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旅路
盾との距離感
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ララーナ=レイジアンテは派手な外見とは裏腹に個性的な女だった。
戦争孤児で孤児院育ち…その後、奇跡の使い手として働き出した。結構な苦労をしている…はずだ。だが擦れた感じも無く、おっとりしていて天然で……世間知らずだ。
いや、生活面では熟練の主婦が如く細々した節約をしている。(怖いぐらいに)
俺が見るに主に恋愛方面だけに、その世間知らずを発揮していると思う。
カッダー村に泊まった翌朝、頑なに顔を隠す不審なララーナの顔を見たら瞼を腫らしている。本人はうつ伏せて寝ていた…と主張していたが、泣いていたのじゃないか?
拒絶されると腹が立つ。何故こんなに距離を取るんだ?かと言ってララーナを背負って移動をすると、完全に気を許して背中に擦り寄ってくる…
距離感がなっ距離感!何度も言ってる、慎めと!
はぁ……。でもララーナのこの距離感がいいんだよなぁ。俺にしなだれかかって甘えるでもなく、手を出せば迷いなく掴んでくれるこの感じ。
普通の女なら迷いなく懐に入ってくる。我が物顔で俺に甘える。でもララーナにはもうちょい近付いて欲しい…。
その夜、ララーナがとんでもない過去を打ち明けた。
チャストレイ公国の公子だと?くそったれがっ!ララーナは気丈にもその話を聞かせてくれた。
実は俺達はチャストレイ公国に嫌な思いを抱いている。2年程前に冒険者ギルドから直接依頼を受けて、ブローウィングドラゴンの討伐依頼をチャストレイ公国から受けたことがあるのだ。
市街地にそのドラゴンが現れて町を襲っている、しかも二匹で…手練れの冒険者数十人で討伐に向かった。
ブローウィングドラゴンは希少種だ。町などで暴れているなんて俺は生まれて初めて見たし、ドラゴンが慟哭して暴れ回っているのも初めて見た。ブローウィングドラゴンは非常に知能の高いドラゴンなので人間の言葉を理解する。俺はドラゴンに話しかけた。
「希少なるドラゴン種よ、教えてくれ!何故それほど嘆かれているのか!?」
ドラゴンは涙を流しながら、俺に教えてくれた。それはドラゴンから放たれた幻術の類だと思う。小さなドラゴンとブローウィングドラゴン2匹が一緒に居る。すぐに分かったこのドラゴンは親子だと…すると子供のドラゴンの姿が無い。地面に血痕が残っている。親…番のこの2匹は血痕の跡を追った。
それがチャストレイ公国の市街地まで続いていた…
「子を浚われたのか?」
ブローウィングドラゴンの番は大人しくなった。ジッと俺達の方を見ている。俺達はドラゴンの子供の行方を捜した。子供はすぐに見付かった。町の住人が多数目撃していたからだ。
「イザミル公子殿下が翡翠色のドラゴンの子供を引きずって歩いていた…と」
最悪だった…。希少種ドラゴンの子殺し、まさに禁忌を犯していた。希少種のドラゴンは普通のドラゴンと違って…遥か昔神々の僕として仕えていたと言われている。神が操る神力を操れる希少種ドラゴンもいるとされるほどなのだ。
そんな神竜を傷付けた。俺達はチャストレイ城にギルドの本部長と一緒に乗り込んで、今すぐドラゴンの子供を返すように訴えた。するとイザミル公子は、ぬけぬけとこう言い放った。
「ああ、その魔獣なら言う事を聞かず泣いてばかりなので、燃やしたわ」
俺達は言葉を失った…。燃やしたとされる庭の焼却炉の中を急いで捜索した。まだ燃えて燻っている炎の中で僅かながら息のある子ドラゴンを見付けた時は心底ホッとした。希少種のドラゴンは稀に見る頑丈さだったようだ。
すぐに番のブローウィングドラゴンの元へ連れて行ってやった。ドラゴン達は何か術(恐らく神力)を使い、子供を治療して数時間後に大空へ飛び立って帰って行った。
勿論その後、冒険者ギルドを通して、チャストレイ公国の希少種ドラゴンへの迫害を訴えたが不起訴になった。ララーナと同じだ。
しかしマジ糞だな。チャストレイ公国、イザミル公子、あのポッチャとしやがった不細工公子。しかし待てよ?ララーナの話を聞いていて、疑問に思った。
理由をつけてララーナを宿の部屋に隔離してから、ギアラクを交えてこの話をした。リコイーダもギアラクも激おこだ。
「あのチビカス野郎…!ララーナに如何わしいことしやがってっ!」
普段穏やかなギアラクが口が悪くなってしまっている。
「ギアラクさん、一応未遂だよ。ララーナの粘膜を汚ねぇ馬鹿が、かすりでもしてたら最大級の暗黒魔法ぶつけるわ、俺」
「リコイーダ…粘膜はヤメロ。生々しい…」
俺が注意するとリコイーダは飲んでいた酒瓶を派手な音をたてて机に叩きつけた。割るなよ?
