガンダレ=ハッテーガウンレンテ(兄)とデジバラ=ハッテーガウンレンテ(弟)が同じ顔で、ニヤニヤしながら立っていた。
どうしてここに?嫌な予感…
「婚姻式するんだよねっ!」
「式に出る料理は特別の献立だって料理長が言ってたよ!」
「うわ~楽しみだ!」
「だね!」
おいっ?声がでかいっ!しかも、私が立っている通りの向こう側から叫んでいるので、歩いている人達の注目を浴びている。これはワザと大声で騒いでるな?
「リュー君…行きましょう」
「え?いいの?」
私はリュー君の腕を取って移動しようとした。しかしそれを見逃す双子達ではなかった。一瞬で私の目の前に飛び込んで来ると殊更に大声で
「「わーっ!ミランジェ今からお城に行くのぉ!?」」
と綺麗にハモった。
「ガンダレェェ…おろし金ですりおろしてやろうかっ!デジバラは物見塔の上から簀巻きで吊るしてやるよぉぉ!」
私が双子を下から睨み上げながらそう言うと、双子は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに満面の笑みになると私の両サイドに立ち、腕を絡めてきた。
「あははっ!何言ってんのか分かんないけど、ミランジェ面白い~」
「物見塔から吊るされるの?楽しそうっ!」
キャッキャッ騒ぐ双子に羽交い締めのように腕を拘束されて、連行されるように城に連れて行かれた。私の旦那、リュー君は双子の勢いに飲まれたのか…助けてもくれずに黙ってついて来るのみだった。
後で覚えてろよっ地蔵っ!
そして…双子に連れて行かれた先に、トキワステラーテ王国の国王陛下と第一王女殿下…つまり父と姉が待ち構えていた。私とリュー君は謁見の間で静かに膝を突いて、国王陛下からのお言葉を待った。
「ミランジェ…」
「はい…」
くはああぁ…何でまたそんなに溜めるかな~?さっさと言って欲しいよ!
「復活の御手の力を所持していたそうだな?」
そこからまず聞きますか…まあ、トキワステラーテ王国としてはそこが一番重要よね。
「はい」
「どうして言わなかった?」
「色々と責務を負うのが……」
適切な言葉が浮かばない…どれを言っても怒られそうだ。もう諦めるか…
「面倒臭いと思いました」
「「ぶっ!」」
…ちょっと?壁際に立つガンダレとデジバラの2人を睨んでやる。吹き出すなんて…お行儀の悪い。
「お前…はぁ…それでベイフィートに行って、今度は遊び回って…」
お父様は眉間の辺りを指で揉んでいる。あら?眼精疲労かしら?
「この馬鹿者がっっ!だいたいなっそんな…」
鼓膜が破れるかと思った。お父様の怒鳴り声を皮切りに…クドクド…クドクド、時には怒鳴られ…もう足が痺れ過ぎて感覚が無い。隣に居るリュー君を横目でチラリと見ると、目を瞑っている…しおらしく聞いている…風を装って、私は知っているぅぅ!リュー君は寝てるんだぁぁ…!魔質が眠っている人みたいな緩やかな形状で動いてるものっ!
後でリュー君に聞いた所、軍で野営なども多くてどんな環境でもすぐに眠れる特技を身に着けたとか…いやいくらなんでも国王陛下の前で寝る?
