矛と盾 ぶらり二人旅

浦 かすみ

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旅路

矛の正体

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皆で北ホグレイッツ王国に帰って来た。

「王宮で詳しく話そう」

スィーダレン殿下の提案にリコイーダ君、ギアラクさん、シーダも無言で歩く。

先程のカッセルヘイザー王国の貴賓室に比べると、武骨感の主張が激しい壁の魔獣の頭部の剥製とか、床の絨毯の代わりに敷いてある、フカフカの魔獣の皮のカーペットとか…

そんな荒々しくも雄々しいホグレイッツ王国の貴賓室に私達は通された。

壁の魔獣の剥製さん(上半身だけ)がこっちを見ている気がして落ち着かない。何だか剥製さんとずっと目が合ってませんかね? 

「じゃあ、質問疑問に答えようか?」

とシーダが言ったのでやっときたっ!と元気よく叫んだ。

「シーダのお父様、格好いいね!」

「シーダって王族だったのか!」

「シーダ兄ぃのモテ要素がまた上がった!」

思いっきり3人の声が被って…私、ギアラクさん、リコイーダ君の質問?が不協和音を奏でた。

シーダは半眼で私達を見たまま

「ギアラク、リコイーダ、ララーナの順番に話せ」

と言った、ごもっとも。

ギアラクさんが咳払いをしてから

「シーダは王族なんだな?」

一番に皆が驚いたし聞きたいであろう疑問を聞いた。

「まあ、一応な」

「一応とは何だ。歴とした正統な王位継承権一位のラガシーダ殿下だろ?」

スィーダレン殿下の補足説明に興奮した。

やっぱり、シーダがお兄ちゃんだったんだ。シーダはどう見てもお兄ちゃんキャラだけどさ。

「じゃ次はリコイーダだ。つまんねぇ質問すんなよ?」

シーダに脅しかけられたリコイーダ君は慌てて、じゃあさ…と首を捻ってから

「顔に斜め傷のあるカッコイイおっちゃん、シーダ兄ぃの親戚?」

と聞いた。

「ああっ!それ私が聞きたかったのに!?」

「ララーナ、順番だ」

「…すみません」

シーダに怒られてシオシオと座り直した。

「ローウエ=クラィッアー俺の母親の兄貴だから、俺の伯父だな」

あっ!クラィッアーの名字はお母様の方なんだ。

「やっぱり、体格とか体つきそっくりだよな。あの方、相当強そうだ」

「だよな?あのおっちゃん絶対凄いぜ、今度手合わせして欲しい」

「いいな~それ」

おい、こら?強ええぇぇぇ王者に(シーダ伯父)にワクワクするのはいいが、私の質問を早くさせてくれ。

「じゃ次はララーナ」

一番聞きたかった、渋カッコイイおじ様の正体は分かっちゃったのでシーダが嫌がるかな~と思う質問をぶつけてみることにした。

「はい、では…ガリューシダ殿下とシーダは本当の兄弟なのに、国王妃とは二人共血の繋がりはありませんが、どうしてですか?」

シーダは魔質をグニャリと歪ませた。スィーダレン殿下もハッ…と息を飲んだ。

リコイーダ君とギアラクさんが驚愕の表情で私を見て固まっている。

「ララーナ…お前凄いな」

「ふぇ?」

いきなり褒め言葉をもらえるとは思わなかったので、惚けた返事を返してしまった。

シーダは手で顔を覆った後、息を吐き出してから話し出した。

「ララーナの見立て通り、ガリューシダも俺も同じ母から産まれてる。母親はアサシアニカ=クラィッアー元公爵令嬢だ。さっきのオバサンは現国王妃のエリアンナ妃…後から押し掛けてきて厚かましく正妃に座りやがったオバサンだ」

オバサン…重要なのか二回言いましたね?

