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旅路
矛は保護者1
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「カッダーってどっちの方角だ?」
リュックサックの中から地図を取り出して、シーダの前で広げた。
「帝国との国境沿い…ここですね。確かに森に近いから魔物も…ん?何です?」
シーダが膝をついて私に背中を向けてきた。
「早くしろ」
ちょっと待て。この屈んで背中を見せてくる独特の姿勢は…まさか、おんぶ!?
「俺が背負って飛ぶ方が早い」
今、飛ぶって言ったか?ええ?飛ぶって言ったよね?
「急げ、村人が困ってるぞ」
それを言われると…っ!少々格好悪いが、仕方ない。
「はい、では失礼します」
私はシーダの背中にどっこいせーと体を預けた。そして…シーダは私をおんぶしたまま跳躍した…
いやいやいや~~~ぁ!?待て待てぃ!
「………っぃ!」
速い速い!嘘でしょう!?これ人間の出せる速度なの?!あっ!あぶねぇ!
「ぎゃあああ!」
目の前にあった、大きめの屋敷の屋根の上をシーダは軽々と飛び越えて、もの凄いスピードで移動していく。
えーと低空ですが完全に空を飛んでいます。ゆっくりじゃありません。猛スピードです。◯悟空さんの◯空術みたいです。いや、〇空術で飛んだことないから知らんけど?
「ひぃぃぃぃ!」
「こら、うるせーぞララーナ」
「だぅでぇええええ…」
舌を噛んでしまった…。急いで自身の舌に治療魔法を使う。魔力の無駄遣いだ…私は口を噤んだ。
やがて、国境の大きな砦が見えてきて…あ、あれがカッダー村かな…?あれ?何…地面に灰色の丸っこい物体が転がってるけど、毛糸玉?
やがて近付いて来てソレの正体が分かって来た。
丸は丸だけど…直径2メートルの大きな丸まった生き物だということが分かった。体毛(と表現していいのか?)は脂ぎっているような…結構硬そうな質感だというか…
「これなんですか?」
「ムトラだと思うけど…デカいな。こんなにデカかったっけ?」
え?ムトラって確かハリネズミみたいな見た目に柴犬くらいの大きさの獣だよね。シーダはそう言いながらムトラ?の丸まった体を触ろうとした。
「ヒギャアア!」
ところがムトラが毛を逆立てて吠えた。そしてゴロゴロと転がりながら、何故か私の方に向かって転がってきた!直径2メートルだよっ!?危ないって!
「ぎゃあ!」
「バカッ!走るなっ!」
とかシーダに言われたけど、大きいハリネズミだよっ!逃げなきゃペチャンコになるじゃないかっ!
私が逃げ出すと、何故だか丸まってゴロンと転がっていた他のムトラが一斉に私に向かって転がって来た。
「うそぉおお!?」
「ララーナ!障壁っ障壁を…!」
はっ!?障壁…!私は急いで自分の周りに障壁を張った。
障壁を張ったはいいが……どうしてこうなるの?障壁の周りに大きなハリーさんが何匹もへばりついている。やがて、ムトラが一斉にいなくなった?あ…シーダが剣でムトラを滅多打ちにしている。
障壁の周りにはムトラはいなくなった。シーダが剣を納めて近付いて来たので障壁を解いた。
「ありがと…」
「ったく…何でララーナのとこばっかり突進するんだ?」
「私が弱いぃぃぃ~と分かるから?」
「ムトラにそんな知能はねえょ」
そうですか…
私とシーダはカッダ―村に入った。村はムトラにペチャンコにされかけた怪我人で溢れていた。私はすぐに治療に入った。
シーダは村の周りの巡回に出かけた。私達が奇跡の使い手と冒険者SSSの2人組ということで村の若い男女の野次馬が多いけど、彼等に構っている暇はない。
「ムトラは偶に大量発生するけど、こんなに大きなムトラは初めてだよ」
ムトラの針に刺されたおばあちゃんが、恐々と村の入口のムトラの死骸に目をやった。シーダが片付けたムトラだ。やはりこのムトラの大きさはいつもとは違うみたいだ。
どうしたんだろう?何か原因があるのかな。
「そんなもの…帝国の奴らが魔物の実験をしているからさ」
おばあちゃんの後ろに立っていたおじさんが、そう憎々し気に呟いたので、思い出していた。
帝国…ヘブライサ帝国とはこのカッダー村に隣接している、良くない噂の多い国だ。先程のおじさんの話のように、魔物を捕まえて何やら怪しげな実験をしているとか、見目麗しい男女を集めてハーレムを作っているとか…
ハーレムか…そんな不特定多数の異性(同性もか)と致して何が楽しいのだろうか?硬い考えかもしれないけれど、最愛の人とぉ~想い想われてぇ~お互いに相思相愛でぇイチャイチャしてぇ~
「何をクニャクニャ動いてるんだ?外は大丈夫だったぞ」
「……おつかれさまでーす」
戻って来たシーダの声に現実に引き戻された。
ふーーんだ、いいもんね。こうなりゃ目の前のシーダ兄さんをハーレム妄想の餌食にしておいてやるよ。
グヘヘ…こっちへ来い!あれぇ~!そんな殿ぉ…ああ、そんな…っ!?グヘヘ良いではないかっ良いではないかっ!
