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今更、運命かい!
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小料理屋にスワ君とカインお兄様、フェノリオ=コラゴルデ公爵閣下が揃って現れたので、理由を聞くと唖然とした。
以前話に出ていたジュエルブリンガー帝国の第二皇女殿下が、婚姻を打診して勝手に押しかけて来たらしい。しかもスワ君は何度も断っているのに国境の砦に居座り、おまけにスワ君に迎えに来るように言ってきたり、私の顔を拝んで見たいだってぇ!?はぁぁ?何様だっ…!
私が子供の時から見守ってきたスワ君の嫁に相応しい女かどうか見極めてやろうじゃないか!
気分は姑である。そんな私は鼻息も荒く、スワ君達と国境沿いの砦に向かった。
砦に着いて、シアヴェナラ皇女殿下を見て吹き出しそうになった。これは派手な皇女殿下じゃない~アハハ!スワ君の好みと真逆じゃないか!以前の派手なメイクをしていた頃の私を彷彿させるドレスとメイクそのまんま~アーハハハ!
…と、心の中で大笑いしてからシアヴェナラ皇女殿下にスワ君の好きな所を挙げてみよ、と聞いてみた。
答えは予想はしていたが見事に肩書と外見ばっかり!そりゃ相手の顔も見ずに政略結婚をするようなお国柄だとは知っているから、スワ君の内面をツラツラ語るのは無理なのは分かる。
だから、素直に何も知らないからこれから知っていきたい…シアヴェナラ皇女殿下からこういう言葉が欲しかった。言ってくれなかったけど…
出来れば皇女殿下には、これから先のスワ君と共に歩む道の展望を聞きたかった。将来どんな国王妃になりたいのか、スワ君とどんな夫婦になりたいのか、国の為、国民の為にどうしていきたいのか…
私は散々シアヴェナラ皇女殿下を罵ってあげた後に
「お前なんかにスワ君は勿体ないよ!」
と興奮し過ぎて淑女を忘れて叫んでしまっていた。後でスワ君達に、渡り人ですので言葉遣いが時々悪くなってしまいますの…オホホと笑って誤魔化しておいた。
『渡り人なので』『渡り人だから』『渡り人だし』使い回しできる万能ワードだ。
そんな騒ぎの夜
小料理屋ラジーの前まで転移魔法で送ってくれたスワ君は、ずっと巻き込んでゴメンと謝ってばかりだった。
「スワ君ってろくでもな…失礼、癖のある女性に狙われやすいみたいね」
「うん、本当そうみたいだ。隙があるのかな?」
「う~ん、隙というより怒らなさそう?力押しで言えば頷いてくれそうな感じ」
ダメンズを引き寄せる女性がいると聞いたことがあるから、逆で、クサレディでも吸い寄せる魅了の持ち主なのかもしれない。
「それってどうなの…男として魅力ないのかな…」
ハハハ…と力なく笑うスワ君は贔屓目無くみても、神秘的なアイスブルー色の瞳を持つTHE美形王子様だ。
「スワ君は格好いいわよ!今だって、貴族のご令嬢方から熱い視線を受けてるでしょう?」
スワ君はちょっと睨んでいる。何故睨む?
「ご令嬢方から受けたって意味が無い…」
ん?
