青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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夫と妻

裸踊り疑惑

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ガッチガチッに緊張したまま、リュー君と2人で中央の上座にいる国王陛下(父)の元へ向かう。腰に手を置くリュー君から柔らかい魔力と共に浮遊魔法?が足元全体にかけられている。オホホ~正にフワフワ~と動けるわ!

しかしね…周りにいるお貴族様達から良くない魔質をぶつけられているのだよね。

嫉妬か憎悪まではいかないけれど、結構、醜悪な感情混じりの魔質。

多分さ…以前のミランジェは根暗だし笑わないし愛想ないし、正直貴族受けは悪かったと思うのよね。なのに突然出戻って来たと思ったら隣のサザウンテロス帝国の第二王子殿下と再婚…だなんて、特に若い令嬢からやっかみはあると思う。

ブルってはいられないか…。私の事は兎も角、一緒にリュー君の評判まで下げる訳にはいかない。

という訳で、私は目一杯幸せな花嫁を演じることにした。勿論、オプションとしてチラチラとカッコイイ地蔵の顔を見て、地蔵と目が合うと微笑みかけられて頬を染める…といった初々しい演技にも抜かりはない!

そして幸せ花嫁の演技をしつつ…お父様(国王陛下)の前に立った。

「ミランジェ…国の思惑でお前を振り回して済まないな。今回もまた…」

私はお父様に微笑んでみせた。お母様が5才の時に亡くなってから、お姉様もお父様も私に愛情を傾けてくれていたのは今なら…転生した者だからこそ分かる。

私は王女殿下だ。しかし中身はおばさんだ。大人の事情や国のしがらみや建前と本音。顔を立てなければいけない相手…よくよく分かっているつもりだ。

「お父様、私…今まで自分で幸せを引き寄せるように努力することを放棄していました。でもそれももう止めます。自分で最後まで幸せであろうと足掻こうと思います」

と、私が言い終わらないうちに…な、なんとお父様が顔を歪めて…手で顔を覆った。

お…お父様が泣き出した~?ど、どうしよう?これが男泣きってのかい?地蔵~助けてぇ!…と地蔵を見たらなんと地蔵ももらい泣きをしているのか、顔を手で覆って肩を震わせている。

いやいやこれどうしろって言うのよ?誰か助けてよ…。残念ながら今は式典の真っ最中で私達3人は広間の上座で孤立無援の状態だった。

水を打ったような静けさの中、鼻をすする音や、嗚咽が私の背後からも聞こえる?どういう事?皆ももらい泣き中かい?早くしてくれよ。どうして急いで欲しいのかって言えば化粧のせいで顔面が引きつって痛いんだってば!早くしろ!

「お父様…式の最中ですわよ。頑張って」

と実年齢自分より若いおっさん(国王)をなんとか急かして婚姻式を進めてもらった。

花嫁に気を使わせるなっ!

そして少し目を赤くしているけど、リュー君も何とか持ち直して?バルコニーから外に出て城の前の広場に押し寄せているトキワステラーテ国民に王子様スマイルを振りまいている。

何度も言うけど、花嫁に気を使わせるな!

そしてその後、貴族様達と恐怖の顔見世興行が始まった…。お嬢様方からの攻撃に耐えられるかな…

「おーほほほ」

「まああ~素敵ですわね!」

ふぅ…よく考えれば実年齢でもこの会場に居る人の中で最高齢?かもしれない異世界人の私に勝てるようなお嬢様なんていなかった。完全なる取り越し苦労だった。

軽くジャブを打ち込んでやればすぐ引っ込んでしまう根性無しの令嬢ばかりだったので、正直拍子抜けだった。

それはそうとさ…

令嬢とかマダムとかは私はいいのだけどさ…

あれ何だろう?