「何だよっ!シーダ兄ぃはララーナのあの熟れたモリアの実みたいな可愛い唇が、汚ねぇ下衆に舐められたり、吸われたりしても平気だって言うのか!?」
「それは許せん。そんな下衆は細かく引き千切ってバースゲイトドラゴンの餌にする。」
「だろう!?ララーナは奇跡の使い手だから狙われたとか、思ってるみたいだけど俺は違うよ?あれ絶対っ12才の頃のまだ咲き誇る前の蕾だった高貴な花の可憐な可愛さを穢してやろうとして…狙われたんだああああ!」
リコイーダが絶叫した。あ、やっぱりリコイーダもそう思うか?
「やっぱり、ララーナの美貌目当てだよな?」
「俺の高貴な花が狙われたあああ!」
「まだシーダにすら粘膜の接触は許して無いのにな?」
俺はギアラクを睨んだ。卑猥な表現をするなよ、ギアラク!
「そーだ、そうだー!シーダ兄ぃだってまだ触れたことの無いモリアの実なのにぃ!」
「…リコイーダ!」
「触れたこと無いんだろ?」
リコイーダが半眼で俺を見てくる。そ…そうだけどまだ手とかしか触ったことないけど?背中で胸の感触は、確かめたけど…
「………………まだだ」
「返事が長えぇよ!今更純潔ぶったってキモイだけだよ、シーダ兄ぃ」
「……リコイーダは一回死にたいみたいだな?」
「細かく千切られてバースゲイトドラゴンの餌になりたいんじゃないか?」
俺がリコイーダを睨むと、ギアラクが賛同してくれた。
ぎゃんぎゃん煩いリコイーダを飲ませて沈めて置いて…ギアラクとララーナの今後を相談した。
「今までも結構、男に言い寄られてる」
「だろうね~しかし今まで大丈夫だったのかな?」
「あいつ超鈍感だから、夜に男が夜這いに来ても、押し込み強盗に狙われてるんだ~とか斜め上の解釈をしてた」
ギアラクは苦笑した。
「うわぁ…もしかして男に言い寄られても、この人私のお金や能力目当てなんだ!とか思ってたり?」
俺はギアラクに頷いて見せた。
「ああ…その線もあるだろう。アイツは一人旅だと危ないですよね~とか、のほほんと答えてた」
「危険だね」
「危険だ…」
ギアラクは俺の肩を叩いた。
「シーダ…お前が護衛についてあげて、ほんっとうに良かったよ。あんな素直な良い子が、下衆に何かされたらと思うと気が滅入るし、腹が立つ。……さっきリコイーダが言ってたけどチャストレイ潰すんなら俺も手を貸すよ?」
ギアラクは優しい。結構強面な顔だけど、小さい動物とか可愛い生き物が好きなんだ。ララーナの事も、ちょこまか動き回る小動物扱いをしているみたいだ。
「ただ潰すだけじゃ、気が済まないな…」
「う~んだったら、ギルドでチャストレイ公国絡みの依頼があったら全部引き受けないとかは?だって公子は兎も角、軍人や他の城勤めの奴らが、ララーナに暴言を吐いて来たんだろう?12才の女の子に大人が罵声を浴びせるなんて…チャストレイ公国自体が根腐れしていると思うよ。俺は弱者をいたぶる悪辣が大嫌いだ」
「俺もだ。しかし…俺達が依頼を受けつけないとしたら、冒険者ギルドの評判に響くだろう?もしギルドから直で頼まれて断ったら今度は俺達の査定に響く。あんな糞みたいな国のせいでSSSの経歴に傷をつけたくない」
俺がそう言うとギアラクはう~んと唸っている。
「だったらぁ…」