スワ君は何かブツブツと呟いた後、転移魔法で帰って行った。
その騒ぎから暫くして、スワ君もカインお兄様も忙しくしているらしく、お店には来ていない。
小料理屋ラジーには最近は若い軍人さん達以外にも、商店街の会長さんや服屋のおじ様…市井のお客様も多く来てくれるようになった。
そしてお客様からのご要望があり、大根と鳥つみれのあんかけを定食として出すことにした。定食の内容は日替りで焼き魚、お味噌汁、漬物だ。お酒を飲まないで食事だけ…っていう方が結構多いのだ。
この和定食が評判が良いので、別の定食も作ろうかな~と思案しながら…お客様の波が途切れた後に味噌汁を飲みながら休憩していた。
ホゥ…と溜め息がもれる。味噌汁を飲んでいる時は日本人に生まれて良かったな~と思うのよね。
今は異世界人だけどさ。…でもね、異世界でもこうやって故郷のものに触れる機会に恵まれている私は、ついていると思う。
生まれ落ちた場所があの帝国だったり、内戦が多い紛争地域だったらこんな吞気に小料理屋なんて出来なかったもの…
さてそろそろ店じまいしようかな~と洗い物をまとめて洗っていると、閉店間際にスワ君が滑り込むようにして店に入って来た。店内に直接、転移魔法で入って来ずに必ずドアの外から断りを入れて入店して来る、お坊ちゃま(王子)
「こんな時間にごめん。何か食べるもの、ある?」
スワ君ちょっと顔色が悪い…忙しいのかな。
私は考案中だった、豚の生姜焼き定食(試作品)をスワ君に出した。本当は白米があればいいのだけれど、小麦パンで代用だ。
スワ君はホコホコと湯気のあがる豚の生姜焼きを見て目を輝かせている。
「まだ試作品だけど、味見してみてね?」
スワ君は上品に豚肉にナイフを入れると、口に一切れ生姜焼きを入れた。そして恍惚とした表情を浮かべて目を閉じるスワ君。
そう…スワ君は美味しいと目を閉じて噛み締めながら食べるのが癖よね。よしよし…生姜焼きはOKと…じゃあ付け合わせのほうれん草っぽい草の胡麻和えはどう?おおっこれも目を閉じて噛み締めているわね…合格と。さあ次は玉ねぎっぽい根野菜の味噌汁よ!どう?おおおっ目を瞑ってめっちゃ頷いているね。
料理の感想はスワ君の表情が雄弁に語ってくれてるわね~。さあお次は柚子っぽい果物シャーベットよ!冷やすの苦労したんだから~
おおっ目を瞑った後、シャーベットをまじまじと見ているね。ん?何々?これは果物か?もっと他の果物でも出来ないか?いいよいいよ~桃とか葡萄とか探してやってみるよ。
本当、スワ君は感情が顔に出るよね。スワ君は豚の生姜焼き定食を誉めちぎってくれた後、帰りかけて真剣な顔をして私を顧みた。
「まだ近衛の護衛は残しておく。暫くは窮屈な思いをさせるけど我慢して欲しい」
「は、はい」
「それに…俺も暫くは忙しくてこちらに来れないと思う。十分気を付けてくれ」
「は…はい」
何か…あるんだろうか。実はカインお兄様も暫く店に寄れないから、身辺に気を付ける様に…と今朝言ってきたのだ。軍か…魔術師団で動きがあるのかな。
不安になり、目をあげた時スワ君のアイスブルー色の瞳とかち合った。
「巻き込んで済まない。本来なら俺と婚約破棄をしたラジェンタには関わりの無いことなのに…俺のせいで巻き込んでしまっている」
「それは…シアヴェナラ皇女殿下の件ですか?」
スワ君は泣きそうな顔で頷いた。
「ラジーを婚約者だと…もうすぐ婚姻する人だと皇女殿下に伝えてしまった」
「っ…!」
何を勝手な…と一瞬思ったが、仮にも他国の皇女殿下の婚姻の打診だ。お相手のいない王太子殿下ならシアヴェナラ皇女殿下が王太子妃候補に名前が挙がってもおかしくない。
スワ君には幸せになって欲しい。あんな押付けられた皇女殿下ではなくスワ君が自分で望んだ人と幸せになって欲しい。この世界の王族には叶えづらい望みかもしれないけど…
「そ…そんなことしたら、スワ君が本当の婚姻の時に困っ…」
「俺の相手は一生涯ラジェンタただ一人だから困らない」
物凄く…断言してきましたね。若いからだろうか…こう…ぎゅーっと視野が狭くなってない?
「あのねスワ君、世の中には星の数ほどの異性がいて、そしてその中で星の数ほどの出会いがありまして…」
と、つい使い古された言い回しをスワ君にしてしまったが、アイスブルー色の瞳は揺るがなかった。
「沢山の出会いの中で同じ国に生まれて幼少期より婚約して…そして今も一緒に居る。これを運命と言わずとして何と言うんだ?」
ぶほーーーっ!びっくりした!?ちょっとぉ!?いきなり乙女男子スワ君炸裂なの?
あれ…待てよ?ピュアピュアなスワ君は偶然の出会いにときめき、運命の巡り合いに悦び…作られたみえみえのあのルルシーナ様との運命の出会いにすら燃え上がって視野が狭くなっていた乙女男子じゃないかーー!すっかり忘れてた!
