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旅路
矛と騎士1
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ララーナ=レイジアンテは大人になってしまいました。只今夜が明けたばかりだと思います。私と同じベッドにシーダ=クラィッアー様が眠っておいでになります。因みに大人になったというのはただ床を共にしただけ…私にしてはすごく大人な行為です。
「……」
今、寝返りを打ちたくて仕方ないのですが、シーダに羽交い締め?にされていまして体が動かせない状態です。こういう時大人の女性はどうするんだろう…
その1:ジッと待つ。
その2:シーダを叩き起こして体を動かす。
その3:再び眠る。
その3を選んでもう一回寝ようかな…。と思ってモゾッと動いたら今度はシーダが目覚めたみたいだった。
「ララーナ…?」
呼ばれたので、はい…と返事をしてしまった。
至近距離でシーダ様イケメン様と見詰め合ってしまう。
「あ、あのこういう時はどうするのがいいのでしょうか?」
「ん?」
「私…不慣れで上手く…その、シーダの…」
言いかけている途中でシーダにまた羽交い締めにされた。
「朝から煽るな!」
今の言葉の中に煽り文句があったかな…。シーダの察知能力が高度過ぎて私には分からない。
暫くシーダに、朝から煽るのはだな~とか男とは~とか説教を受けてしまい、シーダの腕の中で寝落ちしたのは言うまでもないだろう。
…
……
………
私はのっそりとベッドから起き上がった。シーダはすでにいない。でも、近くにいるのは分かる。外を散歩でもしているのかな…
取り敢えず体を拭いて…身支度を済ませると、いつもの服に着替えた。
元々、訪問治療をする為に徒歩移動で国々を移動していたので体は丈夫だ。
だか、それとこれとは別みたいだ。羽交い締めで変なところが筋肉痛のようでヨロヨロしながら立ち上がると、ロボットみたいに動きながら部屋を出た。すると部屋を出た所でシーダが廊下の先から現れた。
「起きて大丈夫なのか?村長には今日は体調がすぐれないから診療を休みたいと言って来たんだ」
用意周到ですね、シーダ兄さん。
「動きは制限されていますが、お腹は空いています」
シーダはニヤニヤしながら私の体を支えると
「そーかそーか、じゃあ支えてやらんとな~」
と言いながら私を食堂まで案内してくれた。何だかシーダの表情がおじさん臭いです!
朝食は卵スープと果物が入った菓子パン、お肉の野菜炒めと、果物ゼリーを追加で頂いた。濃厚なミルクを一気飲みする。
「そりゃそうと、昨日退治したシーペンサ…2匹だけなんだが、討伐報告したいからギルドに寄ってもいいか?」
「はい、構いませんが…報告?」
シーダはコーヒーに似た渋茶という飲み物を飲んでいる。
「俺が対峙したシーペンサは幼獣だった。親がいて、巣が村の近くにあるのかもしれない。早く駆除しておかないとな」
なるほど、幼獣…働き蜂かな?蜂の巣があって女王蜂がまだいると…
「そうだ、冒険者ギルドの本部長がララーナに会いたいと言ってる。近いうちにあっちにも行きたいな~」
冒険者ギルドの本部長?うん…ギルドは世界に各支部があるから本部の一番偉い人って…うわああ、社長?会長?
「ギルドの一番偉い人!?」
「ん…ああ、ララーナはギルドの仕組みがあんまり分かってなかったな。ギルドの本部長は代々、北ホグレイッツ王国の国王が本部長に就任しているんだ」
北ホグレイッツ王国…国王?国王陛下!?
