ハイロイン

ハイロインofficial

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第二章

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 翌朝、白洛因バイ・ロインはいつものように遅刻した。顧海グー・ハイは彼が昨日のランニングを着ていて、背中に穴が開いたままだということを確認する。彼の家庭環境はわかっている。昨日穴を開けたのは、おそらく彼が登校時の服を着たまま寝てしまうと予想したからだ。
 事態は彼の予想どおり、準備は整った。あとはきっかけを待つばかりだが、なかなかうまくいかない。
 顧海は白洛因が居眠りをするのを待った。だが今日は鶏の血を注入されたかのように元気がよく、板でも入っているように背筋をピンと伸ばしている。
 眠れ……早く眠れ……顧海は心の中で念じた。
 二時間目が終わる頃、白洛因はついに机に伏せた。顧海はしばらく待って完全に彼が寝落ちたことを確認してから背中に手を伸ばした。

 チャイムが鳴り、授業が終わった。顧海は歯ぎしりをし、泣く泣く手を戻す。三時間目は体育だ。顧海は針と糸を一旦引き出しに入れ、四時間目を待ってからまたやることにした。



 体育教師は軍隊を退役した新任に代わったばかりで、彼は猛々しく傲岸不遜だった。授業が始まった途端生徒の立ち方や座り方に文句をつけ、この腰抜けめと暴言を吐く。
「おいお前、さっさと整列させろ」
 体育教師は体育委員に命じた。彼が言われた通り号令をかけると、教師は大声で怒鳴った。
「お前、飯は食ったのか?」
 体育委員は不満げな表情を浮かべた。
「食べましたが、満腹にはなっていません」
 生徒たちはみな笑ったが体育教師はその冗談を受け付けなかった。俺はいまお前を叱っているんだ。何をへらへらしてる!
「列に戻れ。人選をやり直す」
 体育教師はバカにしたような目線で一人ずつ生徒の前を歩きまわり、列の最後で視線を止めた。こいつの立ち姿は他の誰とも違う。その佇まいからは漂う覇気があり、体型や姿勢から見てもスポーツ選手にうってつけだ。
「お前、こっちに出て来い」
 顧海グー・ハイの歩く姿は颯爽として気迫があった。教師はようやく満足げな顔になる。
「ちょっと声を出してみろ」
 顧海は体育教師を一瞥し、人を顎で使う傲慢さを見て取った。教師が生徒に命令するのも生徒に花を持たせてやる褒美で、言うことを聞かねば自分を無下にしたと怒るようなタイプだ。
「号令は大声で叫べばいいわけじゃない。威信がなければどんなに声を張り上げても相手に届かないし、もし威信があれば、口を閉じていても相手に意図は伝わる」
 顧海の言葉に周囲は静まり返った。
 横暴な教師にここまで言い切る生徒がいるのか。彼らは顧海の身を案じつつ、内心拍手喝采を送っていた。この手の教師は全生徒から嫌われているので、彼に逆らう者は悲壮な英雄とみなされるのだった。
 体育教師はあっけにとられた。どこかで聞いたような言葉だ。しかし目の前にいる生徒を見てハッと我に返る。立場が逆じゃないか。相手は生徒で自分は教師だ。俺の命令に従っていればいいんだ。こいつはなぜ俺に説教をする。ふざけるな!
「お前はなんの資格があって俺に逆らう?」
 顧海は怯まずに言い返した。
「資格とは?」
 体育教師は青ざめ、人差し指を地面に向ける。
「腕立て伏せを一分間に五十回できればさっきの態度は帳消しにしてやる」
 顧海は薄く笑って両手を地面に着き、教師の合図を待つ。体育教師はストップウォッチを手に持ち、高をくくったように顧海を一瞥した。
「始め」
「一、二、三、四……」
 みんなは数えながら驚嘆の声を上げた。顧海の姿勢は正しいうえにとても速く、テレビで見るスポーツ選手のレベルだった。五十回を超えてもまだ三十秒を過ぎたばかりだ。男子生徒たちの額には汗が浮かんだが、日差しのためか驚きのせいかはわからなかった。
「百六回」
 周囲は盛大な拍手を送る。
「拍手してる場合か?」
 体育教師は大声で吠え、生徒たちが静まると顧海に顔を向ける。
「得意になってどうする。ハッ、笑い者になってるんだぞ。お前は猿で、俺は猿回しだと思われてるんだ。尊敬されてるわけじゃない!」
「それなら先生も何か尊敬されることをやってみせてくれよ」
 顧海が繰り返し挑発した影響で他の男子生徒らも男気を見せ、援護射撃する。
「先生もお手本を披露してください。退役したばかりなんでしょう? 俺たちに軍人のカッコいいところを教えてくださいよ!」
「そうだ。先生がそんなにすごいなら俺たちに見せてくれよ!」
「……」
 生徒たちのヤジと顧海の冷たい目線に体育教師の闘争心は燃え上がった。こいつらに目にもの見せてやる。さもなければ面目を失い、この先教師などやっていられない。
「静かにしろ。あそこに鉄棒があるだろう。今から俺が懸垂をやってみせるから、その後一人ずつ限界までやってみろ。お前たち全員が終わってから俺がやる。いいか、俺はお前たち全員の合計数を越えてみせるからな」
 彼らは騒然となった。男子は鉄棒に駆け寄り、女子は周囲で応援を始める。他のクラスの生徒たちも野次馬に加わり、さっきまでシーンとしていた運動場はお祭り騒ぎになった。
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