矛と盾 ぶらり二人旅

浦 かすみ

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冒険

ギルド内選抜試験

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マッチョ…マッチョ。大きな闘技場はマッチョで埋め尽くされている。あ、よく見ればマッチョの中に時々、細マッチョもいる。

「暑苦しいね」

「まあ人が多いしな~これでも全部のSクラス以上じゃないぜ。世界中のギルドにはSクラス以上は20万人いるしな」

「へぇ~」

シーダの補足説明に笑顔で頷いて見せたが、内心はげんなりしている。

わざわざ怖い思いや、痛い思いをしに選抜試験を受けに来るなんて冒険者ってマゾなのかな?シーダ=クラィッアー様イケメン様SSS様は選抜の特別枠らしく、予選には出ずに本選から参加らしい。

因みスィーダレン殿下も特別枠扱いだ。イケメン様SSS様枠なのかな?

それにしても何故私まで、VIP席みたいな日よけテントの中で予選試合を見学しているんでしょうか?私…部外者じゃね?

そんな思いを籠めて酸っぱい気持ちでマッチョの大群を見ていたら、リコイーダ君とギアラクさんがいるのに気が付いた!2人は私達に気が付いて、手を振りながらVIP席の方へ走って来た。

「リコイーダ君っ!今日もいいね!」

「何が?」

キョトンとするリコイーダ君は今日も可愛い系ソフトマッチョだね。マッチョの中の癒し細マッチョだよ。ゴリッとしてないだけでも爽やかだよ。

「リコイーダ、大丈夫か?」

シーダがニヤッと笑いながらリコイーダ君に聞くと、リコイーダ君は声高に叫んだ。

「何かシーダ兄ぃが上からでムカつくな!いや、SSSだし殿下だし上からなのはいいけどさっ!なんだかなぁ!」

リコイーダ君は目上の人への理不尽な怒りを支離滅裂な言葉で表現していた。緊張しているんだろう…魔質がガクブルしているし…ね。

「リコイーダ君…何度も言っているけど、戦い敗れても虫の息ぐらいなら治してあげるから、死ぬギリギリまで戦っておいで…」

リコイーダ君はクワッと魔力を上げて私を睨んだ。

「ララーナがいつもにもまして、怖いこと言ってる!」

「まあ、何とか予選を勝ち上がれるようにしなきゃ、本当に死ぬギリギリまで戦わないと…ほら、今日はホグレイッツ四兄弟が全員参加しているし」

何なのギアラクさん!?その恐ろし気なネーミングは…ホグレイッツ?もしかして…。私の隣のVIP席に座るスィーダレン殿下のシュッとした美形なお顔を見た。

「ん?ああ…今日は兄上も弟達も出るからさ、旧パラボアニデ帝国の遺跡は皆が憧れて、それこそ命を賭しても攻略してみたい世界最高峰の遺跡だしな。兄上も張り切ってるよ~それにな…モレアの華が優勝者の報酬として与えられると…噂になってね。ギルドが予想していたより予選参加者が増えたんだって」

「モレアの華?宝石ですか?」

私が首を捻りながらそうスィーダレン殿下に聞いていると、地面から地鳴りが聞こえてきた?

「やだ…地震?」

ん?この世界で地震なんかあったっけ?

「うおおおおっ…!」

何だか雄叫び?選抜の前にマッチョが興奮してるのか………何あれ?

雄叫びの方を見ると、砂煙が上がっておりそれが段々近付いてきている。

地鳴りと共に、それが私の前に立った。

デカイ…。

「あ、兄上」

スィーダレン殿下の呼びかけにこのデカくてハァハァ言っている男の人…ホグレイッツ国王陛下激似の大男が北ホグレイッツ王国の第一王子殿下だと気が付いた。

いやいやいや?おかしいよっスィーダレン殿下を見てよ?おまけに第三王子のリスワーディン殿下を見てよ!2人共シュッ…まさにシュッ…とした爽やかでサラリとした美形だよ!?

何でまた第一王子だけ、ガッツリゴッツリなゴリマッチョなの?!ある意味国王陛下に似過ぎてて、どう見ても第一王子だと分かるけどさ!