「国の一番偉い人が本部長なの!?」
私が叫ぶとシーダは破顔した。
「本当に何も知らないんだな~。北ホグレイッツ王国は知っているか?」
「はい、魔の渦と呼ばれる濃い魔素が漂うの森に隣接していて…魔獣と魔物がわんさかいる土地…だと聞いています」
シーダは私がそう言うと少し表情を引き締めた。
「そう魔獣や魔物がこの世界で一番多い国だ。それ故に国をあげて魔の眷属の討伐に力を注いでいる。ギルドの創設は220年前…国の軍人だけでは対処しきれなくなった時に、魔獣狩りを仕事として受けてくれる手練れがいないかと?世界中に働きかけたのが最初と言われている。それが今の冒険者ギルドの前身だ」
なるほど~冒険者ギルドが預金業務をしたり、公共の移動手段?をギルドに設置しているのは元々は王国の公共機関みたいな扱いだからか。
「だからSSクラス以上の冒険者は厳密に言うと、北ホグレイッツ王国の準騎士という扱いなんだ」
「シーダが騎士ぃ!?それでぇ?」
ものすごく失礼な言葉を連発しているが心からの叫びなので勘弁して欲しい。騎士様ってさ~白いマントをヒラッと靡かせてさ、白い歯をキラッと光らせてさ、金髪碧眼でさ、汗の香りがミントとかなんだよ。
少なくとも、黒いマントをバッサーとはためかせて、血濡れの剣を手に持ってニヤニヤしているようの怖いスケベなお兄さんのことではないと思うんだ。
「気のせいか?ララーナ失礼なこと考えてないか?」
「いえいえ?まさか?」
シーダはジト目で私を見てから、自分の腕の虹色に輝くブレスレットに目をやった。
「王国からの要請があればすぐにはせ参じること、それがSSとSSSの階級に合格する条件のうちの1つかな?」
なるほどね、冒険者ギルドの一員で有る前に北ホグレイッツ王国に殉ずる騎士であらねばならないのか。
「何だか、シーダが急激に格好いい騎士様に見えてきましたよ!」
「…おい、今まで俺を何だと思ってたんだよ」
エロイケメンの強いお兄さんだと思ってました、はい。
朝食を食べ終わると、もう体は動けそうなので村長さんの所へ挨拶にいった。一度ギルドに行ってシーペンサの件を報告するついでに、駆除依頼をしてこようかと思うのだが…と話してみた。
「こちらからお願いしようと思っていました、是非宜しくお願いします」
村長さんはそう言って頷いた。シーダは依頼料の話をした後で
「討伐には俺とこいつも参加しますから、村民へは被害は心配されなくても大丈夫ですので」
とサラッと言い出した。
ちょおおい!何を勝手に決めてるんだよぉ!私は筋肉痛を忘れてババンと椅子から立ち上がった。
「シーダは兎も角、私は山裾に待機ですよね?まさかシーペンサの巣まで同行しろとは言いませんよね?」
「シーペンサの巣が見付かったら幼獣の数は数百匹と言われているんだぞ?リコイーダとギアラクが手隙なら頼もうかと思っているけど、もしリコイーダがあの爪で引っ掛けられて死んだら、ララーナどうするんだよ」
もし何かあっても死ぬのはリコイーダ君で決定なのか…何となく不憫になってきて渋々だがリコイーダ君の為に頷いた。
私とシーダはモスビート王国の、王都ビルンの冒険者ギルド支部へお邪魔した。
シーダが窓口で討伐の話をしている間に私はギルド貯金をしていた。今回は金貨5枚を預入だ、フフフ…
「ララーナ、行くぞ。リコイーダとギアラクは今、別々の依頼を受けている。とりあえず集合をかけているから、終わり次第合流するだろう」
「ぅわっはい!」
シーペンサの幼獣、数百匹VSシーダ1人?私は戦力外だし…いや一応囮として威力は発揮出来るはず?
と、思っていたのは当たりだったようだ。山裾からゆっくりと魔獣の気配を辿っていく。
「生き物の気配は大分するが…もう少し西側か?」
「方角的にはそうですね…様々な魔の獣がいるにはいるみたいですが、今の所こちらに魔力を向けていないようですね」
私は山に入る前から魔物理防御障壁を三重かけにしている。死んだら元も子もない!転ばぬ先の杖!
「いるな…10匹くらいか」
「…っ!」
思わずかかんでしまった。そのまま気分は忍者で…繁みの中をサササッ…と移動して大木の幹から山の上を見上げた。前方…何かが飛んでいる。あれがシーペンサかな?
「行って来る」
シーダはそう呟くと、一瞬でその場から消えた。
「…っ…!」
前方で動物の鳴き声が聞こえる。断末魔のようだ…怖いけど…少し近付いて見よう。障壁を張っているし、大丈夫大丈夫…
サササッ…サササッ…気分は忍びだけど全然忍べていない忍びだけど、取り敢えず木の陰に隠れながらシーダの気配を追う。
うわっシーペンサって手長猿みたいなんだ。うん…周りが急に暗くなった?空が曇ってきたのかな…私は振り向いて空を見ようした。
どうりで暗いはずだ…私の背後にはめっちゃめちゃデカイ手長猿が立っていたからだ。
「…ッシューーッ」
涎凄いね…。牙も凄いね…。私足がね、すくんで動かないんだよね…。おかしいなぁ…シーペンサって結構小さいよね?私の後ろに立っているシーペンサめちゃくちゃ大きくない?