リコイーダが目を覚ましたのか、ブスッとした声で
「明日、治療術師協会に確認しましょうよ。それでララーナの事を詳細は伏せて…カリカント支部の支部長にチクっちゃいましょうよ。チャストレイ公国の公子にララーナが如何わしい事をされた!とか大袈裟に伝えておけば、あの支部長…ララーナのこと気に入っているみたいだし、本部に報告してギルド全支部からチャストレイは締め出されますよ?」
と言った。なるほど…確かにカリカント支部の支部長ならララーナの味方になってくれそうだ。例のブローウィングドラゴンの件でギルド本部もチャストレイ公国を苦々しく思っているはずだ。
取り敢えずララーナに関する憂いを断つ事を決められたのは良かった。
「そりゃそうと、明日はどうするんだ?暫くカリカントにいるのか?」
「ん~いや、ララーナがモスビート王国に行きたいと言っているから…」
「モスビート王国か…赤銅の鍛冶屋の親父の新作出てるかな~」
ギアラクがうっとりした目をしている。可愛いものと武器にしか興味の無い男、ギアラク。多分性的嗜好は正常…なはずだ。俺やリコイーダはギアラクに迫られたことはない。不本意だが、俺もリコイーダも同性に狙われやすいらしい。本当に不本意ながら…
「じゃあさ~ギアラクさんもモスビート王国に一緒に行ったら?俺も一緒に行っちゃお!」
「なっ!?」
リコイーダがそう言って可愛い顔で微笑んでいる。ギアラクが可愛い笑顔のリコイーダに絆されたのか、それいいな!と賛成の声を上げてしまった。
何で、こいつらが付いて来るんだよ?!ララーナと楽しい2人旅で親交を徐々に深めて行きたいのに邪魔すんな!
「シーダ兄ぃ…強引な手段で高貴な花を手折るのは、認めないよ?」
何故またリコイーダがそんなに執拗に俺の邪魔をするんだよ?
「リコイーダもそんなに魔圧を放つなよ?俺はシーダならララーナの側に立ってもいいかな~と思ってるし、寧ろ応援してるよ?」
ギアラクがそう言って何度も頷いている。そんな力強く頷くほどお前は俺の事…俺達の事が分かってるのか!?
「俺だってそうだよ!どーーーーーしても譲りたくないけど、シーダ兄ぃなら我慢出来るぐらい…お似合いです」
「そ…そうか」
リコイーダの粘着した想いはどうでもいいが、まあ2人は俺を応援してくれるようだ。
明日ギルドで落ち合う約束をしてギアラクとリコイーダはそれぞれの宿へ帰って行った。
皆の分の飲み代の支払いを済ませて宿屋の2階へ上がった。
そして廊下を進み、ララーナの部屋の前で立ち止まって扉を見ると違和感に気が付いた。………扉が開いている?ララーナ!俺は部屋に飛び込んだ。
「なんですかぁ~ちゃんと寝てますよぉ?」
ララーナは寝間着に着替えて寝台の上で本を読んでいた。そして俺を見て胡乱な目を向けている。
「な…っ!お前何ともないんだな!?扉が開いてたぞっ!」
ララーナはキョトンとした後、小首を傾げている。
「ん~扉開いてました?あれ、閉め忘れたかな?」
「閉め忘れたじゃねぇよ!誰かが押し入って来たらどうすんだ、馬鹿!」
俺が怒鳴ると、ララーナはまた小首を傾げている。
「え~でもシーダがいるでしょう?危ないことなんてないじゃないですか」
「!」
何だそれ…俺に対する信頼度ってそんなに高いのか?