「モレアの華…ハァハァ…」

「え?」

「待ったぁぁぁ!」

「え?」

今度は別の方向から砂煙が上がり、何かが近付いて来る!ドドド…と地鳴りがして、第一王子殿下より一回り小さいゴリマッチョがいた。もしかして…これは、あ!不敬だった…此方の方は?

「おぉ~ロェルーディン」

スィーダレン殿下の言葉に確信を得る。この四兄弟の遺伝子の悪戯を確信したよ。上から順番にマッチョ→シュッ→シュッ→マッチョ。上と一番下がマッチョで真ん中のイケメン美形二人を挟んでいる兄弟だっていうことだな!凄いね!

「モレアの華…はぁはぁ、本物…はぁ」

「え?」

流石に私だって気が付くよ。モレアの華って私の事なの?何なのそのあだ名?

「誰ですか、そんなあだ名つけたの?私の名前は…」

モレアと聞いて、リコイーダ君をジロリと見ると首を横に振っている。嘘つけ!

「兄上、モレアの華は報酬にはならないよ。誰が言ったのかな~?冒険者選抜の会場に奇跡の使い手のご令嬢が見学に来ると、私は言いましたがね。その時に、ララーナがどういう女性かという話になった時に高貴な花で…リコイーダがモレアの華のようだと表現はしていたが…それが湾曲して伝わったんじゃないかな?」

スィーダレン殿下の説明を聞いて、再びリコイーダ君を睨んであげた。リコイーダ君は小声ですぃません…と呟いている。

「ナオミューデン、悪いなぁ~モレアの華のララーナ=レイジアンテは俺の嫁だからさ」

「!」

「嫁ぇ!?」

「マジでっ!」

皆がそれぞれ絶叫しているけど私も、ひぇえ?!と叫んだよ。

意気揚々と告げたシーダはお美しい微笑みを私に向けて

「ララーナ=レイジアンテは俺の…よ・め・だ!」

何故か私に向かって言いながら、とどめを刺してきた。じ、自分に自信があるイケメンって怖いわぁ…自分が女性にNOと言われるなんて、一ミリも思っていないんだろう。

そりゃ私はNOなんて言わないけど…

「先日から言ってますが、そんなの…いつ決まりましたか?」

私が半分呆れたようにしていると、シーダが私に手を差し出して来た。何かな?これからも宜しく!的な握手でもするのかな~と手を差し出すと

「お前が俺の嫁になるのは、俺達が生まれた時から決まってるんだよ」

と言ってシーダは手の甲に…キ、キ…キッスをしてきたよぉおおお!

「ぎゃあ!」

「ひぃぃぃ!シーダ兄ぃの女殺しの文句がぁぁ…やべぇぇ!」

私の絶叫とリコイーダ君の変な解説が王族用?テントの中に響いている。

私達の周りに集まっていたマッチョ達から絶叫と興奮の雄叫びが上がっている。

「うぉおおおお!これが女性にモテる女の扱いもSSS級と噂のシーダの凄さかぁ!」

「ヤバイ!俺っ同性なのに興奮した!」

「俺達は生まれた時から夫婦になる定めなのさ!いいなぁ!」

ちょっとチビゴリマッチョ殿下!あんたの耳は岩で出来てるのかなぁ!?台詞が湾曲されてない?誇張されてますよっ!

『あーお集まりの冒険者の皆様ー只今より旧パラボアニデ帝国の遺跡発掘調査における選抜試験を取り行いたいと思いまーす』

拡声魔法により、アナウンスが流れて筋肉達は一斉に移動して行った。良かった…やっと予選が始まるようだ、早く行け。

どうやら選抜はトーナメント方式のようですぐに闘技場で冒険者達の戦闘が開始されている。

ちょっと…今気が付いたけど、これ〇下一武道会みたいじゃない?オラ、ワクワクすっぞっ!

……1人で心の中でボケてツッコんだ…

今日は予選の第一試合のみだ。ここで半数に絞ってから翌日に第二試合となる。明日からはいよいよシードのシーダ(駄洒落ではない)を含むSSS様達の登場となる訳だ。

「ララーナ、今日の夕飯どうするの~?」

シーダがだらーんとだらしなく椅子に腰かけて、私の方を見てきた。

「ちょっとシーダ!一応SSS様なんだから背筋伸ばして、格好良く座っててよ!」

「仕方ないよ、ララーナ。私達は明日からだし、今日は威圧が目的だからね」

「威圧?」

スィーダレン殿下の言葉に首を捻った。どういう意味だろう?

