青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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師匠と弟子

やっぱりお金って大事だと再認識した

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「国庫の備蓄が無い?それでは毎年どうされていたのですか?」

リュー君が眉根を寄せて私の方をチラッと見ながらそう言った。

毎年…本当だ。トキワステラーテ王国からの援助金でなんとか予算を組み立てていたってことよね?それって異世界で言うところの自転車操業じゃないの?国の経営…と言ってしまっては違うかもだけど、そんな大雑把な試算でよく今まで耐えてきたわね。

私がカッシーラー伯を見るとカッシーラー伯は益々困っている顔をした。

「そうか、それでミランジェの離縁の時にナフテラージャ王女殿下が援助を打ち切ると言ったら、皆が慌てていたのか…」

リュー君がそう呟いたので、思い出した。そうか!そう言えば宰相や公爵…マジアリート様のお父様が慌てていたね。

「トキワステラーテ王国からの援助金は…かなりの額です。その援助が途切れるとなると、今までそれに依存していたベイフィートは立ち行かなくなります。…と、クラシス陛下に進言してみたけれど、ミランジェ妃が豪遊して遊び回って国庫を使い果たしたんだ!と、逆に言ってきてね~。ふぅ…」

「そ、その豪遊に関して言えばその通りですけれど…」

私がしょんぼりしながらそう言うとカッシーラー伯は苦笑いを浮かべた。

「いえいえ、こう言っては身も蓋もありませんが…実はミランジェ妃の豪遊など、トキワステラーテ王国からの援助金の極々一部で賄えていたのです。ですから、どれほどドレスを買われても目くじらを立てるほどではなかったのですよ」

がーーん。正にがーーんだわ。

私の豪遊でベイフィート王国の財政に結構な打撃を残しているつもりだったのに、簡単に言うと実家からのお小遣いの範囲内の微々たる出費だったなんて…

「そう…言い方は決して宜しくはありませんが、ミランジェ妃をこのまま第一妃にしておけば当面は財政面で困ることはなかったのに…」

「ちょっと宜しいでしょうか?」

と、リュー君が手を挙げた。

「国王陛下は財政再建の為の施策などを打ち出してはいなかったのでしょうか?」

うむうむ、リュー君の言う通りだね。遊んでいたって儲けはやってこないもの。国だってどこかで利益の出る公共事業なりを興さなければやっていけない。

「思いついては何かを宰相に提言していましたが、どれも芳しくなったようです。私も随分とマジアリートや親族と進言したりしましたが…煙たがられましてね」

「しかし、よくまあ今も破綻もせずに…」

と私が言いかけるとカッシーラー伯は表情を引き締めた。

「トキワステラーテ王国からの援助のお陰なのです。それなのにミランジェ妃と離縁し…おまけに財政が芳しくないと伝えたら『税金を上げろ』と言い出しました」

「何!?」

「ひどっ…」

明確な増税理由が無いのに…税金として徴収するなんて…

「そんな勝手が通りますか?」

「勿論、臣下は皆猛反対でした…そうすると今度は私に向かって『カッシーラー伯領の税金を三倍にしよう。お前の伯領は随分と潤っているからな』…と。魔獣や魔物対策の軍事費に年間いくらかかっているか、知って入れば言えない台詞ですよっ。何も潤っている訳じゃない…トキワステラーテ王国から…」

「トキワステラーテ王国から…?」

私が聞き返すとカッシーラー伯は私に頷き返された。

「まあ、今更隠してもアレなので…少し私のと言いますかこの辺境伯領の話をしますと、元々4年前までは私はまだ辺境伯領を拝してはいませんでした。4年前は国王軍に所属する軍属でした。父、前国王陛下が崩御されて…クラシス兄上が王位に就いた時に辺境伯領を拝命して、王都を離れてこちらに来ました。そしてミランジェ妃が嫁いでこられて…すぐの頃でした。トキワステラーテ王国から視察団が来られたのです。そして魔の谷に隣接する故に魔獣や魔物の体…魔道具の素材や魔力を帯びた食料に事欠かない我が領と是非とも交易をして頂き、魔の眷属の素材を流通させて頂きたいと言われました」

