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郷愁
盾の威力
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ガリューシダの3人の側妃はエリアンナが側妃にと推してきた女達だった。
帝国の差し金か…元帝国の伯爵令嬢と出自のよく分からない女と、我が国の子爵令嬢だが…種違いの子供を堂々とガリューシダの子供として産んだのはかなり悪質だな。
もしかして…と思うが帝国の気配を感じる…薄気味悪いな。
エリアンナの件は俺と父上と母上で話し合うまでもなく、既に結論は出ているも同然だった。
「ヘブライサ帝国がどう出てくるかは分からないが、いつまでもエリアンナを正妃のままでは置いておけないのは事実だ」
「療養させるのか?」
俺が国王陛下…父上をそう言って見詰めると父上は頷いた。20年近く放置しておいて今更何をためらうんだ…。とは流石に言えない。
ヘブライサ帝国は実態の掴めない恐ろしい帝国だ。事実、北ホグレイッツ王国の暗部やカッセルヘイザー王国の特殊部隊でも帝国の実態を掴めていない。そんな帝国の第三皇女エリアンナが嫁いできたのは、偶々エリアンナが皇女殿下時代に外国の要人が出席する夜会で父上を見染めたのが原因と言われている。
その時から父上は母上とすでに婚約していて、婚姻準備に入っていたというのに強引に多額の持参金と利権を手土産に乗り込んできたそうだ。
どうしてエリアンナを妃に迎えたんだ。と、子供の時に聞いたことはある。
父上は苦々しい顔を見せて
「受け入れなければ色々と言われてしまうのでな。ラガシーダとアサシアニカを守る為だ」
と言っていたけど、子供の俺はよく分かっていなくて…嫌なら嫌だと言えばいいんだ!父上の意気地無し!…と心の中で思っていたが、今思えば帝国に圧力でもかけられていた…のかもしれない。
父上にとっても母上にとってもエリアンナはとんでもない厄災に違いない。
「しかし…父上に今更言うのも何だけど、エリアンナ妃によく手なんか出せましたね」
「グホッ…うん、それは…」
父上は何故だが母上に目配せをした。ああ、今は大人しく座ってるけどガリューシダもいるんだった。
「今から言う事は当時診察した医師や側付きの女官しか知らないことだから、他言無用で頼む」
父上の真剣な顔を見て、俺は母上の方を見た。母上は泣きそうな顔をしている。
「エリアンナとは私はそういうことはしていない…エリアンナは実際は妊娠をしていなかった」
「え?」
「じゃあ…」
俺とガリューシダの声が重なった。
「エリアンナはずっと…そう思い込んでいた。アサシアニカの腹に…子が…ガリューシダで宿って腹が大きくなるにつれて声高に、私の子が盗られてしまった、アサシアニカの腹には私の子がいる…そう言って聞かなかった」
ガリューシダは顔色を変えて俯いてしまった。
「帝国にはこの十数年エリアンナはずっと病状が思わしくなく、正妃の公務は全てアサシアニカが代わっていたが、この度に保養地で療養させることにしたと伝えている。帝国から特使が来てもあの状態のエリアンナを見ればわかるだろう」
そうだな…先程まで暴れて泣いて、ガリューシダは私の子供だ!腹に居たガリューシダはアサシアニカに盗られた!と叫んでばかりだった。俺も当時、小さかったけど身重の母上に向かって怒鳴り散らすあのババアの剣幕だけは覚えている。
「ガリューシダ…まだ時間はある。病も無事に治ったし…お前はこれからだ」
ガリューシダは小さい声で、はい…と呟いた。元々はガリューシダは大人しいんだよな…。あのババアに煽られておかしな行動が目についていたけど…
「それはそうと、ラガシーダちゃん!ララーナちゃんとはどこで知り合ったの?」
うぐ…母上の浮かれた声にげんなりする。
「そうだ、あの奇跡の使い手のララーナ嬢、実に美しい娘だったな~」
父上がウットリとした顔でそう言った。おい…まさか本気で狙ってるんじゃねーよな?母上にチクるぞ?
