青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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兄と弟

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ミランジェ洋装店(仮)の引っ越しをする為に、家の中の家財道具を魔法のバッグに全部詰めた。

「あ~あ、ここで洋装店出来るかな~と思ったんだけどな」

「カッシーラ伯の所で似たような感じのお店探せばあるんじゃない?」

私は一緒に片付けを手伝ってくれているリュー君の背中を軽く睨んだ。

「あら?リュー君何か引っ掛かるような言い方しているけど、何も好き好んでこの倒壊寸前の家を借りていたわけじゃないのよ?」

「自分で、倒壊寸前って言っちゃってるよ…」

室内に忘れ物が無いか点検をした後に、外に出て玄関の鍵をかけた。

ほんの少ししか生活出来なかったけど、ありがとう…。

「この家を選んだ理由はね、住居に店舗が隣接していて商店街に近い所なのよ」

黙ってリュー君は私の手を優しく握り締めてくれた。

「カッシーラ伯の所にもきっとあるさ、すぐに洋装店を始められるような俺達の新居がね」

「うん、そうね」

私は、鍵を家屋斡旋所のおじさんに返してお礼を言った後、すぐにカッシーラ伯の領地に転移した。

伯領は独立宣言でさぞかし忙しいと思っていたのだが…そういうことはないようだった。

貴賓室に案内されると、カッシーラ伯とボレンティ公爵、それと宰相様ことコンベール伯爵様、もう1人…知らない恰幅の良いおじ様の4人がピリピリした魔質を漂わせながら、ソファに座っていた。

カッシーラ伯が力ない笑顔で私達を見た。

「どうされましたか?」

リュー君がそうカッシーラ伯に聞くと、カッシーラ伯とボレンティ公爵は大きく頷いた後、封書を見せてくれた。

封書にはベイフィート国王印が押してある。宛名にはボレンティ公爵だ。失礼して封書の中を読んで驚愕した。

「私が国庫のお金を盗んで逃走?おまけに部下を使ってプリエレアンナ様を暴行?」

なんだこれ?その下に書かれている文章を続けて読む。

「はぁ?トキワステラーテ王国に私が逃げており、私の引き渡しに応じないトキワステラーテ王国に宣戦布告を出した?はぁ…え?何ですかこれ?但しトキワステラーテ王国との参戦に応じなければ反意ありと見なして諸侯らの処遇を重刑と処する。これって…」

私が絶句しているとリュー君が体内魔力を上げまくりながら声を張り上げた。

「戦わなければ罰する…これは諸卿に対する脅しではないですか!?」

脅し…おまけにまるで私が元凶で戦争みたいな流れじゃないか。

「まさに脅しだな…。呆れる」

ボレンティ公爵はそう言って大きく溜息をつかれた。宰相様も魔質を見ればかなりのお怒りのご様子だ。

「とんだ茶番ですよ!いいですか?私以外にも財務文官長と部下達、カッシーラ伯もこの国の年間予算の試算報告書に全て目を通している。そこでトキワステラーテ王国から巨額の援助金が送られてきているのも、皆知っている。先日のプリエレアンナ様のご乱心も他国の王族の方までもが見ておられるのに、今更謀れるものかっ!何がミランジェ妃殿下が暴行ですかっ!ご自分から服を脱ぎ散らかしていたくせにっ!」

宰相様怒り過ぎて暴言がすごいね…気持ちは分かる。もうこれは笑って済まされないよ。

今まで黙っておられたおじ様が静かに口を開かれた。

「今回のアレクシス殿下の独立には中立の立場を貫くつもりでございました。だが事ここに至って…クラシス陛下は舵取りを間違われたように見受けられますな」

「リュオンテ閣下…」

お、閣下ということはこの恰幅の良いおじ様は軍部のお偉いさん何だろうか。カッシーラ伯とリュオンテ閣下?を交互に見る。

パシッとリュオンテ閣下は自身の膝を叩いた。

「今回の戦は軍は動かない。道理が無さすぎる、このまま戦に持ち込めばトキワステラーテ王国…そして後ろに控えるサザウンテロス帝国さえも敵に回してしまう。ベイフィートは滅亡だ」

滅亡…!

リュオンテ閣下は立ち上がられた。

「王宮の内情を知らぬ地方の貴族や領主達はミランジェ妃殿下の悪行を聞き及び、参戦に傾きかけている。独立を宣言するなら今の内だな。そうすれば地方の領主共はぐらついて、様子見に転じて…恐らく戦は回避される」

「閣下、お待ち下さい。閣下はこのままベイフィートに名を連ねておられるおつもりか?」

ボレンティ公爵がそうお聞きするとリュオンテ閣下は何故か私を見た。

「それはまだ決めかねているのだが…。いや何、実は娘は幼馴染の2人に味方しろと言っていて逆に家臣は反対なのだ。ああ、そうだ…。娘に頼まれておりまして…妃殿下とリュージエンス殿下お2人に取材させて欲しい…と申しておりまして…」

取材…?

リュー君と顔を見合わせた。

リュオンテ閣下は苦笑いを浮かべている。

「妃殿下はご存じですかな?うちの娘が今巷で人気の幼馴染の小説の作者だということを」

な?何だって!?幼馴染シリーズって全て奪っちゃう例の小説かい?

「ええっ!?娘…作者…!?あの小説、女性が書いてるのぉ!?」

「驚いた…」

リュー君が唖然として呟いている。てっきり中年のおっさんが作者だと思ってたよ…あんなエロエロしい18禁本を女子が書いているなんてさ…

世も末だ。え?お前が言うな…ですって?