「ちょ…いきなりどうしたのよ?今までそんなこと言ってなかったでしょう?誰がそんなこと言ったのよ?」
スワ君は顔を輝かせた。
「先日お会いしたマーニエル王子殿下が『スワイト殿下とラジェンタ公女はまるで巡り合う運命の2人ですね、子供の頃からお互いのことをよく知っているし、忌憚なく意見の言い合える仲。こんなお幸せな許嫁同士なんて…素晴らしい出会いですよね』って言ってくれたんだ…俺も目の前の霧が晴れて行くような気がしたよ…」
いやいやっ霧は晴れなくていいよ!?ずっと霞の向こう側でいいし、五里霧中状態で構わないんだよ?そもそも誰だよっマーニエルって?ええっ?帝国から独立したエーカリンデ王国の王子殿下ぁ?
香辛料王子かっ!余計な事を言ってくれちゃってぇ~胡椒にまみれてくしゃみを連発していろっ!
ピュアピュアな乙女男子のスイッチが入ってしまったスワ君は、熱の籠った目で私を見ている。
「私はスワ君の運命じゃないと思うけどっ?だってただの渡り人だしねっ!」
「そうだね、ラジーは渡り人だね。異界を越えて私と巡り合う運命だったのかな…」
こらーっ!勝手に運命だと決めつけるな!
これはイカン。すっかり乙女モードに入ってしまって、周りが見えなくなっている。
取り敢えず、お帰りはあちら!と言ってスワ君を店の外へ押し出して帰るように促した。
「本当に気をつけて」
「分かったからっ!早く城に帰んなさい!」
店の前でぐずぐずしていたスワ君は、転移魔法でやっと帰って行った。全くお花畑なんだからっ!
プリプリ怒りながら店内に戻ると、今日の護衛担当のユーリカエル卿が苦笑いをして立っていた。
「何が可笑しいのですか?」
「すみません…殿下はその中々に思い込みと言いますか、気持ちが先走る方で…」
「ユーリカエル卿、はっきり仰っては?不敬なことでしょうけど、心の中に留めておきますので」
ユーリカエル卿はちょっとニヤついている。
「殿下は夢見がちな方なので…失礼しました」
私もユーリカエル卿に大賛成だ。それに…
「夢見がちではなく、実際に夢を見ておられるのですよ」
これは茶化している訳じゃなく、私は割と本気でそう思っている、スワ君は夢見過ぎている男子なのだから。
それからスワ君はジュエルブリンガー帝国とエーカリンデ王国の武力衝突の鎮圧…という名目で出兵した。
以前話に出ていたジュエルブリンガー帝国の第二皇女殿下が、婚姻を打診して勝手に押しかけて来たらしい。しかもスワ君は何度も断っているのに国境の砦に居座り、おまけにスワ君に迎えに来るように言ってきたり、私の顔を拝んで見たいだってぇ!?はぁぁ?何様だっ…!
私が子供の時から見守ってきたスワ君の嫁に相応しい女かどうか見極めてやろうじゃないか!
気分は姑である。そんな私は鼻息も荒く、スワ君達と国境沿いの砦に向かった。
砦に着いて、シアヴェナラ皇女殿下を見て吹き出しそうになった。これは派手な皇女殿下じゃない~アハハ!スワ君の好みと真逆じゃないか!以前の派手なメイクをしていた頃の私を彷彿させるドレスとメイクそのまんま~アーハハハ!
