界隈女子〜in the room〜

第五章

翌日以降、智華に新城は毎晩話しかけてきた。
調子はどうか。
最近困ったことはないか。
金銭や家族のことまで聞いてきた。

ーーコイツラ人の内情に入り込みすぎ。どっかいけばいいのに。うさん臭いーー

智華はいつものように新城から食料と名刺を貰う。
名刺の裏側をいつものように見た。

ーー嘆く者はだれか。悲嘆の中にある者はだれか。
争いを好む者はだれか。不平を言う者はだれか。
理由もなく傷ついている者はだれか。
血走った目をしている者はだれか。ーー
( 箴言 23:29 SKY17 )



ふと、智華は母親の事を思い出した。
父親が女を作って家を出ていき、アルコールを飲んだくれては、智華に金を稼いでこいという母親を。
「智華、貴方のせいでお父さん居なくなったじゃない。貴方さえいなくなれば。私は捨てられなかった。
早く金稼いでこいよ。弟が野垂れ死んでもいいのか」

毎朝、家へ帰ってるのは母親に売りの金を渡すためだった。
ーー嘆く者ーー
ーー傷ついている者ーー

なんとなくだけど、智華にはその言葉が私たちの関係を揶揄している様な気がした。

ーー誰も信じないーー

「智華ちゃん、今日は熱心に御言葉を見てくれてるね。
ありがとう。なにか⋯」
と、新城が言いかけた途端、智華は遮るようにこう言い放った。

「言葉が金になるわけないじゃん。綺麗事言ったって誰も助けれないんだよ」
智華の目には、怒りが籠もって見えた。