「ララーナ……ムトラの生皮剥ぎながらニヤニヤするのは止めておけ…気持ち悪いぞ」
「なんだとっ!殿のくせに黙っておれ!」
「……お前、また酔ってんのか?」
失礼なっ!……妄想ぐらい好きにさせてくれ…
「生皮は魔道具の材料になるから、ブツブツ言ってないで丁寧に剥がせよ」
はいはーい。シーダパパは妄想すらもさせてくれないのだね。
一生懸命にムトラの生皮を剥いで、私のリュックサックに詰め込んだ。手が生臭い…洗浄魔法をかけた。
その後
シーダは村の自警団の団長さん達と村長さんと何か話している。私は村に来たついで…ということで普段の治療を始めていた。すると貧血気味で~とか言う女の子数人がやって来て私に顔を近付けて来た。
「あの~あの素敵な冒険者様は、奇跡の使い手様の護衛騎士なのですか?」
「あ、はい。そうですよ」
「きゃあ!素敵っ!」
貧血気味じゃなかったのか?女の子達はきゃあきゃあ言ってシーダに熱い眼差しを送っている。
まあ…モテるわな。確かにシーダ様、イケメン様、無敵様だしね。女の子達は騒ぎながらシーダの所へ駆けて行った。あっと言う間に女の子の集団に取り囲まれるシーダ兄さん。
私は何となくフードを目深に被り直して、シーダと女の子達の集団を見ないようにしながら治療をしていた。
その日は何故かシーダがこの村に泊まろうと言い出した。何となくだが、あの女の子達と飲みに行ってキャッキャウフフするのでは…?という気がした。
夜、村長さんのお宅に泊めて頂いたのだが、案の定夜中に出て行くシーダの魔力を感じた。
「…なるほど」
思わずベッドの上で呟いてしまう。うんうん、おモテになるのだから仕方ない。そういえばうっかりしていたが、私というお邪魔な女がいるせいで、シーダはお姉様達とウフフな時間を作ることが出来ないのじゃないかな?
これはいけないね。今度から宿も別の所にとって、シーダ兄さんの夜のお楽しみの時間を作ってあげなければ…
その日シーダは明け方に帰って来た。私も眠れずに夜明けを迎えてしまった。
朝起きて来ると、村長さんの奥さんが朝食を作ってくれていた。ホットミルクと木の実の入ったロールパン。木苺のジャムにベーコンっぽいお肉。素朴だけど美味しい…シーダは徹夜明けなのに何事もなかったかのように朝食の席に座っていた。
「ララーナ…朝からなんでまたフードをそんな深く被ってるんだ?」
シーダに鋭いツッコミを受けるけれど……寝不足で瞼が腫れて不細工さ三割増しになってるんだよ。この話題に触れるんじゃない。生憎と瞼を絶妙な冷気で冷やす氷魔法は私では扱えない。
「シーダには関係ありません……」
明らかにシーダ兄さんがムッとした顔をしている。
「あのな、俺は護衛騎士だけどお前の保護者でもあるんだよ。具合でも悪いのか?」
保護者…はぁそうですか。
「いえ、そう言う訳ではありません」
「……?」
私達が気まずい雰囲気を醸し出しているのに気が付いたのか、村長さんの奥さんが桃に似た果物のシロップ漬けを出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
甘いけど……しょっぱいや。
そしてその後、村長さんと村の自警団のお兄様方にお礼を言って村を出た。帰り際も女の子達に囲まれているシーダ兄さん。
ふーーーん。
村を出て、またおんぶかな?と少し遅れて歩いて来たシーダを待っていると、シーダはちょっと怖い魔質を放っていた。
「お前…本当に具合悪いんじゃないのか?」
「違うと…言いましたが」
するとシーダは鋭い素早さで私のフードを取り払った!わわっ…不細工さ三割増しの顔がぁぁ…。慌てて顔を伏せようとしたら、これまた鋭い素早さで顔面をシーダの手で持ち上げられて、上向きに固定されてしまった。
シーダの綺麗なお顔が私の顔に近付いて来る。思わず目を瞑った。顔面を硬直させながら何とか踏ん張っていたがシーダから何もリアクションが無いので、んん?と、思って目を恐る恐る開けた。開けたら美形イケメンシーダ様の瑠璃色の瞳が目の前にあった。
「ララーナ、よく見るとお前の目…ペリーテの宝石みたいな紫色なんだな」
「へっ?」
ドアップで精神力をゴリゴリ削られているのに、そんな吞気な言葉をかけるだけなら、なんでこんな至近距離で見詰める必要があるんでしょうかねっ!
