あの日咲かせた緋色の花は

棺ノア

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第2章

狙撃開始

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夜中の日付けも変わろうかという時、芽愚たちは海沿いにある廃倉庫に来ていた。
今日始末する対象が、いつもここで麻薬をやり取りしているのである。

現場が路地裏などでなく施設である場合は、どこから攻めるのが最善かを検討するために下見をする。今日も昼間の明るいうちに一度ここを訪れ、老朽具合や建物の造りを確認していた。

ここは廃倉庫とはいえそこまで腐敗が進んでおらず、コンテナの上や天井裏にいても崩れないので隠れたままある程度動けると分かった。
そのため、芽愚は天井裏に潜み、裕璃は出入り口に近いところにあるコンテナの影に隠れて待機することになった。

今回、颯太郎は援軍の心配は無くなったと言っていたものの、やはり一度浮上した可能性を無下にすることは躊躇われたので、主に芽愚が殺害し、裕璃は補助につくことになった。


しばらくすると人影が姿を表した。六人…男が四人、女が二人である。
様子を伺っていると、手にしていたボストンバッグやキャリーケースから怪しげな粉の入った袋をコンテナの一つに詰め始めた。

「ったくよぉ、やってらんねぇよなぁ?こっちはかなりのリスクを背負ってこの仕事受けてんのに、コレ売って得た金の数パーセントしか貰えねぇんだもんなぁ」

「仕方ないじゃない。私達以外に何回運び屋交代してると思ってんのよ?その人達にも利益出さないといけないんだから」

どうやら今の給与に不満があるようだが、そんなことはどうでもいい。会話に夢中でこちらに気がつかないなら好都合である。運び屋としては周りに他人がいないか確認しないとは些か不用心過ぎるとは思うが。

ともかく、眺めていてもつまらないし、待っているのも時間の無駄なので手っ取り早く終わらせることに決めた。

芽愚が立っている一人の頭に焦点を合わせダンダンッと二発続けて銃を撃つと、撃たれた男は血飛沫を上げながら倒れ込んだ。
男の仲間は流石裏社会の人間だといったところか、悲鳴のひとつも上げずに銃弾が飛んで来た方向へ懐から出した銃を向けると、バババババッと連射して元々芽愚がいたところを破壊した。

無論、芽愚は銃を放つと居場所が特定されることを予測していたので、その場を早々に離れ新たに確保した隠れ場に身を潜めていた。

銃を持つのは二人。視認できた範囲の情報だが、緊急事態に応対したときの様子なのであとの人間は持っていないと判断して良いだろう。

芽愚が先程設置した簡易的な仕掛けを動かすと、芽愚も裕璃もいないところで物音が鳴ったため標的が銃を構える。
すると裕璃が投げたアイスピックが中心を貫き、敵の手から勢いよく弾き飛んだ。
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