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夫と妻
ぶつけたのは…?
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「は、裸で踊った?」
「うん、そうよ。私が酔っぱらって裸になって踊って、おまけにリュー君に向かって…こう…したんじゃないの?」
私はオエッと言うような仕草をしてリュー君を見た。
リュー君はまだ顔色を失くしている。
「いや、ミランジェは酔うと可愛くなる系だよ。リュー君抱っこして~とか言ってそれはそれは可愛……いや、それはいいんだ。良いんだけど、残滓?」
リュー君は小声でブツブツ言っていて後半よく聞き取れなかったけど、どうやら私は酔っても裸にはならなかったし、宇宙(体の中)から隕石(胃の内容物)をリュー君にぶつけたりはしていないようだ。
良かった……あれ?
だったら逆に私の体にリュー君の魔力の残滓が残ってるのは何?
これまさか……
「リュー君、怒らないから正直に答えて」
リュー君は綺麗な顔を歪めた。
「リュー君…私にかけた?」
「っわ…あわ…ミランジェ…うわっ!?」
リュー君は叫びながら顔を覆った。耳まで真っ赤になっている。
そうか…やっぱり…
「ごめんね、リュー君。恥ずかしいよね…わざわざ聞いちゃってごめんね」
「うぅ…こっちこそゴメン」
「仕方ないよ…ウエー…ゴホン、盛り上がってたものね…」
「ウ…?」
私は手で制した。分かってる!分かってるよ、リュー君はキラキラ王子殿下だもんね。
「分かってるよ、うん。リュー君の名誉の為にこのことは黙っているから…心配するな!」
「ミランジェ…」
私はリュー君の肩を撫でた。気にすんな地蔵!誰だってお酒を飲んだらリーバスすることもある。
「でもリュー君、汚れとか臭いとか消せる魔法も使えるんだね。洗浄魔法っていうのかな?すごいね」
「え?」
「だって、リュー君が私の体に…こう吐いちゃったんでしょう?でも私の体全然汚れてないものね」
「………はぁ…」
リュー君は一段と大きな溜め息をついた後、ベッドに倒れ込んだ。倒れ込んだリュー君の頭をゆっくり撫でてあげる。
「体の中から出たものだから、リュー君の魔力が混じってても不思議はないものね~王子殿下なのにお酒で吐いちゃったなんて不名誉だもんね。大丈夫だよ、2人の秘密だね」
「………はぁ…まあそれでいいか」
「ん?」
よっ…と言いながらリュー君はベッドの上に起き上がった。もう表情はいつもの感じだ。魔力も落ち着いている。
「今日はどうするの?」
「お昼過ぎにカオラ・ジオールのお店に行ってお店の皆に婚姻衣装見てもらう予定」
「そっか…朝食食べたらちょっと鍛錬してくるわ」
「う…ん?行ってらっしゃい」
そういう宣言通り、身支度を整えて朝食を食べた後、リュー君は1人で着替え終わると、さっさと部屋を出て行った。お酒抜きに行ったのかな?
さて…私は時間がくるまでカッシーラ伯領の皆様にご注文を受けていた鞄の最終仕上げに取り掛かった。
お昼前…
戻って来ていたリュー君と昼食を頂いた後、再び婚礼衣装を着付けてもらった。
「姫様、昨日と違う髪型にされます~?」
「あ、そうね!それも良いわね、お願い~」
メイドの女の子は嬉しそうに頷くと他のメイド三人がかりでヘアーアレンジに取り掛かった。
不思議なものね…お嫁に行くまではミランジェはメイド達に嫌われていた…と思う。全然愛想も良くないし、メイドなんてその辺に落ちている石ころだ…みたいな接し方をしていた記憶がある。
ほんの少し話しかけるだけ、ほんの少し笑いかけるだけ、たったそれだけで私の周りの環境はがらりと変わった。ミランジェは何故これをしなかったのかな…そうか、どうやれば好かれるかなんて誰も教えてはくれなかったものね。
お姫様って辛いわね~いや、女の子って難しいね!
「ミランジェ~?出来た?」
と、リュー君が正装に着替えてこちらの部屋に顔を出した。
そうだ、リュー君に聞いておこう。
「衣装を着るはいいんだけど、この恰好で商店街まで歩いて行くの、目立っちゃうね?」
するとリュー君はニヤッと笑って
「任せておけ」
と言った。どうするんだろうか?