「ちょ…っシーダ!顔近いっ」
「……ん?お前、瞼腫れてるな」
「…っ!それは乙女の秘密です!う、う、うう…うつ伏せで寝てしまった為に朝起きたらとんでもなく不細工になっていたのです!」
顔を固定されているので、瞼を隠せないじゃないか~と思っていたら…シーダが何か術を発動した。
あれ?目元がヒンヤリ…ああっ目元ヒンヤリ魔法だ!
「冷たーい、はぁぁ~気持ちいいです~。これこれ、これが欲しかったんです。シーダ凄い!もっとかけて下さい!」
「………」
またシーダがどえらい魔質とか威圧?を私にぶつけてきてるけど、何事なの?何度も言うけど私、戦闘に関しては素人さんなので、シーダと戦えないんだけど?
「この魔法、私上手く使えないんですよねぇ…今度からシーダにかけてもらおうかな!気持ちいいっ!最高!」
「………………はぁ…」
なんでまたそんなおじいちゃんみたいな長ーい溜め息つくの?
あ…やっぱり昨夜はお楽しみでしたね…だったので疲れてるのかな?
「シーダ…え~と疲れてる?カリカントに戻るのはゆっくり歩きますか?」
疲れてるのかと思って、手を貸そうとシーダに手を差し出すと…素早い動きで手を掴み取られた。シーダの魔質が……何だか浮かれている?妙に楽しそうなんだけど、今の会話の中でモチベが上がる会話なんてあったっけ?
スキップでもしそうなシーダの態度に私は首を捻りながら、彼と手を繋いだまま街道を首都カリカントへ向けて歩き出したのだった。
リュックサックの中から地図を取り出して、シーダの前で広げた。
「帝国との国境沿い…ここですね。確かに森に近いから魔物も…ん?何です?」
シーダが膝をついて私に背中を向けてきた。
「早くしろ」
ちょっと待て。この屈んで背中を見せてくる独特の姿勢は…まさか、おんぶ!?
「俺が背負って飛ぶ方が早い」
今、飛ぶって言ったか?ええ?飛ぶって言ったよね?
「急げ、村人が困ってるぞ」
それを言われると…っ!少々格好悪いが、仕方ない。
「はい、では失礼します」
私はシーダの背中にどっこいせーと体を預けた。そして…シーダは私をおんぶしたまま跳躍した…
いやいやいや~~~ぁ!?待て待てぃ!
「………っぃ!」
速い速い!嘘でしょう!?これ人間の出せる速度なの?!あっ!あぶねぇ!
「ぎゃあああ!」
目の前にあった、大きめの屋敷の屋根の上をシーダは軽々と飛び越えて、もの凄いスピードで移動していく。
えーと低空ですが完全に空を飛んでいます。ゆっくりじゃありません。猛スピードです。◯悟空さんの◯空術みたいです。いや、〇空術で飛んだことないから知らんけど?
「ひぃぃぃぃ!」
「こら、うるせーぞララーナ」
「だぅでぇええええ…」
舌を噛んでしまった…。急いで自身の舌に治療魔法を使う。魔力の無駄遣いだ…私は口を噤んだ。
やがて、国境の大きな砦が見えてきて…あ、あれがカッダー村かな…?あれ?何…地面に灰色の丸っこい物体が転がってるけど、毛糸玉?
やがて近付いて来てソレの正体が分かって来た。
丸は丸だけど…直径2メートルの大きな丸まった生き物だということが分かった。体毛(と表現していいのか?)は脂ぎっているような…結構硬そうな質感だというか…
「これなんですか?」
「ムトラだと思うけど…デカいな。こんなにデカかったっけ?」
え?ムトラって確かハリネズミみたいな見た目に柴犬くらいの大きさの獣だよね。シーダはそう言いながらムトラ?の丸まった体を触ろうとした。
「ヒギャアア!」
ところがムトラが毛を逆立てて吠えた。そしてゴロゴロと転がりながら、何故か私の方に向かって転がってきた!直径2メートルだよっ!?危ないって!
