異世界で小料理屋の女将始めます!

浦 かすみ

文字の大きさ
10 / 21

ガツンと言う女将~SIDEスワイト~

しおりを挟む
俺は体を丸めて小さくなる、もうすぐ40才のおじさんをジロリと見下ろした。本来なら王位継承権第二位の方なので俺より上位なのだが、甥の権限で上から見下ろしておいた。

まあ今は、俺以外にはニコライ=ワイセリ少佐、カインダッハ=バラクーラ大尉、リヒャイド=スカウデ大尉以下この砦にいる皆に見下されている。

「閣下~あなたが一番喰らい付いちゃいけないお人でしょう?」

相変わらずニコライ=ワイセリ少佐が、遠慮も無くズバリと大将閣下を切り捨てた。

「そうですね…何故あんな小むす…失礼、女性の煽りをまともに受けてしまわれるのか…」

リヒャイド=スカウデ大尉の冷ややかな目がもうすぐ40才男を射抜く。

「ラジェンタの名前を出したら、存在のあやふやだった恋敵が目の前に現れたように感じて、そりゃいきり立ちますよ、女性ならね~」

「何だか、お前やけに詳しいな?」

「昔、義姉上が言っていたのです。兄上に浮気疑惑が持ち上がった時に、相手の名前が分かってしまうとぼんやりとしていた浮気相手の姿形が実体を帯びてきて、浮気相手はやっぱり存在するんだと思って更に腹が立ったと…」

「なるほど」

カインダッハの薀蓄に俺が相槌を打っていると、もうすぐ40才のこの砦の中では一番偉いはずのフェノリオ=コラゴルデ大将閣下がノロノロと顔を上げた。

「すまん…」

「ホント、どうするんですかぁ…あの皇女殿下このまま砦に居ついてしまったら…生きている女を砦の外へ放り出すの、さすがに寝覚めが悪いですよ」

皆がニコライ=ワイセリ少佐の言葉にギョッとした。皇女殿下への不敬発言も大概だが、死んでいたら砦の外に投げるのか?と恐ろしいことを想像して皆押し黙ってしまった。

そう…叔父上と言い合いをした、シアヴェナラ=ジュエルブリンガー皇女殿下はそんなに言うならラジェンタを連れて来い!と開き直り、砦の客室に居座り続けているのだ。

「兎に角、ラジェンタの顔が見たいというのであれば、本人に来てもらってみるしかないな…」

と簡単にカインダッハは言うけれど…ラジーが素直に来てくれるだろうか?

俺の心配をよそに、萎れた叔父上とカインダッハを連れて転移魔法を使った。正直、俺の魔力なら世界中を一瞬で移動出来る。今はこの魔力が無駄に発揮されて、悩む間も無く小料理屋ラジーの店先に転移してしまったが…

「相変わらず、スワイトの魔力量には驚かされるよ…」

「驚いている場合ではないですよ。叔父上は今からラジェンタに事情を説明しなければいけませんし…」

何となく3人でどんよりしながら店内に入った。店内にはまだお客はいなかった、良かったと思いつつ…俺達の顔ぶれにラジーは慌ててカウンターを回って店の入口まで駆けて来た。

「ラジェンタ公女…お力をお貸しして頂きたい」

叔父上がそう言うと、ラジーは俺達の顔を何度も見返していた。叔父上が砦の一件を伝えるとラジーは顔色を変えた。

「じゃあ正式に何度も断っているのに押しかけて来ている…ということですか?」

「そ、そう言う事だ」

あれ?何だかラジェンタは嫌がる風でもなく、ちょっと怒っているっぽい?

「分かりましたわ、私がガツンと言って差し上げましょう」

ガツン…どういう意味だろう?

という訳で、身支度を整えたラジェンタを連れて砦に戻った。ラジェンタのドレス姿は久しぶりだな。

ところが砦に戻ると国境警備兵やリヒャイド=スカウデ大尉の様子がおかしい。

「殿下!良かった…先程、エリーガ中佐と複数人の貴族が来ていて…シアヴェナラ=ジュエルブリンガー皇女殿下をこんな所にお留め置きするなんて…とか戯言を言って皇女殿下を砦から国内に連れて行ってしまったのです!」

「何だって!?」

「誰が許可した!」

俺と叔父上が怒るとリヒャイドは首を竦めた。

「殿下や大将閣下がお戻りになるまで待つように言っていたのです!今はニコライ=ワイセリ少佐が留まる様に言っているかと…」

リヒャイドの言葉を聞いてすぐにワイセリ少佐の魔質とエリーガ中佐の魔質を探った。居た…!砦を出たすぐ横の街道に居る!