「なるほど」

「それで?」

皆が先を促すとシーダは話を続けた。 

「あのオバサンにも他国から嫁いできて色々あったんだろうけど、俺が先に産まれて自分に中々子供が出来ないことに苛立って俺や母を苛めてた。そんな中、やっと子どもが出来たらしい。そして…偶然にも母も子ができたんだ」

同時に二人共に…

「ところがエリアンナ妃の子は産まれる前に死産。そして…段々エリアンナ妃はおかしなことを言い出した。自分の腹にいた子供が浚われた、犯人は母…アサシアニカだと言い出した」

「えっ!?お母様のお腹に居るのは当たり前だけど自分の赤ちゃんだよね?」

「無茶苦茶だ…!」

「気が触れたのか」

ギアラクさんの呟きにシーダは苦笑いを浮かべた。

「おまけに、その後産まれたガリューシダは…エリアンナ妃の手の者によって浚われた。自分の子供だから取り返したんだ…そう主張していた」

「酷い……でも、辛い」

私が呟くとシーダは何度も頷いている。

「そう、酷いけど切ない…辛い。エリアンナ妃はガリューシダを自分の産んだ子だと可愛がっている。皆が知っているんだ…でもあの人から取り上げれるのか?と随分揉めたらしい。最終的に父も母も大切に育ててくれるならと、預けることにしたんだけど…」

「したんだけど?」

「今はご覧の通りだ、我が儘放題。あれはやりすぎだ」

「ああっ~」

「確かにあれは~」

皆がガリューシダ殿下のあれこれを思い出して大きな溜め息をついた。

「今更だが、また揉めているんだ…いい加減ガリューシダにも真実を教えて、エリアンナ妃と距離を置いた方がいいのでは…とか強引だがエリアンナ妃を精神の病気だとどこか療養施設に入れようか…とか」

そうか…ガリューシダ殿下とシーダのやり取りは若干刺々しいけど、激しい決闘みたいにならないのは、シーダがガリューシダ殿下を弟扱い?しているからかも?

「ガリューシダを父上は随分諌めているし、伯父も叱ってはいるがエリアンナ妃が間に入ってしまうので効果は薄い…と俺は思う」

あれ?でもさ…と以前聞いていたシーダの過去話を思い出して首を捻った。

「あの~以前シーダにお聞きした昔の話で6才の時にシーダは家を追い出されたと聞きましたが…」

「ええっ?」

「シーダ兄ぃ!?そんな過去があったの?」

ギアラクさんもリコイーダ君も知らなかったのか。まあ、ベラベラ喋ることではないか。

「あ……あれは相変わらず俺を毛嫌いしたエリアンナ妃の差し金で、人を使って浚われてな。ララーナに説明する時に浚われたとか言うと面倒かと思って…すまん。兎に角、死に物狂いでその人浚いから逃げて、暫くマジで行方不明になってた」

「ひええっ!」

「こわっ!」

「逃げ隠れして、父上と伯父に見つけてもらった時にはそれから半年は経ってた。」

壮絶過ぎる子供のシーダ!

「兎に角、暫くは隠れ住んだ方がいいからと伯父の紹介で北ホグレイッツに行った」

シーダはそう言ってスィーダレン殿下を指差した。あっ!その時からの知り合いなんだ。だからシーダの正体知ってたんだ。

「シーダとはその時からの付き合いさ」

「幼馴染みなんですね」

ギアラクさんが王子殿下2人に優しい微笑みを向けている。きっと子供の頃の可愛い男の子時代の2人を妄想しているんだろう。可愛いものが好きだからな、ギアラクさん。

「はいっ!質問!」

リコイーダ君がビシッと手を挙げたので、シーダが促した。リコイーダ君は何故だか私をチラチラ見ている。

「あの…じゃあシーダ兄ぃはまた王子様になるの?」

私が華麗に避けていた質問をしちゃったね、リコイーダ君!

チラッとシーダを見ると私に向かって蕩けそうな微笑みを向けていた。

今…………(想像)妊娠しました。

「ん……まあ今の所はないなぁ。それにな…」

とシーダが言いかけた時にバーンと扉が開いて女の子と男の子が雪崩れ込んで来た。

「お兄様!」

「帰って来てたのに、黙ってるなんて!」

年の頃は10代前半くらいの女の子と男の子……どう見てもシーダにそっくりだった。

2人で転がるように走って来るとシーダに抱きつき、シーダの膝の上に乗っている。これは……

シーダはニヤッと笑った。

「公爵の伯父の家にいるけど、まあ見て分かると思うけど、俺の弟と妹」

私は思わず笑顔になった…だって廊下の向こうからこちらを覗き込んでいる女性がいる。

魔質を見て確信する。

「シーダのお母様…」

お元気だったんだ!しかも弟妹もいるし。

シーダのお母様はトコトコ…と室内に入って来ると淑女の礼をされた。

「アサシアニカでございます」

可愛い…!この可愛さで厳ついシーダとかガリューシダ殿下のお母様なの?