兎に角

戦争へ傾きかける領主達の気持ちを内政に向ける意味も込めて…カッシーラ伯領の独立、次いでカッシーラ王国の樹立。

ボレンティ公爵、ウラロッテ侯爵、元宰相のコンベール伯爵…そして閣下ことリュオンテ伯爵がカッシーラ王国に従属宣言されてベイフィートの北側三分の一が完全に分裂することになった。

トキワステラーテ王国と戦争へ…と鼻息の荒かったベイフィート王国は矛先を独立してしまったカッシーラ王国に向けてきた。

だが奮起していられるのも時間の問題だと思った。

じわじわと王都を離れ始めていた国民は我先にと王都から一番近いコンベール伯爵領に逃げ出し始めたのだ。

勿論それを黙って見ているベイフィート軍ではなかった。逃げようとした国民を捕まえて…見せしめとばかりに処刑にしたのだ。

恐怖政治の始まりだ。その方向に進めては誰もついて行かない。

カッシーラ王は次の手を打った。秘密裏にベイフィート国民の避難経路を確保していたのだ。クラシスがこういう手段に出てくるのは予想していたらしい。

ただカッシーラ王国とベイフィート王国の間に国境を設けて隣接している、コンベール伯爵とウラロッテ侯爵領はベイフィート軍との小競り合いが頻発しており、リュー君は旗印になるべく前線に立っている。

「俺が行くと軍人の士気が上がるんだって」

と、言ってまるで遊びに行くぐらいの軽いノリでリュー君は出て行くけど、大丈夫かな…

今回の独立宣言には、トキワステラーテ王国もサザウンテロス帝国も独立に賛同している。

と言う訳で今、私がいるカッシーラ新国王陛下の城にはダンカレとデジバラの双子が私の護衛に来ている。

リュー君が出かけている時にベイフィート軍が私に危害を加えてくる可能性があるかららしい。

悪いのは自分達じゃないか、逆恨みだってのっ!

そしてサザウンテロス帝国からはリュー君の片腕って言うのかな?軍人時代からのお付き合いのヒューズレイ大尉とガロール大尉の2人が付き従っている。

この大尉2人共怖いんだ。何が怖いって顔がね、その筋のインテリ○○○みたいな鋭利な刃物みたいな雰囲気なのよ。

まだガロール様は笑顔があるんだけど、ヒューズレイ様は常に殺人光線でも出してるんじゃない?みたいな眼光なのよ。

笑ったりすることあるのかな?ってデジバラの馬鹿が聞いちゃって殺人光線に撃ち抜かれていた。

馬鹿だな、デジバラ。

ベイフィート王国は独立した元カッシーラ伯に牙を剥くことばかりにかまけていて、軍備にばかり国費を投入しているようだ。

ベイフィート王国からの難民は後をたたない。逃げて来た人々は口々に悲惨な現状を訴えていた。

「町なんて強盗や引ったくりの被害ばかりさ。日中でも女の子の一人歩きも出来ないんだよ?」

そこまで酷いのか…

私はカッシーラ王国の商店街近くに、希望通りの店舗兼住居の物件を見つけた。

只、部屋数も多いし店舗部分も結構広い。でも立地条件は良い。

「いいじゃない、これから家族も増えるだろうし?」

と、リュー君に言われて思い当たることもあり赤面してしまった。

まだ国境では小競り合いが続いている。

リュー君と相談して、ベイフィート王国から逃げて来た国民の女性3名をミランジェ洋装店で雇い入れた。

3人の内、2人は家に住み込みで働く。

今日はその女の子達と洋装店のオープンに向けて店内を片付けている。

「どうですか?」

店先のウィンドウに、私の婚姻衣装の白色のドレスを飾って置くことになり、私は店先の表通りに出て、ディスプレイしているドレスの角度をチェックしている。

「もう少し右かも~」

「はーい。どうです店長?」

ムフフ…店長、良い響きだ。雇い入れた女の子達(15~17才)は元々お針子の仕事をしていた子達だ。

求人募集の貼り紙をギルドにお願いして、面接に面接を重ねた私のお眼鏡に叶った精鋭お針子だ。彼女達はまさか私がミランジェ妃殿下で旦那がリュージエンス殿下とは思わなかったらしい。

「綺麗なご夫婦だなとは思いましたが、まさかあの幼馴染のお2人だなんてぇ!」

いや、違う。それ後付け設定だから…。リュー君が否定もせずに浮かれて煽るから、最近益々幼馴染ワッショイ祭状態だ。

リュー君は今日も前線に出てベイフィート軍を蹴散らしている。私はお針子の皆と雑談しながら魔道具の鞄を縫っている。

そうそう

私が今、縫っている魔道具の鞄は『フロシキ』という名前にした。同じく魔道具の膝掛けは『カイロ』にした。

うむ…。今は魔道具は私が作っているが、何故かドレスやワンピースの注文も多い。

店頭に婚姻衣装を飾っている効果かな?まだまだ内政は混乱しているが、カッシーラ王国の商店街は穏やかだ。

カランカラン…

お店の扉が開いた。私は微笑んで声をかけた。

「いらっしゃいませ!ミランジェ洋装店へようこそ!」


                                                    完

本編はここで完結です。ご読了ありがとうございました。次話から番外編が始まります。もう暫くお付き合い下さいませ

                                        浦 かすみ
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