その後、一時間以上はねちっこくお父様に怒られた。そしてやっと解放されたと思ったら、今度はメイド達に捕まって貴賓室に連れて行かれた。リュー君も一緒だ。
貴賓室にはおじ様2人とマダムが3人いた。誰だろう?すぐに正体は判明した。
「まああ、リュージエンス殿下は黒もお似合いねぇぇ」
「この差し色は如何かしら?素敵ぃぃ!」
なるほどね、簡単に言うと花嫁衣装と花婿衣装の打ち合わせだった。これでもさ、結婚式のドレスは純白で~とか色々と夢はあったけど、この世界ではお互いの伴侶になる人の瞳の色に衣装の基本色を合わせるらしい。
前の婚姻の時も茶色だったもの…茶色よ?はぁ…
そして仕立て屋のおじ様が私の方を見た。
「ミランジェ姫様はどのドレスの意匠がお好みですか?」
「どれでもいいわ…」
私がそう言うと、皆が静まり返った。和やかな場の雰囲気を壊した自覚はあるけれど、花嫁衣裳は自分で作りたい…そんな夢があった。色は純白…ドレープを利かせて…刺繍を入れて…花嫁衣裳は自分の洋裁の技術を出し切った最高傑作にしたかった。
自分の手で作れないなら、どうでもいい。
私は溜め息をついた。ここに居る人達は昔のミランジェを知っている人達ばかりだ。覇気が無くて、根暗のお姫様。私の印象はそんな所だろう。これ以上嫌われたって構わない。私が全部言ってやろうと口を開きかけたら
「分かった、ミランジェ自分で作りたいんだろ?」
と、リュー君がニッコリ微笑みながらそう言ってくれた。
「ご自分で?」
「まあっ!?」
と仕立て屋のおじ様とマダムの皆様…が一斉に私を見る。そして仕立て屋のおじ様が「あっ!」と声を上げた。
「よくよく、拝見すればそのドレス…うちの店のものではないですか?これ…意匠が変えられてますが…まさか…」
今日着ているワンピースは私がリメイクしたドレスだ。そうか…このおじ様のデザインのドレスだったのか…デザイナーとしては勝手にリメイクされて気が悪いわよね…元本職として気持ちはお察しします。
「姫様…失礼します」
そう言って仕立て屋のおじ様とおば様が私のワンピースを手に取られて、裾の縫製などを確かめている。
「ヨレも無い。端の処理も完璧だ」
「この切り返しの差し色…姫様がされましたの?」
「はい」
私の着ているワンピースを見て仕立て屋のお2人は絶句している。
「ミランジェは鞄も作るの上手いんだよ?それにお料理も美味しいし…本当は自分で何でも出来るんだよね?」
リュー君が追い打ちをかける。今ここでそれを言う?お姫様としてはありえないことなのよ?私は俯いて唇を噛み締めた。
すると…
「素敵ですわっ!」
仕立て屋のマダムがそう声を上げた。顔を上げてマダムを見ると頬を染められて私を見ていた。
「ねえっあなたここを見て…これ裾を上げて…切った布を飾りに作り変えているのよ?」
「ホントだ!これは大胆だが、素晴らしい縫製だ」
「姫様、作った鞄はどんなもので?」
と、今度は宝石店のマダムに微笑まれた。私は背負っていたリュックサックをマダムに差し出した。
「魔道具になるのですが、これです」
「まああっ?背中に背負いますのコレ?可愛いっ!」
「これ女性用ですかっ!?可愛いっ!」
宝石店のマダム達が私のリュックサックをひっくり返したり触ったりしている。
体が震えた…てっきり怒られるかと思っていた。リュー君を見ると、ニコニコしている。私と目が合うと
「なあ?大丈夫だろう?」
と言われた。リュー君には私の考えていることなんてお見通しだったみたいだ。リュー君に優しく頭を撫でられる。
「ミランジェはどんなドレスが着たいの?」
と、リュー君が私に聞いた途端、仕立て屋のおじ様達はピタッと動きを止めた。私は仕立て屋おじ様の持って来ていたカタログのような冊子を開くと
「この意匠からこの背中をもう少し開けて…コルセットの代わりに…」
おじ様が紙とペンを貸してくれたので、自分の作りたいドレスを描いていく。皆が私の手元を覗き込む。
「姫様、絵がお上手!」
「なるほど!背中から少しドレスを長めにして膨らみを持たせるのですね」
「布地のお色は白…婚姻で初めて使う色ですが、何かあるのですか?」
どうしよう…言っても大丈夫かな?心配になってリュー君を見上げるとリュー君は自愛の籠った地蔵アイズで私を見て頷いてくれた。
「白色だと…染色などでどんな色にも染まりますでしょう?ですから、嫁ぐ方…リュージエンス殿下のお好きな色に私を染めて欲しい…あなたの為に変わります…という意味で白色が…良いのです」
リュー君は立ち上がった。仕立て屋のおじ様も立ち上がっていた。マダム達はワナワナと震えていた。
余計な事を言って失敗しちゃったかな…
「なんだそれ…え?俺の好みに…?」
「きゃあああ!」
マダム達から悲鳴が上がる。あまりの悲鳴に外に居た近衛のお兄様達がなだれ込んで来た。
「姫様っそれ素敵!」
「本当ですわっ!」
「何かありましたか?え?…どうしました?」
近衛のお兄様の戸惑いをよそにマダム達に囲まれて、再び紙とペンを持たされて意匠の続きを描くように脅され…もとい促された。
ついでに靴と鞄…髪飾りのデザインを描いていくと仕立て屋と宝石商の皆様は大いに盛り上がっている。
散々デザインを描かされて…仕立て屋が全力で作りますと請け負ってくれた。私も細かな縫製はお手伝いしたいと、我儘を言ったがおじ様達は快く受け入れてくれた。
早速明日から裁断と生地選びをするとのことなので、城下の仕立て屋にお邪魔することにした。
ああ~久々の縫製作業よ~腕が鳴るわっ!