「まあ、知らなかったわ!」

私が驚いてそう叫ぶと、私を見てカッシーラー伯は柔らかい表情で微笑まれた。

「という訳で、トキワステラーテ王国と交易が始まり…魔獣を狩りに出かけ狩った魔物を解体し、素材としてトキワステラーテ王国に納品する…領民と皆で手探りしながら進めてきて商会を起ち上げ、今年から商会として儲けがでるようになってきたのです。それなのに…増税なんてあんまりだ」

本当にあんまりよ…儲けている所からかすめ取ろうとするなんて…

「取り敢えず、プリエレアンナ様の御子の話をする前に色々と難題が発覚しまして…私は戻って参りました」

「大変で御座いましたね…」

カッシーラー伯…心中お察し致します。

「増税には臣下が猛反対してはいますが、新しい新規事業などの施策は私が口を挟むと揉めますので、そのままにして帰って来ました」

「揉める?どうしてですか?えっと弟殿下ですし、臣下では言えないこともズバーッと言えるのが兄弟の良い所…」

「前国王陛下…父上は私に王位を譲ると生前に言われていたのです。私と兄上と三人しかいない時に…。兄上はそれを聞いて怒っていましたね、私も父上が兄上に譲りたくない気持ちが少なからず分かりました。あれほど反対されているのに、プリエレアンナ様との付き合いを止めない。ミランジェ妃が嫁いで来ることが正式に決まったのに…兄上はまるで他人事みたいにしているし…。そんな時に父上が突然、身罷れました…」

リュー君は目つきを鋭くした。カッシーラー伯はそんなリュー君の視線に気が付いたのかリュー君に頷いてみせた。

「その線の疑いもありましたが、証拠は何も出て来ませんでした」

「そうですか…」

その線?証拠?あ…そうか、暗殺とかをリュー君達は疑っているのか…暗殺か怖いな。と、思いつつリュー君をチラチラ見てしまう。

するとリュー君が私の視線に気が付いてこちらを見てきたので、何か言うのか…と身構えていたら

「ミランジェ、今日はギルドの依頼を片付けておけよ?」

と、キリッとした顔で言われた。

うへぁ…ギルドの依頼!そうでございましたね。え~と『オロンベ草を50束』でしたかね。はい師匠の仰る通りでございます。

私はそこで話を切り上げたカッシーラー伯と別れて、リュー君は魔獣討伐に、私はマジアリート様と護衛のお兄様達とでお屋敷の裏山の辺りで、採取の依頼を行うことにした。

「え~と、細長い葉先の植物よね…これかしら?」

「ミランジェ、オロンベ草は葉の裏がざらざらしているんだよ?」

と、マジアリート様の豆知識を聞きながら木の根元などを見ていると、大岩の周りにそれらしき草が生えているようだ。回り込んで葉の裏側を確認して、マジアリート様を見ると頷いている。

よーし!オロンベ草ゲットだぜ!

と思ったけど、オロンベ草って一か所に少ない本数しか生えてないのよね~。二時間くらいかかったけどなんとか50本を無事採取出来た。

「やりましたね!」

「ギルドに納品に参りましょうか?」

「はーい!」

お兄様達に囲まれてギルドに向かい、納品を済ませた。

「お待たせしました、こちらが今回の依頼料になります。口座の方に振り込まれていますのでこちらの明細でご確認下さい」

と、窓口のお姉さんから返却されたギルド証と一緒に何かの紙を一枚渡された。その紙には…

「依頼料銀貨一枚入金致しました…残高銀貨一枚!」

感無量である。たかだか日本円で1500円とはいえ、私の労働に対する対価であることは間違いない。

「銀貨一枚もあれば2日分の食費代が儲かったわね」

「嘘だろ!?」

「まさかっ!」

またマジアリート様と今度は護衛のお兄様達も悲鳴?を上げる。さては、あなた達もお坊ちゃま育ちだね?