「飛びます!ラジー、掴まって!」

「は、はい!」

ラジーを引き寄せて転移魔法を使った。

「…っ殿下!」

現れた俺達を見て、連れて来ていた軍の者達と国境警備兵達は一斉に安堵の声を上げた。

「何とか間に合いましたかね~」

相変わらず気の抜けるような物言いをして俺達をチラリと見た、ワイセリ少佐。

叔父上が一歩前へ出た。めっちゃ怒ってるぞ?貴族の者もエリーガ中佐もどうするんだよ?

「誰の許可を得て国内へ入ろうとしている!」

エリーガ中佐は顔を引きつらせていた。もしかすると俺達がここに来ているということは知らなかったのかもしれない。後ろの貴族の奴らも「嘘だろう?」「どうして?」とか呟いているし…

「シアヴェナラ=ジュエルブリンガー皇女殿下、砦にてお待ち頂くようにお伝えしましたよね?エリーガ中佐…貴様は何の権限があって他国の王族を連れ去るような真似をした?」

エリーガ中佐は叔父上に問われて真っ青になっていた。そして慌ててシアヴェナラ皇女殿下の方を顧みていた。

「話が違うっ!どういうことだっ…」

と皇女殿下に叫んでいる。あ~なるほど、何かジュエルブリンガー帝国と密約でもしていたのか?

「何だ?皇女殿下がすんなりとこの国の王太子の婚約者に収まることが出来たら、側近の椅子でも準備してもらう話だったのか?」

俺がそう聞くとエリーガ中佐以下、後ろに居る貴族の奴らは魔質をビクつかせた。

「…全員を取り押さえろ!」

エリーガ中佐と部下の軍人…それと貴族の男数人は、暴れに暴れたが何とか拘束した。そして煩く騒ぐので皆纏めて、亜空間に押し込んでやった。

「さて…」

叔父上の怒りの矛先はシアヴェナラ皇女殿下に静かに向かった。

ラジェンタは背筋を伸ばして叔父上の少し後ろに歩み出ると、皇女殿下に向かって優雅に淑女の礼をした。

「ラジェンタ=バラクーラと申します」

シアヴェナラ皇女殿下は目を見開き固まっている。ラジェンタは意に介さず微笑みを浮かべた。

「突然で御座いますが、皇女殿下がスワイト殿下の事を好ましいと思っている所はどこですか?私は嬉しい時や悲しい時はすぐに顔に出てしまう素直な所でしょうか好ましいと思っています」

な…んだって?いきなり…そんな所が好ましいと思ってくれているのか?顔に熱が籠る…

「シアヴェナラ皇女殿下はスワイト殿下のどのような所が好ましいと思われますか?」

ラジェンタは再度シアヴェナラ皇女殿下に聞いた。シアヴェナラ皇女殿下は目を泳がせながら、叔父上をチラチラと見てから口を開いた。

「ワイジリッテルベンシ王国の王太子で、眉目秀麗だと聞くし…世界一の魔術師だとして大陸に名を轟かせているわ」

俺が目の前に軍人の姿でいるのに、気付きもしないで喋る、皇女殿下。

「ええ、それで?」

シアヴェナラ皇女殿下はラジェンタに促されて少し表情を和らげている。

「将来はこのワイジリッテルベンシ王国の国王陛下になられるし、私は国王妃!これで私は…また帝国一の令嬢に戻れるのよ!」

「帝国一?」

「ええ、スワイト殿下に憎き、エーカリンデを完膚なきまで叩きのめして貰って、帝国の地を私に取り戻して欲しいのよ!」

「それでは…シアヴェナラ皇女殿下がスワイト殿下を好ましいと思っている所は、憎きエーカリンデを完膚なきまで叩き潰してくれそうな地位と魔力値と外見といういうことなのですね」