どうするかはすぐに分かった。支度が済んで立ち上がった私に一瞬で近づいて来たリュー君が私の腰を抱いた瞬間、ふわっとした浮遊感の後、視界が開けた。
「さあ着いたよ」
カオラ・ジオールの店の前だった。転移魔法!そうかその手があったか。リュー君と私は扉を開けて店中へ入った。
店に入った瞬間、店内に居たお客様や店員の方はキョトンとしていた。
それもそうだろう、突然現れた王女殿下と昨日婚姻式を執り行ったサザウンテロス帝国の第二王子殿下…しかも昨日遠くから見ていた婚姻衣装を身にまとっているのだ。驚かない方がおかしい。
「きゃああ!姫様!?殿下っ!」
お客の叫び声で我に返った皆の叫び声で店内はすごい騒ぎになった。騒ぎを聞きつけてカオラ・ジオールの針子の皆も奥から店先に出て来て歓喜の悲鳴をあげていた。
「皆様、見て下さいな!」
とリュー君と2人でマダムと店主のお2人の前に進み出ると、お2人共大号泣だった。
私も思わず涙ぐんだ。
さてさて、店内に居たお客様があまりに騒いだ為に騒ぎを聞きつけた人達が押しかけて、商店街が大混乱になったので私とリュー君は、2人で店の前にいる国民に店内からにこやかに手を振った後、その場で転移魔法で城内に戻った。
「姫様~いかがでしたか?」
帰った途端、メイドの女の子達に囲まれた。うふふ~思わず満面の笑みを浮かべるとメイドの女の子達も頬を上気させた。
「上手くいきましたね~!」
「本当にこのドレスの意匠素敵だもの~!私も婚姻の際はこんなドレス着たいです」
「ね~!素敵よね。知ってる?姫様の御履き物も白い輝石が煌めいて素敵なのよ?」
「本当だわっ!やだー!」
若いっていいわね。皆お洒落が好きなのよね、うんうん。心行くまで意匠を見るが宜しいよ。
「ミランジェ~着替えたらさ、あの魔法の鞄、カッシーラ伯領に届けようか?もう出来たんだろう?」
リュー君が隣の部屋に行きかけて戻って来てそう言った。
お?おおっ!そうだった、さすが地蔵。
「あ、うん!お届けしたい」
「じゃあ~後でね」
リュー君はそう言って微笑んで部屋を出て行った。
その姿を見届けていると、後ろに控えていたメイド達から溜め息が漏れる。
「リュージエンス殿下…素敵ですね」
「お優しくてお気遣いも出来て、御顔立ちも美形で…まさに最高の王子殿下ですねっ!」
「そうですよね~あの、幼馴染の物語のように、ミランジェ姫様との燃え上がる恋から愛へっっ!」
あ……また例の小説とのコラボ?にされますか?私とリュー君はそんな燃え上がる設定じゃないから…
そして花嫁衣裳から、大人しめのドレスに着替えてリュー君とまた転移魔法で直接、カッシーラ伯領に転移した。
「リュー君ってさ」
「何?」
「国から国に転移とか出来るのね?」
リュー君はう~んと首を捻っている。今はカッシーラ伯領のカッシーラ伯の御屋敷の貴賓室の室内だ。メイドの方がニコニコしながらお茶の準備をして下さっている。
「まあ、初めて行く国以外はよほど離れていない限りは転移魔法で移動できるかな~?」
「何それ…チート」
「ちーと?」
「ううん、何でもないっ。私ね、転移魔法を使うと移動中に揺れるみたいな感覚になるんだけど、何故かな?」
私がそう聞くとリュー君は破顔した。
「ああ、それは転移魔法に慣れてないからだよ。何度か使っていれば慣れてきて、移動軸が…魔法の高射角が…魔力量に応じて…。誤差範囲を修正…」
あ、あれ?私、リュー君の変なスイッチ押しちゃったかな?さっきからリュー君が何言っているのか全然分からない…。
背中に冷や汗が伝い始めた時にカッシーラ伯とメイド長と乳母のおばあ様がいらした。助かった…
早速、乳母のおばあ様に仕上がった魔法のパッチワークブランケットを渡すとそれはそれは喜んで頂けた。メイド長にはオフグリーン色の布地のショルダーバッグ型の魔法の鞄を渡した。
「まああ、素敵!このひざ掛けも大変ようございますね!」
女性達は大層喜んでくれた。そして本日は不在だという侍従のおじ様のウエストポーチも渡して、鞄二個とパッチワークのブランケットの御代金もまとめて頂いた。
フフフ…着実に商売の波に乗れているわ。この際、運動神経の無い自分に鞭打つことは諦めて、洋裁一本に絞ってもいいかもしれないね。
私は隣で優雅にお茶を飲んでいるリュー君を見上げた。
「リュー君、私ってやっぱり冒険者には向いていないと思うのよね」
「ぶっ!ミランジェ…今更?」
少しお茶を吹きだした後、呆れたような顔をしているリュー君をジロッと睨みつける。
「何よっ!最初は出来るかな~?とか思ってやってみたら意外とダメだったというか!」
「意外と?」
「人には向き不向きがあると思うのよねっ!」
「…そうだね」
「だからっその労力を鞄作りに集中して…」
「集中するのは大賛成だけど、走り込みはしているほうがいいよ」
「どうしてよ?」
「体力無いと困るだろ、色々と」
「色々…ああ、そうか体力ないとドレスも一人で着れないしね!」
「いや、そうじゃないし…そのドレスを脱いだ後って言うか…」
ゴホンゴホンと…実はまだ居たカッシーラ伯が変な咳払いをしている。
「それはそうと…実はお2人にお知らせせねばならないことがありまして…」
私はカッシーラ伯に向き直った。はい、何でしょう?