アサシアニカ妃は私と目が合うと、頬を染めた。ん?

「俺がいなくても、王族にはこいつらがいるしな」

そして、シーダの弟と目が合った途端、アサシアニカ妃が右、弟君がシーダの膝から降りて来ると私の左側に座り、私の腕を取って何故だか絡み付いてくる。

んん?

「でもガリューシダ殿下のアレはやりすぎじゃないかな?」

ギアラクさんがそう言って眉間に皺を寄せている。

「何せエリアンナ妃に育てられて、俺は下賤の庶子の腹違いの兄だと思い込んでるからな~俺の言うことも聞きやしない」

「ガリューシダちゃんね、困った子ね」

ちゃん、呼びしてるんだお母様!

「母上…俺はあのオバサン許せねえよ。母上のこと随分苛めてたじゃないか。父上のことも舐めてかかって…結局妃の公務だって全部母上が取り仕切っていて、あのオバサンは遊んでばかりで…」

うわわっシーダの魔力がうねっている。ああ、シーダの悲しみとか恨みって、苛めてたエリアンナ妃や結局助けにならなかった国王陛下やこんな理不尽を受け入れている、アサシアニカ妃にも………皆に腹を立てているんだ。

上手くいかないね。親の言い分、子供の言い分。

どうして捨てたの?私はいらない子だったの?

聞けないよね?親にぶつけたいけど、シーダは堪えているんだね。

それはそうとさ

さっきからシーダ弟とシーダママは何故、私にへばりついているでしょうかね?

「そうでした、自己紹介がまだでした。初めましてララーナ=レイジアンテと申します」

2人に腕を拘束?されているので変なポーズだがシーダ弟とシーダママにご挨拶をした。

「まあ、宜しくね!」

「初めまして、ジュリシーダ=クラィッアーです、ララーナは独身ですか!?」

おおっ?!何その突っ込んだ質問は?

「はい、独身ですが…」

そう私が答えるとジュリシーダ君はグンッと私に顔を近付けて来て

「じゃあ僕のお嫁さんになってくれる!?」

と聞いてきた!?

「ぅえ?え?」

と仰天していると、ジュリシーダ君が目の前から消えた。

「このクソガキ!」

ジュリシーダ君はシーダに襟首を掴まれ、空中に放り投げられていた!

「あっ…!危な…!」

危ない!と思ったが…ジュリシーダ君は空中でクルリと一回転をして、綺麗に着地して身構えた。うそーーっ!?

「流石シーダの弟!」

「あのおっちゃんに鍛えてもらってるんじゃないかな!?」

ギアラクさんとリコイーダ君の賛辞を受けてジュリシーダ君はニヤリと笑った。

「僕だって伯父上に指南して頂いてるから、兄上には負けないよ!あのララーナの熟れたモレアの実は僕のものだ!」

「ぎゃあ!」

リコイーダ君が何故か悲鳴を上げた。モレアの実…最近そればかり言われるなぁ…それってさ~

「それは私の唇からモレアの実の匂いがするという事でしょうかね~?え~とモレアの実を煮だして、薬効を入れた果実紅を塗っているからじゃないですか?」

シーダママも私にグイッと顔を近付けて来た。シーダの目の色はママ似ですね。

「ララーナちゃんそれはどういう紅なの?ん?私に教えて」

シーダママに急かされるようにリュックサックの中から軟膏を入れる小瓶を取り出すと、蓋を開けてシーダママに見せた。

「以前、薬師の方に唇が乾燥などで荒れるのを防ぎたいのでどうすればいいかとお聞きしたら、モルシアの葉が良いとお聞きして、その葉とキッタカを一緒に煮だしてからモレアの実の果肉を混ぜて紅を作っています。薄く色が付いて唇の発色も良いので…」

シーダママ、アサシアニカ妃は迷いなく、私の手に乗った小瓶から一掬い…所謂、色付き薬用リップを掬い上げ、ご自身の唇に乗せた。

プルンとした唇になった、シーダママは手鏡を取り出してご自身のウルルン唇を見詰めている。

「んまああぁぁぁ!ララーナちゃぁん!これ欲しーーーーい!」

シーダママ…こういうキャラだったんだね。
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