リュー君を含む特務隊のお兄様達とダーシュお義兄様とか性悪双子達とか…おまけにお父様まで広間の中央で酒をかっ食らって大声上げてウエーイ!をやらかしているんだけど…

正直あの集団には近づきたくない。

妙齢の貴族の令嬢達も「怖いわね…」とか囁き合っていて一切近づいていない。イケメン集団なのに…ウエーイ集団化している。

ナフィ姉様がケーキを乗せたお皿を持ってウロウロしている所に、声をかけるとあの集団を嫌そうに見て

「便乗して騒ぎたい殿方の集まりでしょう?」

と自分の旦那もいる集団を一刀両断していた。そうだね、ウエーイな馬鹿には関わらないでおいた方がいいよね。

そう言って私は早めに自分の部屋に引っ込んだ。侍女にドレスを脱がしてもらった後、侍女達が「今日は念入りにお体のお手入れをしておきましょうね!」という嬉しそうな声を聞いて思い出した。

完全に、心から忘れていた。

私…今日、婚姻式をあげた一応新婚さんだった。当然今日が初夜なのだ。

ウエーイの騒いでいる輩(ウエーイ地蔵)はまだ部屋には帰って来ていない。さあどうしようか…

しかしだ

香油の入ったお風呂に浸かりながらよくよく考えてみると、何も悩む必要はない。元から形ばかりの婚姻で構わないと地蔵から言われてはいたし、事情を知らない侍女達が新婚さんなんだし同室で~と勝手に思い込んでいるだけなのだ。

「さっさと寝てしまおう、よしっ」

私はお風呂から出ると、待ち構えていた侍女達から入念なマッサージを受けた後、リュー君の鞄の仮縫いをしつつ…柑橘系のジュースを飲みながらソファに座って寛いでいた。

するとやっと帰って来たのかウエーイ地蔵の魔力が部屋に近づいて来る。あれ…地蔵と一緒に来るのは…

「やっほーミランジェげんきぃ?」

「あはは~何でそんな横に膨らんでるのぉ~?」

「ぎゃはは!膨らんでないぉ~。お前が横に倒れてるんだよぉ~」

何でまた地蔵と一緒に性悪双子のダンカレ(兄)とデジバラ(弟)がいるのよ?もう夜中よ?いい加減にしろよ。3人でもつれ合うように部屋に入り込んで来ると、さっきからこの様だ…

奴らは勝手に寝室の横のキッチンに入り込むと、果実酒やジュース類やらおつまみ等を持ち出して来て、テーブルの上に広げて酒盛りを始めてしまった。

「あんた達…何時だと思ってるのよ…」

怒りを抑えながら双子を見ると、2人は赤くなった顔を同時に私に向けて

「お祝いなんだからいいじゃん!」

と、綺麗にハモりやがりました。

「…ちっ!」

私はそうだ!と、思い立ってクローゼットの中から予備の毛布を取り出すと、また床に寝転がっているデジバラ(弟)の上に毛布をかけてやった。

「うわぁ~何?ぎゃは~真っ暗だ」

私は有無を言わさずデジバラを蹴り上げると、その毛布の上に転がした。

そしてデジバラの体を毛布で簀巻き状態にすると、仮縫い用の仕付け糸に魔力を込めながら、素早く簀巻きにした毛布の端を糸で縫い付けて、仕付け糸に魔法をかけた。

フフフ…私の超強力捕縛魔法だっ!暫くこれで動けまい!デジバラめっ!簀巻き姿で反省しろっ!

ところがだ、初?簀巻き状態にされたデジバラは転がったまま突然笑い始めた。そのデジバラの状態を見てダンカレも吹き出した。

「うわ~っ!何コレ何コレ!?」

「ちょっ…!デジバラ、最高!転がすぜ!」

「ぎゃっはは!」

………しまった。酔っぱらいに簀巻きは逆効果だったか?