砦前は異様に静まり返っている…皆が息を詰めてラジェンタとシアヴェナラ皇女殿下を見詰めている。

ラジェンタは急に高笑いをした。そしてひとしきり笑った後、ニヤリと笑った。

「スワイト殿下の良い所を挙げられない方を、スワイト殿下のお嫁さんとしては認めてあげる訳にはいきませんねぇ!ええ?何ですって?王太子殿下だ?そんなの親が国王陛下だから当たり前でしょう?顔が良い?これまた血筋に美形が多いから当たり前でしょう?おまけに叩きのめしてだぁ?あのですね、スワイト殿下って案外、受け身なんですよ。自分から挑んで行ったり、ましてや戦争だなんて~無い無いっ!昔、足で踏んでしまって千切れた虫を見て大泣きしていたような子が、人に手をあげられますかって!」

おい…一体いつの話をしてるんだ!?それ子供の時の話じゃないか!

「そんなに帝国の地とやらを取り戻したいのなら、人に頼ってないでご自分でなんとかなさいませ。それに言っておきますが、スワイト殿下の女性の好み…あなたと正反対ですわよ?オーーホホホ!」

ラジェンタ圧勝…

叔父上はジュエルブリンガー帝国の面々を本当に砦から追い出した。

「文句があるなら兵でも差し向けてみろ。一撃で仕留めてやる」

帰って行く皇女殿下の馬車を見てとんでもなく物騒なことを言っていた。

だがその後日、とんでもない事件が起こった。

我が国と国交を樹立し、交易の為の条約の調印式に出席するためにエーカリンデ王国を出発した王子殿下、マーニエル殿下が賊に襲われたとの情報がもたらされた。

叔父上と一緒にエーカリンデ王国に駆け付けると、マーニエル王子殿下も大使も外務大臣も大事はないとのことだった。ただ逃げようとして慌てて馬車から飛び降りて、大臣がぎっくり腰になったのが一番の大怪我だという事だった。

犯人達は、ワイジリッテルベンシ王国の軍服を着ていたそうだ。皆、口々に『ブリンガ語』で私達はワイジリッテルベンシ王国の者だ!調印式には行かせない!と叫んでいたそうだ。

最初はマーニエル王子殿下達も突然の襲撃に慌てていたが、よくよく考えればおかしいことだと気が付いた。ワイジリッテルベンシ王国の軍人がブリンガ語?貿易に関する調印式で軍人が何故反対するのか?

エーカリンデ王国のマーニエル王子殿下は元帝国の伯爵家の嫡男だった方だが、落ち着いてワイジリッテルベンシ王国を名乗る軍人の顔を見て納得したらしい。

「ジュエルブリンガー帝国の軍人でした。顔見知りの者が数名いました」

マーニエル王子殿下は苦々しい顔で溜め息をつかれた。

「我々が帝国から独立してやっと5年が過ぎました…帝国から侵略を受けて敗れた私達、旧エーカリンデの王族は、国民の命を守る為に泣く泣く伯爵位を受けました。そして元王国民に帝国に言われるままに圧政を強いてきました。民にただひたすらに耐えろと、そして独立の機会を狙い…元エーカリンデ王国の皆とやっと勝ち取った自由なのです。今まで帝国の圧政に耐えていた王国民を守る為にも、我々はここで屈するわけにはいかないのです」

叔父上はマーニエル王子殿下に拳を見せた。

「ご心配されるな!我々ワイジリッテルベンシ王国の軍人が共に戦いましょうぞ!」

まあ叔父上も張り切ってるみたいだし、任せておけば防衛面は大丈夫だろう。

だったら俺は…

「叔父上…シアヴェナラ皇女殿下につけている追尾魔法で、ジュエルブリンガー帝国の皇宮内にいつでも侵入出来ますよ」

「…!」

「スワイト、お前いつの間に…」

俺は叔父上とマーニエル王子殿下を見てニヤリと笑った。悪い顔をしている自覚はある。

「ラジェンタは散々皇女殿下に罵ってスッキリしていたみたいだけど、私だってもっと…え~とガツン?と言いたかったんだ」

「ガツン?」

王子殿下が首を捻っている。

「渡り人の世界の言葉らしいですよ。攻撃的な言葉を浴びせて相手を驚かせるという意味があるそうです」

王子殿下は笑顔になった。

「はい、私もガツンと言ってやりたいです!」

おじさんを含む俺達は、フフフと忍び笑いをした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最強の滅竜士(ドラゴンバスター)と呼ばれた俺、チビドラゴンを拾って生活が一変する