グワッ…と大型手長猿が牙をむいた。
「ひやあああああっ!」
慌てて頭を抱えて屈んだ。私に出来る最大限の防御だ。
自分の障壁にのしかかってくる魔獣の気配や吠えたてる声も怖い。
「ララーナ!?すぐ行く!」
早く来てくれえええ…
何とか耐え忍んでいたら、魔獣の気配が無くなったので顔を上げると、リコイーダ君とギアラクさんが微笑んでいた。
「うわ~ん!ギアラクさん、リコイーダ君!」
思わずギアラクさんに歓喜の余り抱き付いた。しかしすぐに後ろに引っ張られた。シーダだ。むっつりとした顔でギアラクさんと腕をこちらに伸ばしているリコイーダ君を睨みつけている。
「シーペンサの成獣は倒せたが巣はまだ先にある」
「はーい」
リコイーダ君は口を尖らせているけれど、ギアラクさんはニヤニヤしながら私とシーダを交互に見ている。
巣に向かう途中、ギアラクさんにあれから呪いの剣はどうなったのかと聞いてみたら、鍛冶屋の呪いの剣はまだ依頼主が現れないらしい。どうやら鍛冶屋の親父さんに押し付けた説が濃厚な感じだ。
はた迷惑な依頼主だな。呪いの剣だと分ればそのまま、世界治療術師協会に呪具を持ち込んでお祓いを受けることも可能なのだ。
「きっと盗品とか何だろう?だから正式なお祓いも受けられないんだよ」
リコイーダ君はそう言い切っていた。
それからシーペンサの巣(洞窟)を見つけた私達は、巣に火を付けた。燻されてシーペンサが逃げ出して来るのを洞窟の入口で待ち伏せて手際よく始末していく。
私は相変わらず戦力外ですることがなかった。ただ、シーダの予言通り?リコイーダ君がシーペンサの爪で腕を引っ掛かれて
「痛いっ痛いっ死ぬ~~~!」
と叫んでいたのですぐ治療出来る私が付いて来て良かったと思った。
シーペンサの退治を終えてリコイーダ君に次はどこの国に行くの?と聞かれてシーダが代わりに
「北ホグレイッツ王国のギルド本部」
と答えるとリコイーダ君とギアラクさんが、一緒に行く!と言って騒いでいた。私は大歓迎だけど、シーダはむっつりとしていた。魔質を視るかぎり、若干機嫌は悪いけど嫌がってはいない感じかな?
「あ、そうだ!行く前に鍛冶屋通りでスパーッと切れる万能包丁が欲しいです!」
と私が叫ぶと男3人は何故か大爆笑だった。何故笑う?重要なことだぜ?
「……」
今、寝返りを打ちたくて仕方ないのですが、シーダに羽交い締め?にされていまして体が動かせない状態です。こういう時大人の女性はどうするんだろう…
その1:ジッと待つ。
その2:シーダを叩き起こして体を動かす。
その3:再び眠る。
その3を選んでもう一回寝ようかな…。と思ってモゾッと動いたら今度はシーダが目覚めたみたいだった。
「ララーナ…?」
呼ばれたので、はい…と返事をしてしまった。
至近距離でシーダ様イケメン様と見詰め合ってしまう。
「あ、あのこういう時はどうするのがいいのでしょうか?」
「ん?」
「私…不慣れで上手く…その、シーダの…」
言いかけている途中でシーダにまた羽交い締めにされた。
「朝から煽るな!」
今の言葉の中に煽り文句があったかな…。シーダの察知能力が高度過ぎて私には分からない。
暫くシーダに、朝から煽るのはだな~とか男とは~とか説教を受けてしまい、シーダの腕の中で寝落ちしたのは言うまでもないだろう。
…
……
………
私はのっそりとベッドから起き上がった。シーダはすでにいない。でも、近くにいるのは分かる。外を散歩でもしているのかな…
取り敢えず体を拭いて…身支度を済ませると、いつもの服に着替えた。
元々、訪問治療をする為に徒歩移動で国々を移動していたので体は丈夫だ。
だか、それとこれとは別みたいだ。羽交い締めで変なところが筋肉痛のようでヨロヨロしながら立ち上がると、ロボットみたいに動きながら部屋を出た。すると部屋を出た所でシーダが廊下の先から現れた。
「起きて大丈夫なのか?村長には今日は体調がすぐれないから診療を休みたいと言って来たんだ」
用意周到ですね、シーダ兄さん。
「動きは制限されていますが、お腹は空いています」
シーダはニヤニヤしながら私の体を支えると
「そーかそーか、じゃあ支えてやらんとな~」
と言いながら私を食堂まで案内してくれた。何だかシーダの表情がおじさん臭いです!
