ハイロイン

ハイロインofficial

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第十三章

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「明日はもう大晦日ね」
 石慧シー・ホェが言った。白洛因バイ・ロインは静かに彼女を見つめる。
「いつ帰るんだ?」
「帰る? どこに?」
 石慧は綺麗な瞳を光らせた。
「外国だよ。学業をおろそかにするわけにいかないだろう?」
 彼女はどうでもいい様子だった。
「おろそかにしてもいいわよ。どうせ私はあなたの側にいるんだから」
「君……」
「何も言わないで!」
 石慧は耳を塞いだ。
「聞きたくない。聞きたくないわ」
 白洛因は煙草に火をつけ、黙って吸った。
 石慧は白洛因をじっと見る。ここに来てから白洛因はすでに煙草を五本も吸っている。聞いた話によれば、男が煙草を吸うのは時間つぶしらしい。白洛因が頻繁に煙草を吸うのは、この時間が彼にとってやりすごしがたいものだということだろうか。石慧はそうは思いたくなかったが、事実がそれを物語っていた。彼女が帰国してからこれまで、白洛因はどんどん無表情になり、初めのうちはまだ喜びやときめきが多少は感じとれたが、いまやまるで無関心だ。
 自分がこんな屈辱的な目に遭えば、白洛因は胸を痛めて彼女をいとおしんでくれると思っていたが、形だけの心配しか感じ取れなかった。時には疲れを覚え、こっそり涙を拭い、諦めそうになる。だが自分がこれまで捧げて来た恋心と努力を思うと、悔しくて諦めきれなかった。
 恋心は再構築できても、彼という人間はひとりしかいない。
「白洛因、私と一緒に外国に行きましょうよ。そうすれば私の学業も進むし、あなたにも明るい将来が待っているわ。いまは条件が揃ったんだもの。どうして外国に出てみないの? 知ってる? 外国の高校生活はすごくいいのよ。いまのあなたたちみたいに非人間的な暮らしじゃない。あなたのためじゃなければ、私は絶対帰ってこないわ。考えてみてくれない?」
 


 家族三人で食卓を囲みながら、姜圓ジァン・ユァンは興奮していた。
「洛因が外国に行く話、望みが出てきたのよ」
 顧海は顔色を変えながらも無関心を装う。
「彼が自分で納得したのか?」
 顧威霆が尋ねる。
「十中八九間違いないわ」
 姜圓はさらに興奮し、顧海に魚を盛りつけて勧める。
「小海も一緒に行くといいわ。兄弟同士で面倒を見られるし」
「俺は行かない」
「あら? あなたたちこんなに仲良しなのに、離れ離れになっていいの?」
 顧海は冷たく返した。
「俺は行きたくない」
 姜圓はまだ何か言おうとしたが、顧威霆グー・ウェイティンが口を挟む。
「行きたくないなら別にいい。ここに残ったとしても、入隊して駐屯地に入れば同じことだ」
「それもそうね……」
 姜圓は笑ってそれ以上言わなかったが、顧海は再度口を開く。
「俺は入隊しない」
「なんだと?」 
 今度は顧威霆が眉を逆立てた。
「なぜ入隊しない? お前は小さい頃から軍隊で育ち、なにかといえば駐屯地に来たのに、入隊せずになにをするんだ」
 顧海は静かに顧威霆を眺め、無表情に言った。
「一日中あそこにいたからって、軍隊が好きだとは限らない」
 そう言うと箸を置き、寝室に戻った。顧威霆は立ち上がろうとしたが、姜圓に止められる。
「年越しなんだから、プレッシャーは与えないで。話があれば、年が明けてからゆっくりしましょうよ……」
 そのとき、脇に置いた携帯電話が鳴った。姜圓は顧威霆の肩を叩く。
「電話に出てくるから、ゆっくり食べてね」
 携帯電話を耳に当てると、甘い祝いの言葉が聞こえて来た。
「おばさん、あけましておめでとうございます」
「あら、慧ちゃんじゃない?」
 姜圓は眦を下げて笑う。
「おばさんはご飯を食べ終わったところよ。こちらからもご家族にお祝いを伝えてね」
「はい、わかりました」
 姜圓はすぐに話題を自分が最も関心のある問題に移す。
「そうだ、あなたと洛因はその後どう? この間言ってたじゃない。洛因はあなたのために外国に一緒に行くかもって」
「そうなんです。でもちょっと難しい問題があるんです。彼はお父さんと離れたくないって」
 姜圓は眉をひそめた。
「知ってるわ。邪魔をするのはいつもあいつよ。安心して。私がちゃんと言い聞かせて、彼の考えを変えるから」
「おばさん、さすがです」
「あなたのほうがすごいわよ。これまであの子にいくら薦めても聞いてくれなかったのに、留学を考えるようになったなんて、全部あなたのおかげよ」
「でも……私は全然役立たずです」
「あらあら、あなたは私の福の神よ。十分すごいわ。覚えておいてね。うちの子とたくさんしゃべってこの話題を出せば、きっとあなたの提案を聞き入れるわ。おばさんはあの子の父親をなんとかする。一緒にがんばりましょう」
「ええ、私は決しておばさんを失望させません」
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感想 1

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みんなの感想(1件)

大河 ながれ

先日から読み始め、まだ6章ですが、感想が書きたくなりました。

私は中華BL小説の、現代ものをいくつか読んでいます(たとえば188は全作品読破済みです)。

貧しくも力強く暖かな生活と、豪門の華やかでも冷たい生活との対比は、現代もの小説のおいしさのひとつですね。

ハイロインはリバがネックで手を出していませんでした。もっと早く読んでいればよかったとかなり後悔しています。
ドラマ“上癒”は視聴ができたので、とりあえず2話まで見ました。

顧海も白洛因も、どうやっても自分の進む道を曲げない傲慢にも見える気高い強さ、中華BLらしい強い男です!
ほんとうに、ああ、これはリバでなくてはなりません!!😍

翻訳が丁寧で読みやすく、ときに注釈もあって、文化や生活の違う外国が舞台であっても、分かりやすいです。
言葉選びが良いので、白家の風景や、高校のざわめきまで感じるようです。

このさきも公開されているところまで、読み進めたいと思います😊

解除

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