「ミランジェが城下に出かける時は、俺が護衛するからな~」
と、仕立て屋さん達が帰った後、リュー君が魔質を輝かせながら私に微笑んできた。本当に眩しいわね。後光をしまってよ、お地蔵様…
「リュー君どうしたのよ?そんなご…失礼、魔質を輝かせちゃって…」
リュー君は私の手を取ると顔を近づけてきた。ちょっ…ちょっと!?まだここには近衛のお兄様達とお茶の片付けをしているメイドもいるんだからね?
「ミランジェ…」
「何よ?」
「白色ってエロイな!」
…おい、地蔵よ。真面目な顔をして何を言い出すのだ。
私は知らなかった…
この後リュー君が、特務隊の隊員や双子やお義兄様の前でこの花嫁衣裳の件を散々話して惚気ているなんて…
双子に冷やかされるまで全然知らなかったのだった…
乳母のおばあ様の冷え防止に出来るだけ早くブランケットも仕上げなければいけない。
そうそう
何でも、アレクシス=カッシーラー辺境伯(正式名)もリュー君と私の婚姻の式典に正式にお呼ばれされているらしい。城を出る前にカッシーラー伯に出来上がったウエストポーチを渡すと、それは喜ばれて何度もティーカップを入れたり…書類を出したり…楽しんでおられた。マジアリート様と似たような動きだね、流石従兄弟同士。
「じゃあ行こうか~」
と、リュー君と私はやっぱりギルドの転移魔法を使ってトキワステラーテ王国へ入国?した。
「はぁ~やっぱりカッシーラー辺境伯領は寒かったな」
「だよね~。あ、お城はこっちよ」
私がギルドを出るとリュー君に道を示した。リュー君はニコニコしながら私に手を差し出してきた。ああ…介護スタッフ、リュー君の出番なのね…。ここで流石に転んだりはしないと思うけど?
ギルド前の大通りの人混みの中で、まるでエスコートするかのような色気を醸し出すお地蔵様…こらっギルド前で何を王子様オーラを出してるのよっ!
「手なんか添えてもらわなくても歩けるけど」
するとリュー君は正にお地蔵様のような薄い目で私を見てきた。な、なに?
「ふぅ…ミランジェは残念だな…」
「はあっ!?今、デスッ…っ…馬鹿にした?」
リュー君はもう一度溜め息をついてから私の手を引き寄せると、
「人が多いから…」
と何故だが体を密着させてきた。そして、そのまま歩きだそうとした。
その時に突然
「あぁ!?イチャイチャしてるよ!」
「これは警邏で捕縛しなくちゃね!」
と、声が聞こえて通りの向こうを見ると私の従兄弟、ガンダレ=ハッテーガウンレンテ(兄)とデジバラ=ハッテーガウンレンテ(弟)が同じ顔で、ニヤニヤしながら立っていた。
どうしてここに?嫌な予感…
「婚姻式するんだよねっ!」
「式に出る料理は特別の献立だって料理長が言ってたよ!」
「うわ~楽しみだ!」
「だね!」
おいっ?声がでかいっ!しかも、私が立っている通りの向こう側から叫んでいるので、歩いている人達の注目を浴びている。これはワザと大声で騒いでるな?
「リュー君…行きましょう」
「え?いいの?」
私はリュー君の腕を取って移動しようとした。しかしそれを見逃す双子達ではなかった。一瞬で私の目の前に飛び込んで来ると殊更に大声で
「「わーっ!ミランジェ今からお城に行くのぉ!?」」
と綺麗にハモった。
「ガンダレェェ…おろし金ですりおろしてやろうかっ!デジバラは物見塔の上から簀巻きで吊るしてやるよぉぉ!」
私が双子を下から睨み上げながらそう言うと、双子は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに満面の笑みになると私の両サイドに立ち、腕を絡めてきた。
「あははっ!何言ってんのか分かんないけど、ミランジェ面白い~」
「物見塔から吊るされるの?楽しそうっ!」
キャッキャッ騒ぐ双子に羽交い締めのように腕を拘束されて、連行されるように城に連れて行かれた。私の旦那、リュー君は双子の勢いに飲まれたのか…助けてもくれずに黙ってついて来るのみだった。
後で覚えてろよっ地蔵っ!
