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第2章
対戦
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宙を飛んだ二丁の銃は、カシャンカシャンと音を立てて床を滑っていった。
男たちが驚いた表情で裕璃のいる方に気を取られているうちに、芽愚は彼らのもとへ降り立つ。そして近くにいた標的二人の後頭部を思い切り蹴ると、しっかり技が決まったらしくバタリと倒れ込んだ。人間は延髄に強い衝撃を受けると脳震盪を起こすので上手くいけばそれだけで殺せるのだが、今生死を確認する余裕はないので後回しにする。この技をもろに受け、気絶するとしばらくは起きられないので、この二人から襲われることはなくなった。残りは男が二人、女が一人である。
すると、男の一人がその辺で調達したであろう鉄パイプを芽愚に向かって振り下ろしてきたので、右にずれて回避した。しかし、その動きを予想していたのか、女がナイフで首に斬りかかるように迫ってきた。芽愚はその動きを避けきれずに耳をざくりと切ってしまう。だが、六人を相手しているのだからある程度の怪我は想定内であるため、ほとんど気にすることもなく次の攻撃に移った。
芽愚は残りの三人を自分一人で始末するつもりだったのだが、ここで裕璃が投げたと思われるナイフが空を裂き、女の首を思い切りかき切った。頸動脈をブツリと切ったようで、女は先程芽愚が頭を撃ったのとは比べ物にならない勢いで血を吹き出しながら倒れた。
この状況、一見敵が一人片づいて良かったように見えるが、芽愚にとっては想定外の展開だったので内心で焦りが生じ、戸惑っていた。
この廃倉庫はかなり薄暗く、床がどのような状況かはっきりと見ることができないのだが、昼間見に来た時に汚れでまだら模様になっていることが分かっていた。
つまり、赤い血液が認識できない芽愚にはどこに血溜まりができているか分からないのである。始めに自分が敵を撃ったところは床が白いと確認した上でのことだったので踏まないよう避けられるが、移動をしながら戦っている中で床に血が広がると把握できずに滑る可能性が出て非常に困るのだった。
だから芽愚は普段、対戦中できるだけ血が出ないようにしており、裕璃もこのことを知っているはずだったが、芽愚が敵の襲撃によって怪我をしたので、ついかっとなって攻撃したのだろう。
芽愚は血溜まりを踏まないように移動しようとしたが、男たちが裕璃のいる方へ意識を向け始めたため自分一人に集中するよう近くに落ちていた廃材を投げた。そして片方の男の足を蹴り払い、前のめりになった背中に思い切りかかと落としをくらわせると、床に顎を強打して気絶した。
残りの一人は顔面に殴りかかってきたところをかがんで避けつつ溝落ちを殴り、前のめりをなったところで先程の男と同じようにかかと落としをくらわせ、気絶させた。
全員、一旦動けないようにできたところで一息つく。運び屋という職業柄、あまり実戦経験のない人間ばかりだったのだろう。耳は多少負傷したものの、取り敢えず全員殺す目処が付いた。
止めを刺す道具は何がいいだろうかと辺りを見回すと、裕璃の「後ろ!!」と言う声が響いた。
勢いよく振り返ると、最初の方で延髄斬りをくらわせたうちの男の方が息を荒げながら芽愚の心臓にナイフを突き立てようと突進して来た。咄嗟に避け、回し蹴りをしようとしたが、ここで危惧していたことが現実になった。女が噴き出した血液に足を取られ、バランスを崩して転んでしまったのだ。
瞬時に敵の位置を確かめると、避けられたと気づいた男が芽愚の背後に回り、ナイフを振り下ろしてきた。芽愚は転がるようにその攻撃も回避し立ち上がると、男の脇腹を思い切り蹴った。男はごろごろと地面を転がった後、再度突進してきたのでナイフを持っている方の手首を掴んで捻り、カランと音を立てて落としたのを確認した上でその勢いのまま背負い投げをした。地面に着くタイミングで腕を離したので男は全身を床に叩きつけられ、今度こそ意識を手放した。
延髄斬りした女の方は既に息絶えていたため、残りの気絶した三人の息の根を止める必要があったのだが、仲間同士の殺し合いに見せかけるために二人は近くの鉄パイプで頭を叩き潰し、あとの一人は銃を撃ち込んだ。
ひと段落つき、裕璃を探そうとコンテナの間を覗いていると、入り口の方から声が聞こえた。
「いやぁ、これはお見事お見事」
驚いて声のする方を向くと、右の二の腕を抑えて顔を歪める裕璃と、中年の男、そしてその男に寄り添うように歩く女の姿を見つけた。
裕璃の様子と現在の状況から、颯太郎の言っていた、芽愚を狙う上層部の人間であるということには気づいたが、蛍光灯の下まで歩いてきた二人の顔がはっきりと見えたところで、芽愚は愕然とした表情を浮かべた。
「母さん…!?」