「プリエレアンナ様のご懐妊の真偽を確かめる詮議が執り行われることになりました。つきましては各国の治療術師の方々をお迎えして診察して頂くことになり…どうでしょうか?ミランジェ様も治療術師に名乗りを上げられますか?」
ちょっとーーカッシーラ伯ぅ!男前のくせに、わっる~い顔してぇものすご~く悪代官臭が漂ってますけどぉ!いや、面白そうだしっ!ザマアをやってやりたいしぃ!それって根性悪くね?と言われてもプリエレアンナを嘲笑ってやんなきゃ気が済みませんしぃ!勿論参加いたしますけどぉ!
「本当に参加するの?」
最後までリュー君は渋い顔をしていたけど
「もう~付き合ってよ!お願い!」
「じゃあ、ミランジェのお願いの代わりに俺のお願いも聞いてよね?」
と言ってきたので、二つ返事で了承したけど…後で後悔するなんてこの時は想像もしていなかったのだ…
「うん、そうよ。私が酔っぱらって裸になって踊って、おまけにリュー君に向かって…こう…したんじゃないの?」
私はオエッと言うような仕草をしてリュー君を見た。
リュー君はまだ顔色を失くしている。
「いや、ミランジェは酔うと可愛くなる系だよ。リュー君抱っこして~とか言ってそれはそれは可愛……いや、それはいいんだ。良いんだけど、残滓?」
リュー君は小声でブツブツ言っていて後半よく聞き取れなかったけど、どうやら私は酔っても裸にはならなかったし、宇宙(体の中)から隕石(胃の内容物)をリュー君にぶつけたりはしていないようだ。
良かった……あれ?
だったら逆に私の体にリュー君の魔力の残滓が残ってるのは何?
これまさか……
「リュー君、怒らないから正直に答えて」
リュー君は綺麗な顔を歪めた。
「リュー君…私にかけた?」
「っわ…あわ…ミランジェ…うわっ!?」
リュー君は叫びながら顔を覆った。耳まで真っ赤になっている。
そうか…やっぱり…
「ごめんね、リュー君。恥ずかしいよね…わざわざ聞いちゃってごめんね」
「うぅ…こっちこそゴメン」
「仕方ないよ…ウエー…ゴホン、盛り上がってたものね…」
「ウ…?」
私は手で制した。分かってる!分かってるよ、リュー君はキラキラ王子殿下だもんね。
「分かってるよ、うん。リュー君の名誉の為にこのことは黙っているから…心配するな!」
「ミランジェ…」
私はリュー君の肩を撫でた。気にすんな地蔵!誰だってお酒を飲んだらリーバスすることもある。
「でもリュー君、汚れとか臭いとか消せる魔法も使えるんだね。洗浄魔法っていうのかな?すごいね」
「え?」
「だって、リュー君が私の体に…こう吐いちゃったんでしょう?でも私の体全然汚れてないものね」
「………はぁ…」
リュー君は一段と大きな溜め息をついた後、ベッドに倒れ込んだ。倒れ込んだリュー君の頭をゆっくり撫でてあげる。
「体の中から出たものだから、リュー君の魔力が混じってても不思議はないものね~王子殿下なのにお酒で吐いちゃったなんて不名誉だもんね。大丈夫だよ、2人の秘密だね」
「………はぁ…まあそれでいいか」
「ん?」
よっ…と言いながらリュー君はベッドの上に起き上がった。もう表情はいつもの感じだ。魔力も落ち着いている。
「今日はどうするの?」
「お昼過ぎにカオラ・ジオールのお店に行ってお店の皆に婚姻衣装見てもらう予定」
「そっか…朝食食べたらちょっと鍛錬してくるわ」
「う…ん?行ってらっしゃい」
そういう宣言通り、身支度を整えて朝食を食べた後、リュー君は1人で着替え終わると、さっさと部屋を出て行った。お酒抜きに行ったのかな?