…と、心の中で大笑いしてからシアヴェナラ皇女殿下にスワ君の好きな所を挙げてみよ、と聞いてみた。
答えは予想はしていたが見事に肩書と外見ばっかり!そりゃ相手の顔も見ずに政略結婚をするようなお国柄だとは知っているから、スワ君の内面をツラツラ語るのは無理なのは分かる。
だから、素直に何も知らないからこれから知っていきたい…シアヴェナラ皇女殿下からこういう言葉が欲しかった。言ってくれなかったけど…
出来れば皇女殿下には、これから先のスワ君と共に歩む道の展望を聞きたかった。将来どんな国王妃になりたいのか、スワ君とどんな夫婦になりたいのか、国の為、国民の為にどうしていきたいのか…
私は散々シアヴェナラ皇女殿下を罵ってあげた後に
「お前なんかにスワ君は勿体ないよ!」
と興奮し過ぎて淑女を忘れて叫んでしまっていた。後でスワ君達に、渡り人ですので言葉遣いが時々悪くなってしまいますの…オホホと笑って誤魔化しておいた。
『渡り人なので』『渡り人だから』『渡り人だし』使い回しできる万能ワードだ。
そんな騒ぎの夜
小料理屋ラジーの前まで転移魔法で送ってくれたスワ君は、ずっと巻き込んでゴメンと謝ってばかりだった。
「スワ君ってろくでもな…失礼、癖のある女性に狙われやすいみたいね」
「うん、本当そうみたいだ。隙があるのかな?」
「う~ん、隙というより怒らなさそう?力押しで言えば頷いてくれそうな感じ」
ダメンズを引き寄せる女性がいると聞いたことがあるから、逆で、クサレディでも吸い寄せる魅了の持ち主なのかもしれない。
「それってどうなの…男として魅力ないのかな…」
ハハハ…と力なく笑うスワ君は贔屓目無くみても、神秘的なアイスブルー色の瞳を持つTHE美形王子様だ。
「スワ君は格好いいわよ!今だって、貴族のご令嬢方から熱い視線を受けてるでしょう?」
スワ君はちょっと睨んでいる。何故睨む?
「ご令嬢方から受けたって意味が無い…」
ん?
スワ君は何かブツブツと呟いた後、転移魔法で帰って行った。
その騒ぎから暫くして、スワ君もカインお兄様も忙しくしているらしく、お店には来ていない。
小料理屋ラジーには最近は若い軍人さん達以外にも、商店街の会長さんや服屋のおじ様…市井のお客様も多く来てくれるようになった。
そしてお客様からのご要望があり、大根と鳥つみれのあんかけを定食として出すことにした。定食の内容は日替りで焼き魚、お味噌汁、漬物だ。お酒を飲まないで食事だけ…っていう方が結構多いのだ。
この和定食が評判が良いので、別の定食も作ろうかな~と思案しながら…お客様の波が途切れた後に味噌汁を飲みながら休憩していた。
ホゥ…と溜め息がもれる。味噌汁を飲んでいる時は日本人に生まれて良かったな~と思うのよね。
今は異世界人だけどさ。…でもね、異世界でもこうやって故郷のものに触れる機会に恵まれている私は、ついていると思う。
生まれ落ちた場所があの帝国だったり、内戦が多い紛争地域だったらこんな吞気に小料理屋なんて出来なかったもの…
さてそろそろ店じまいしようかな~と洗い物をまとめて洗っていると、閉店間際にスワ君が滑り込むようにして店に入って来た。店内に直接、転移魔法で入って来ずに必ずドアの外から断りを入れて入店して来る、お坊ちゃま(王子)
「こんな時間にごめん。何か食べるもの、ある?」
スワ君ちょっと顔色が悪い…忙しいのかな。
私は考案中だった、豚の生姜焼き定食(試作品)をスワ君に出した。本当は白米があればいいのだけれど、小麦パンで代用だ。
スワ君はホコホコと湯気のあがる豚の生姜焼きを見て目を輝かせている。
「まだ試作品だけど、味見してみてね?」
スワ君は上品に豚肉にナイフを入れると、口に一切れ生姜焼きを入れた。そして恍惚とした表情を浮かべて目を閉じるスワ君。
そう…スワ君は美味しいと目を閉じて噛み締めながら食べるのが癖よね。よしよし…生姜焼きはOKと…じゃあ付け合わせのほうれん草っぽい草の胡麻和えはどう?おおっこれも目を閉じて噛み締めているわね…合格と。さあ次は玉ねぎっぽい根野菜の味噌汁よ!どう?おおおっ目を瞑ってめっちゃ頷いているね。
料理の感想はスワ君の表情が雄弁に語ってくれてるわね~。さあお次は柚子っぽい果物シャーベットよ!冷やすの苦労したんだから~
おおっ目を瞑った後、シャーベットをまじまじと見ているね。ん?何々?これは果物か?もっと他の果物でも出来ないか?いいよいいよ~桃とか葡萄とか探してやってみるよ。
本当、スワ君は感情が顔に出るよね。スワ君は豚の生姜焼き定食を誉めちぎってくれた後、帰りかけて真剣な顔をして私を顧みた。