「ララーナとはあいつが僻地の無医村に診療に来ている時に村で知り合った。あいつはずっと無医村ばかり回っていて…女1人旅だし、色々と危ないから、護衛を引き受けた」
「それで?」
母上の目が輝いている。女ってこういう話、好きだよな。
「あいつ人懐っこいし…綺麗だけど気取った所が無くて誰にでも優しいし、一緒に旅していると絆されるというか…」
「ええ、ええ!ララーナちゃんは可愛いし綺麗よね!じゃあじゃあ~お付き合いしているのね!勿論ラガシーダちゃんはララーナちゃんと婚姻するのよね!?」
うぐぅうう…。思わず父上をチラッと見てしまった。父上は若干険しい顔をしているな。こりゃ…諸手を上げて婚姻に賛成…という訳じゃないのか。
「ああ、勿論将来的にはそのつもり。只、父上達が駄目だって反対するなら俺~王位継承権放棄するし」
「兄上!?」
「ラガシーダ!」
ガリューシダと父上から非難めいた声を向けられた。
「だって元々ギルドでSSSの仕事は沢山あるし、ララーナは奇跡の使い手だし俺達生活には困らないしな~。ララーナは自由に診療出来て、魔道具の布袋作ったり~それにだ、果実紅とか自分で顔に塗る肌に良い薬を作ってるから…それの商売初めてもいいかもだしな」
いきなり母上が立ち上がった。どうしたんだ?
「ラガシーダちゃん、ララーナちゃんはお肌に塗る美容の薬も作ってるの?」
「へぇ?あ…そうみたいだぜ。手に塗る薬も持ってるぜ」
母上は立ち上がったまま、父上を見下ろした。母上の顔が怖えぇ。
「陛下…ララーナちゃんの作っている美容品はとても素晴らしい物だと断言できます。ララーナちゃんがお嫁に来てくれたら、是非ともカッセルヘイザー王国で専売契約を結んで開発・販売を国を挙げておこないたいと思います」
「おお…そうか?アサシアニカがそれほど言うなら是非ララーナには美容品の開発と研究を我が国で行って欲しいな」
おお…母上の支持を得てララーナの俺嫁計画が一歩前進した。
そこで取り敢えずの話し合いも終わり、俺はガリューシダと一緒に廊下に出た。俺はガリューシダを呼び止めると耳元へ顔を近付けた。
「ガリューシダ…お前が使っている暗殺集団、あれとはもう手を切れよ」
「あ……クイデの部隊のことか?あれは母上…エリアンナ妃が帝国から連れてきた者達だと聞いている」
「帝国…はぁぁ…兎に角、向こうから接触してきても取り合うなよ?」
ガリューシダは戸惑いながらも頷いてくれた。
後で伯父上に頼んで暗部の見張りをガリューシダに付けておいてもらおう…いや、もうついてるか?
廊下に潜む殺気の無い手練れの気配を読んで、ちょっと胸をなでおろした。
「そ…そのあにう…え、今までゴメン」
「ん?」
「私は何も知らなくて…エリアンナ妃と一緒になって兄上に酷い言葉を投げつけていた」
「今、お前が心から謝罪しなければならないのはスリハナイデ妃だ」
「っ…!」
何年か前の自分の姿にそっくりなガリューシダの頭をわしゃわしゃと撫でた。ガリューシダと話してると自分と会話しているみたいな変な気持ちになる。
「お前は何も知らなくて当然だよ。父上も母上もエリアンナの嘘に付き合って……お前を生贄に差し出した手前、お前にバレたくなくて必死で色んなことを隠蔽していたんだからさ」
俺が本音をぶちまけると、ガリューシダは唇を噛み締めて泣きそうな顔になった。
「い、生贄だなんて…」
「生贄以外の何物でもないだろう?産まれたばかりのお前をうるせーババアに投げ渡したんだぜ?どういう扱いを受けるかは分かってたはずだ。だから……俺は王族は嫌なんだ。逃げてばかりで見ないフリを20年近くも続けてきたんだぜ?ムカつく…」
「だから兄上は城に寄り付かないのか?」