「ぎゃあ!」
「バカッ!走るなっ!」
とかシーダに言われたけど、大きいハリネズミだよっ!逃げなきゃペチャンコになるじゃないかっ!
私が逃げ出すと、何故だか丸まってゴロンと転がっていた他のムトラが一斉に私に向かって転がって来た。
「うそぉおお!?」
「ララーナ!障壁っ障壁を…!」
はっ!?障壁…!私は急いで自分の周りに障壁を張った。
障壁を張ったはいいが……どうしてこうなるの?障壁の周りに大きなハリーさんが何匹もへばりついている。やがて、ムトラが一斉にいなくなった?あ…シーダが剣でムトラを滅多打ちにしている。
障壁の周りにはムトラはいなくなった。シーダが剣を納めて近付いて来たので障壁を解いた。
「ありがと…」
「ったく…何でララーナのとこばっかり突進するんだ?」
「私が弱いぃぃぃ~と分かるから?」
「ムトラにそんな知能はねえょ」
そうですか…
私とシーダはカッダ―村に入った。村はムトラにペチャンコにされかけた怪我人で溢れていた。私はすぐに治療に入った。
シーダは村の周りの巡回に出かけた。私達が奇跡の使い手と冒険者SSSの2人組ということで村の若い男女の野次馬が多いけど、彼等に構っている暇はない。
「ムトラは偶に大量発生するけど、こんなに大きなムトラは初めてだよ」
ムトラの針に刺されたおばあちゃんが、恐々と村の入口のムトラの死骸に目をやった。シーダが片付けたムトラだ。やはりこのムトラの大きさはいつもとは違うみたいだ。
どうしたんだろう?何か原因があるのかな。
「そんなもの…帝国の奴らが魔物の実験をしているからさ」
おばあちゃんの後ろに立っていたおじさんが、そう憎々し気に呟いたので、思い出していた。
帝国…ヘブライサ帝国とはこのカッダー村に隣接している、良くない噂の多い国だ。先程のおじさんの話のように、魔物を捕まえて何やら怪しげな実験をしているとか、見目麗しい男女を集めてハーレムを作っているとか…
ハーレムか…そんな不特定多数の異性(同性もか)と致して何が楽しいのだろうか?硬い考えかもしれないけれど、最愛の人とぉ~想い想われてぇ~お互いに相思相愛でぇイチャイチャしてぇ~
「何をクニャクニャ動いてるんだ?外は大丈夫だったぞ」
「……おつかれさまでーす」
戻って来たシーダの声に現実に引き戻された。
ふーーんだ、いいもんね。こうなりゃ目の前のシーダ兄さんをハーレム妄想の餌食にしておいてやるよ。
グヘヘ…こっちへ来い!あれぇ~!そんな殿ぉ…ああ、そんな…っ!?グヘヘ良いではないかっ良いではないかっ!
「ララーナ……ムトラの生皮剥ぎながらニヤニヤするのは止めておけ…気持ち悪いぞ」
「なんだとっ!殿のくせに黙っておれ!」
「……お前、また酔ってんのか?」
失礼なっ!……妄想ぐらい好きにさせてくれ…
「生皮は魔道具の材料になるから、ブツブツ言ってないで丁寧に剥がせよ」
はいはーい。シーダパパは妄想すらもさせてくれないのだね。
一生懸命にムトラの生皮を剥いで、私のリュックサックに詰め込んだ。手が生臭い…洗浄魔法をかけた。
その後
シーダは村の自警団の団長さん達と村長さんと何か話している。私は村に来たついで…ということで普段の治療を始めていた。すると貧血気味で~とか言う女の子数人がやって来て私に顔を近付けて来た。
「あの~あの素敵な冒険者様は、奇跡の使い手様の護衛騎士なのですか?」
「あ、はい。そうですよ」
「きゃあ!素敵っ!」
貧血気味じゃなかったのか?女の子達はきゃあきゃあ言ってシーダに熱い眼差しを送っている。
まあ…モテるわな。確かにシーダ様、イケメン様、無敵様だしね。女の子達は騒ぎながらシーダの所へ駆けて行った。あっと言う間に女の子の集団に取り囲まれるシーダ兄さん。
私は何となくフードを目深に被り直して、シーダと女の子達の集団を見ないようにしながら治療をしていた。
その日は何故かシーダがこの村に泊まろうと言い出した。何となくだが、あの女の子達と飲みに行ってキャッキャウフフするのでは…?という気がした。
夜、村長さんのお宅に泊めて頂いたのだが、案の定夜中に出て行くシーダの魔力を感じた。
「…なるほど」
思わずベッドの上で呟いてしまう。うんうん、おモテになるのだから仕方ない。そういえばうっかりしていたが、私というお邪魔な女がいるせいで、シーダはお姉様達とウフフな時間を作ることが出来ないのじゃないかな?