「まだ近衛の護衛は残しておく。暫くは窮屈な思いをさせるけど我慢して欲しい」
「は、はい」
「それに…俺も暫くは忙しくてこちらに来れないと思う。十分気を付けてくれ」
「は…はい」
何か…あるんだろうか。実はカインお兄様も暫く店に寄れないから、身辺に気を付ける様に…と今朝言ってきたのだ。軍か…魔術師団で動きがあるのかな。
不安になり、目をあげた時スワ君のアイスブルー色の瞳とかち合った。
「巻き込んで済まない。本来なら俺と婚約破棄をしたラジェンタには関わりの無いことなのに…俺のせいで巻き込んでしまっている」
「それは…シアヴェナラ皇女殿下の件ですか?」
スワ君は泣きそうな顔で頷いた。
「ラジーを婚約者だと…もうすぐ婚姻する人だと皇女殿下に伝えてしまった」
「っ…!」
何を勝手な…と一瞬思ったが、仮にも他国の皇女殿下の婚姻の打診だ。お相手のいない王太子殿下ならシアヴェナラ皇女殿下が王太子妃候補に名前が挙がってもおかしくない。
スワ君には幸せになって欲しい。あんな押付けられた皇女殿下ではなくスワ君が自分で望んだ人と幸せになって欲しい。この世界の王族には叶えづらい望みかもしれないけど…
「そ…そんなことしたら、スワ君が本当の婚姻の時に困っ…」
「俺の相手は一生涯ラジェンタただ一人だから困らない」
物凄く…断言してきましたね。若いからだろうか…こう…ぎゅーっと視野が狭くなってない?
「あのねスワ君、世の中には星の数ほどの異性がいて、そしてその中で星の数ほどの出会いがありまして…」
と、つい使い古された言い回しをスワ君にしてしまったが、アイスブルー色の瞳は揺るがなかった。
「沢山の出会いの中で同じ国に生まれて幼少期より婚約して…そして今も一緒に居る。これを運命と言わずとして何と言うんだ?」
ぶほーーーっ!びっくりした!?ちょっとぉ!?いきなり乙女男子スワ君炸裂なの?
あれ…待てよ?ピュアピュアなスワ君は偶然の出会いにときめき、運命の巡り合いに悦び…作られたみえみえのあのルルシーナ様との運命の出会いにすら燃え上がって視野が狭くなっていた乙女男子じゃないかーー!すっかり忘れてた!
「ちょ…いきなりどうしたのよ?今までそんなこと言ってなかったでしょう?誰がそんなこと言ったのよ?」
スワ君は顔を輝かせた。
「先日お会いしたマーニエル王子殿下が『スワイト殿下とラジェンタ公女はまるで巡り合う運命の2人ですね、子供の頃からお互いのことをよく知っているし、忌憚なく意見の言い合える仲。こんなお幸せな許嫁同士なんて…素晴らしい出会いですよね』って言ってくれたんだ…俺も目の前の霧が晴れて行くような気がしたよ…」
いやいやっ霧は晴れなくていいよ!?ずっと霞の向こう側でいいし、五里霧中状態で構わないんだよ?そもそも誰だよっマーニエルって?ええっ?帝国から独立したエーカリンデ王国の王子殿下ぁ?
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「そうだね、ラジーは渡り人だね。異界を越えて私と巡り合う運命だったのかな…」
こらーっ!勝手に運命だと決めつけるな!
これはイカン。すっかり乙女モードに入ってしまって、周りが見えなくなっている。
取り敢えず、お帰りはあちら!と言ってスワ君を店の外へ押し出して帰るように促した。
「本当に気をつけて」
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「何が可笑しいのですか?」
「すみません…殿下はその中々に思い込みと言いますか、気持ちが先走る方で…」
「ユーリカエル卿、はっきり仰っては?不敬なことでしょうけど、心の中に留めておきますので」
ユーリカエル卿はちょっとニヤついている。
「殿下は夢見がちな方なので…失礼しました」
私もユーリカエル卿に大賛成だ。それに…
「夢見がちではなく、実際に夢を見ておられるのですよ」
これは茶化している訳じゃなく、私は割と本気でそう思っている、スワ君は夢見過ぎている男子なのだから。
それからスワ君はジュエルブリンガー帝国とエーカリンデ王国の武力衝突の鎮圧…という名目で出兵した。
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※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
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