「そーだよ。ここに居たらそれを思い出してムカつくからさ。まあエリアンナがここからどこかに行っても、そこは変わんね。それに国の後継ぎにはお前やジュリがいるしな~」
ガリューシダは目に涙を溜めている。
「兄上が一番国王に向いている」
止めろよな…父上や伯父上にも言われてるんだよ…でも国王になったらララーナとはどうなるよ?そりゃララーナに会う前までは時期が来たら国王になってもいいかな~とか吞気に構えていたけど、今は違う。ララーナを嫁に出来ないとなれば俺は…
「ララーナが王妃なんて嫌だ…って言ったら俺はやらねーよ」
「そんな理由!?あの子の事…そんなに大事なのか?」
「ああ、大事も大事。俺の中で一番の優先事項はララーナの幸せ、ララーナの笑顔を守る、ララーナの美しいお姿を全力死守、これだから!」
ガリューシダがドン引きしてるけど、構いはしない。マジで俺の最優先事項はララーナの全てを守るだからだ。
別れ際に念押しでガリューシダにスリハナイデ妃に跪いて許しを乞え!と言ってから足早に移動した。
ああ、早くララーナに会いてえ…急いでララーナの所へ向かう。確かエミリアの部屋で女子会?とかいう名前の会をしているはずだ。
「ん?」
エミリアの部屋の前には護衛2名とジュリシーダが立っていた。
「お前、何やってんの?」
「あ、兄上…。エミリアに入れて貰えないのですよ!」
そんなの当たり前じゃねーか。女子同士は結束したら、蟻が入る隙間も与えてはくれないぜ?
すると、部屋の扉が開いてララーナが顔を覗かせた。湯上りなのか…頬を上気させていて、いつも見慣れているはずの、光り輝く美貌に目が釘付けになる。
「シーダ」
俺嫁に近付こうとして…不敵に笑うエミリアから衝撃の告白を受ける。
ララーナと一緒に風呂に入っただと…?洗いっこをしただと?珠の肌だってぇ?それは俺だって知ってるぞっ!俺…俺だってまだ〇〇〇〇〇だってまだしたことないのに…!?どういうことだー!
「ララーナ…は」
「入りません!」
ララーナと一緒に風呂に入ろうと思ったのに鋭く拒否された。おまけに夜に俺の部屋に来てくれると思ってたのに…ララーナが来ねぇぇぇ!
来たのはあのクイデの刺客だけだった!王城で俺の命を狙うなんて何考えてるんだゴルァ!
ガリューシダの差し金か?と怒りに任せてガリューシダの寝所に行ったら俺の助言に従って、スリハナイデ妃に許しを乞ていた時にあいつもどこかの刺客に狙われていたみたいで、うちの暗部とどこかの刺客との乱闘騒ぎになっていた。ガリューシダの腕の中でスリハナイデ妃は震えていた。
「兄上も怪我は無いのか?」
今日一日で随分と可愛くなったガリューシダが、イライラしている俺を心配してくれるのはいいが…夜中に騒いでんじゃねぇぞっゴルァ!?俺の嫁とのイチャイチャを邪魔するなーー!
クイデの糞チビや刺客共を半殺しにして、怒ってみてもララーナは俺の寝所には来なかった…
翌朝
何故来なかったんだ~とララーナに聞くと…ローロンという黒い羽虫を見るような目で俺を見てきた。何故だかエミリアもジュリシーダもそんな目で俺を見てくる。な…何だよ。
その日、北ホグレイッツ王国にララーナと帰ったんだけど、時々視線を感じるのでララーナを見ると、また黒い羽虫を見るような目で俺を見ている時があった。
女にあんな目で見られるのは初めてだ…
「ララーナ…」
「何ですか…?」
今は北ホグレイッツの俺の家の居間だ。ギアラクとリコイーダは鍛錬に出ている。
何かララーナの機嫌が直るような、何かを…何かを…ララーナの入れてくれた茶の茶器を見ていて閃いた。
「商店街の魔獣肉の直売店に行くか?ホグレイッツは魔獣肉が獲れたてで新鮮で美味いぞ」
ララーナの目が輝いた。やはり食べ物か…!