「男が押し込んできたらどうする?」
「シーダが捕まえてくれるでしょう?」
微笑みながら即答するララーナ。何だかララーナが両手を広げて俺を呼んでいるような気がして、フラフラ…とララーナに近付きかけた時、ララーナがそれは嬉しそうに言った。
「だってシーダは私のお父さんだもんね!」
俺は床に何も無いのに、滑って転んだ……
戦争孤児で孤児院育ち…その後、奇跡の使い手として働き出した。結構な苦労をしている…はずだ。だが擦れた感じも無く、おっとりしていて天然で……世間知らずだ。
いや、生活面では熟練の主婦が如く細々した節約をしている。(怖いぐらいに)
俺が見るに主に恋愛方面だけに、その世間知らずを発揮していると思う。
カッダー村に泊まった翌朝、頑なに顔を隠す不審なララーナの顔を見たら瞼を腫らしている。本人はうつ伏せて寝ていた…と主張していたが、泣いていたのじゃないか?
拒絶されると腹が立つ。何故こんなに距離を取るんだ?かと言ってララーナを背負って移動をすると、完全に気を許して背中に擦り寄ってくる…
距離感がなっ距離感!何度も言ってる、慎めと!
はぁ……。でもララーナのこの距離感がいいんだよなぁ。俺にしなだれかかって甘えるでもなく、手を出せば迷いなく掴んでくれるこの感じ。
普通の女なら迷いなく懐に入ってくる。我が物顔で俺に甘える。でもララーナにはもうちょい近付いて欲しい…。
その夜、ララーナがとんでもない過去を打ち明けた。
チャストレイ公国の公子だと?くそったれがっ!ララーナは気丈にもその話を聞かせてくれた。
実は俺達はチャストレイ公国に嫌な思いを抱いている。2年程前に冒険者ギルドから直接依頼を受けて、ブローウィングドラゴンの討伐依頼をチャストレイ公国から受けたことがあるのだ。
市街地にそのドラゴンが現れて町を襲っている、しかも二匹で…手練れの冒険者数十人で討伐に向かった。
ブローウィングドラゴンは希少種だ。町などで暴れているなんて俺は生まれて初めて見たし、ドラゴンが慟哭して暴れ回っているのも初めて見た。ブローウィングドラゴンは非常に知能の高いドラゴンなので人間の言葉を理解する。俺はドラゴンに話しかけた。
「希少なるドラゴン種よ、教えてくれ!何故それほど嘆かれているのか!?」
ドラゴンは涙を流しながら、俺に教えてくれた。それはドラゴンから放たれた幻術の類だと思う。小さなドラゴンとブローウィングドラゴン2匹が一緒に居る。すぐに分かったこのドラゴンは親子だと…すると子供のドラゴンの姿が無い。地面に血痕が残っている。親…番のこの2匹は血痕の跡を追った。
それがチャストレイ公国の市街地まで続いていた…
「子を浚われたのか?」
ブローウィングドラゴンの番は大人しくなった。ジッと俺達の方を見ている。俺達はドラゴンの子供の行方を捜した。子供はすぐに見付かった。町の住人が多数目撃していたからだ。
「イザミル公子殿下が翡翠色のドラゴンの子供を引きずって歩いていた…と」
最悪だった…。希少種ドラゴンの子殺し、まさに禁忌を犯していた。希少種のドラゴンは普通のドラゴンと違って…遥か昔神々の僕として仕えていたと言われている。神が操る神力を操れる希少種ドラゴンもいるとされるほどなのだ。
そんな神竜を傷付けた。俺達はチャストレイ城にギルドの本部長と一緒に乗り込んで、今すぐドラゴンの子供を返すように訴えた。するとイザミル公子は、ぬけぬけとこう言い放った。
「ああ、その魔獣なら言う事を聞かず泣いてばかりなので、燃やしたわ」
俺達は言葉を失った…。燃やしたとされる庭の焼却炉の中を急いで捜索した。まだ燃えて燻っている炎の中で僅かながら息のある子ドラゴンを見付けた時は心底ホッとした。希少種のドラゴンは稀に見る頑丈さだったようだ。
すぐに番のブローウィングドラゴンの元へ連れて行ってやった。ドラゴン達は何か術(恐らく神力)を使い、子供を治療して数時間後に大空へ飛び立って帰って行った。
勿論その後、冒険者ギルドを通して、チャストレイ公国の希少種ドラゴンへの迫害を訴えたが不起訴になった。ララーナと同じだ。
しかしマジ糞だな。チャストレイ公国、イザミル公子、あのポッチャとしやがった不細工公子。しかし待てよ?ララーナの話を聞いていて、疑問に思った。
理由をつけてララーナを宿の部屋に隔離してから、ギアラクを交えてこの話をした。リコイーダもギアラクも激おこだ。
「あのチビカス野郎…!ララーナに如何わしいことしやがってっ!」
普段穏やかなギアラクが口が悪くなってしまっている。
「ギアラクさん、一応未遂だよ。ララーナの粘膜を汚ねぇ馬鹿が、かすりでもしてたら最大級の暗黒魔法ぶつけるわ、俺」
「リコイーダ…粘膜はヤメロ。生々しい…」
俺が注意するとリコイーダは飲んでいた酒瓶を派手な音をたてて机に叩きつけた。割るなよ?