八神 凪
ファンタジー
滅竜士(ドラゴンバスター)の通り名を持つ冒険者ラッヘ、二十八歳。 彼の住んでいた町はその昔ドラゴンの攻撃により焦土と化し、両親や友人、知り合いを多く失った。 それから逃げ去ったドラゴンを倒すため、復讐の日々が始まる。 死を何度も覚えるような修行の末、ドラゴンをたった一人で倒せるほど鍛えることができた。 そして十年の月日が流れ、約三十頭のドラゴンを討滅した彼は『滅竜士(ドラゴンバスター)』として有名になっていた。 だが、とある日に受けたドラゴン討伐から、彼の生活は変わっていく。 ドラゴンに関する秘密と共に――

【研磨】追放されたゴミ拾い令嬢、実は原子レベルの【磨き上げ】で世界を新生させる ~ボロ屋敷を神殿に、錆びた聖剣を究極の神器にリセットしたら、

小林 れい
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、触れたものを少しだけ綺麗にする地味なギフト【清掃(クリーニング)】しか持たない「無能」として、第一王子から婚約破棄され、帝国最果ての「不浄の地」へ追放される。 そこはかつての激戦地であり、呪われた魔導具や錆びた武器、さらには汚染された大地が広がる、文字通りの「ゴミ捨て場」だった。 しかし、彼女の能力の本質は【清掃】ではなく、対象の原子を整え、摩擦と不純物を極限まで削ぎ落とす【超精密研磨(ハイエンド・ポリッシュ)】だった。 アイリスが「安眠したい」という一心でボロ屋敷の一角を磨き上げた瞬間、その部屋は伝説の聖域を凌ぐ魔力を放ち始める。彼女が拾った「錆びた鉄くず」は、不純物を削ぎ落とされることで、神さえも斬り裂く「究極の神器」へと変貌を遂げていく。 やがて、彼女の作り出した「世界一清浄な場所」を求めて、呪われた英雄や、美しさを失った精霊たちが続々と集まり始め――。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

「役立たず」と追放された宮廷付与術師、実は世界律を書き換える『神の言葉』使いでした。~今さら戻れと言われても、伝説の竜や聖女様と領地経営で忙

eringi
ファンタジー
勇者パーティの縁の下の力持ちとして尽くしてきた宮廷付与術師のアレン。 しかしある日、勇者から「お前の支援魔法は地味で効果がない」とパーティを追放されてしまう。 失意のアレンは辺境の森で静かに暮らそうとするが、そこで自分が使っていた『支援魔法』が、実は世界の理(ことわり)すら書き換える古代の神代魔法『神の言葉(ルーン)』だったことに気づく……いや、本人は気づいていない。 「え? これくらいの結界、普通じゃないのか?」 アレンが伝説のフェンリルを愛犬にし、災厄のドラゴンを「トカゲ」と勘違いして手懐け、ついでに亡国の聖女を救ってハーレムを築いている頃――。 アレンを失った勇者パーティは、彼の支援なしではスライムにすら苦戦するほど弱体化していた。 「頼む、戻ってきてくれ!」と泣きつかれるが、もう遅い。 これは、無自覚に最強の力を振るう青年が、辺境で幸せを掴み、元仲間たちがどん底に落ちていく物語。

異世界に無一文投下!?鑑定士ナギの至福拠点作り

花垣 雷
ファンタジー
「何もないなら、創ればいい。等価交換(ルール)は俺が書き換える!」 一文無しで異世界へ放り出された日本人・ナギ。 彼が持つ唯一の武器は、万物を解析し組み替える【鑑定】と【等価交換】のスキルだった。 ナギは行き倒れ寸前で出会った、最強の女騎士エリスと出会う。現代知識とチート能力を駆使して愛する家族と仲間たちのために「至福の居場所」を築き上げる、異世界拠点ファンタジーストーリー!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...