そう、標的の組長に寄り添って歩き、冷ややかな笑みでこちらを見つめる女は、紛れもない芽愚の実母、佐々木 香織(ささき かおり)だったのだ。
男たちが驚いた表情で裕璃のいる方に気を取られているうちに、芽愚は彼らのもとへ降り立つ。そして近くにいた標的二人の後頭部を思い切り蹴ると、しっかり技が決まったらしくバタリと倒れ込んだ。人間は延髄に強い衝撃を受けると脳震盪を起こすので上手くいけばそれだけで殺せるのだが、今生死を確認する余裕はないので後回しにする。この技をもろに受け、気絶するとしばらくは起きられないので、この二人から襲われることはなくなった。残りは男が二人、女が一人である。
すると、男の一人がその辺で調達したであろう鉄パイプを芽愚に向かって振り下ろしてきたので、右にずれて回避した。しかし、その動きを予想していたのか、女がナイフで首に斬りかかるように迫ってきた。芽愚はその動きを避けきれずに耳をざくりと切ってしまう。だが、六人を相手しているのだからある程度の怪我は想定内であるため、ほとんど気にすることもなく次の攻撃に移った。
芽愚は残りの三人を自分一人で始末するつもりだったのだが、ここで裕璃が投げたと思われるナイフが空を裂き、女の首を思い切りかき切った。頸動脈をブツリと切ったようで、女は先程芽愚が頭を撃ったのとは比べ物にならない勢いで血を吹き出しながら倒れた。
この状況、一見敵が一人片づいて良かったように見えるが、芽愚にとっては想定外の展開だったので内心で焦りが生じ、戸惑っていた。
この廃倉庫はかなり薄暗く、床がどのような状況かはっきりと見ることができないのだが、昼間見に来た時に汚れでまだら模様になっていることが分かっていた。
つまり、赤い血液が認識できない芽愚にはどこに血溜まりができているか分からないのである。始めに自分が敵を撃ったところは床が白いと確認した上でのことだったので踏まないよう避けられるが、移動をしながら戦っている中で床に血が広がると把握できずに滑る可能性が出て非常に困るのだった。
だから芽愚は普段、対戦中できるだけ血が出ないようにしており、裕璃もこのことを知っているはずだったが、芽愚が敵の襲撃によって怪我をしたので、ついかっとなって攻撃したのだろう。
芽愚は血溜まりを踏まないように移動しようとしたが、男たちが裕璃のいる方へ意識を向け始めたため自分一人に集中するよう近くに落ちていた廃材を投げた。そして片方の男の足を蹴り払い、前のめりになった背中に思い切りかかと落としをくらわせると、床に顎を強打して気絶した。
残りの一人は顔面に殴りかかってきたところをかがんで避けつつ溝落ちを殴り、前のめりをなったところで先程の男と同じようにかかと落としをくらわせ、気絶させた。
全員、一旦動けないようにできたところで一息つく。運び屋という職業柄、あまり実戦経験のない人間ばかりだったのだろう。耳は多少負傷したものの、取り敢えず全員殺す目処が付いた。
止めを刺す道具は何がいいだろうかと辺りを見回すと、裕璃の「後ろ!!」と言う声が響いた。
勢いよく振り返ると、最初の方で延髄斬りをくらわせたうちの男の方が息を荒げながら芽愚の心臓にナイフを突き立てようと突進して来た。咄嗟に避け、回し蹴りをしようとしたが、ここで危惧していたことが現実になった。女が噴き出した血液に足を取られ、バランスを崩して転んでしまったのだ。
瞬時に敵の位置を確かめると、避けられたと気づいた男が芽愚の背後に回り、ナイフを振り下ろしてきた。芽愚は転がるようにその攻撃も回避し立ち上がると、男の脇腹を思い切り蹴った。男はごろごろと地面を転がった後、再度突進してきたのでナイフを持っている方の手首を掴んで捻り、カランと音を立てて落としたのを確認した上でその勢いのまま背負い投げをした。地面に着くタイミングで腕を離したので男は全身を床に叩きつけられ、今度こそ意識を手放した。
延髄斬りした女の方は既に息絶えていたため、残りの気絶した三人の息の根を止める必要があったのだが、仲間同士の殺し合いに見せかけるために二人は近くの鉄パイプで頭を叩き潰し、あとの一人は銃を撃ち込んだ。
ひと段落つき、裕璃を探そうとコンテナの間を覗いていると、入り口の方から声が聞こえた。
「いやぁ、これはお見事お見事」
驚いて声のする方を向くと、右の二の腕を抑えて顔を歪める裕璃と、中年の男、そしてその男に寄り添うように歩く女の姿を見つけた。
裕璃の様子と現在の状況から、颯太郎の言っていた、芽愚を狙う上層部の人間であるということには気づいたが、蛍光灯の下まで歩いてきた二人の顔がはっきりと見えたところで、芽愚は愕然とした表情を浮かべた。
「母さん…!?」
そう、標的の組長に寄り添って歩き、冷ややかな笑みでこちらを見つめる女は、紛れもない芽愚の実母、佐々木 香織(ささき かおり)だったのだ。
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