ヤキニク~タベホゥダイーィ~と変な歌を歌いながら、出かける準備をするララーナ。俺嫁(仮)にとどめの言葉を言っておこうか。
「確か~今日は魔獣肉の特売日だったかな?」
振り向いたララーナが歓喜の悲鳴を上げながら、俺の頬と唇に口付けをしてくれた。
俺嫁(仮)の機嫌は直ったようだ…。ついでに俺の気分も上々になった。
帝国の差し金か…元帝国の伯爵令嬢と出自のよく分からない女と、我が国の子爵令嬢だが…種違いの子供を堂々とガリューシダの子供として産んだのはかなり悪質だな。
もしかして…と思うが帝国の気配を感じる…薄気味悪いな。
エリアンナの件は俺と父上と母上で話し合うまでもなく、既に結論は出ているも同然だった。
「ヘブライサ帝国がどう出てくるかは分からないが、いつまでもエリアンナを正妃のままでは置いておけないのは事実だ」
「療養させるのか?」
俺が国王陛下…父上をそう言って見詰めると父上は頷いた。20年近く放置しておいて今更何をためらうんだ…。とは流石に言えない。
ヘブライサ帝国は実態の掴めない恐ろしい帝国だ。事実、北ホグレイッツ王国の暗部やカッセルヘイザー王国の特殊部隊でも帝国の実態を掴めていない。そんな帝国の第三皇女エリアンナが嫁いできたのは、偶々エリアンナが皇女殿下時代に外国の要人が出席する夜会で父上を見染めたのが原因と言われている。
その時から父上は母上とすでに婚約していて、婚姻準備に入っていたというのに強引に多額の持参金と利権を手土産に乗り込んできたそうだ。
どうしてエリアンナを妃に迎えたんだ。と、子供の時に聞いたことはある。
父上は苦々しい顔を見せて
「受け入れなければ色々と言われてしまうのでな。ラガシーダとアサシアニカを守る為だ」
と言っていたけど、子供の俺はよく分かっていなくて…嫌なら嫌だと言えばいいんだ!父上の意気地無し!…と心の中で思っていたが、今思えば帝国に圧力でもかけられていた…のかもしれない。
父上にとっても母上にとってもエリアンナはとんでもない厄災に違いない。
「しかし…父上に今更言うのも何だけど、エリアンナ妃によく手なんか出せましたね」
「グホッ…うん、それは…」
父上は何故だが母上に目配せをした。ああ、今は大人しく座ってるけどガリューシダもいるんだった。
「今から言う事は当時診察した医師や側付きの女官しか知らないことだから、他言無用で頼む」
父上の真剣な顔を見て、俺は母上の方を見た。母上は泣きそうな顔をしている。
「エリアンナとは私はそういうことはしていない…エリアンナは実際は妊娠をしていなかった」
「え?」
「じゃあ…」
俺とガリューシダの声が重なった。
「エリアンナはずっと…そう思い込んでいた。アサシアニカの腹に…子が…ガリューシダで宿って腹が大きくなるにつれて声高に、私の子が盗られてしまった、アサシアニカの腹には私の子がいる…そう言って聞かなかった」
ガリューシダは顔色を変えて俯いてしまった。
「帝国にはこの十数年エリアンナはずっと病状が思わしくなく、正妃の公務は全てアサシアニカが代わっていたが、この度に保養地で療養させることにしたと伝えている。帝国から特使が来てもあの状態のエリアンナを見ればわかるだろう」
そうだな…先程まで暴れて泣いて、ガリューシダは私の子供だ!腹に居たガリューシダはアサシアニカに盗られた!と叫んでばかりだった。俺も当時、小さかったけど身重の母上に向かって怒鳴り散らすあのババアの剣幕だけは覚えている。
「ガリューシダ…まだ時間はある。病も無事に治ったし…お前はこれからだ」
ガリューシダは小さい声で、はい…と呟いた。元々はガリューシダは大人しいんだよな…。あのババアに煽られておかしな行動が目についていたけど…
「それはそうと、ラガシーダちゃん!ララーナちゃんとはどこで知り合ったの?」
うぐ…母上の浮かれた声にげんなりする。
「そうだ、あの奇跡の使い手のララーナ嬢、実に美しい娘だったな~」
父上がウットリとした顔でそう言った。おい…まさか本気で狙ってるんじゃねーよな?母上にチクるぞ?