そして…双子に連れて行かれた先に、トキワステラーテ王国の国王陛下と第一王女殿下…つまり父と姉が待ち構えていた。私とリュー君は謁見の間で静かに膝を突いて、国王陛下からのお言葉を待った。
「ミランジェ…」
「はい…」
くはああぁ…何でまたそんなに溜めるかな~?さっさと言って欲しいよ!
「復活の御手の力を所持していたそうだな?」
そこからまず聞きますか…まあ、トキワステラーテ王国としてはそこが一番重要よね。
「はい」
「どうして言わなかった?」
「色々と責務を負うのが……」
適切な言葉が浮かばない…どれを言っても怒られそうだ。もう諦めるか…
「面倒臭いと思いました」
「「ぶっ!」」
…ちょっと?壁際に立つガンダレとデジバラの2人を睨んでやる。吹き出すなんて…お行儀の悪い。
「お前…はぁ…それでベイフィートに行って、今度は遊び回って…」
お父様は眉間の辺りを指で揉んでいる。あら?眼精疲労かしら?
「この馬鹿者がっっ!だいたいなっそんな…」
鼓膜が破れるかと思った。お父様の怒鳴り声を皮切りに…クドクド…クドクド、時には怒鳴られ…もう足が痺れ過ぎて感覚が無い。隣に居るリュー君を横目でチラリと見ると、目を瞑っている…しおらしく聞いている…風を装って、私は知っているぅぅ!リュー君は寝てるんだぁぁ…!魔質が眠っている人みたいな緩やかな形状で動いてるものっ!
後でリュー君に聞いた所、軍で野営なども多くてどんな環境でもすぐに眠れる特技を身に着けたとか…いやいくらなんでも国王陛下の前で寝る?
その後、一時間以上はねちっこくお父様に怒られた。そしてやっと解放されたと思ったら、今度はメイド達に捕まって貴賓室に連れて行かれた。リュー君も一緒だ。
貴賓室にはおじ様2人とマダムが3人いた。誰だろう?すぐに正体は判明した。
「まああ、リュージエンス殿下は黒もお似合いねぇぇ」
「この差し色は如何かしら?素敵ぃぃ!」
なるほどね、簡単に言うと花嫁衣装と花婿衣装の打ち合わせだった。これでもさ、結婚式のドレスは純白で~とか色々と夢はあったけど、この世界ではお互いの伴侶になる人の瞳の色に衣装の基本色を合わせるらしい。
前の婚姻の時も茶色だったもの…茶色よ?はぁ…
そして仕立て屋のおじ様が私の方を見た。
「ミランジェ姫様はどのドレスの意匠がお好みですか?」
「どれでもいいわ…」
私がそう言うと、皆が静まり返った。和やかな場の雰囲気を壊した自覚はあるけれど、花嫁衣裳は自分で作りたい…そんな夢があった。色は純白…ドレープを利かせて…刺繍を入れて…花嫁衣裳は自分の洋裁の技術を出し切った最高傑作にしたかった。
自分の手で作れないなら、どうでもいい。
私は溜め息をついた。ここに居る人達は昔のミランジェを知っている人達ばかりだ。覇気が無くて、根暗のお姫様。私の印象はそんな所だろう。これ以上嫌われたって構わない。私が全部言ってやろうと口を開きかけたら
「分かった、ミランジェ自分で作りたいんだろ?」
と、リュー君がニッコリ微笑みながらそう言ってくれた。
「ご自分で?」
「まあっ!?」
と仕立て屋のおじ様とマダムの皆様…が一斉に私を見る。そして仕立て屋のおじ様が「あっ!」と声を上げた。
「よくよく、拝見すればそのドレス…うちの店のものではないですか?これ…意匠が変えられてますが…まさか…」
今日着ているワンピースは私がリメイクしたドレスだ。そうか…このおじ様のデザインのドレスだったのか…デザイナーとしては勝手にリメイクされて気が悪いわよね…元本職として気持ちはお察しします。
「姫様…失礼します」
そう言って仕立て屋のおじ様とおば様が私のワンピースを手に取られて、裾の縫製などを確かめている。
「ヨレも無い。端の処理も完璧だ」
「この切り返しの差し色…姫様がされましたの?」
「はい」
私の着ているワンピースを見て仕立て屋のお2人は絶句している。