「何だよっ!シーダ兄ぃはララーナのあの熟れたモリアの実みたいな可愛い唇が、汚ねぇ下衆に舐められたり、吸われたりしても平気だって言うのか!?」
「それは許せん。そんな下衆は細かく引き千切ってバースゲイトドラゴンの餌にする。」
「だろう!?ララーナは奇跡の使い手だから狙われたとか、思ってるみたいだけど俺は違うよ?あれ絶対っ12才の頃のまだ咲き誇る前の蕾だった高貴な花の可憐な可愛さを穢してやろうとして…狙われたんだああああ!」
リコイーダが絶叫した。あ、やっぱりリコイーダもそう思うか?
「やっぱり、ララーナの美貌目当てだよな?」
「俺の高貴な花が狙われたあああ!」
「まだシーダにすら粘膜の接触は許して無いのにな?」
俺はギアラクを睨んだ。卑猥な表現をするなよ、ギアラク!
「そーだ、そうだー!シーダ兄ぃだってまだ触れたことの無いモリアの実なのにぃ!」
「…リコイーダ!」
「触れたこと無いんだろ?」
リコイーダが半眼で俺を見てくる。そ…そうだけどまだ手とかしか触ったことないけど?背中で胸の感触は、確かめたけど…
「………………まだだ」
「返事が長えぇよ!今更純潔ぶったってキモイだけだよ、シーダ兄ぃ」
「……リコイーダは一回死にたいみたいだな?」
「細かく千切られてバースゲイトドラゴンの餌になりたいんじゃないか?」
俺がリコイーダを睨むと、ギアラクが賛同してくれた。
ぎゃんぎゃん煩いリコイーダを飲ませて沈めて置いて…ギアラクとララーナの今後を相談した。
「今までも結構、男に言い寄られてる」
「だろうね~しかし今まで大丈夫だったのかな?」
「あいつ超鈍感だから、夜に男が夜這いに来ても、押し込み強盗に狙われてるんだ~とか斜め上の解釈をしてた」
ギアラクは苦笑した。
「うわぁ…もしかして男に言い寄られても、この人私のお金や能力目当てなんだ!とか思ってたり?」
俺はギアラクに頷いて見せた。
「ああ…その線もあるだろう。アイツは一人旅だと危ないですよね~とか、のほほんと答えてた」
「危険だね」
「危険だ…」
ギアラクは俺の肩を叩いた。
「シーダ…お前が護衛についてあげて、ほんっとうに良かったよ。あんな素直な良い子が、下衆に何かされたらと思うと気が滅入るし、腹が立つ。……さっきリコイーダが言ってたけどチャストレイ潰すんなら俺も手を貸すよ?」
ギアラクは優しい。結構強面な顔だけど、小さい動物とか可愛い生き物が好きなんだ。ララーナの事も、ちょこまか動き回る小動物扱いをしているみたいだ。
「ただ潰すだけじゃ、気が済まないな…」
「う~んだったら、ギルドでチャストレイ公国絡みの依頼があったら全部引き受けないとかは?だって公子は兎も角、軍人や他の城勤めの奴らが、ララーナに暴言を吐いて来たんだろう?12才の女の子に大人が罵声を浴びせるなんて…チャストレイ公国自体が根腐れしていると思うよ。俺は弱者をいたぶる悪辣が大嫌いだ」
「俺もだ。しかし…俺達が依頼を受けつけないとしたら、冒険者ギルドの評判に響くだろう?もしギルドから直で頼まれて断ったら今度は俺達の査定に響く。あんな糞みたいな国のせいでSSSの経歴に傷をつけたくない」
俺がそう言うとギアラクはう~んと唸っている。
「だったらぁ…」
リコイーダが目を覚ましたのか、ブスッとした声で
「明日、治療術師協会に確認しましょうよ。それでララーナの事を詳細は伏せて…カリカント支部の支部長にチクっちゃいましょうよ。チャストレイ公国の公子にララーナが如何わしい事をされた!とか大袈裟に伝えておけば、あの支部長…ララーナのこと気に入っているみたいだし、本部に報告してギルド全支部からチャストレイは締め出されますよ?」
