ハイロイン

ハイロインofficial

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第七章

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「大海、俺が新しく作ったパチンコだぞ。一緒に鳥を打ちに行こうぜ!」
 鼻水を擦りながら子供がそう言った。顧海グー・ハイは驚く。白くて丸っこい子供が大きな目をキラキラさせ、小さい口を動かしている。その顔にはとても見覚えがある気がするのだが……。
「お前は誰だ?」
「俺は因子だよ!」
 顧海はびっくりして腰を抜かす。
「なんでまたこんなちびっこになっちまったんだ?」
「誰がちびっこだって?」
 白洛因バイ・ロインは腰に手を当てる。
「自分を見てみろよ。俺より小さいくせに」
 下を向くとコーデュロイのオーバーオールに小さな布靴が見える。手を伸ばして眺めるとそこにあったのは蓮根のようにぽっちゃりした小さな腕だった。
「どういうことだ?」
 白洛因が笑うとほっぺが真っ赤になる。
「俺たちは小さい頃から友達じゃないか!」
「小さい頃から?」
 顧海は白洛因の手を引いた。白洛因は興奮して叫ぶ。
「うん! 俺たちは幼馴染だよ!」
 幼馴染? 最高だな……顧海は白洛因の頬をこねる。なるほど俺たちは小さい頃に知り合って長い間ずっと一緒に過ごしてきたんだ。なんて嬉しいことだろう。いまから俺は白洛因とずっと遊びながら大きくなるんだ。
 顧海が笑いながら白洛因を抱きしめると、白洛因は顧海の頬にキスをした。顧海もキスを返す。すると白洛因は顧海の唇にキスをした。顧海もまたキスを返し……二人でチュッチュしているうちに目が覚めた。
 ホテルのデラックスルームでは温かみのあるウォールランプがかすかに光を放っている。
 唇が湿っているような気がして手で触れると心が震えた。
 因子、お前また掛け布団を蹴って床に落としてないか?

 

 朝になって目を覚ました時、金璐璐ジン・ルールーの隣には誰もいなかった。起き上がってベッドを降り、部屋にある扉をすべて開けて捜した末にベランダに佇み煙草を吸っている顧海を見つけた。彼がいつからそこにいたのかはわからなかった。
 金璐璐はあくびをしながらゆっくり顧海のほうへ歩き、後ろから彼の腰に抱きつく。
「まだ早いのにもう起きたの?」
 顧海は冷淡にうんと答え、手の中の煙草をもみ消した。
 灰皿の中に積み上がった吸い殻は折れたチョークのように乱雑に刺さり、まるで顧海の心を表しているかのようだった。
「夕べは眠れなかったの?」
「よく眠れたよ」 
 顧海は金璐璐の手を自分の腰から外して振り向く。目の下は青く隈になっていた。
「荷物をまとめろ。送って行くよ」
 金璐璐は鋭い目線で顧海を睨み、しばらくしてから口を開く。
「そんなに急いで私を追い返したいの?」
 顧海は何も言わず、部屋に戻って上着を着た。
「もう一度一緒にご飯を食べましょうよ。白洛因も誘って。昨日携帯を壊したからきっと悪い印象を与えちゃったわ。一緒にご飯を食べてイメージを挽回したいの」
 顧海はやはり黙っていたが、金璐璐はそれを黙認と捉えた。
 二人が白洛因の家につくと、白洛因はまだ起きたばかりのようで中庭に屈んで歯磨きをし、顔を洗っていた。金璐璐は思わず嘆きの声を上げる。
「ここに越してくるなんて嘘だと言って」
 顧海は金璐璐を完全に無視して白洛因をじっと見つめ、なんとも言えない気持ちになった。
「こんなに寒いのにまだ冷たい水で顔を洗ってるの?」
 金璐璐は我慢できないという顔をする。
「あなたにも冷たい水で顔を洗わせたりしないでしょうね?」
 顧海は何も言わずに中庭に入り、金璐璐もその後に続いた。
 阿郎アランは知らない人間を見て必死にケージの中で吠え、驚いた金璐璐は顧海の腕に抱きつく。
「嘘でしょう。なんでチベタンマスティフなんて飼ってるの?」
 白洛因は阿郎が吠える声に顔を上げると、ちょうど金璐璐が顧海の腕にぶら下がって歩いてくるところだった。
「お昼を一緒に食べましょうよ!」
「いいよ」
 白洛因は快諾する。
「部屋に戻って着替えてくるよ」
 白洛因が部屋に入ると顧海もやってきた。金璐璐は一人で中庭を散歩している。
「おい、ちょっと待てよ」
 白洛因は頭から服を被ったところで顧海の声に動きを止める。
「なんだ?」
 顧海は白洛因の前にやってくると、彼の顔を手で支えてじっくり眺め眉をひそめる。
「おでこに小さな吹き出物ができてるじゃないか」
 白洛因は自分でも気づかなかった。
「炎症を起こしたかな」
 顧海はニヤリと笑う。
「俺のことを想ってたからだろう?」
「失せろ!できるだけ遠くへ離れろ!」
 この十数時間感じていた顧海の憂鬱さはこのときやっと解消した。食事をしながら金璐璐は含んだような言葉を白洛因に向ける。
「顧海は私よりあなたに優しいのよ」
「なんでそう思うんだ?」
 白洛因が尋ねると、金璐璐は半分冗談で返した。
「私にはいつも仏頂面だけど、あなたにはいつも笑ってるんだもん」
 顧海は無表情で答える。
「俺が冷たいほうが安心するってお前が言ったんだろう」
 金璐璐は顧海のこの話は納得がいかなかった。白洛因は冷静に分析する。
「どの男も自分の彼女と友達の前では違う顔をするよ。彼女の前では自分のカッコいいイメージを守るためにおしゃれをしたり財布に金があるふりをしないとならない。でなきゃ彼女の心を掴んでおけないだろう? 友達の前では違うよ。イメージも気にしなくていいし、気を抜いて好きなようにふるまえる。だから友達のほうが親しいように見えるんだ」
 金璐璐はやっと笑った。
「見てよ、彼はあなたよりも口が立つわ」
 顧海は彼女が別の男を褒めてもまったくいじける様子はなく、逆に得意げな顔になった。
 食事が終わると、金璐璐は突然顧海に言った。
「白洛因を殴ってよ」
 顧海の表情は曇る。
「なんで殴らなきゃならないんだ」
「理由なんてないわよ。見てみたいの。男友達同士ってしょっちゅう殴り合ったり罵り合ったりするんでしょう?」
「つまらないことを言うなよ」
 顧海は冷たくいなす。
 金璐璐は冗談めかして顧海の白洛因への感情を探ったが、彼の反応についに我慢ができなくなった。
「顧海、私は冗談を言ってるだけよ。なに怒ってるの? そんなにこの人が大事なの? 彼は大の男よ。殴ったからってどうってことないでしょ。ちょっと軽く叩くだけでもダメなの?」
「ダメだ!」
 顧海ははっきりと告げる。
「俺だけじゃない。相手が誰であろうと白洛因には指一本触れさせない!」
 金璐璐は勢いよく箸を投げ捨てる。
「顧海、あんたほんとキモいわ!」
「なら帰れよ!」
 金璐璐は脇にあった椅子を蹴り、店を飛び出していった。
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