「ララーナとはあいつが僻地の無医村に診療に来ている時に村で知り合った。あいつはずっと無医村ばかり回っていて…女1人旅だし、色々と危ないから、護衛を引き受けた」
「それで?」
母上の目が輝いている。女ってこういう話、好きだよな。
「あいつ人懐っこいし…綺麗だけど気取った所が無くて誰にでも優しいし、一緒に旅していると絆されるというか…」
「ええ、ええ!ララーナちゃんは可愛いし綺麗よね!じゃあじゃあ~お付き合いしているのね!勿論ラガシーダちゃんはララーナちゃんと婚姻するのよね!?」
うぐぅうう…。思わず父上をチラッと見てしまった。父上は若干険しい顔をしているな。こりゃ…諸手を上げて婚姻に賛成…という訳じゃないのか。
「ああ、勿論将来的にはそのつもり。只、父上達が駄目だって反対するなら俺~王位継承権放棄するし」
「兄上!?」
「ラガシーダ!」
ガリューシダと父上から非難めいた声を向けられた。
「だって元々ギルドでSSSの仕事は沢山あるし、ララーナは奇跡の使い手だし俺達生活には困らないしな~。ララーナは自由に診療出来て、魔道具の布袋作ったり~それにだ、果実紅とか自分で顔に塗る肌に良い薬を作ってるから…それの商売初めてもいいかもだしな」
いきなり母上が立ち上がった。どうしたんだ?
「ラガシーダちゃん、ララーナちゃんはお肌に塗る美容の薬も作ってるの?」
「へぇ?あ…そうみたいだぜ。手に塗る薬も持ってるぜ」
母上は立ち上がったまま、父上を見下ろした。母上の顔が怖えぇ。
「陛下…ララーナちゃんの作っている美容品はとても素晴らしい物だと断言できます。ララーナちゃんがお嫁に来てくれたら、是非ともカッセルヘイザー王国で専売契約を結んで開発・販売を国を挙げておこないたいと思います」
「おお…そうか?アサシアニカがそれほど言うなら是非ララーナには美容品の開発と研究を我が国で行って欲しいな」
おお…母上の支持を得てララーナの俺嫁計画が一歩前進した。
そこで取り敢えずの話し合いも終わり、俺はガリューシダと一緒に廊下に出た。俺はガリューシダを呼び止めると耳元へ顔を近付けた。
「ガリューシダ…お前が使っている暗殺集団、あれとはもう手を切れよ」
「あ……クイデの部隊のことか?あれは母上…エリアンナ妃が帝国から連れてきた者達だと聞いている」
「帝国…はぁぁ…兎に角、向こうから接触してきても取り合うなよ?」
ガリューシダは戸惑いながらも頷いてくれた。
後で伯父上に頼んで暗部の見張りをガリューシダに付けておいてもらおう…いや、もうついてるか?
廊下に潜む殺気の無い手練れの気配を読んで、ちょっと胸をなでおろした。
「そ…そのあにう…え、今までゴメン」
「ん?」
「私は何も知らなくて…エリアンナ妃と一緒になって兄上に酷い言葉を投げつけていた」
「今、お前が心から謝罪しなければならないのはスリハナイデ妃だ」
「っ…!」
何年か前の自分の姿にそっくりなガリューシダの頭をわしゃわしゃと撫でた。ガリューシダと話してると自分と会話しているみたいな変な気持ちになる。
「お前は何も知らなくて当然だよ。父上も母上もエリアンナの嘘に付き合って……お前を生贄に差し出した手前、お前にバレたくなくて必死で色んなことを隠蔽していたんだからさ」
俺が本音をぶちまけると、ガリューシダは唇を噛み締めて泣きそうな顔になった。
「い、生贄だなんて…」
「生贄以外の何物でもないだろう?産まれたばかりのお前をうるせーババアに投げ渡したんだぜ?どういう扱いを受けるかは分かってたはずだ。だから……俺は王族は嫌なんだ。逃げてばかりで見ないフリを20年近くも続けてきたんだぜ?ムカつく…」
「だから兄上は城に寄り付かないのか?」
「そーだよ。ここに居たらそれを思い出してムカつくからさ。まあエリアンナがここからどこかに行っても、そこは変わんね。それに国の後継ぎにはお前やジュリがいるしな~」
ガリューシダは目に涙を溜めている。