朝食は卵スープと果物が入った菓子パン、お肉の野菜炒めと、果物ゼリーを追加で頂いた。濃厚なミルクを一気飲みする。
「そりゃそうと、昨日退治したシーペンサ…2匹だけなんだが、討伐報告したいからギルドに寄ってもいいか?」
「はい、構いませんが…報告?」
シーダはコーヒーに似た渋茶という飲み物を飲んでいる。
「俺が対峙したシーペンサは幼獣だった。親がいて、巣が村の近くにあるのかもしれない。早く駆除しておかないとな」
なるほど、幼獣…働き蜂かな?蜂の巣があって女王蜂がまだいると…
「そうだ、冒険者ギルドの本部長がララーナに会いたいと言ってる。近いうちにあっちにも行きたいな~」
冒険者ギルドの本部長?うん…ギルドは世界に各支部があるから本部の一番偉い人って…うわああ、社長?会長?
「ギルドの一番偉い人!?」
「ん…ああ、ララーナはギルドの仕組みがあんまり分かってなかったな。ギルドの本部長は代々、北ホグレイッツ王国の国王が本部長に就任しているんだ」
北ホグレイッツ王国…国王?国王陛下!?
「国の一番偉い人が本部長なの!?」
私が叫ぶとシーダは破顔した。
「本当に何も知らないんだな~。北ホグレイッツ王国は知っているか?」
「はい、魔の渦と呼ばれる濃い魔素が漂うの森に隣接していて…魔獣と魔物がわんさかいる土地…だと聞いています」
シーダは私がそう言うと少し表情を引き締めた。
「そう魔獣や魔物がこの世界で一番多い国だ。それ故に国をあげて魔の眷属の討伐に力を注いでいる。ギルドの創設は220年前…国の軍人だけでは対処しきれなくなった時に、魔獣狩りを仕事として受けてくれる手練れがいないかと?世界中に働きかけたのが最初と言われている。それが今の冒険者ギルドの前身だ」
なるほど~冒険者ギルドが預金業務をしたり、公共の移動手段?をギルドに設置しているのは元々は王国の公共機関みたいな扱いだからか。
「だからSSクラス以上の冒険者は厳密に言うと、北ホグレイッツ王国の準騎士という扱いなんだ」
「シーダが騎士ぃ!?それでぇ?」
ものすごく失礼な言葉を連発しているが心からの叫びなので勘弁して欲しい。騎士様ってさ~白いマントをヒラッと靡かせてさ、白い歯をキラッと光らせてさ、金髪碧眼でさ、汗の香りがミントとかなんだよ。
少なくとも、黒いマントをバッサーとはためかせて、血濡れの剣を手に持ってニヤニヤしているようの怖いスケベなお兄さんのことではないと思うんだ。
「気のせいか?ララーナ失礼なこと考えてないか?」
「いえいえ?まさか?」
シーダはジト目で私を見てから、自分の腕の虹色に輝くブレスレットに目をやった。
「王国からの要請があればすぐにはせ参じること、それがSSとSSSの階級に合格する条件のうちの1つかな?」
なるほどね、冒険者ギルドの一員で有る前に北ホグレイッツ王国に殉ずる騎士であらねばならないのか。
「何だか、シーダが急激に格好いい騎士様に見えてきましたよ!」
「…おい、今まで俺を何だと思ってたんだよ」
エロイケメンの強いお兄さんだと思ってました、はい。
朝食を食べ終わると、もう体は動けそうなので村長さんの所へ挨拶にいった。一度ギルドに行ってシーペンサの件を報告するついでに、駆除依頼をしてこようかと思うのだが…と話してみた。
「こちらからお願いしようと思っていました、是非宜しくお願いします」
村長さんはそう言って頷いた。シーダは依頼料の話をした後で
「討伐には俺とこいつも参加しますから、村民へは被害は心配されなくても大丈夫ですので」
とサラッと言い出した。
ちょおおい!何を勝手に決めてるんだよぉ!私は筋肉痛を忘れてババンと椅子から立ち上がった。
「シーダは兎も角、私は山裾に待機ですよね?まさかシーペンサの巣まで同行しろとは言いませんよね?」
「シーペンサの巣が見付かったら幼獣の数は数百匹と言われているんだぞ?リコイーダとギアラクが手隙なら頼もうかと思っているけど、もしリコイーダがあの爪で引っ掛けられて死んだら、ララーナどうするんだよ」
もし何かあっても死ぬのはリコイーダ君で決定なのか…何となく不憫になってきて渋々だがリコイーダ君の為に頷いた。
私とシーダはモスビート王国の、王都ビルンの冒険者ギルド支部へお邪魔した。
シーダが窓口で討伐の話をしている間に私はギルド貯金をしていた。今回は金貨5枚を預入だ、フフフ…
「ララーナ、行くぞ。リコイーダとギアラクは今、別々の依頼を受けている。とりあえず集合をかけているから、終わり次第合流するだろう」
「ぅわっはい!」
シーペンサの幼獣、数百匹VSシーダ1人?私は戦力外だし…いや一応囮として威力は発揮出来るはず?