これはいけないね。今度から宿も別の所にとって、シーダ兄さんの夜のお楽しみの時間を作ってあげなければ…
その日シーダは明け方に帰って来た。私も眠れずに夜明けを迎えてしまった。
朝起きて来ると、村長さんの奥さんが朝食を作ってくれていた。ホットミルクと木の実の入ったロールパン。木苺のジャムにベーコンっぽいお肉。素朴だけど美味しい…シーダは徹夜明けなのに何事もなかったかのように朝食の席に座っていた。
「ララーナ…朝からなんでまたフードをそんな深く被ってるんだ?」
シーダに鋭いツッコミを受けるけれど……寝不足で瞼が腫れて不細工さ三割増しになってるんだよ。この話題に触れるんじゃない。生憎と瞼を絶妙な冷気で冷やす氷魔法は私では扱えない。
「シーダには関係ありません……」
明らかにシーダ兄さんがムッとした顔をしている。
「あのな、俺は護衛騎士だけどお前の保護者でもあるんだよ。具合でも悪いのか?」
保護者…はぁそうですか。
「いえ、そう言う訳ではありません」
「……?」
私達が気まずい雰囲気を醸し出しているのに気が付いたのか、村長さんの奥さんが桃に似た果物のシロップ漬けを出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
甘いけど……しょっぱいや。
そしてその後、村長さんと村の自警団のお兄様方にお礼を言って村を出た。帰り際も女の子達に囲まれているシーダ兄さん。
ふーーーん。
村を出て、またおんぶかな?と少し遅れて歩いて来たシーダを待っていると、シーダはちょっと怖い魔質を放っていた。
「お前…本当に具合悪いんじゃないのか?」
「違うと…言いましたが」
するとシーダは鋭い素早さで私のフードを取り払った!わわっ…不細工さ三割増しの顔がぁぁ…。慌てて顔を伏せようとしたら、これまた鋭い素早さで顔面をシーダの手で持ち上げられて、上向きに固定されてしまった。
シーダの綺麗なお顔が私の顔に近付いて来る。思わず目を瞑った。顔面を硬直させながら何とか踏ん張っていたがシーダから何もリアクションが無いので、んん?と、思って目を恐る恐る開けた。開けたら美形イケメンシーダ様の瑠璃色の瞳が目の前にあった。
「ララーナ、よく見るとお前の目…ペリーテの宝石みたいな紫色なんだな」
「へっ?」
ドアップで精神力をゴリゴリ削られているのに、そんな吞気な言葉をかけるだけなら、なんでこんな至近距離で見詰める必要があるんでしょうかねっ!
「ちょ…っシーダ!顔近いっ」
「……ん?お前、瞼腫れてるな」
「…っ!それは乙女の秘密です!う、う、うう…うつ伏せで寝てしまった為に朝起きたらとんでもなく不細工になっていたのです!」
顔を固定されているので、瞼を隠せないじゃないか~と思っていたら…シーダが何か術を発動した。
あれ?目元がヒンヤリ…ああっ目元ヒンヤリ魔法だ!
「冷たーい、はぁぁ~気持ちいいです~。これこれ、これが欲しかったんです。シーダ凄い!もっとかけて下さい!」
「………」
またシーダがどえらい魔質とか威圧?を私にぶつけてきてるけど、何事なの?何度も言うけど私、戦闘に関しては素人さんなので、シーダと戦えないんだけど?
「この魔法、私上手く使えないんですよねぇ…今度からシーダにかけてもらおうかな!気持ちいいっ!最高!」
「………………はぁ…」
なんでまたそんなおじいちゃんみたいな長ーい溜め息つくの?
あ…やっぱり昨夜はお楽しみでしたね…だったので疲れてるのかな?
「シーダ…え~と疲れてる?カリカントに戻るのはゆっくり歩きますか?」
疲れてるのかと思って、手を貸そうとシーダに手を差し出すと…素早い動きで手を掴み取られた。シーダの魔質が……何だか浮かれている?妙に楽しそうなんだけど、今の会話の中でモチベが上がる会話なんてあったっけ?
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