さて…私は時間がくるまでカッシーラ伯領の皆様にご注文を受けていた鞄の最終仕上げに取り掛かった。
お昼前…
戻って来ていたリュー君と昼食を頂いた後、再び婚礼衣装を着付けてもらった。
「姫様、昨日と違う髪型にされます~?」
「あ、そうね!それも良いわね、お願い~」
メイドの女の子は嬉しそうに頷くと他のメイド三人がかりでヘアーアレンジに取り掛かった。
不思議なものね…お嫁に行くまではミランジェはメイド達に嫌われていた…と思う。全然愛想も良くないし、メイドなんてその辺に落ちている石ころだ…みたいな接し方をしていた記憶がある。
ほんの少し話しかけるだけ、ほんの少し笑いかけるだけ、たったそれだけで私の周りの環境はがらりと変わった。ミランジェは何故これをしなかったのかな…そうか、どうやれば好かれるかなんて誰も教えてはくれなかったものね。
お姫様って辛いわね~いや、女の子って難しいね!
「ミランジェ~?出来た?」
と、リュー君が正装に着替えてこちらの部屋に顔を出した。
そうだ、リュー君に聞いておこう。
「衣装を着るはいいんだけど、この恰好で商店街まで歩いて行くの、目立っちゃうね?」
するとリュー君はニヤッと笑って
「任せておけ」
と言った。どうするんだろうか?
どうするかはすぐに分かった。支度が済んで立ち上がった私に一瞬で近づいて来たリュー君が私の腰を抱いた瞬間、ふわっとした浮遊感の後、視界が開けた。
「さあ着いたよ」
カオラ・ジオールの店の前だった。転移魔法!そうかその手があったか。リュー君と私は扉を開けて店中へ入った。
店に入った瞬間、店内に居たお客様や店員の方はキョトンとしていた。
それもそうだろう、突然現れた王女殿下と昨日婚姻式を執り行ったサザウンテロス帝国の第二王子殿下…しかも昨日遠くから見ていた婚姻衣装を身にまとっているのだ。驚かない方がおかしい。
「きゃああ!姫様!?殿下っ!」
お客の叫び声で我に返った皆の叫び声で店内はすごい騒ぎになった。騒ぎを聞きつけてカオラ・ジオールの針子の皆も奥から店先に出て来て歓喜の悲鳴をあげていた。
「皆様、見て下さいな!」
とリュー君と2人でマダムと店主のお2人の前に進み出ると、お2人共大号泣だった。
私も思わず涙ぐんだ。
さてさて、店内に居たお客様があまりに騒いだ為に騒ぎを聞きつけた人達が押しかけて、商店街が大混乱になったので私とリュー君は、2人で店の前にいる国民に店内からにこやかに手を振った後、その場で転移魔法で城内に戻った。
「姫様~いかがでしたか?」
帰った途端、メイドの女の子達に囲まれた。うふふ~思わず満面の笑みを浮かべるとメイドの女の子達も頬を上気させた。
「上手くいきましたね~!」
「本当にこのドレスの意匠素敵だもの~!私も婚姻の際はこんなドレス着たいです」
「ね~!素敵よね。知ってる?姫様の御履き物も白い輝石が煌めいて素敵なのよ?」
「本当だわっ!やだー!」
若いっていいわね。皆お洒落が好きなのよね、うんうん。心行くまで意匠を見るが宜しいよ。
「ミランジェ~着替えたらさ、あの魔法の鞄、カッシーラ伯領に届けようか?もう出来たんだろう?」
リュー君が隣の部屋に行きかけて戻って来てそう言った。
お?おおっ!そうだった、さすが地蔵。
「あ、うん!お届けしたい」
「じゃあ~後でね」
リュー君はそう言って微笑んで部屋を出て行った。
その姿を見届けていると、後ろに控えていたメイド達から溜め息が漏れる。
「リュージエンス殿下…素敵ですね」
「お優しくてお気遣いも出来て、御顔立ちも美形で…まさに最高の王子殿下ですねっ!」
「そうですよね~あの、幼馴染の物語のように、ミランジェ姫様との燃え上がる恋から愛へっっ!」
あ……また例の小説とのコラボ?にされますか?私とリュー君はそんな燃え上がる設定じゃないから…