するとスィーダレン殿下の横で苦笑いを浮かべていた、弟のリスワーディン殿下が説明してくれた。

「威圧というより、戦意喪失を狙っている…という感じかな?つまり、冒険者の数が多いでしょう?こうやってSSSクラスが雁首を揃えて見学していると、SやSSクラスの冒険者が恐れ戦いて出場を取りやめないかな~?という効果を狙っているんだよ」

なるほど、選抜をリタイヤして欲しい訳なんだね。確かに、さっきはもう少し居たはずの冒険者の数が明らかに減っている。

こんなに、だら~んとしていても威圧出来てるのかは謎だけど…

その時に複数の誰かが私を見ているのに気が付いた。ねちっこい魔質…。昔からこれっぽい魔質を向けられることの多い私はある意味慣れっこだが、シーダがそのねちっこい魔質にすぐに気が付いた。

「誰だ?」

「知らない方々だと思います」

シーダは遠くに向かって魔力(威圧?)を投げつけている。

「フードを被っておけ…深くっ!」

シーダが私のフードを引っ張ってグイグイ頭に被せて来るけど…今更顔を隠しても一緒だと思うけど…?

だがその後で私がもっと嫌な目付きで見られることが起こったのだった…

各闘技場では予選は順調に行われていた…暫くそれをぼんやりと見ていたら突然

「やだぁ~シーダじゃない!?」

こんな選抜の会場で珍しい女性の声が聞こえて…フード越しにその声の方向を見ると、冒険者の装いだが見事な巨乳の肉感的な美女さんがこちらに向かって手を振りながら歩いて来ているのが見えた。

「…っ!?」

シーダの魔質が一瞬乱れた…そしてシーダは私の手を掴んできた。どうしたの?

その美女さんは近づきながら、チラチラ…と私の方を気にする魔質を向けて来る。んん?これは…

「選抜に来てるんなら連絡してよぉ」

と言って美女さんはシーダの方へ益々近付いて行こうとしたが

「何の用だ…」

シーダが不機嫌にそう呟いた。言われた美女さんは戸惑いながら、また私をチラチラと見ている。

「だって…来てるんなら会えるし…」

「他を当たれ」

シーダは素早くそう言って切り返した。そう言われた美女さんはまだ戸惑っているみたいだ…

「何言ってんの?いつもは…」

「他を当たれ、嫁の前でそんな話はするな」

「嫁っ!?」

「でたっ!」

美女さんとスィーダレン殿下の叫び声が同時に上がった。美女さんは「嫁…嫁…?」と呪文のように繰り返すと、私を睨んできた。

ああ~やだぁ。物凄い嫉妬と憎悪の魔質を向けてくる美女さん…本当ヤダ…私の手を握っていたシーダが私の異変に気が付いて

「大丈夫か?」

と小声で聞いてきた。シーダから伝わる魔質は労りと優しさ…なのに顔を上げられない。美女さんの魔質が怖いからだ…だって私も逆に美女さんに嫉妬している。

この美女さん、シーダの前の彼女さん…みたいだもん。ああ…嫌だ。

「ふざけないでよ!?嫁だぁ?いつの間によっ!?そんな話、前会った時は全然…」

美女さんは嫉妬で怒り狂った魔質をガンガン私にぶつけてくる。冷や汗が出てくる。

そんな私とは対照的にシーダの魔質は落ち着いていて

「ララーナとはお前と別れた後だ」

「何それぇ!?え?だって婚姻なんかしないとか言ってたじゃないか!どうして…あっなるほど~ちょっとあんた!どっかのお金持ちのお嬢さんなんじゃない?!金を積んでシーダに迫ったんでしょう?」

「…っ!」

流石にこの美女さんの言い分は頭に来た。

嫁、嫁、勝手に言うシーダにもちょっぴり頭にもきているし、元カノが急に現れて何故だか詰られているこの状況…私の感情が滅茶苦茶になっていて、涙が出そうになっていたが気合いと根性で勢いよく立ち上がって叫んだ。

「私は孤児だよっ!文句があるかぁ!?」
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