あの日咲かせた緋色の花は

棺ノア

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第1章

鷲森一葉

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-あれは期末考査も終わり、もうすぐ夏休みに入るという時期の出来事だった。

その日、芽愚は少し頭痛を感じていたものの、大したことはないと自らに言い聞かせ登校したのだが、その日の五限目は美術で、外の植物を写生するという授業だった。

出来るだけ日陰を選んで過ごしていたが、それでも汗が滴り落ちるほど蒸し暑い。
だが自分にストイックな彼女に早退するという選択肢はなく、ポーカーフェイスのせいで周りが異変に気づくこともなかった。

そんな中、鷲森だけはすれ違いざまに芽愚の不調を一目で見抜き、「なぁ、大丈夫なん?」と声をかけてくれたのだ。
その時鷲森と一緒にいた者は何のことだ?という顔をしていたのでおそらく芽愚の顔色が分かりやすかったのではなく、鷲森が日頃から人のことを気にかけられる性格なのだろうということがよく分かった。

ちなみにその後、変なところで強情な芽愚は「ありがとう、大丈夫だから」と言ってその場を去ろうとした瞬間によろめき、結局鷲森に肩を借りて保健室まで行くことになった。常に健康体の彼女には珍しく、夏風邪をこじらせたとのことだった。

帰り際も何故か送ると言って聞かないため、裕璃がいるので大丈夫だと告げると、
「でも上城の家って林抜けへんとあかんやん?」と言われ、どうして家の場所を知っているのかと驚いていると、なんと鷲森家は黒城組の情報収集班の一人らしいという衝撃的な事実を明かされた。勿論、芽愚や裕璃が黒城組の人間だと初めから知っていたのである。

いくらクラスメイトとはいえにわかには信じがたいと感じた芽愚が電話で確認したところどうやら事実らしく、拍子抜けしたものの、校内にいる身内が一人増えたことは心強かったし、その後の生活で鷲森が芽愚のことだけでなく、他の人間にも気を遣える性格だということが分かったので好感を持つようになったのだった。―





そんなことがあってからというもの、二人は日常的によく喋るようになり、芽愚も鷲森とは他愛もない話を積極的にするようになった。

裕璃は芽愚が夏風邪をひいた日の帰り、鷲森が送ると言ってきかなかったため、三人で帰ったので鷲森の素性や芽愚との仲を知っている。

シスコンの彼女であるので、芽愚に仲の良い友達ができたことが素直に嬉しい反面、自分以外に話し相手ができたことが寂しいと感じるなんとも複雑な心情であった……
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