「兄上が一番国王に向いている」
止めろよな…父上や伯父上にも言われてるんだよ…でも国王になったらララーナとはどうなるよ?そりゃララーナに会う前までは時期が来たら国王になってもいいかな~とか吞気に構えていたけど、今は違う。ララーナを嫁に出来ないとなれば俺は…
「ララーナが王妃なんて嫌だ…って言ったら俺はやらねーよ」
「そんな理由!?あの子の事…そんなに大事なのか?」
「ああ、大事も大事。俺の中で一番の優先事項はララーナの幸せ、ララーナの笑顔を守る、ララーナの美しいお姿を全力死守、これだから!」
ガリューシダがドン引きしてるけど、構いはしない。マジで俺の最優先事項はララーナの全てを守るだからだ。
別れ際に念押しでガリューシダにスリハナイデ妃に跪いて許しを乞え!と言ってから足早に移動した。
ああ、早くララーナに会いてえ…急いでララーナの所へ向かう。確かエミリアの部屋で女子会?とかいう名前の会をしているはずだ。
「ん?」
エミリアの部屋の前には護衛2名とジュリシーダが立っていた。
「お前、何やってんの?」
「あ、兄上…。エミリアに入れて貰えないのですよ!」
そんなの当たり前じゃねーか。女子同士は結束したら、蟻が入る隙間も与えてはくれないぜ?
すると、部屋の扉が開いてララーナが顔を覗かせた。湯上りなのか…頬を上気させていて、いつも見慣れているはずの、光り輝く美貌に目が釘付けになる。
「シーダ」
俺嫁に近付こうとして…不敵に笑うエミリアから衝撃の告白を受ける。
ララーナと一緒に風呂に入っただと…?洗いっこをしただと?珠の肌だってぇ?それは俺だって知ってるぞっ!俺…俺だってまだ〇〇〇〇〇だってまだしたことないのに…!?どういうことだー!
「ララーナ…は」
「入りません!」
ララーナと一緒に風呂に入ろうと思ったのに鋭く拒否された。おまけに夜に俺の部屋に来てくれると思ってたのに…ララーナが来ねぇぇぇ!
来たのはあのクイデの刺客だけだった!王城で俺の命を狙うなんて何考えてるんだゴルァ!
ガリューシダの差し金か?と怒りに任せてガリューシダの寝所に行ったら俺の助言に従って、スリハナイデ妃に許しを乞ていた時にあいつもどこかの刺客に狙われていたみたいで、うちの暗部とどこかの刺客との乱闘騒ぎになっていた。ガリューシダの腕の中でスリハナイデ妃は震えていた。
「兄上も怪我は無いのか?」
今日一日で随分と可愛くなったガリューシダが、イライラしている俺を心配してくれるのはいいが…夜中に騒いでんじゃねぇぞっゴルァ!?俺の嫁とのイチャイチャを邪魔するなーー!
クイデの糞チビや刺客共を半殺しにして、怒ってみてもララーナは俺の寝所には来なかった…
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何故来なかったんだ~とララーナに聞くと…ローロンという黒い羽虫を見るような目で俺を見てきた。何故だかエミリアもジュリシーダもそんな目で俺を見てくる。な…何だよ。
その日、北ホグレイッツ王国にララーナと帰ったんだけど、時々視線を感じるのでララーナを見ると、また黒い羽虫を見るような目で俺を見ている時があった。
女にあんな目で見られるのは初めてだ…
「ララーナ…」
「何ですか…?」
今は北ホグレイッツの俺の家の居間だ。ギアラクとリコイーダは鍛錬に出ている。
何かララーナの機嫌が直るような、何かを…何かを…ララーナの入れてくれた茶の茶器を見ていて閃いた。
「商店街の魔獣肉の直売店に行くか?ホグレイッツは魔獣肉が獲れたてで新鮮で美味いぞ」
ララーナの目が輝いた。やはり食べ物か…!
ヤキニク~タベホゥダイーィ~と変な歌を歌いながら、出かける準備をするララーナ。俺嫁(仮)にとどめの言葉を言っておこうか。
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