と、思っていたのは当たりだったようだ。山裾からゆっくりと魔獣の気配を辿っていく。
「生き物の気配は大分するが…もう少し西側か?」
「方角的にはそうですね…様々な魔の獣がいるにはいるみたいですが、今の所こちらに魔力を向けていないようですね」
私は山に入る前から魔物理防御障壁を三重かけにしている。死んだら元も子もない!転ばぬ先の杖!
「いるな…10匹くらいか」
「…っ!」
思わずかかんでしまった。そのまま気分は忍者で…繁みの中をサササッ…と移動して大木の幹から山の上を見上げた。前方…何かが飛んでいる。あれがシーペンサかな?
「行って来る」
シーダはそう呟くと、一瞬でその場から消えた。
「…っ…!」
前方で動物の鳴き声が聞こえる。断末魔のようだ…怖いけど…少し近付いて見よう。障壁を張っているし、大丈夫大丈夫…
サササッ…サササッ…気分は忍びだけど全然忍べていない忍びだけど、取り敢えず木の陰に隠れながらシーダの気配を追う。
うわっシーペンサって手長猿みたいなんだ。うん…周りが急に暗くなった?空が曇ってきたのかな…私は振り向いて空を見ようした。
どうりで暗いはずだ…私の背後にはめっちゃめちゃデカイ手長猿が立っていたからだ。
「…ッシューーッ」
涎凄いね…。牙も凄いね…。私足がね、すくんで動かないんだよね…。おかしいなぁ…シーペンサって結構小さいよね?私の後ろに立っているシーペンサめちゃくちゃ大きくない?
グワッ…と大型手長猿が牙をむいた。
「ひやあああああっ!」
慌てて頭を抱えて屈んだ。私に出来る最大限の防御だ。
自分の障壁にのしかかってくる魔獣の気配や吠えたてる声も怖い。
「ララーナ!?すぐ行く!」
早く来てくれえええ…
何とか耐え忍んでいたら、魔獣の気配が無くなったので顔を上げると、リコイーダ君とギアラクさんが微笑んでいた。
「うわ~ん!ギアラクさん、リコイーダ君!」
思わずギアラクさんに歓喜の余り抱き付いた。しかしすぐに後ろに引っ張られた。シーダだ。むっつりとした顔でギアラクさんと腕をこちらに伸ばしているリコイーダ君を睨みつけている。
「シーペンサの成獣は倒せたが巣はまだ先にある」
「はーい」
リコイーダ君は口を尖らせているけれど、ギアラクさんはニヤニヤしながら私とシーダを交互に見ている。
巣に向かう途中、ギアラクさんにあれから呪いの剣はどうなったのかと聞いてみたら、鍛冶屋の呪いの剣はまだ依頼主が現れないらしい。どうやら鍛冶屋の親父さんに押し付けた説が濃厚な感じだ。
はた迷惑な依頼主だな。呪いの剣だと分ればそのまま、世界治療術師協会に呪具を持ち込んでお祓いを受けることも可能なのだ。
「きっと盗品とか何だろう?だから正式なお祓いも受けられないんだよ」
リコイーダ君はそう言い切っていた。
それからシーペンサの巣(洞窟)を見つけた私達は、巣に火を付けた。燻されてシーペンサが逃げ出して来るのを洞窟の入口で待ち伏せて手際よく始末していく。
私は相変わらず戦力外ですることがなかった。ただ、シーダの予言通り?リコイーダ君がシーペンサの爪で腕を引っ掛かれて
「痛いっ痛いっ死ぬ~~~!」
と叫んでいたのですぐ治療出来る私が付いて来て良かったと思った。
シーペンサの退治を終えてリコイーダ君に次はどこの国に行くの?と聞かれてシーダが代わりに
「北ホグレイッツ王国のギルド本部」
と答えるとリコイーダ君とギアラクさんが、一緒に行く!と言って騒いでいた。私は大歓迎だけど、シーダはむっつりとしていた。魔質を視るかぎり、若干機嫌は悪いけど嫌がってはいない感じかな?
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