「一日木貨5枚もあれば十分食費は賄えますよ?一食に銀貨3枚でしたか?どこかの辺境伯は。おっといけない…すみませーん、預金をお願いしたいのですが~」

と、私は帰りかけて慌てて『預金、出金窓口』でマジアリート様のデイバッグの売上金貨10枚を入金した。

「フフッ…金貨10枚あれば半年は食費に困らないわね」

「だから、嘘だろ!?本当にそんなので生活できるのぉ?」

私達はギルドを後にした。お屋敷に帰る間、お坊ちゃま達に説教をする。

「節約できる事は切り詰めませんと…ですが、マジアリート様やカッシーラー伯はそうはいきませんよ?お金を使い回してあげなくてはいけないお立場です。領民の為にも市井で上手にお金を落として下さいませ。無駄遣いと必要な経費は別ですからね!」

お坊ちゃん達は神妙にコクコクと頷いている。

「ミランジェにさ~国の施策検討会に出てもらって、華麗な節約術を披露して欲しいな!」

おい、マジアリートよ…節約術と国の国家事業の案はまた別物だよ?

そして夕方までは例の鞄作りだ。カッシーラー伯用のウエストポーチの制作に打ち込むことにした。黒地に紫と銀の飾り布をつけていった。

何だか鞄作りを見守るギャラリーが増えている…メイドや兵士の方、使用人の皆が私の手元を覗き込む。

実は、マジアリート様のデイバッグを見た侍従とメイド長が是非とも私共にも鞄を作って下さい!とまた注文を受けたのだ。

今度は口約束はいけない…と思って鞄の注文書を作り、名前と希望があれば鞄の色を書き入れるようにした。

「背中に背負うのは収納したものが取り出しにくいのですね…ふむふむ、では小ぶりなショルダーバックにしましょうか。こうやって斜めに肩からかけると両手も空きますし…どうでしょう?」

と、メイド長のご希望を注文書に書き入れた。同じく侍従の方からもご希望を聞いた。

よ~し、少しずつ受注を頂けてちゃんとした商売になりつつあるわ~。

「あの姫様…」

と少しご年配の…確かカッシーラー伯の乳母をされていたおばあ様ね!が、オズオズと声をかけて来られた。

「実はこちらに殿下と一緒に越して来てから数年間…ずっと困っていることがありまして…」

「まあ、どんなことかしら?」

と、いう訳でおばあ様からお話をお聞きしたところ…この辺境伯領は兎に角、寒い!冬の時期が長くおまけに豪雪になるらしい。王都出身の元侯爵家ご出身のおばあ様には、この辺境伯領の寒さが堪えて仕方がないらしいのだ。

「暖炉に火を入れて寝ましても、火が消えれば寒さで目が覚めます…魔法で温めて寝ればいい、と言われても私は睡眠中に無意識化に魔術を発動し続けられるほどの魔力量は御座いません…。何か暖を取る魔道具はありませんでしょうか?」

「う~ん」

そうか、ひざ掛けかとかどうかな…。魔法で確か…

ゴソゴソと『魔法の使い方』の本を読む。

「あ、あった…え~と、温めは…わぁ確かにこれは高位魔法になっちゃうわね…術式難しい」

「城勤めの方は割と高位魔法を使える方が多いので…こちらに越して来まして地元の方にお聞きしましても、やはり暖炉を使うとかその場しのぎでして…皆さま着こんだりして寒さをしのいでいるとのことで…」

うんうん、成程ね。

私はおばあ様のご希望を汲んで、手持ちの端切れでパッチワークのブランケット作って差し上げることにした。

結構な裁縫作業になるが、頑張るぞ~と端切れを選んでいると討伐からリュー君が帰って来た。

「ミランジェ~トキワステラーテの国王陛下からギルドに手紙が届いてたよ。一旦国に帰って来て、俺との婚姻式しろって~」

婚姻式…って結婚式のこと!?

「いやぁ…あの私バツイ…二回目だしあまり派手には…」

するとリュー君は少し頬を膨らませた。

「俺は初めてだけど~?それに派手にしておかなくちゃ、サザウンテロスへの牽制にならないからって…サザウンテロスでも婚姻式あげろって、うちの国王陛下…父上にも言われちゃった」

言われちゃったぁ~てへっ…じゃあないよっ!?ええっ?偽装結婚なのにそんな派手にお披露目しちゃっていいのぉ!?

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