と言った。なるほど…確かにカリカント支部の支部長ならララーナの味方になってくれそうだ。例のブローウィングドラゴンの件でギルド本部もチャストレイ公国を苦々しく思っているはずだ。
取り敢えずララーナに関する憂いを断つ事を決められたのは良かった。
「そりゃそうと、明日はどうするんだ?暫くカリカントにいるのか?」
「ん~いや、ララーナがモスビート王国に行きたいと言っているから…」
「モスビート王国か…赤銅の鍛冶屋の親父の新作出てるかな~」
ギアラクがうっとりした目をしている。可愛いものと武器にしか興味の無い男、ギアラク。多分性的嗜好は正常…なはずだ。俺やリコイーダはギアラクに迫られたことはない。不本意だが、俺もリコイーダも同性に狙われやすいらしい。本当に不本意ながら…
「じゃあさ~ギアラクさんもモスビート王国に一緒に行ったら?俺も一緒に行っちゃお!」
「なっ!?」
リコイーダがそう言って可愛い顔で微笑んでいる。ギアラクが可愛い笑顔のリコイーダに絆されたのか、それいいな!と賛成の声を上げてしまった。
何で、こいつらが付いて来るんだよ?!ララーナと楽しい2人旅で親交を徐々に深めて行きたいのに邪魔すんな!
「シーダ兄ぃ…強引な手段で高貴な花を手折るのは、認めないよ?」
何故またリコイーダがそんなに執拗に俺の邪魔をするんだよ?
「リコイーダもそんなに魔圧を放つなよ?俺はシーダならララーナの側に立ってもいいかな~と思ってるし、寧ろ応援してるよ?」
ギアラクがそう言って何度も頷いている。そんな力強く頷くほどお前は俺の事…俺達の事が分かってるのか!?
「俺だってそうだよ!どーーーーーしても譲りたくないけど、シーダ兄ぃなら我慢出来るぐらい…お似合いです」
「そ…そうか」
リコイーダの粘着した想いはどうでもいいが、まあ2人は俺を応援してくれるようだ。
明日ギルドで落ち合う約束をしてギアラクとリコイーダはそれぞれの宿へ帰って行った。
皆の分の飲み代の支払いを済ませて宿屋の2階へ上がった。
そして廊下を進み、ララーナの部屋の前で立ち止まって扉を見ると違和感に気が付いた。………扉が開いている?ララーナ!俺は部屋に飛び込んだ。
「なんですかぁ~ちゃんと寝てますよぉ?」
ララーナは寝間着に着替えて寝台の上で本を読んでいた。そして俺を見て胡乱な目を向けている。
「な…っ!お前何ともないんだな!?扉が開いてたぞっ!」
ララーナはキョトンとした後、小首を傾げている。
「ん~扉開いてました?あれ、閉め忘れたかな?」
「閉め忘れたじゃねぇよ!誰かが押し入って来たらどうすんだ、馬鹿!」
俺が怒鳴ると、ララーナはまた小首を傾げている。
「え~でもシーダがいるでしょう?危ないことなんてないじゃないですか」
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何だそれ…俺に対する信頼度ってそんなに高いのか?
「男が押し込んできたらどうする?」
「シーダが捕まえてくれるでしょう?」
微笑みながら即答するララーナ。何だかララーナが両手を広げて俺を呼んでいるような気がして、フラフラ…とララーナに近付きかけた時、ララーナがそれは嬉しそうに言った。
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