「ミランジェは鞄も作るの上手いんだよ?それにお料理も美味しいし…本当は自分で何でも出来るんだよね?」
リュー君が追い打ちをかける。今ここでそれを言う?お姫様としてはありえないことなのよ?私は俯いて唇を噛み締めた。
すると…
「素敵ですわっ!」
仕立て屋のマダムがそう声を上げた。顔を上げてマダムを見ると頬を染められて私を見ていた。
「ねえっあなたここを見て…これ裾を上げて…切った布を飾りに作り変えているのよ?」
「ホントだ!これは大胆だが、素晴らしい縫製だ」
「姫様、作った鞄はどんなもので?」
と、今度は宝石店のマダムに微笑まれた。私は背負っていたリュックサックをマダムに差し出した。
「魔道具になるのですが、これです」
「まああっ?背中に背負いますのコレ?可愛いっ!」
「これ女性用ですかっ!?可愛いっ!」
宝石店のマダム達が私のリュックサックをひっくり返したり触ったりしている。
体が震えた…てっきり怒られるかと思っていた。リュー君を見ると、ニコニコしている。私と目が合うと
「なあ?大丈夫だろう?」
と言われた。リュー君には私の考えていることなんてお見通しだったみたいだ。リュー君に優しく頭を撫でられる。
「ミランジェはどんなドレスが着たいの?」
と、リュー君が私に聞いた途端、仕立て屋のおじ様達はピタッと動きを止めた。私は仕立て屋おじ様の持って来ていたカタログのような冊子を開くと
「この意匠からこの背中をもう少し開けて…コルセットの代わりに…」
おじ様が紙とペンを貸してくれたので、自分の作りたいドレスを描いていく。皆が私の手元を覗き込む。
「姫様、絵がお上手!」
「なるほど!背中から少しドレスを長めにして膨らみを持たせるのですね」
「布地のお色は白…婚姻で初めて使う色ですが、何かあるのですか?」
どうしよう…言っても大丈夫かな?心配になってリュー君を見上げるとリュー君は自愛の籠った地蔵アイズで私を見て頷いてくれた。
「白色だと…染色などでどんな色にも染まりますでしょう?ですから、嫁ぐ方…リュージエンス殿下のお好きな色に私を染めて欲しい…あなたの為に変わります…という意味で白色が…良いのです」
リュー君は立ち上がった。仕立て屋のおじ様も立ち上がっていた。マダム達はワナワナと震えていた。
余計な事を言って失敗しちゃったかな…
「なんだそれ…え?俺の好みに…?」
「きゃあああ!」
マダム達から悲鳴が上がる。あまりの悲鳴に外に居た近衛のお兄様達がなだれ込んで来た。
「姫様っそれ素敵!」
「本当ですわっ!」
「何かありましたか?え?…どうしました?」
近衛のお兄様の戸惑いをよそにマダム達に囲まれて、再び紙とペンを持たされて意匠の続きを描くように脅され…もとい促された。
ついでに靴と鞄…髪飾りのデザインを描いていくと仕立て屋と宝石商の皆様は大いに盛り上がっている。
散々デザインを描かされて…仕立て屋が全力で作りますと請け負ってくれた。私も細かな縫製はお手伝いしたいと、我儘を言ったがおじ様達は快く受け入れてくれた。
早速明日から裁断と生地選びをするとのことなので、城下の仕立て屋にお邪魔することにした。
ああ~久々の縫製作業よ~腕が鳴るわっ!
「ミランジェが城下に出かける時は、俺が護衛するからな~」
と、仕立て屋さん達が帰った後、リュー君が魔質を輝かせながら私に微笑んできた。本当に眩しいわね。後光をしまってよ、お地蔵様…
「リュー君どうしたのよ?そんなご…失礼、魔質を輝かせちゃって…」
リュー君は私の手を取ると顔を近づけてきた。ちょっ…ちょっと!?まだここには近衛のお兄様達とお茶の片付けをしているメイドもいるんだからね?
「ミランジェ…」
「何よ?」
「白色ってエロイな!」
…おい、地蔵よ。真面目な顔をして何を言い出すのだ。
私は知らなかった…
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