ダンカレは爆笑しながら簀巻きのデジバラを転がして騒ぎ…デジバラはデジバラでよりいっそう転げ回り余計に騒ぎ出した。

私はごろごろと転がり回るデジバラを更に蹴り込んで何とか廊下に叩き出した。その後をダンカレが笑いながら追いかけて外へ出て行った。

「はいよっ!おやすみっ!」

双子を外に追い出して急いで扉を閉めると、扉に魔法を使った施錠をしっかりとかけた。これで入っては来れないだろう。

「ふぅ…」

そう言えば、一緒に帰って来たウエーイ地蔵が居たはずだが妙に静かね?どこにいるんだろう?寝室の中を覗くと、リュー君はベッドに腰かけて少し俯いて座っていた。もしかして、あのまま寝ちゃいそうなのかな?

「リュー君リュー君!ホラ、着替えて。婚姻衣装が皺になっちゃうよ?」

私はそう言いながらリュー君に近づいた。リュー君は一度小さく頷くと、思ったよりしっかりした動きで服を脱いでいく。

「少し眠いけど、そんなに酔ってないんだよ」

とかリュー君は言っているけど…嘘だ、酔っ払いって自分でまだ酔ってないっていい訳するもんだよ?でも確かに動きは少しゆっくりだけど、釦やベルトとか淀みなく外せているし…大丈夫なのかな?

リュー君はダボッとした寝間着に着替えてから、寝室を出てフラフラとどこかへ行こうとする。

「ん…お風呂に入って来るよ」

「ええ?大丈夫なの?お風呂場に付いて行こうか?」

と私が言うとリュー君がジーッと私を見てきた。

「ミランジェも一緒に入る?」

「……リュー君やっぱり酔ってるね?」

ニヤニヤと笑ったリュー君はそれでも脱衣室に歩いて行く。私も取り敢えず脱衣室の前まで付いて行った。

「いい?私まだ起きているからね?お風呂で気分が悪くなったらすぐに呼んで?」

「分かってる~分かってる~」

本当に分かっているのか?怪しい…私はウエーイの輩が飲み散らかした、おつまみやら飲み残しのお酒などを片付けた。

「あ~しんどい、何で仮にも花嫁の私が当日にウエーイ共の世話をしなきゃならないのよぉ…喉乾いた」

私はテーブルに置いていた飲みかけの果実のジュースをグイッと一気飲みした。

私はすぐに異変に気が付いた。

んん?何これ?喉が焼けるように痛い?飲み干したグラスを見た。グラスの底に赤い液体が残っている。匂いを嗅いでみた。

「やば…これ果実酒………」



……

………

気が付いたら朝だった。不思議なことにベッドの上で目覚めた。頭が働かない…。ゆっくりと体を見ると、何だこれ?私の体中に魔力の残滓がまとわりついている。この魔力は…顔を上げてその魔力の持ち主リュー君を捜した。リュー君は私が寝ていたベッドの反対側に背中を向けて寝ていた。

但し、今は寝ているフリをしている。私には魔質が見える。リュー君の魔質は起きている人のように活発に動いている。どうして寝たふりしているのだろうか…。私は気にせずに声をかけた。

「リュー君おはよう。リュー君がベッドに運んでくれたの?実はさ~私の体にリュー君の魔力の残滓がかかっていて…」

「ひぃぃ!」

びっくりした。

リュー君はとんでもない悲鳴?を上げて飛び起きてきた。ど、どうしたのよ?

「魔力の残滓!?な…な…なんで…」

珍しい…いつも冷静沈着なリュー君が大慌てだ。

「うん、私の体全体にリュー君の魔力の残滓が光っているから…」

「ぜ…っ…全身…」

リュー君がこれまた珍しく顔色を失くしている。私の体にリュー君の魔力残滓が残るってことはリュー君が私をベッドに運ぶ時についたんじゃないの?

なのになんであんなに狼狽しているのよ?

待てよ?

私は果実酒を飲んで完全に記憶が途切れている。もしかして裸踊り再び…状態だったんじゃないかしら?

「もしかして…」

「!?」

リュー君は真っ青になった。

「裸で踊ってリュー君の顔の上に吐いちゃった?」

リュー君は衝撃で固まっているようだ。


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