そして花嫁衣裳から、大人しめのドレスに着替えてリュー君とまた転移魔法で直接、カッシーラ伯領に転移した。
「リュー君ってさ」
「何?」
「国から国に転移とか出来るのね?」
リュー君はう~んと首を捻っている。今はカッシーラ伯領のカッシーラ伯の御屋敷の貴賓室の室内だ。メイドの方がニコニコしながらお茶の準備をして下さっている。
「まあ、初めて行く国以外はよほど離れていない限りは転移魔法で移動できるかな~?」
「何それ…チート」
「ちーと?」
「ううん、何でもないっ。私ね、転移魔法を使うと移動中に揺れるみたいな感覚になるんだけど、何故かな?」
私がそう聞くとリュー君は破顔した。
「ああ、それは転移魔法に慣れてないからだよ。何度か使っていれば慣れてきて、移動軸が…魔法の高射角が…魔力量に応じて…。誤差範囲を修正…」
あ、あれ?私、リュー君の変なスイッチ押しちゃったかな?さっきからリュー君が何言っているのか全然分からない…。
背中に冷や汗が伝い始めた時にカッシーラ伯とメイド長と乳母のおばあ様がいらした。助かった…
早速、乳母のおばあ様に仕上がった魔法のパッチワークブランケットを渡すとそれはそれは喜んで頂けた。メイド長にはオフグリーン色の布地のショルダーバッグ型の魔法の鞄を渡した。
「まああ、素敵!このひざ掛けも大変ようございますね!」
女性達は大層喜んでくれた。そして本日は不在だという侍従のおじ様のウエストポーチも渡して、鞄二個とパッチワークのブランケットの御代金もまとめて頂いた。
フフフ…着実に商売の波に乗れているわ。この際、運動神経の無い自分に鞭打つことは諦めて、洋裁一本に絞ってもいいかもしれないね。
私は隣で優雅にお茶を飲んでいるリュー君を見上げた。
「リュー君、私ってやっぱり冒険者には向いていないと思うのよね」
「ぶっ!ミランジェ…今更?」
少しお茶を吹きだした後、呆れたような顔をしているリュー君をジロッと睨みつける。
「何よっ!最初は出来るかな~?とか思ってやってみたら意外とダメだったというか!」
「意外と?」
「人には向き不向きがあると思うのよねっ!」
「…そうだね」
「だからっその労力を鞄作りに集中して…」
「集中するのは大賛成だけど、走り込みはしているほうがいいよ」
「どうしてよ?」
「体力無いと困るだろ、色々と」
「色々…ああ、そうか体力ないとドレスも一人で着れないしね!」
「いや、そうじゃないし…そのドレスを脱いだ後って言うか…」
ゴホンゴホンと…実はまだ居たカッシーラ伯が変な咳払いをしている。
「それはそうと…実はお2人にお知らせせねばならないことがありまして…」
私はカッシーラ伯に向き直った。はい、何でしょう?
「プリエレアンナ様のご懐妊の真偽を確かめる詮議が執り行われることになりました。つきましては各国の治療術師の方々をお迎えして診察して頂くことになり…どうでしょうか?ミランジェ様も治療術師に名乗りを上げられますか?」
ちょっとーーカッシーラ伯ぅ!男前のくせに、わっる~い顔してぇものすご~く悪代官臭が漂ってますけどぉ!いや、面白そうだしっ!ザマアをやってやりたいしぃ!それって根性悪くね?と言われてもプリエレアンナを嘲笑ってやんなきゃ気が済みませんしぃ!勿論参加いたしますけどぉ!
「本当に参加するの?」
最後までリュー君は渋い顔をしていたけど
「もう~付き合ってよ!お願い!」
「じゃあ、ミランジェのお願いの代わりに俺のお願いも聞いてよね?」
と言ってきたので、二つ返事で了承したけど…後で後悔するなんてこの時は想像もしていなかったのだ…
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